第54話
トリステイン魔法学院
アルヴィーズの食堂
今朝も貴族的には、ささやかな糧の……
無駄に豪華な朝食が並んでいる。
「ねぇキュルケ?
今朝は嬉しそうね」
礼儀作法に則り優雅に食事をするルイズが、この2〜3日の間浮かない顔だった親友が、凄く嬉しそうなので疑問に思い聞いてみた。
「お父様から梟便で、手紙が届いたわ。
ツアイツは例の件の対策が概ね終わり、アルブレヒト閣下にも謁見したそうよ」
「それじゃ、学院に直ぐに戻るのね?」
最近、人気上昇中のモンモランシーが詰め寄る。
「それが……
先にルイズの実家に寄るって、書いて有ったわ」
「ウチに?
両親に説明に行ったのかしら?」
「それと、モンモランシーの実家の援助はウチも参加する事になったって」
「ツアイツ……
私の家の為に、既にそこまで……嗚呼」
「何か水の精霊対策も手に入れたって、書いて有ったわ」
「凄いわ!
それなら両親も、ツアイツとの私の結婚を……
ツアイツ駄目よ、まだ早いわ。
せめて卒業まで待って……」
「「あー駄目だ……
妄想モードに入ったわ」」
「でもキュルケ?
アレは放っておいて……
何故、謁見なんてしたのかしら?」
「んーゲルマニア皇帝の後ろ盾を得たかった……かな」
「私達、余計な事しちゃったかな?」
「大丈夫。
ツアイツは、私達に感謝していたって。
帰ったら、直接説明してくれるって」
「そう……なら安心ね」
SIDEキュルケ
ふふふっ!
手紙にはね……
お父様がツアイツに、私達の結婚を承諾させたって書いて有ったわ!
つまり学院に帰ったら、先ず私にプロポーズしてくれるのよ。
ヴァリエール公爵家にも向かったって事は、ルイズとの婚姻も進むって事だろうけど……
私が先ね!
だって学生結婚でも構わないって。
貞淑を重んじる、トリステイン子女には無理な事よ。
つまり第一夫人は、わ・た・し!
貴女達より一足先に、人妻になるの……
えへへへ!
キュルケは珍しく、人前で妄想モードに突入した!
普段は大人らしく落ち着いている彼女が、乙女の妄想モードに突入している……
流石はナイスバディ!
くねくね具合も、お色気抜群だ。
廻りは珍しい物が見れると、注目し集まってくる。
男子諸君はヨダレを垂らしそうな表情。
これで複数の男子を手玉に取っていたら、原作同様に大変宜しくないのだが、ツアイツ一筋なので他の女子も問題にはしていなかった。
逆恨みで手を出しても、返り討ちは確実だし……
SIDEルイズ&モンモン
「キュルケ……
怪しくないかしら?」
「オラッ!戻って来い」
「はっ……!ごめんなさい。
そうね、何か隠している感じよ」
「「後で尋問ね!」」
「それと……
何を勝手にツアイツの分まで朝食食べてるのよ?」
「ふぉ?ふぉふぉふむ?」
マリコルヌはツアイツの分まで食べれて、ご機嫌だった!
「ツアイツー!
君の分は無駄にしないよー!
だから、暫く出掛けていていーよー!」
場面は変わり、ヴァリエール公爵家にて……
「それとツアイツ殿?」
あれ?何だろう?
カリーヌ様のこの笑顔は?
「娘達の事です。
貴方はこれで我が娘達全てに、何らかの手助けをしてくれた訳です」
「はい。カトレア様は、条件を満たしていませんが」
「それで……誰が良いのですか?」
「……はぁ?」
「鈍いですね。
エレオノールなら我が家に婿入り。
爵位も領地もお譲りしましょう。
カトレアはラ・フォンテーヌ領と子爵位を持ってます。
そのまま継ぐか、爵位を王家に返上させ我が家に婿入り。
同様に爵位と領地をお譲りします。
ルイズなら……
嫁にあげましょう。
そして子供を養子に迎え入れます」
えっと……
確か僕は、ルイズの婚約者だったよね?
「……では、婚約者であるルイズ嬢を」
カリーヌ様の目を見て答える。
何故か、心の中で本編ルートはルイズールイズー!
と訴えている……誰が?
「そうですか。
しかし……
年上の女房は金の草鞋を履いても探せ!
と、東方の諺も有りますよ?」
何故?
カリーヌ様は此処で、僕に選択肢を出すのかな?
