第56話
竜騎士団駐屯地
緊急対策会議開催中だ!
竜騎士団団長が、徐(おもむろ)に話し出した。
「最初に良くやったと誉めておこう。
我らは、ガリア王家に仕える軍人だ!
王女からの要請には、応えねばならん」
「そうです!
我らイザベラ派に任せて下さい。
必ず任務を遂行します」
イザベラ派と呼ばれた、所謂ツンデレ愛好家は色めき立った!
「まて!
我らが恩人7号殿も、関係しているんだぞ!
我らこそ、この作戦に参加する」
チビッ子大好きクーデレ派たる、チッパイ予備軍も負けてはいない!
軍団を真っ二つに割った会議は紛糾した!
誰もが、ソウルブラザーに会いたい。
7号殿の情報では、ガリア王ジョゼフから試練を言い渡されているそうだ!
つまり彼は、ゲルマニア貴族だがガリアの為に、手を貸していると考えられる。
ならば、我らが接触し手伝える事が有るなら協力するのは……
魂の兄弟と認めてくれた彼に対し、力を貸してこそ誇り有る貴族なのだ!
「待てお前ら!
会合自体の護衛は、俺自ら指揮をとる!
人員は半数を参加させる大作戦、そして極秘任務。
分かるな、お前ら?」
「「「勿論っす」」」
「ならば力を示せ!
軟弱者は、この作戦には要らぬ」
「ヒャッハー模擬戦だー!
外へ出ろー!」
「「「うぉー!」」」
竜騎士団員は我先にと、外へダッシュして行った……
「さて、イザベラ様と……
シャルロット様。
宜しいか?」
呆然と会議を見ていた2人は我に返った!
「あっああ、すまないね。
お父様に、ジョゼフ王に内緒にして欲しいなんて、無理を言って」
「……私の正体を知って、手を貸す。何故?」
「貴女の両親の事は、聞いています。
しかし、一言だけ言わせて頂けるなら……
ジョゼフ王もまた、被害者でした。
それだけです」
「アンタは知ってるのかい?
本当の理由を……」
「ジョゼフも被害者?」
2人は思わず団長に詰め寄ってしまった。
「「教えな(て欲しい)」」
「それは……
今は言えません。」
「…………」
「…………」
「何時か教えな!
良いね」
竜騎士団団長は、無言で頭を下げた。
「それで、何でアンタは竜騎士団を上げて協力してくれるのさ?
お父様に睨まれるよ」
「我らはガリア王家に仕える軍人です。
それに男には、やらねばならぬ事が有ります。
奴らも、それを理解している。
ただ……それだけです」
「アンタ……男だね」
イザベラは感動した!
ガリア貴族も捨てたもんじゃないね!
しかし、シャルロットは毒を吐いた!
「ミスタ・ツアイツに会いたいだけ?」
「……コホン。
して、シャルロット様。
我らがソウルブラザーは、どの様な人物なのですかな?」
「お前らは……
私の感動を返しなー」
作戦は3日後!
先発として、タバサが学院に戻りミスタ・ツアイツを説得し、国境近くの森に案内する。
後発の部隊がイザベラ様を護衛し、会見の場を設ける。
参加人員と風竜は50組。
後に、イザベラ様の婿候補調べ大作戦!
とも、竜騎士団丸ごと調略大作戦!
とも、ジョゼフ王本人が面白可笑しく語る事になる。
当然、シェフィールドさんの調教……
いやいや、記憶操作後のジョゼフ王であるが。
こうして、ガリアでは3人の……
シェフィールドさん、イザベラ姫、そしてタバサの思惑を含んだ作戦が進行していた!
その頃のツアイツ君
漸く学院に戻ってきた。
もう時刻は夕食が終わってしまった時間だ。
しかし、執務室を改造したお陰で簡易キッチンが有り、ソフィアが簡単な夜食を作ってくれた。
スープパスタにライ麦パン、それにフルーツが少し。
二人前用意されたとなると、ソフィアも食べるのかな?
「ツアイツ様がお出掛けの間は、厨房で賄いを頂いてましたが、ご一緒に食べた方が何倍も美味しいです」
「それは、嬉しいな。
今回の件は、流石に疲れたよ」「それで、シェフィールドさんとロングビルさんは、どうなさいましたか?」
「シェフィールドさんは明後日には帰ってくるよ。
ロングビルさんは、暫く調べ物で帰らないかな」
「そうですか……
1人で寂しかったです」
「ごめんね。
そうだ!
今度、屋敷の皆も誘ってジェシカの店を貸し切って遊びに行こうか?」
「はい。お願いします」
「明日は、一番でオールドオスマンに会いに行くので、朝食は一緒にこの部屋で食べよう。
時間は何時も通りで」
「分かりました。
では、お休みなさいませ」
ソフィアが退室する。
とは言っても、隣の部屋なんだが。
さてと……
オールドオスマンには、何処まで説明するか。
アンリエッタ姫の件で分かったが、ああ見えて生徒の為には動く人だ。
普段はエロ爺だが……
そしてギトー先生やコッパゲール?先生も、トリステイン王国を巻き込んでの作戦を知ってしまったら。
2人とも性格はアレだが、戦闘力は本物だから。
上手く説明しないと、駒の少ないアンリエッタ姫が巻き込みそうだ。
それにアンリエッタ姫を引き込む手立ても、考えなくちゃ。
タイミングが大切だから、直ぐにどうこうじゃないけど仕込みは必要だ!
窓辺に立って外を見る。
オッパイの為に突き進んでいるが、オッパイを抜いたら国家間抗争の中心になってしまったな。
何処で間違えたんだろう?
唯、可愛いくて巨乳の女の子と、キャハハウフフしたいだけだったのに。
今では、絶世の美女、美少女を侍らせるリア厨だ!
現代だったら、某巨大掲示板に連日アンチスレが乱立するリア厨振りだ。
しかし、一度手にした幸せは失いたくない。
例え、反乱で何万人が傷付こうが、頑張って生き残ってみせるさ!
僕は双子の月に吠えた!
「そうさ!
何としても、勝ち残ってみせるぞー」
「そうですよ。
安心して、お姉ちゃんに任せて下さい」
「……シェフィールドさん。
何時も心臓に悪いです」
僕は怒ってるのだが、彼女は微笑んでいるだけだ。
「我が主には、現状こちらが不利!
と、伝えました」
「僕は怒ってるんですけど?」
「はいはい。
今夜は疲れているのですから、早めに寝るのですよ」
全く悪びれず、隣の部屋に入っていった。
ソフィアが驚いて話し合っていたが、合意したみたいだ……
そう言えば、立場は秘書だった!
忘れてた、だって護衛兼問題児だったから。
それと、ナチュラルにお姉ちゃん発言は何故?
とほほ……
また胃にダメージが溜まりそうだよ。
でも深刻に悩み、落ち込みそうだったのに、気持ちの切り替えは出来た。
では、明日に備えて寝よう。
明日は、久しぶりにキュルケやルイズにモンモランシーに会えるな!