第39話
深夜の私室で妙齢の美女との向い合い酒を飲む。
あの後折角?
だからとワインを勧めたのだが出るわ出るわ愚痴が……
どれだけ主を敬愛しているのかから始まり、どんなに立派で凄いのかを延々と話した後は……
常に側に控えて居るのに夜のお呼びが掛からない。
呼ばれても添い寝だけで他にモリエール夫人と言う年増が居るのだが彼女にも手を出してないが自分が呼ばれるより回数が多いとか……
兎に角色々だった。
このマシンガントークの如くの愚痴はエレオノール様に通じる物がある。
しかし断片的だがこの世界のジョセフ王の事が分かってきた。
原作同様に満たされぬ思いを抱えているがその殆どが退屈嫌いとED改善だ。
しかし此処で問題は単なるED改善では無理だと思う。
もっと深いところでトラウマ的な何かを抱えている感じだ……
これは難しい。
秘薬で強制発情など無意味だろう。
もっと自身の深い所から込み上げる性欲を目覚めさせないと無理だ!
散々愚痴った彼女は机に突っ伏して寝てしまった……
この辺はエレオノール様で培った、愚痴を聞きつつお酒を勧めて早めに酔い潰すテクで簡単だった。
レビテーションでベッドに寝かせて考える。
先ずはジョセフ王のトラウマの原因を知りたい。
それが攻略の鍵だ……
それに正直レコンキスタやアルビオン王国なんぞに係りたくは無い。
乳とはそんな血に塗れた手で掴むものでは無い。
しかし……
美乳派などでどうやって反乱を起こすんだ?
ぶっちゃけ趣味と戦争はそれはソレこれはコレって別次元の問題の筈だ。
戦争とは国家が一団となって行う物だし誰が付いて来るんだ?
軍隊の維持費は?
傭兵の報酬は?
まさか美乳認定以外の女性を宛がうつもりなのか?
そんな危険思考の輩に乳を語る資格は無い!
急な話で考えが纏らない……
先ずは情報を集めるしかないな。
彼女……
シェフィールドさんの扱いもどうするかが悩み所だ。
絶対に普通に手伝うだけじゃ無いだろう……
原作ではクロムウェルは操り人形で最後は捨てられたんだ。
眠っている彼女をジッと見る……
E89か……まずまずの戦力値だな。
窓辺に立って外を見上げる……
双子の月が綺麗だ。
誰にでも平等に照らすこの月明りのような世界はこのハルケギニアでは無理……か。
日本と比べ物にならない危険な世界……
文明の未発達な国々……
貴族・平民・差別と貧困……
長い時間見ていたのがいけないのか昔の事を思い出していたからか涙が一筋流れた……
「何が悲しいのですか?」
シェフィールドさんがベッドから起き上がりながら聞いてきた。
「いえ……
酔いは醒めましたか?
そろそろ帰らないと朝の早い使用人達は起き出す時間ですよ」
「そう……
でも貴方の秘書なのよ?」
「受け入れる準備をしますから次の虚無の日にもう一度訪ねて下さい」
「わかったわ。
貴方オッパイ好きなのに紳士なのね」
「大国の王の寵妃に手を出す愚か者は居ないのでは?」
「ふふふっ……
では次の虚無の日に」
そう言うと例のマジックアイテムで瞬間移動していった。
さて……僕にはやる事が有る。
それはこのシーツの処分だ。
こんな良い匂いをしたシーツをソフィアが発見したら最悪だ!
最近はロングビルさんとタッグを組んでいる気がするんだ。
リネン室の場所は確認済みだ。
新しいシーツを盗んでベットメイクしコレは処分する。
まさか貴族がそんな証拠隠滅をするとは思うまい。
ではミッションスタート……
SIDEシェフィールド
主に言われて渋々だったが中々どうして有能な若者だ。
我が主は天才だが何故か自身の身の守りに疎い。
そして周りに信用の出来る部下は私以外は居ない……
彼が主の野望の協力者になればその問題も解決する。まだ学生で学院で生徒として過ごしているのに世界の情勢を正確に掴み物事を洞察する力。
それに紳士だし有能だし主の回春の協力者としては最適なのでは?
ガリアでは主も私も腫れ物扱いで私など素性の知れない情婦扱いなのに随分と丁寧に扱われた。
これは正直嬉しい。
彼の情報か判断の中では私は主の寵妃らしい。
私が本当の寵を賜るには彼の協力が必要だ。
主には適当な所で裏切れと言われたが本気で協力をしよう。
そして主に認めて貰い私の野望の協力者となって貰う。
先ずはレコンキスタを本格的に潰しましょう。
表情は花びらがこぼれる様な微笑みを浮かべているが彼女の考えるプランはクロムウェルの暗殺だった。
やはりヤンデレとは恐ろしい者なのだ……
学院廊下にて
「お早う御座います。ツアイツ様」
出会うメイドさんの全員に挨拶をされる……
全員顔見知りだし嬉しいのだがゴール地点のリネン室には複数のメイドさん達が朝のベッドメイクの準備で急がしそうに出入りをしている。
僕の完璧な作戦が……
「ツアイツ様お早う御座います。
どうなされましたか?」
振り向くとソフィアがシーツや洗顔具などの入った籠を持って立っていた。
「おっおはよう……
いや少し早く起きてしまってね。
ソフィアもまだ早いんじゃないかな?」
「手隙の時は学院の仕事も手伝ってますので……
それで何故このような場所に?」
「……香水を調合してみようとチャレンジしたんだが失敗してシーツを駄目にしてしまってね……
ソフィアに叱られる前に自分で交換しようかと」
「まぁ!
言って下されば直ぐにでも交換致します。
では今から伺いますので」
「……うん。お願い」
SIDEソフィア
全くご主人様は使用人に気を使い過ぎです。
汚したから態々御自分で交換しようとするなんて普通考えませんよ。
しかも申し訳無さそうな顔で私に付いて歩いてくるなんて……
全く不思議な方ですね。
「あら?
ツアイツ様、汚したシーツはどちらでしょうか?」
「ん……
その変色してしまったので処分したんだ。
学院の方には弁償しておくから……」
「大丈夫です。
消耗品ですので処分した事にしておきますから……
あら残り香ですが良い匂い……
これで失敗なので?」
「……匂いは良くても色が真っ黒だったんだ……
流石に思いつきで錬金しても駄目だね」
「そうですか……
でもどこかで嗅いだ事の有る匂いです」
「……僕も何処かで嗅いで気に入ったから作ってみようと思ったんだよ」
何故かご主人様は汗をかいてます。
不自然ではないのですが不自然な感じがするのは何故でしょう?
女の感が怪しいと伝えています……
じっとご主人様を見詰めます……
あっ目を逸らしました。
「ご主人様?
何か隠してはいませんか?」
「……いや実は」
ご主人様は私達にプレゼントする為にこっそりと香水の錬金を練習なさっていたそうです。
全くこんな使用人思いのご主人様を疑うなんて……
勿論他のメイド達には話しません。
楽しみです!
誤魔化す為に嘘の上塗りをしてしまったツアイツ君……
バレたら大変ですよ!