第64話
ガリア王国、国境周辺の森の中……
周囲には夜間飛行だが、警戒の風竜が旋回し、地上でもガリアの精鋭騎士団が周囲を巡回している。
全員がトライアングル以上の使い手達だ!
一際大きな風竜……
ブリュンヒルデを従えた、竜騎士団長は警戒態勢に不備が無いか確認している。
隠密行動では有るが、ここにはガリアの王位継承第一位のイザベラ王女が……
凄く不機嫌な、そして不安げな顔で隣に急造させた椅子に座っている。
まだ、我らがソウルブラザーは来ない。
待ち合わせの時間迄は残り僅かだ……
この美貌の王女を見ながら考える。
周りからは、無能王の娘と陰口を叩かれ自身の魔法についての能力も低い。
あのジョゼフ王は、好き勝手しているが国政は順調に動いている。
しかし……
細かいしわ寄せは、全て彼女に覆い被さってくる。
この皮肉屋で口の悪い、美しい少女。
しかし、ガリアと言う国の中では一番国を思っているのも彼女だ。
私は過去に、シャルル派として東花壇騎士団に所属していた。
既に、風のスクエアだった私にシャルル様は近づいてきた。
最初は自分が王位を継ぎたい為の、取り込みだと思った……
当時は、魔法の苦手なジョゼフ殿よりも、稀代の天才と言われたシャルル殿の方がガリアにとって有益かと思っていたのも事実だ。
しかし、毎夜繰り広げられる悪夢の宴の秘密を知ってしまった。
私は当時、たまに王宮で見掛ける美しい女性に心奪われていた。
何処となく、シャルル殿の面影を感じさせる美しさは、彼の親戚筋の貴族令嬢だと思い、身分違いの片思いに身を焦がしていたのだ。
それが……
この男の純情が……
あの腐れ変態野郎の女装だったとは……
私は、シャルル派閥から抜け出す為に東花壇騎士団を辞した。
暫くして、ジョゼフ王が即位し腐れ変態野郎を抹殺し、彼の変態仲間達が粛正されたと聞いた。
思わず、拍手喝采したものだ。
しかし、抜け出したとは言え一時はシャルル派に身を置いた私だ。
追跡の手は、免れられなかった……
ジョゼフ王の前に引き出され、彼に問われた!
「貴様もあ奴と同類か?と……」
思わず、相手はガリア王なのだが
「ふざけるな!
あんな変態野郎と、同列視するんじゃねぇ」
と言ってしまったが、スッキリとしたのも事実だ!
どうせ粛正されるにしても、変態野郎の仲間としてでなく、王に反逆した男として散るつもりだ!
しかし……
ジョゼフ王は、大笑いをして私を許し風のスクエアならこれ位は御してみよ!
と、竜騎士団長を任命した。
その時理解した。
嗚呼……
彼もアレの被害に遭ったのだな、と。
一介の下級貴族だった私が、エリート集団で有る竜騎士団のトップになるなど、大変だった。
しかし何とか団員に認めて貰い、仕事も軌道に乗ってきた。
人間とは不思議な物で、忙しい時は忘れていたが余裕が出来ると、色々考えてえしまう。
初恋が、あの様な悲惨な体験で終わってしまった為に、自分にはマトモな恋愛など出来ないだろう……
一騎士団を率いる自分の悩みは、こんな下らない物だった。
その時だ!
ミスタ・ツアイツの著書に出会ったのは。
彼の紡ぎ出す恋愛の世界は、あの変態野郎の性癖など忘れる位に素晴らしい突き抜け方だった。
これだよ!
真の漢とは、これ位の恋愛観が必要なのだ!
そして、彼の著書を貪る様に読んだ。
シャルルの女装と正反対の儚いロリッ子趣味に目覚めてしまったのは……
まぁ、必然だったのだろう!
新しく生まれ変わった、この俺の活躍は、これから始まるのだ!
ソウルブラザーとの会合は、私に新しい世界w
「……団長?
宜しいですか団長?」
部下の呼び掛けに、現実世界に引き戻される……
「どうした?」
「はい。
前方に、フライで移動中の7号殿を確認しました」
「他には?」
「少し後ろに、同じくフライで近づいてくる男が1人……
それと馬ゴーレムに乗り移動する男女が居ます」
ふむ……
先導するシャルロット様と後ろに3人か?
「よし!分かった」
隣のイザベラ様を見る。
「いよいよですな。
準備は宜しいですか?」
イザベラ様は私をじっと見詰めて……
もう少し幼い感じならドストライクなのだが、私の魅力に気付かれたのだろうk
「アンタ、さっきの妄想顔は気持ち悪かったよ。
しっかりしな」
「……顔に出てましたか?」
思わず聞いてしまった!
「あのニヤケ顔は……
どうせエロい事を考えてえいたんだろ?
今日こそアンタ等とツアイツを矯正させるからね。
ガリアの為に!」
……イザベラ様もソウルブラザーの素晴らしさを叩き込んだ方が、ガリアの為だろうか?
「ダンチョー!
警戒範囲内に入りやしたぜー」
私は周りを見渡し号令をかける!
「よし!
お前ら、失礼の無い様にお迎えするぞー!」
「「「ヒャッハー!了解っすー!
みんなー整列するぞー」」」
「「「ウォー!」」」
団員達の天を衝く覇気は素晴らしい!
整然と整列をする、我が騎士団達よ。
これぞ我がガリアの精鋭達だ!
「ちがーう!
お迎えじゃなくて警戒しろーバカー!」
竜騎士団員達は皆、思った……
今夜はツンデレ様のツンが絶好調だなぁ……と。
何だかんだと、団員の半数はイザベラ様派で有り、彼女のツンはご褒美なのだ!
彼女は、王族故の美貌もカリスマも備えている。
若干、対象がアレな男達だが……
彼女の為なら体を張る事の出来る、本物の漢達を信者として従えていた!
その数は今回作戦参加の50人中、35人がイザベラ様派だ!
つまりは、ツンデレ好きですね。
残りはロリッ子、クーデレ、巨乳派の混成軍団だ!
一流の変態達です。
そして遂に、この変態と言う紳士達と、現代知識を備えた究極変態が出会ってしまった……
整然と整列する漢達の前に、先ずはミス・タバサが着陸する。
彼女を見詰める熱い視線に恐怖を覚えたタバサは、一直線にイザベラに駆け寄り抱き付く!
最近になり、人肌の暖かさが落ち着く事を覚えたからだ。
周りの騎士団員が
「「「ウォー!モエー」」」
と盛り上がり、イザベラが真っ赤になって引き剥がそうとする。
既にグダグダなカオス……
そして、ワルドを従え美女と一緒に馬ゴーレムに乗ったツアイツが現れた!
彼らは有能故に、ワルドの実力及び性癖も理解出来た。
そして、流石はソウルブラザー!
大国の王女に会うのに、この一流の変態を従え、美女に後ろから抱き付かれながら来るとは!
そこに痺れるし、憧れてしまった……
やはり、真の漢は一味も二味も違うのだな。
ソウルブラザーは、馬ゴーレムを降りてゆっくりと近づいてくる。
こちらは、ダンチョー自らが、進み出る。
視線を交わす2人。
見守る団員達……
「初めまして。
ソウルブラザー!
私は、バッソ・カステルモール!
竜騎士団を率いています」