「いえ……
ルイズ嬢で、お願いします」
チッ……「分かりました。
では、卒業と同時に結婚して貰います。
それまでにジョゼフ王の件は、処理出来るのですよね?」
「大丈夫です」
何故に舌打ち?
「ツアイツ殿……
魔法が不得意な我が娘だが宜しく頼む。
それと、生まれた第二子以降の男子は、我が家に養子に欲しい。
エレオノールが、その……
アレだし、カトレアも適齢期を過ぎている。
我が家を継げる相手を探すにも、残念ながらこの国には……」
今まで一言も話さなかったヴァリエール公爵が、僕の手を握り締めてまとめに入った。
「ツアイツ殿、子供はルイズとバンバン作りなさい。
あの子は安産型です」
「はぁ……頑張ります」
これは上の2人には、政略的な婿取りは無理、と思ってるのかな?
トリステインは二十歳前後が適齢期な、潜在的ロリコン国家だからなぁ……
2人共凄い美人で公爵位が付いてくるのに、何が不満なんだよ!
この国の男共は……
しかし、カトレア様は完治しても既に子爵だから、相手は次男以降の貴族かな?
エレオノール様は……
タフな男を探すしかないのか?
又はM男?
後は親心で、身分は関係なく好きな相手と結ばせるつもりかな?
この話題は、今後避けた方が良いかも。
僕は、卒業後にルイズと結婚する約束をしてヴァリエール家を辞した。
やっと学院に戻れる。
「さぁシェフィールドさん。
学院に戻りましょう」
シェフィールドさんは、申し訳なさそうに、そして慈母の笑みを浮かべ
「ツアイツ様。
私も主に中間報告の為に、戻らなければなりません。
くれぐれも危険な場所には、近づいてはいけませんよ」
って過保護だなぁ……
「分かってます。
まるで心配性なお姉さんみたいですよ?
シェフィールドさん」
「まぁ!
ツアイツ様の望みがそれならば、追加しておきますね。
では、2日後までには戻りますので」
優雅に一礼し転移していった。
ちっちょっと待ってー!
誰もそんな望みは、してないからー!
ガリアの王妃の義理の弟ってどんな立場なのー?
SIDEシェフィールド
そうだったのね。
ツアイツ様も、もっと早く言って下されば良いのに。
私に親切だったのは、姉になって欲しかったのね。
なら私がジョゼフ王と結ばれたら、正式にガリアにお迎え出来るわね。
王弟?王義弟?
そうだわ!
トラウマのシャルルの記憶を消して、ツアイツ様が義弟になる記憶を植え付ければ良いわ!
全く弟の存在を無くすより、すり替えた方が辻褄を合わせ易いわね。
私がお姉さん、か……
大切な旦那様と義弟が一度に出来るのね。
うふふふふ!
さて、我が主よ。
虚偽の報告をする事をお許し下さい。
最終的に、あなた様の為になるのですから。では、報告に向かいましょう!
ガリア王宮謁見の間にて……
ジョゼフは退屈そうに玉座に座っている。
「ミューズよ。
ご苦労だったな。
して、彼らの様子を教えてくれ」
「はい。
彼らは親子で、貧と巨の教祖が手を組みました。
先ずはアルビオン全土にて、布教合戦になるかと思います」
「ふむ……
では、クロムウェルは不利か?」
「そうですね。
しかし彼らはゲルマニアの貴族……
アルビオンに伝手は無く、布教活動にも苦労しています」
「くっくっく……
ブリミルの血をひかぬ蛮族扱いの国だからか?」
「しかし、商売としての販路は有るので、色々と考えてはいる様ですが……」
「そうか。
出だしは、クロムウェルが有利か」
「はい」
「楽しみよの。
胸だけで、何処まで出来る事が有るのか……
見物よの」
「はい。
余りにクロムウェルが有利に成らない様に、手配・調整します」
「そうだな……
なるだけ長引かせて楽しませろ。
どちらが予の大望を叶えてくれるか、楽しみよの」
「全ては主の、思いのままに……」
シェフィールドは深々と頭を下げた。
これで良いわ。
今はツアイツ様が若干不利、と思わせておきましょう。
我が主の幸せの為に、今は虚偽の報告をお許し下さい。
クロムウェルなど、とっくに詰みの状態なのです。
貴方様には、新しい妻と弟がもう直ぐ出来ますので……
私達は、家族になるのです!
ツアイツは、花嫁を2人ゲットした!
しかし、知らない所で年の離れた狂った義兄と、ヤンデレで危険な義姉が出来そうなフラグが進行していた!
誰も自重する様な奴は、居なかったから……