第55話
ベルスランの悩み……
お早う御座います。
私はオルレアン家にお仕えする、執事で御座います。
昨夜遅く、私の主の忘れ形見であるシャルロット様がお戻りになりました。
イザベラ様とは、最近仲直りしたのか……
以前よりも任務も軽く、此方に顔を出せる様に配慮して頂いているそうです。
奥様は相変わらずシャルロット様の事を人形と思い、膝の上に乗せて幸せそうに髪を撫でております。
先程まで……
つい先程まで、また大量のエロ本を屋敷に持ち込み、奥様に朗読させていたシャルロット様。
前回は1冊だけだったが、今回はその続編から新しいタイトルを含め20冊以上……
作品の内容自体は、男として、コホン!
その、私めも青春時代や亡き妻とのアレコレを思い出させる逸品!
なる程、ジョゼフ王が求めるだけの本でした。
あの内容を奥様のお声で聞かさせるとは……
何とも、こう……
モヤモヤした物が!
奥様の体力的な事も考えて、朗読は2冊で終わりにして頂きました。
今夜は久し振りに、花街にでも繰り出したいと思ったのですが……
残念ながらシャルロット様が、イザベラ様に報告が終り次第、また夜にお戻りになられるとの事。
我慢致しましょう。
しかし、シャルロット様もあの本を毎回持ち帰られるとは!
せめて私めにお預けになれば、荷物にならないのですが……
残念です。
SIDEエロ本担いだタバサさん
プチトロアの回廊を独り歩いて行く。
イザベラに報告したいのだが……
珍しく自室に籠もり、酒浸りだそうだ。
あの真面目な彼女が?
魔法の才能は少なくても、政務は私では適わない程の優れた面が有る彼女が……
心配だ。
彼女とは(洗脳により?)和解出来たのだから、昔の様にとは言わないが仲良くしたい。
学院の友達は、少し怖いから……
「アレ?7号殿、どうされました?」
……竜騎士団員達だ。
彼らも少し怖い。
「イザベラに会いに行く」
「ツンデレさn……
いえ、イザベラ様にですか」
「……そう。じっじゃあ」
やはり彼らは苦手。
早足で立ち去る。
イザベラの執務室の前に着いた。
護衛の兵士に取次を頼む。
「北花壇騎士団7号、イザベラに謁見したい」
年若い兵士は申し訳なさそうに……
「イザベラ様は体調不良の為に、本日の政務はお休みで有ります」
と、教えてくれた。
体調不良?
「……何処が具合が悪いの?」
と訪ねたが
「私には、分かりかねます」
と言われてしまった。
仕方なく、イザベラの私室に会いに行く。
此方の部屋の前にはメイドが待機していた。
同じ様に面会を求めるが、返事は今日は誰にも会わないとの事。
部屋の中からは、ミスタ・ツアイツを罵倒する声が聞こえるのだが……
あの洗脳本を読んだのなら、この反応は可笑しい。
「メイドー!酒持ってこーい!」
イザベラが中で騒いでいる。
慌ててメイドがワインを何本が運び込む時に、一緒に部屋へ入る。
「……イザベラ、どうしたの?」
イザベラはキングサイズのベッドの中央で胡座をかいて、それでもワインはグラスに注いで飲んでいた。
私を見て、バツの悪そうな顔をしたが
「何だい?笑いに来たのかい?」
と、自虐的に笑った。
これでは、アル中だ!
「……イザベラらしくない。心配」
「アンタに心配して貰える日がくるとはね……」
何やら深刻な顔だ。
「ねぇ?ツアイツってさ……
どういう奴なんだい?
普通じゃないのは分かるんだよ。
タカが本だけで、ウチの精鋭が骨抜きなんて可笑しいんだよ」
「……あの本は、洗脳効果が有るから」
「最早、ただのエロ本だとは言わないよ。
アレを読む男達を目の当たりにしたら、さ。
鬼才、それでもいいさ。
しかし彼は、ガリアをどうしたいんだい?」
「ミスタ・ツアイツは、ジョゼフに試練を与えられた。
今はアルビオンに対して、布教合戦になる。
ガリアには、何もしてない。
竜騎士団が、彼の本を読み傾倒してるだけ」
「本当に、それだけかい?」
「……うん」
「一度、その……
彼に会って話してみたいんだよ。
段取りをしてくれるかい?」
「しかし……危険」
「どうしても直接文句と、真意を知りたいんだよ」
普段は勝ち気なイザベラが、両手を組んでお願いしている。
「……国境近く迄なら」
「それで良いよ。
すまないね。
どうしても確認しないと不安なんだ!
ありがとう……エレーヌ」
イザベラに抱きつかれてしまった……
そっと抱きしめる。
彼女は無能王の娘として、色々言われているが、国を思う気持ちは本物なんだ。
少しお酒臭いけど……
「それで、護衛は誰n」
バタン!
「「「「お話は聞きました!
護衛は我らにお任せ下さい」」」」
そこには、複数の竜騎士団員が……
「おっお前ら……
淑女の部屋を覗き見して、只で済むとは思ってないだろうね?」
下を向いてブツブツと文句を言い始めた。
イザベラは魔法は苦手だ。
だから制裁は……
「オラァ死になー!」
ブンッ……ガゴン!
そう。
ワインの瓶を彼らに投げつけた!
「そこに列んで座れ!
大体、お前らがそうだから、私が悩んでるんだろーがー!」
竜騎士団員達に説教を始めたイザベラ!
何故か、恍惚とした表情でお叱りを受ける男達。
やはり彼らは気持ち悪い。
SIDE覗き見な竜騎士団員達
「やはりクーデレ殿とツンデレ様が集まると、萌が発生するな」
「しかし、イザベラ様はオヤジ臭いな」
「馬鹿やろう!
ほんのり赤くなったイザベラ様は、可愛いだろうが」
「あーお前は、イザベラ様派だもんな」
「僕もだ!
嗚呼……罵られたい」
「お前ら、少し黙れ!
何やらソウルブラザーに、会いに行く相談をしてるぞ」
「「「何だってー」」」
「落ち着け!って、おい!
抱き合ってるぞ!
まさか本当に、禁断の従姉妹姫な関係なのか?」
「ばっ馬鹿押すな!」
「俺にも見せろ!」
「ちょ扉が開いてしまうだろうg」
「あっ……ヤバい開いた……」
ガチャン!
「「「「お話は聞きました!
護衛は我らにお任せ下さい」」」」
王女の護衛だ!
他意は全く無いが、ソウルブラザーに会ってしまっても、問題はないからな!
この任務は譲れない……
力ずくでも成し遂げてみせるぜぇー!