第51話
人気の無い森の中……
2人の美少女と1人の竜騎士が、向かい合っていた。
美少女達は、大量の男の浪漫本を抱えている。
「7号殿、連絡では1人の筈ですが?
こちらの女性は?」
「ヒャッハーさん。
私は北花壇騎士団所属、元素の兄弟の一員ですわ」
「……置いて行って良いですか?
別の迎えを寄越しますk……そっその手に持っている著書は?」
「……ミスタ・ツアイツとは友達。
貴方達の事を話したら、遠い異国の兄弟達に、ささやかな贈り物だってコレを……」
竜騎士は、その場で跪くと両手を組んで祈りだした!
「オゥ!
ゴッド・ツアイツ殿……
我々をブラザーと呼んでくれるのか……
感激だ、涙で前が見えねぇ」
暫し落涙と共に祈りを捧げた彼は、全身から漲る何かを発散させながら立ち上がった。
「2人共、そのブラザーの魂の著書を相棒に乗せな!
力の限り飛んでやるぜ!」
主と使い魔は一心同体!
元々がエリート集団の竜騎士の中でも、このお迎え権利を勝ち取った程の力のある彼の気迫に大地は揺れ、風竜はその力を最大限に誇示した。
見事な風竜は人間3人と、その荷物を載せて尚、余裕の表情だ!
そこでタバサがドーピングをする。
なんと彼の腰を掴んで後ろに座ったのだ!
恐ろしい程の精神の高ぶりを覚えた彼は、しかし積荷を損なわない様に慎重に風竜を操り天空に飛び立つ!
「ヒャッハー!
ゴッド・ツアイツ、いやソウルブラザー!
貴方の魂の本は必ず我が仲間に届けます!」
雄叫びを上げて羽ばたく風竜……
しかし乗り心地は信じられない程、穏やかだった!
「ねぇ?彼、ヤバくない?」
「……彼はミスタ・ツアイツに洗脳されたの。
だから私達にも危害は加えない……
気持ち悪いケド」
「確かに狂信的な何かを感じるわね……
やっぱり諦めるのは惜しいかな?
凄く楽しいわね彼!
絶対退屈しないわよ」
「……命知らず」
そして迷いなく羽ばたく風竜は、予定より少し早く中継地点に到達した。
「7号殿とオマケさん。
そろそろ乗り継ぎだ!
降りるぜ」
「なっ!
オマケって言うなー」
「ヒャッハー!
舌咬むぜぇー!
大人しくしてなー」
理想的なフォームで着陸体勢に入る風竜!
彼は私達で無く、男の浪漫本を丁寧に持つと、レビテーションで降ろし廻りの同僚達に叫んだ!
「みんな聞け!
我らがゴッド・ツアイツ殿が……
我らをブラザーと呼び大量の著書を……
くっ感動で声がでねぇ」
我先にと集まりだす竜騎士達……
皆の目が期待と希望に満ちている。
「どうした?
ゴッド・ツアイツが何故、我らをブラザーと?」
「7号殿が我らの事をブラザーに話してくれたんだ!
見ろ、この最新巻を含む大量の著書を……
異国の兄弟の為に贈る……と」
「こっこれは「エヴァさんTV版」が全巻、それにはなまる幼稚園だと……」
「こっちは「TO HEART」の続編……
なんだ、我らが知らないタイトルが……」
その時、最初に送ってくれた竜騎士が叫んだ!
「この中継地点に、直ぐ飛び立てる風竜は何騎だ!」
皆の意識は1つとなった!
竜騎士達の行動は早い。
「3騎だ。
警備と偵察で最低、2騎は残さねばならないが……」
「俺と俺の風竜が残る。
だから2騎で送ってくれ」
「護衛はどうする?
こんなブツだ!
バレれば襲撃が考えられるぞ」
「大丈夫だ。
俺の使い魔が次の駐屯地に居る。
リンクして情報を伝えた。
団長自らが応援に来るそうだ」
「ナイスだ!
しかし独り占めは駄目だぞ。
我らが戻る迄は先に読むなよ」
「当たり前だ!
