第52話
イザベラ執務室にて……
プチトロアの執務室から窓の外を見る。
良い天気だね。
あれから、元素の兄弟の報告を貰ったが……
何をやっているのか、頭が痛いね。
モギレと言った子爵は、童貞だから放置した。
次期当主は、ジャネットがナンパされたから任せた。
こんな報告で納得出来るかー!
しかしあいつ等はそれから呼び出しに応じないし……
私も少し働き過ぎかね?
良い天気だね……
こんな日は私だって遊びに行きたいんだけどね。
空が蒼いのが目に沁みるったらありゃしないよ。
……ん?
なんだい?
あの点は……
いや違うね。
アレは風竜の編隊だよ!
なんて数だい!
10……11……12……
15騎は居るね。
まさか敵襲?
シャルル派が私を倒しに来たk……
いや?
アレは、竜騎士団長の騎乗竜のブリュンヒルデ……
演習なんて報告されて無いんだけど……
何だろうね?
気になるね……
ちょっと行ってみるか。
竜騎士団プチトロワ駐屯地
「団長が戻られたぞー!
ヒャッハー!
ソウルブラザーの贈り物が届いたぞー!」
「ちくしょう!
待ちわびたぜ」
騒がしい……
しかし整然と迎えの連中が集合している……
何時になく竜騎士達の威勢が良いね……
イザベラは廻りの連中の迫力に押されながらも、近くの竜騎士を捕まえて詰問した。
「何なんだい?
この騒ぎは?」
「はっ!
これは、ツンデレさn……いえ、イザベラ様!」
誰がツンデレだい誰が!
イラッとしながら聞き返す!
「だ・か・ら・何なんだい?
この騒ぎは?」
「はっ!
ゲルマニアのソウルブラザーから希少本が贈られた為に、団長自らが受け取りに向かいました!」
「ソウルブラザー?
ゲルマニア?
……想像がついて聞きたくないけど、誰だい?」
「はっ!
ゴッド・ツアイツ殿です。
我らのソウル・ブラザー!
偉大な兄弟です」
「何で一面識も無いお前等が兄弟なんだい?
可笑しいだろ?」
「ゴッド・ツアイツ殿は言われました……
遠い異国の兄弟達にこの本を贈る、と……
なれば我らも期待に応えねばならないのです!」
「お前等が期待に応える相手は私だろーがー!」
「…………はっ!
団長が戻られました!
失礼します!」
そう言うなり奴は私に敬礼をして、団長の元に走り出した……
「ヒャッハー!
待ってましたゼー!」
……と。
目線の先にはガリアの防空の要、エリート集団の筈の竜騎士の連中が、謎の雄叫びを上げながら狂喜乱舞している。
その中に、困惑気味のシャルロットとジャネットの姿を見付けたが、もう話しかける気力が無い……
私はとトボトボと自分の執務室に戻ると、待機していた侍従に今日はもう休むから……
と、言い残して自室に戻る事にした。
ガリアは既にゲルマニアから謀略を仕掛けられているのか?
それとも本当に趣味友達が共鳴したのか?
メイドに持って来させたワインをがぶ飲みしながら考える……
いや、忘れる為に酒を飲む。
お父様も彼らと近い目であのエロ本を読んでいた。
まさかエロ本だけでこんな状況を作り出すとは……
これは一度、会って話さないと駄目かもしれないね。
彼の真意を確かめる必要が有るk
コンコン「イザベラ様。
北花壇騎士団7号殿とジャネット殿が報告に来ています」
「今日はもう、誰とも会わないよ!
明日また来なって伝えとくれ!」
もう、やる気をなくし怒鳴り返す!
すっかりヤサグレたイザベラは、王族故の美貌が損なう位に、ワインを痛飲し翌日も二日酔いで政務を放棄する。
真面目な彼女には、馬鹿らしくてやってられないのが本音だった!
キングサイズのベッドに潜り込み、二日酔いの頭痛と戦いながらもイザベラは吼えた!
「バカヤロー!
覚えてろよツアイツー!
何時かギャフンと言わせてやるー」
すっかり敵と認定されていた……
SIDEツアイツ
はっ?
