第50話
こんにちは!
ツアイツです。
流石はゲルマニア有力貴族、ツェルプストー辺境伯と言う事でしょうか?
早朝から勅使が屋敷まで来て、謁見の準備は午後一番に整うとの報告が有った。
アルブレヒト3世と言う人は、己の政敵を全て幽閉する程の激しい面を持つ人物なので楽観は出来ない。
そう言えば、僕は前世では天皇陛下や皇族の方々にも、会った事が無いので緊張してます。
アンリエッタ姫?んー微妙?
彼女は確かに王族としての気品や美貌は有ったのだが……
威厳とかが……
その、無かった様な?
まぁ、深夜に僕の部屋でキャットファイトする様な人物を敬えと言われても難しいよね。
しかし僕の為にも、彼女はウェールズ皇太子と結ばれてもらう。
それは僕にも彼女にも益が有る話だ。
などと、つらつら考えながら僕は馬車に揺られています。
この超々ジェラルミン装甲馬車は、意匠こそアルブレヒト3世に献上した物には劣るが、性能は同等以上の逸品!
寧ろ防御力的には此方が上だ。
献上品は内外共に装飾が華美な為、重量的な問題で一部、装甲を削っている。
それでも従来の馬車よりは耐久性は高いし、高性能サスペンションを装備しているので乗り心地は比べるまでもない。
「ツアイツ、そろそろ着くぞ。緊張するなよ」
随分長い間、考え事に没頭してしまったようだ……
ツェルプストー辺境伯の声で現実に引き戻される。
「はい。有難う御座います。
大丈夫です」
いよいよアルブレヒト3世とご対面だ。
謁見の間にて……
僕らは既に謁見の間に入り、閣下が来るのを跪いて待っている。
「アルブレヒト3世閣下の御成りです……」
衛士の声が響き、カツカツカツと玉座に進む足音が聞こえる。
座る気配と共に声が掛かる。
「久しいな、ツェルプストー辺境伯よ。
そして彼が、君の話に良く出てくるツアイツか?」
「はっ!
アルブレヒト閣下に、名前を覚えれているとは感激の極みで有ります」
より、頭を下げて答える。
「堅苦しい物言いは止めよ。
調べでは数々の革新的な事業を行っているな。
我がゲルマニアの益になるなら喜ばしい事だ」
調べただと?
何処まで調べられたかな?
「はっ!
勿論、我が閣下の為に誠心誠意、尽力するつもりで有ります」
「ふっ……国でなく俺にときたか。
成る程、有能だな。
俺には敵が多い……
ソレも見込んでの発言か?」
「国に使えるのは、貴族として最低限の事。
僕は微力ですが、閣下御自身に仕える所存です」
「ふん。
ツェルプストーとの婚姻も認めてやる。
普通なら大貴族同士の結び付きは喜ばしくはないがな」
「はっ!有り難き幸せ」
「よい。
貴様の提案し献上した、超々ジェラルミンや戦闘レーション・携帯医療キット等も有効なのは理解した。
これらはツェルプストーとハーナウ両家に独占発注しよう」
「それは……
色々と問題が有ると考え、閣下自らの管理に置かれる事を具申致します」
「その程度の利益など手放してでも、他貴族との軋轢を避けるか。
欲が無いのか、他に思惑が有るか……」
「近衛や常備軍は閣下の直轄部隊です。
我らが絡む事は、害にしかなりませんので」
「くっくっく……
普通は是が非でもと言う所だがな」
「我がハーナウ家にも閣下の危機には、駈け付けられる準備が有ります」
「貰える物は貰っておけ。
俺に必要な家臣には其れなりの待遇をする必要が有るのだ。
遠慮も度が過ぎれば不敬よ」
「はっ。
有り難きお言葉、痛み入ります」
「よい。
俺はツェルプストー辺境伯と話が有る。
先に退出しろ」
「はっ。では失礼致します」
一礼して謁見の間を退出する……
扉の外には侍従が控えており、次の間というか待機の部屋に通された。
今の会話を振り返る……
問題は無かった筈だ。
閣下も僕を少しは必要と思ってくれたみたいだし、利権もくれた。
あとで、ツェルプストー辺境伯にも相談して今後の対応を考えよう。
SIDEツェルプストー辺境伯
謁見の間……
閣下の機嫌は良さそうだが……
「どうですか?
