第67話
「貴様、何だ?その本は?」
変態と言う紳士達の……
ツアイツとイザベラの会合とは、別の話が進んでいる。
男の浪漫本の最新刊を全て揃えているカステルモール団長!
一歩出遅れたワルド。
しかし、ワルドには死期回生の二冊の切り札が有った……
自慢げに埃を払った「ワルま1」を見せる。
「これは、私とツアイツ殿との絆の証!
ハルケギニアで、これだけしか無い。
オンリーワンな逸品!
私と……
とある場所に実在する、エターナルロリータとの物語だ!」
立場は逆転した!
驚愕の顔で、しかし速攻「ワルま1」を奪い取り読み出すカステルモール……
本を持つ手が震える。
「なっなんて事だ……
伝説の人物や過去の英雄以外で、この様な……
この様な、素晴らしい作品の登場人物になれるとは」
「ワルま1」を群がる竜騎士団員達に渡すと、カステルモール団長は膝をついた。
「くっ……
不本意だが、本当に不本意だが……
負けを認めよう。
こんな国王でさえ、英雄と呼ばれなければ無理な、自分の登場する作品を持ってるなど……」
跪いて慟哭する、カステルモール団長の肩に手を置いてワルドが、悪魔の囁きをする。
「ツアイツ殿は身内には寛大だ。
寛大過ぎる位に……
私もかつて、巨乳教祖たる彼に貧乳信奉者として反発した事が有った。
若気の至りだな」
「なっなんと!
敵対していたのか君らは?」
「そうだ。
しかし、ツアイツ殿は相反する思想を持つ私に……
いや相反する所か、彼の懐の深さに心酔してしまったのだ。
彼の深遠は、そのジャンルの深さだけでなく、全ての乳の元に集え同志達!
と言う、漢達の永遠の夢の具現者なのだ」
「なっなんと壮大な理想を掲げるのだ……
ロリっ子大好きなど、ほざいていた矮小な自分が恥ずかしい」
ワルドはカステルモールの手を取り、立ち上がらせると
「国は違えど理想は同じ!
どうですか?
貴殿もツアイツ殿の下に馳せ参じては。
さすれば……
カステルモール殿のロリータハーレム物語も間違いなく」
悪魔の囁き……
変態として、これ以上の誘惑はないだろう。
「うぐぐぐぐ……
私にはガリアと言う国に愛着が……
しかし、漢としての夢を失う事は死ぬ事と同じ……」
カステルモールは真剣だ。
こんなに悩んだのは、変体野郎の魔の手から逃れる為に、東花壇騎士団の地位を手放した時以上に……
「カステルモール殿……
実は、もう一冊有りまして、これです」
ワルドはダメ押しに「ワルま2」を懐から出して彼に見せる。
「なっ!
何だと、2冊もだと……
しかも、連載小説風等と言われれば、まだ作品は続くのか」
己の理想が、作品として、自分の活躍が続けて作品になる。
漢として、これほどの幸せは少ないだろう。
しかし、カステルモールも芯の通った漢だった……
「すまない。ワルド殿……
いや、貴殿もソウルブラザーと呼ばせて欲しい。
しかし、私はこのガリアと言う国が好きなのだ。
それに残念だが、私がゲルマニアに降ればガリアも黙ってはいまい」
「そうですな。
私と違い、ガリアに所属する貴殿では、影響力が違いますな。
しかし、所属する国は違えど、理想は同じ。
我らは理想を同じくする同志では有りませんか!
カステルモール殿」
ワルドは、カステルモールと握り合った手に力を入れる。
「国は違えど、我らはツアイツ殿の元に集う仲間ではないですか!」
「おお……ワルド殿、いや同志ワルドよ」
硬く手を握り合う2人。
ここに、風の魔法を極めたスクエア戦闘系メイジの信者コンビが生まれた瞬間だった。
「……して、ワルド殿。
私も陰ながら、ツアイツ殿の手伝いをしたいのだが……」
「我らは風を極めし者、つまり……
遍在ですよ、カステルモール殿」
カステルモールは、そのような遍在の使い方が思い浮かばなかった為に、目からウロコの状態だ。
「成る程、遍在をツアイツ殿の手伝いとして派遣するのですな?」
「そうです。
まぁ私の場合は、遍在が政務をこなし、本体が手伝いますが……」
ニヤリと不敬な事を暴露するワルド。
「それは、流石と言うか何と言うか……」
カステルモールも、流石に其処までは割切れなかった。
イザベラとシャルロット、それにツアイツとシェフィールドの注意が、他に向いている間に
2人の変態と言う紳士の会合も又、終ったのだった。
ツアイツは強力無比なヤンデレと、風のスクエア変態コンビを傘下に加え、レコンキスタに挑む事となる。
しかし、竜騎士団員達は、全ての話を聞いていた。
具体的には、エターナルロリータと、自分が主人公なエロい本を書いて貰える事。
しかし、団長が自重した為に、彼らもあと一歩を踏み出す事は止めていた。
そして、2人の際立った変態が、手を取合った事に対して喝采を浴びせるのだった。
「「「「「ウォーダンチョー!
我らもお手伝いしやすぜー!」」」」」
決意を新たに、竜騎士団員達の雄叫びが、深い森に響き渡った……
さて、そろそろお開きの時間だ……
ツアイツもタバサも学院の生徒だ。
授業をサボる訳にはいかないし、今学院にはアンリエッタ姫も居る。
余計な騒ぎは起こしたくない。
ツアイツは群がる竜騎士団員達と握手を交わし、終始歓迎ムードの中、イザベラ姫との初会合を終えた。
竜騎士団員達は、更なるソウルブラザーへの憧憬を高めたが、一番はワルドとカステルモールの義兄弟イベントだろう。
イザベラ姫は、この会談でツアイツの真意を確認出来た。
満足な会合で、ツアイツにシャルロットとジャネットを押し付ける事で意趣返しも出来た。
しかし蓋を開けてみれば、よりツンデレなイザベラ派の結束が高まった事。
彼らがパワーアップした変態紳士とかし、彼女をツンデレを信奉する漢達の結束が固まったのだ!
そして二大変態が、意気投合し問題の種が増えた事。
竜騎士団全体が、より一層の漢達と言う変態紳士にレベルが押し上がった事を考えると……
早まったのかもしれない。
何時までも、手を振りながらソウルブラザーを見送る竜騎士団員達を見ながら、イザベラ姫は一人ため息をついた。
「やっぱり、こいつ等を連れてきたのは間違いだったかねぇ……」
彼女の苦労は、減る事は決して無いだろう。
イザベラ、ファイト!