今度は美少女に敵対された気がする……
誰だろう?
ゲルマニアでの用事は全て済んだ。
そろそろトリステインに帰ろうと思うのだが……
最大の難所を先に済まそうと思う。
キュルケにバレた……
それは、ルイズとモンモンにもバレていると思って間違いは無い。
すなわちヴァリエール公爵家にも連絡は行っているのだ!
そう……
カリーヌ様の耳にも入っている……
唯で済むとは思わない。
普通に考えれば、まだ婚約しかしてない他国の貴族の問題だ。
しかし、そんな事は通用しないのが彼女だ。
何故か、先に学院に戻ると危険な感じがする……
最早、ヴァリエール家を訪問するしか無いだろう。
それも連絡もせず突然行く事にする。
「と、いう訳で、ヴァリエール公爵家に向かいます」
僕はすっかり我が家の如く寛いでいるワルド殿、シェフィールドさん、そしてロングビルさんに言った。
皆、ゴロゴロと人の部屋でだらけ切っている……
これは和室の癒し効果!
畳マジックの所為だ!
「そろそろ動き出しましょうか……
ではアルビオンに潜入しに言ってきます。
ほら行くよ!
遍在出しな」
「これだからデカチチは……
ユビキダス・デル・ウィンデ!
風は遍在する」
ワルド殿は遍在を1体出して、ロングビルさんの言う事を聞くように指示する。
ツアイツは知らないが、この遍在はヤンデレ化したシェフィールドさんと一緒に監視していた!
お疲れ様な遍在だ!
遍在使いが悪い本体に一言、物申したい感じだ。
「では、トリステインに帰りましょう。
ツアイツ様」
今日は穏やかな微笑のシェフィールドさんが最後の言葉で締めて、皆が散って行った……
両親とテファに別れを言い、彼女の水の指輪を預かり帰路に着く。
行きと同じ様に、レンタルグリフォンに乗り込みヴァリエール公爵領に向かう。
アンドバリの指輪と水の指輪は、シェフィールドさんに預けている。
多分、世界で一番安全な場所だ。
彼女もジョゼフ王治療の切り札だから丁重に扱ってくれるし、僕では守りきれないだろうし……
「ツアイツ様……
そろそろヴァリエール公爵邸に着きますわ」
「シェフィールドさん、打合せ通りにお願いします。
無用な争いは避ける方向で」
「貴方に危害が加えられなければ、大人しくしていますわ」
「……いや、多分危害が加わるけど、大人しくして下さい。
お願いします」
「程度によります。
我慢が出来なければ手を出します」
神の頭脳ミョズニトニルンVS烈風のカリン!
こんなヤバい対戦カードだけは避けたい。
嗚呼……
また胃が痛くなってきた。
無常にもグリフォンはヴァリエール公爵邸の屋敷前に降り立った……
しかし内緒の訪問だったが、バレて居たのだろう。
正門前にヴァリエール公爵とカリーヌ様が既に立っていた。
カリーヌさまは凄い笑顔だ……
「ツアイツ・フォン・ハーナウ殿、本日はどの様なご用件での来訪でしょうか?」
慇懃無礼に、しかし完璧な礼で言われた言葉の迫力は……
基本的にヘタレの僕にはキツかった。
「とっ突然の来訪の無礼を許して下さい。
今日訪ねたのは、大切な話が有るからです」
殺気に反応し、既にヤンデレ化しつつあるシェフィールドさんの前に出てカリーヌ様を見詰めてそう言った。
「娘から聞いてる事ですか?
それなら弁明は不要です。
私に内緒でガリアと事を構えると言う事ですね」
本能が彼女が怒っている事が分かる……
その怒りは僕の為でも有る筈だが、僕へのダメージがキツい。
ヴァリエール公爵も廻りの家臣達も一歩も動けないプレッシャー!
「聞いて下さい。
その件について報告が遅れた事は謝ります。
しかし、これでカトレア様の治療に目処がつきました」
ヴァリエール公爵夫妻は信じられないのか、素っ頓狂な声でハモった!
「「何だって(ですって)?」」