彼は、見込みが有りそうですか?」
「そうだな……
目先の利権をスッパリ切って、己が立場を保てる程は周りが見えているな」
「もともと自身の欲は少ないタイプですね。
争い事も避けるタイプですが……
身内の危機には容赦ないですよ」
「確かに功績の割には、自分の利益欲が少ないな」
「しかし、あの年でこの功績は少々異常です。
閣下に謁見し中央デビューもしたからには、廻りの連中からも……」
「言うな。
有能とは言え、まだまだ子供だ。
しかし俺には必要かもしれん。
役に立つ様に成る迄は、周りにどうこうはさせんよ」
良し。
第一印象は悪く無かった……
これならガリアと揉めても、いきなり切り捨てられる可能性は少なくなった。
謁見は成功だ。
あとは……
「それと、アレだ……
数々の著書が有るみたいだが、何故それらは寄越さんのだ?」
ツェルプストー辺境伯は固まった……
このタイミングでこの質問とは?
「そうですな。
しかし脚本なれば、演劇の方を観られた方が宜しいかと……」
「ふん。
色を語るには、まだまだ子供と思いきや、あ奴の作品は奥も幅も広いぞ……」
「閣下……
お読みになられているので?」
「当然だろう。
流通している本は全て押さえているのだが……」
「わかりました。
市販されてない物も数多く有りますので、献上させる様にします」
「そうか!
よろしく頼むぞ。
2部ずつだぞ」
ここにも色に狂った男が居たか……
彼の著書は……
彼以外では紡ぎ切れないオンリーワン的な魅力と、麻薬のような常用性が有る。
彼の言う、おっぱいだけでも世界は動かせるのかも知れん。
続きの気になるファン心理、そして顧客は世界を動かせる人物達……
彼しか書けない、金では買えない希少本。
模倣品の追従を許さないジャンルの広さ。
従来のハルケギニアでは有り得ない革新的な手法・表現方法・独創的なストーリー……
彼の頭の中には、どんな世界が有るのだろう?
それと、私の知らぬ作品が有るのが気に入らん。
献上品は2部ずつ……
当然、私も1部貰うから3部だな。
タバサ&ジャネットの旅……
「ふーん。
アンタ、急いでるのはツアイツ殿の情婦に襲われたんで逃げるんだ……」
「……違う、友達。
でも少し怖い」
「しかし、3人とも大貴族の令嬢じゃないか?
どうやって3又を認めさせたんだろうね?
普通は刺されるよ、ソレ」
「……好きな男の為なら夜叉になる。
本当に容赦がなかった。
クスグリは拷問」
「ふーん。
惚れさせて認めさせたか。
これはカフェでお茶は無理かね?
バレたら粛清されそうな気がする」
「……同意、あれは、アイツ等は危険」
「残念だけど諦めるわ。
それで何処までこの本を持って行くの?
結構走ったわよ?」
「……もう直ぐ。
あの先の森で、迎えの竜騎士と合流する」
流石は北花壇騎士団!
彼女らのスピードは衰える事も無く、目的の場所に着いた。
「……着いた。
ここで迎えを待つ」
森の中心辺りの開けた空間で、迎えを待つ……
夜風がまだ冷たいが、走った体には丁度良い。
「ねえ……
アンタはツアイツ殿を狙ってるの?」
「……狙う?もう任務の標的では無い。
……彼は仲間」
「ふーん。
やっぱりイザベラ様の言う通りにワルド子爵狙いなの?」
何だろう?
少し怯えた表情だけど……
何か有ったのかな?
「ねえ?もしかして、子爵と何か有ったn
「ヒャッハー!
お待たせしたぜ、7号殿……
アレ?美少女が増えた?」
タバサの迎え……
竜騎士内での激しい競争を勝ち抜いたのは、奇しくも前回迎えに来てくれた彼だった!