第59話
厄災とは、まとめてやって来るモノなのだろうか?
アンリエッタ姫の表敬訪問会場を辞して、自室に向かう。
殆どの人達は、アンリエッタ姫の居るアルヴィーズの食堂に集まっている為に、それ以外の場所は静かだ。
勝手に居なくなって不敬だったかな?
まぁアレだけの人々に囲まれていては、そうそう分かるまい。
僕は、自室……
「ツアイツ君の執務室」と書かれた扉を開けた。
毎回看板の変わるコレは、誰が用意しているのか?
そして、ソフィアと談笑するワルド殿を発見した。
巨乳のソフィアさんと、和やかに話すワルド殿に違和感をバリバリに感じたが……
元々有能なのだし、いらん自信もついて女性にも慣れてきたのかな。
「こんにちは!ツアイツ殿」
「お疲れ様です。ワルド隊長、まさか本体ですか?」
「ええ。本体ですよ。別に遍在が居れば問題ないでしょう?」
「……そうですね。貴方がそれなら構いません」
「ソフィア、僕にもお茶を淹れてくれる?」
紅茶を飲んで、一息いれて、情報の交換をする。
僕が聞きたいのは主に、銃士隊の事だ。
アニエス隊長の視線が気になるんだよね。
「最近設立された銃士隊についてなんですが、どうですか?」
「彼女達は、チッパイで編成された女性達ですね。
素晴らしいですな」
「……個人的趣味ではなく能力的な、又は立場的な事です」
「はっはっは。
アンリエッタ姫の肝入り部隊ですね。
しかし我らグリフォン隊以外の連中とは上手く行ってはいないです。
所詮、平民と言う思いが強い。
ウチはツアイツ殿の影響で、素晴らしき乳に対して敬意を持ってますから」
「確かに王族直属部隊が勝手に増えては、面白くも無いでしょうね」
「そして、銃と剣では魔法に対抗出来ないだろうと言うのが、大半の評価です。
しかし女性ならではの護衛場所もあり、それなりに王宮内では認められています」
「成る程……寝室や浴室など、男性では躊躇する場所も有りますね」
「あとは平民出が殆どとは言え、美女・美少女で構成されてますから、男としては嬉しいでしょう」
「グリフォン隊の隊員の中にも、仲が非常に宜しいのも居ますか?」
「我らも何故か、アンリエッタ姫からの指名が多いですからね。
今日のような共同作戦も多いですから。
但し、恋愛迄にはいってませんよ。規律は有りますから」
「それでも共同戦線が張れて、日常会話が出来る位に仲が良いのですね」
なんだろう?
原作よりも良い関係を築いているな。
良い事だけど。
「それと……
アニエス隊長が、僕を見る目に敵意を感じるのは何故だか分かりますか?」
「……申し訳有りませんが、銃士隊はツアイツ殿を敵と見なしています」
「…………なんでですかー?」「彼女等は、皆チッパイですよ。
巨乳信奉派の尊敬を一身に集める、巨乳教祖の貴方に好意を持て、と?」
「悲しいけど、現実的に納得です」
そうだよなー。
普通に胸の豊かで無い人達には、僕は敵で変態か……。
「でもアニエス隊長の目線は、特に痛いのですが……」
「我らは、バストスカウターを持ってます。
すなわちアンリエッタ姫のスリーサイズは把握してます。
アニエス隊長は護衛として浴室内まで、つまり姫のスッポンポンを見てる訳でして……」
「バストスカウター……
ワルド殿も標準装備なのですね?」
「当然でしょう。
まだハルケギニア全土でも数人のレアなスキルですが、サムエル殿も持ってますし」
「僕らって、ハルケギニアの常識から外れてるのかな?」
「…………」
「…………」
「そうですね。
選ばれた紳士達ですから……
我が隊の何人かは、目覚めつつある者もいます」
お前ら、そんな所までエリートなのかい!
