第60話
自室に戻り、タバサは思考に耽る。
ベッドにうつ伏せに寝っ転がりながら、先ほどのシーンを思い出す。
二人とも真剣な顔で、話し合っていた。
きっと、これからの件なんだろう。
ジョゼフの試練について、対応の詳細迄は聞いてないが、状況は厳しいのかも知れない。
私に、彼らを手伝う事が出来るのだろうか?
仰向けになって、天井を見詰める……
ミスタ・ツアイツのお陰で、イザベラとは仲直り出来た。
竜騎士団という、余計な変態連中の助力も得られた。
しかしお母様については、洗脳本でも効果が出ない。
やはり一度薬で壊された心は、治らないのだろうか?
コンコン「タバサ居るぅ?帰ってるんでしょ?」
ビクッとしたが、ルイズの声と分かり、鍵を開けようと扉に近づいたが
「アンロック!」
と、キュルケの声が聞こえて扉が開き、部屋の中に入ってきた。
キュルケ・ルイズそしてモンモランシー、最近出来た私の友達……
何故か、手にお酒やら、お摘み類を持っている。
「……何?」
「「「何って?パジャマパーティーに決まっているでしょ」」」
それからは、カオスだった。
彼女らは……
様は、ミスタ・ツアイツとの婚姻が決まった事や、モンモランシーの実家の復興に目処がついた事。
それらを何時もとは違うメンバーに、自慢したかったのだ。
……正直ウザイ。
キュルケは私を膝の上に乗せて、頭をグリグリしたり、抱き付いて巨大な肉の間に埋めてみたり。
嫌なのだが嫌でなく、何故かお母様の匂いがした。
散々飲み食いして、部屋を汚した後、彼女らは私のベッドを占領して寝てしまった。
私はキュルケに両腕で腰を抱えられており、どうにも脱出不可能だ。
イザベラが来るのは明日の夜だから、今日はこのまま寝てしまおう。
……何時からだろう?独りで寝始めたのは。
……何時以来だろう?人肌を身近に感じたのは。
頭の後ろの、二つ山の肉マクラが鬱陶しいと感じながらも、気持ちよい睡魔が襲ってきた。
久しぶりにこの言葉を紡ぐ。「……おやすみなさい」
SIDEツアイツ
結局、ワルド殿のド・ゲ・ザに根負けして情報を教える事になった。
しかし、会いに行くのはジョゼフの試練を乗り越えてからと約束させて……
近衛の隊長が、一介の学生に土下座なんて見られたら大問題なのに、全然気にしてない素振りだ。
父上の再教育は失敗だったんだろう。
あとの確認事項はアルビオンに潜入しているロングビルさんだが、護衛の遍在は無事だそうだ。
まだ時間も経ってないのでそれほどの成果はないのだが、無事を確認できて良かった。
サイレントを解いて、ソフィアにお茶のお代わりを頼んで一息付く。
最近は、紅茶ばかりだ。
昔は炭酸系が好きだったのだが、この世界に来てからはワインか紅茶ばかり。
しかし、エルザをどうやって引き合わせるかな?
そろそろ村長に引き取られている時期だけど、一面識もないのに吸血鬼だよね?
とか話すのは……無理だ。
保護を全面に出す?
この辺は要検討だね。
ワルド殿はご機嫌で帰っていった。
気付けば、そろそろ就寝時間だ。
今夜は、シェフィールドさんの転移襲撃も無かったしゆっくり寝よう。
色々有ったが、静に夜が更けていく……
アンリエッタ姫滞在用の貴賓室にて
其処にはナイトガウンに着替えたアンリエッタ姫と、相変わらずの軽装鎧をきっちりと着込み帯剣しているアニエス隊長が直立している。
「アニエス隊長、私はそろそろ寝ますので、貴女もお休みなさい」
「はっ!有難う御座います。
しかし魔法学院とは言え、注意が必要です。
特に此処には、ゲルマニアの悪の教祖がいますから」
「ミスタ・ツアイツは、私に危害を加えません。
落ち着きなさい」
「しかし……
想像を超えた変態です。安心も油断も出来ません」
「ふう。
兎に角、明後日までは滞在するのです。
初日に気張っては最後まで持ちませんよ」
「大丈夫です」
「ワルド隊長以下、グリフォン隊も護衛に当ってます。
何か有った時の為に今はお休みなさい」
「……はい」
全く融通が利かないのですが、真面目で忠誠心も有りますから良い隊長なのですけど。
こうもツアイツ殿に敵愾心を剥き出しにするのは、何故なのかしら?
彼は私の協力者なのに……
まぁ良いわ。
今日はミスタ・グラモンやミスタ・ロレーヌなどの男子生徒ばかりの有力貴族の子弟等とお話が出来ました。
明日はルイズやミス・モンモランシーなどの女生徒達とお話しましょう。
ミスタ・ツアイツともお話したいのですが、無理に接触してトリステイン貴族達から不満を持たれても仕方が無いわね。
さて、寝る前に日課をこなしましょう。
入念にディテクトマジックとロックを掛ける。ルイズに習った豊胸体操を始める……
一国の王女が、両手を振り回したり胸を持ち上げたり……
30分ほど実施して終らせ、サイドテープルに置いてあるミルクを飲んで一息つく。
この体操のお陰か、まだ数週間ですけど、バストサイズが0.5cm程大きくなりました。
そしてウェストが引き締まった気がします。
これだけの効果を発揮する画期的な体操なのに何故、出し惜しみするのかしら?
いえ……
効果が有るからこそ、例えトリステインと戦争になっても守ったのね。
成る程、確かにアカデミーで研究させたら多くの貴族婦人から問い合わせが殺到するし、お金に糸目をつけない方も居るわね。
これを無断で研究と言うのは、確かに不味かったわ。
ルイズは他にも食事療法も教えてくれたけど、こちらの実践は無理でした。
王宮料理人にもメニューの問題や、プライドが有るのでしょう。
但し、欠かさず乳製品は飲んでいます。
これで巨乳化の見通しは立った!
あとは努力次第だが、必ず数ヶ月で一端の巨乳になってみせるわ!
でも、これで安心しては駄目ね。
ウェールズ様を射止める為には、更なる一手が欲しいのだけれども……
こればかりは、直ぐには思い浮かばないわね。
ルイズに相談してみようかしら?
既に大人になってしまった彼女なら、良い知恵を考えてくれるかもしれないわ。
それに恋愛については、やはり年頃の女性達に意見を聞きたいし。
恋バナとは、どんなに身分に違いが有れど、基本は一緒ですから。
明日は楽しくなりそうね。
さて、お肌に悪いからそろそろ寝ましょう。