第61話
オリヴァークロムウェル暗躍中!
アルビオン北部のブリミル教会の一室で、クロムウェルは一人ニヤけていた。
周りには、金貨の詰まった皮袋が幾つも置いてある。
シェフィールドが宛がったものだ。
30万エキュー!
強欲なブリミル教の司教で有る彼でさえ、見たことも無い大金だ。
平民出身の彼は魔法が使えないが、魔法絶対主義のハルケギニアにおいても、ブリミル教の権威は絶大だ。
弱小貴族などは問題も無く、ある程度の力有る貴族でも異端をチラつかせれば黙り込む。
まさに、ブリミル様々だ。
欲しい物が有れば、それと無く言えば寄進してくれる。
しかし大半の善意の金は、私が上に登る為に消えていく……
上には上の悪党が居るのが、ブリミル教で有りロマリアなのだ。
自分自身、司教まで登り詰めたがそれ以上となると、更に莫大な金を使わなければならないだろう。
そんな、向上心が衰えた時に、あの女が自分の前に現われた。
隠してはいたが、無類の女好きの自分は戒律では宜しくない淫行を秘密裏に楽しんでいた。
ブリミル信者の女性を強引に口説いていたのがバレたのだろう。
シェフィールドと言う女は、お金は幾らでも用意するのからと、アルビオン転覆の話を持ちかけてきた。
ブリミル教の権威と、潤沢な資金。
それと、美乳派という最近流行の貧乳や巨乳に対抗すべく教義も考えた!
諦めるな、全ての乳は美しくなる可能性がある!
大きさに囚われない美しさを磨こう!
などと、根拠も無いけど、語呂が良い事を優先して。
現アルビオンのジェームズ王は、自他共に認める巨乳派で有り、その他の乳を認めない!
そのような、不条理な王家など打倒して、自由な乳を楽しめる世界を作ろう。
スローガンは、それなりに掲げるが、実際は金と利権、アルビオン征服後の、役職の空手形で釣った貴族達だ。
彼らには、存分に働いてもらう。
私が、神聖アルビオン王国の盟主となる為に、美乳派教祖となり貧から巨の美しい娘達を侍らすのだ!
アルビオン全土の美女・美少女は全て私の物だ。
あーっはっはっはー!
笑いが止まらぬとは、この事よ。
既に北部の伯爵に狙いを定めている。
彼は、中央に疎まれて僻地の飛ばされた、言わば無能と出世レースに敗れた負け犬だ。
甘い言葉と、金……
あとは、美人信者を宛がう。
そして宮廷貴族に返り咲く事を約束すれば、ホイホイと付いてくるだろう。
コイツの取り込みに成功すれば、これからの取り込みにも見通しがたち、楽になるだろう。
アルビオンを征服したら、次はトリステインだ!
彼の心の中で、黒い妄想が広がっていく……
SIDEツアイツ
おはようございます。ツアイツです。
今朝のアルヴィーズの食堂も、盛り上がっています。
何と言ってもトリステインの華である、アンリエッタ姫と食事を共にしている訳ですし、昨日の会合で話す事の出来た者。
今日こそは!
と、決意を燃やす者など、色々な連中の思惑が渦巻いています。
そして、今日は珍しくミス・タバサが僕たちのテーブルについています。
マリコヌルと競うように、朝食をほお張る姿は小動物の様に可愛らしいのですが、何故か僕の料理にも手を出してきます。
僕のオムレツに二人でフォークを突きつけ様とし、お互い火花を散らしています。
マリコヌルも男なんだから、ミス・タバサに譲ってあげれば高感度が上がるのに……
「二人して僕の食事を宛てにしないてくれ!」
そう言いつつも、二人の皿に料理を分けてよそってあげる。
見かねたメイドさんがマルトーさんに連絡したのか、新しいオムレツとベーコンが追加されました。
メイドさんが、「お父さんみたいですよ」と笑いながら新しいお皿を置いてくれた。
こんな大食いが、子供達だったら我が家のエンゲル係数はどうなるんだ?
因みにワルド殿は、ハムハムタバサ殿の愛らしい姿に釘付けになってますが、マリコルヌに対しては、敵愾心は無さそう。
アレの本質を見抜き、Sじゃなければ安心と理解しているのか?
食事が終わり、アンリエッタ姫も退出したせいか、食堂に残っている人数は少なくなってきた……
散々、食べ散らかした後で、この子は爆弾を投下してくれました。
「ミスタ・ツアイツ。今晩、国境近くの森でイザベラが会いたがっている」
「……はぁ?何故?」
一国の王女が、夜中に他国の貴族と会いたいなんて……
彼女もアンリエッタ級の困ったチャンなの?
「……文句と、真意が知りたいって」
「えーと、それって拒否権は?」
「……お願い」
気が付けなかったのだが、お願いするミス・タバサの後ろにお願いと言う脅迫の篭った目をした、ワルド殿が立っていた。
何時の間に?
「ツアイツ殿、良いではないですか。私とシェフィールドが護衛に付きますから、お願いします」
「……分かりました。同行しましょう」
了解すると、ミス・タバサは安心した様に、小さく息を吐くと
「……では、今晩部屋に迎えに行く」
と、言って離れて行った。
ルイズ達は、アンリエッタ姫の会合に呼ばれていた為に、聞かれなかった。
モテナイーズ連中も、アンリエッタ姫の取り巻きの様に行動を共にしていたので問題ないだろう。
しかし、文句とは……
アニエス隊長に続き、イザベラ王女にまで嫌われているのかな?
心当たりが有り過ぎて正直凹んだが、自業自得な当たり前なので諦めた。
なるようになるさ!
SIDEルイズ&モンモランシー
アンリエッタ姫、恋バナが炸裂す!
こちらは、場所をテラス席に移し、食後のお茶とお話を楽しむべく女生徒を集めたお茶会が始まっていた。
ルイズにモンモランシーや、名の知れぬモブな女生徒達がアンリエッタと恋について語り合っている。
「私は、例え話ですが……良いですか!例え話ですよ。
天空に住まう、高貴なお方に恋をしている地上の姫が居ます。
しかし、そのお方には……大きい(オッパイが良い)望みが有りました。
その彼の望んだ事(巨乳化)を実践し、漸く成果も出てきた地上の姫は、それだけでは駄目だと気付いたのです。
更なる高みへの一手が欲しいのです。
皆さんなら、その場合どうしますか?」
アンリエッタは真剣な表情で、周りの女生徒に問いかけた。
「ルイズ、ヤバくね?これってウェールズ皇太子とアンリエッタ姫の事だよね?」
モンモランシーがルイズに、周りに聞こえないように小さな声で話し掛けた。
「てか、巨乳化に成功しつつあるから、ダメ押しが欲しいって事ね」
ルイズもコソコソと答える。
「「国家的な婚姻を恋バナで暴露しやがったよ、この女!」」
このバレバレな恋バナで、アンリエッタ姫がウェールズ皇太子狙いと言う事が、トリステイン全土に広がるのは時間の問題だ!
そして、アンリエッタ姫は着々と既成事実と外堀を埋める作戦を進行していった。