ソウルブラザーに贈られた本だぜ。
皆で読むのが礼儀だろ」
狂信とも思える純粋な目をして話を進める竜騎士達……
もう、彼らを止められる者は居ないだろう。
タバサとジャネットは当然、蚊帳の外……
呆然と進められていく話を聞くだけだ。
「えーと、ヤバくね?」
「……ミスタ・ツアイツは嘘を付いた……
彼らは私の力にはなってくれn」
「感謝する。
7号殿とオマケ殿……
我らとゴッド・ツアイツを結びつけてくれた恩は忘れない……
さぁ、乗ってくれ!
超特急でプチトロワまで送るぜ!」
「オマケって言うなー」
その後、過剰なまでの護衛団を率いてプチトロワまで搬送された「男の浪漫本」とタバサとジャネット……
タバサは彼らの、竜騎士団の大恩人となり、その後の行動に影ながらの援助を受ける様になる。
しかしジャネットは、終始オマケ扱いだったが……
美少女なのに何故?
SIDEツアイツ
何だろう……
知らない内に同志が増えた気がしたんだが?
「どうした?
ツアイツ、浮かない顔だな。
謁見は大成功だったぞ」
「いえ……
魂の兄弟が、遠い地で生まれたような?」
「……?」
そう、謁見は成功だった。
アルブレヒト閣下も僕の男の浪漫本シリーズを読んでくれていたらしく、直ぐに献上する手配をした。
今はささやか?
な、規模でない打ち上げをツェルプストー辺境伯が催してくれたので堪能中です。
出席者は、ツェルプストー辺境伯と僕、それに送ってくれた女性騎士のヘルミーネさんと同僚のイルマさんとリーケさん。
燃える赤髪の一族に囲まれての宴会の真っ最中ですね……
彼女らの参加の目的は、僕の品定め……だな。
「どうだ?
我が娘達は……
魔法と武芸は一通り仕込んであるぞ」
多分、彼女たちはキュルケの輿入れと共に付いて来る。
選りすぐりの家臣団の中核メンバーなんだろうな。
全員が全員ともトライアングルクラスの腕前で有り、親父さんそっくりの性格を受け継いでいる。
「そうですね。
皆さん美しく、また力強さを感じます」
「そうだろう。
キュルケの嫁入りの時には、側近として同行させるよ。
存分に使ってやってくれ」
3人共、既に聞いているのだろう……
特に反対も意見も無いようだ。
「君の試練の手助けもさせたいと思ったが、まだまだ力不足だからね」
「ありがとうございます。
しかし僕には既に力強い仲間達が居ます。
非常に心強い腹心も居ますので……その」
「あー彼女か……
そうか、そうだな。
我が娘達では……
まだ危険かな?」
「これ以上メンバーが増えると僕の胃が……」
黙り込む2人……
黙って聞いていた彼女達だが思う所が有ったのだろう。
控え目だが意見をしてきた。
「失礼ながら、そのお年でアルブレヒト閣下に謁見出来る貴方ならば、我ら3人位の面倒はみれるのでは?」
ヘルミーネさんです。
彼女が3人の中でリーダーなのだろう。
挑発的とも思える口調です。
「姉さん、ツアイツ様にも事情がお有りなのでしょうから」
彼女はイルマさん。
会話からは一番内政と言うか、参謀向きな感じがします。
「……無理なら仕方ない」
リーケさんは……
タバサ似の不思議ちゃんですかね。
「まぁ待て、娘達……
彼の元で働くのはまだ時期尚早だよ。
もう少しタフネスに成らねば、あの空気には耐えられまい」
「「「……?」」」
「ツアイツの元で働く事は、色々な面で勉強になるだろう……
しかし今は駄目だ。
彼女をジョゼフ王に返すまでは……」
「すみません。
僕の胃の為に配慮して頂いて……」
「君を失う訳にはいかないからな……
そう言う訳だ娘達。
時期を待て」
「「「わかりました」」」
良かった。
彼女達も渋々だが納得してくれたみたいだ……
彼女達は詳細を知らないのだろう。
これからの一連の事件を……
しかし知らない方がお互いの為だ。
と、言うか僕の為?
真面目そうだからなぁ……
おっぱい戦争なんて知ったら白い眼で見られそうだし。