「それで、アニエス隊長の敵対心とは?」
「アニエス隊長は、自分を引上げてくれたアンリエッタ姫が巨乳になりたくて、貴方に接触してる事が気に入らないのが一つ。
それと、どうにもアノ女は……
我らと近くて異なる趣味の持ち主です」
「近くて異なる趣味?」
「おにゃの子大好きな感じがします。
つまり同性愛好者ですね」
「えっと……
恩人のアンリエッタ姫が大好きで、巨乳に成るのは反対だし、なってウェールズ皇太子と結ばれるのも嫌だし、原因の僕はもっと嫌いだ?」
「大筋そんな感じですね。
私も最初に詰問されましたが、心に決めたチッパイ女性がいると言ったら、大人しくなりました」
「……有難う御座います。
どう考えても関係修復は無理だ!」
ワルド殿は、紅茶を口に含み、一息入れてから急に真面目な顔をして
「それと、どうしてもツアイツ殿に確認したい事が有るのですが……」
と、言ってきた。
ミス・タバサの事だな、と思いきや
「このワルまに出てくるキティのモデルとは、誰なのですか?気になって夜も眠れません」
そっちかー!
「ワルド殿はミス・タバサを諦める?で宜しいですか?」
「違います。
しかしこの女性が実在するなら、どうしても会ってみたいのです」
んー性格と名前は、ネギま!から借用したけど、ロリっ子吸血鬼なのは……
外伝のエルザだ!
今なら、ガリア南東のサビエラ村の村長宅に潜り込んだ時期かな?
「ワルド殿は、亜人をどう思いますか?
オーク鬼とかでなく、エルフや翼人それに吸血鬼など、人の姿に近く自己を持ってる相手を」
「それが、関係すると?」
「そうです。
その回答によっては教えられません」
ワルド殿は、フッと渋い笑みを浮かべて
「ツアイツ殿。
僕は復讐に凝り固まった頭をあなた方親子に、解してもらいました。
今では貴族、平民などの身分にも囚われない大いなる思想の(イエス・ロリータ・ゴータッチ!)元に歩んでいます。
意思の疎通が出来るなら、種族など小さな問題でしょう」
このワルド、無駄に格好良い!
一瞬そこに痺れそうになったし、憧れそうになりかけた……けど。
しかし直訳すれば、美しいロリっ子なら何でも喰える男なんだよ僕は!
と、宣言しやがったんだよ。
話を聞いていたソフィアが、尊敬の眼差しで見詰めている。
それは、間違った評価だぞ!
「分かりました、教えましょう。
ソフィアは席を外してくれ。内容が危険だ」
ソフィアを下らせ念の為、デティクトマジックとサイレントとロックを掛ける。
そこまでの内容なのかと、ワルド殿も真剣な表情だ。
「良いですか。彼女はエルザ。
エターナルロリータである、5歳の外見を持つ美しい吸血鬼です」
「なんと!
永遠のロリっ子が実在するのですか?」
僕は黙って頷く……
「して、会えるのですか?居場所は?」
興奮し矢継ぎ早に質問をしてくる。
「それを聞く前に、ワルド殿はどうしたいのですか?
吸血鬼ですから成長はしないけど、実年齢は年上かも知れませんよ」
「合法ロリっ子ですね。
素晴らしい……
そして永遠のチッパイ少女!」
駄目だコイツ、早く何とかしないと。
「つまりは、ハルケギニア的には敵対種族なのですよ?」
「愛に種族は関係ないのです。
巨乳派のツアイツ殿には慎重に対処する問題でしょうが、我らチッパイ派には微々たる問題です」
駄目だコイツ、自分の影響力を考えろよ。
既に会いに行くのが決定な顔だが、現状はガリアに不法入国とか刺激したくない。
「ツアイツ殿、是非そのエターナルロリータに会わせて下さい」
内容はアレだが、真剣な眼差しで語り合う2人。
窓の外ではミス・タバサがガリアから帰ってきて、イザベラの件を相談しようとフライで浮いていた。
会話はサイレントの影響で全く聞こえないが、真剣な表情で話し合う男達を見て、きっとこれからの事を話し合っているのだと思ってしまった。
邪魔してはイケナイ。
タバサは時間を潰してから再度、訪れようと思い自室に向かった。
実際は、エターナルロリータに早く会わせろ、口説きたい!
いや少し待て、今は未だ時期じゃない!
と、とても内容を教えられない攻防戦を繰り広げているのだが、表情だけ見れば真剣その物だったから……