第68話
暗き森の中を馬ゴーレムにより疾走しながら……
自分の背中に当たるシェフィールドさんの双子山から、意識を反らせながら思考に耽る。
先程までの、イザベラ姫との会合……
あのジョゼフ王の娘であり、原作ではタバサを苛め、且つ自身の立場を悲観し周りに八つ当たりしていた彼女が!
王族として一流だった。
しかも、中々の巨乳美少女だし、からかい甲斐の有る生真面目な性格だ。
ミス・タバサの懐き振りと、アルコール依存症と見受けられる事が心配だ。
もしや、悩みやストレスを酒で紛らわせてないだろうか?
僕は、自分の趣味で動き、ストレスとて理不尽カリーヌ様とヤンデレなシェフィールドさんが主な原因だが……
彼女は国の為に動いているので、根本的に違うのだ。
そうだ!
胃薬と最新のマトモな著書を贈ろう。
ジャネット連絡員が来た時にでも渡そう。
前方をミス・タバサと併走して飛ぶワルド殿を見て考える……
彼は、カステルモール団長と竜騎士団員に囲まれて、何やらやっていた。
カステルモール団長が膝を付いていたり、竜騎士団員達の歓声を考えると……
同じ趣味人として、分かり合えたのかな?
2人共、風のスクエアだし……
ワルド殿と意気投合するとなると、彼もロリっ子大好きか……
彼を主人公にした作品を一冊贈って、イザベラ姫の力になる様にお願いしようかな?
ロリっ子大好き貧乳派なら、タイトルは……
「リリカルカステル」
とか?
魔法少女大好きっ子なら、喜ぶよね。
お姉さん大好き巨乳派なら
「真・カステル無双」
とか、喜ぶかな。
SIDEその頃の竜騎士団員達……
周辺の片付けを撤収準備をしながら今日の出来事を語り合う。
「流石は、ゴッド・ツアイツ殿だな。
あのローブの美女って、ジョゼフ王の側近の怖いネーちゃんだろ?」
「ああ……
ジョゼフ王のシャルル派粛清の時に、暗躍した黒衣の魔女だよな?」
「あの危険人物が……
あんなに穏やかな笑みを浮かべるとは、最初は別人かと思ったぜ」
「やっぱ、ソウルブラザーは違うな!」
「しかし、ゴッド・ツアイツが巨乳派教祖だとは知らなかったぜ」
「いや、違うだろ。
団長と閃光殿の話では、大いなる乳の元に集え!
だらか、全ての乳を網羅していると見るべきだ」
「「「「「スゲーぜ!
ソウルブラザー!」」」」」
「我らも、手伝わなくて良いのか?」
悩み混む団員達……
「先ずは、撤収してから考えよう」
「そうだな……
次の竜騎士団会議の議題は決まりだ!」
「「「「「意義無し!」」」」」
そして、真夜中の饗宴は何事も無かった様に終わった。
SIDEイザベラ
帰りの竜籠の中で思考に耽る……
全くエレーヌの奴、何でまた抱き付き癖なんか出来たんだい?
思わず、昔の事を思い出すじゃないか……
あんな関係には戻れないかと思ったが、案外壁を作ってたのは私だったかね?
まぁ良いよ。
ツアイツか……
見てくれは、色男だし得体の知れない情報収集能力を持ってる。
それに、自分の思想の為に関係無い他人を巻き込む容赦の無さ。
それでいて、相手に損だけじゃないのか始末に負えない。
バッサリ悪と割り切れない、何処か憎めない奴だったよ。
それに、シェフィールドの態度……
あんな表情は見たことないね。
ツアイツに懐柔されたのかい?
まさか、ね……
それと何故、私まであんな我が子を見る様な目で見るんだい?
益々、分からないよ。
※義理(になる予定)の娘を見る眼差しです。
兎に角、注意は必要だ!
予感だが、本当に嫌な予感は当るのだが……
アイツに係ってしまったら最後、苦労が舞い込む予感がする。
頬に当る夜風を感じながら、これからの事に不安が一杯のイザベラだった。
彼女の予感は直ぐに当る事となるのだが……
全く、これでまたアルコール消費量が多くなるじゃないか!
独り酒も、そろそろツマラナイんだけど、誰か飲み仲間が欲しいね。
特に、黙って愚痴を聞いてくれるような奴がさ。
トリステイン魔法学院
深夜、いや既に早朝に近い時間にやっと部屋に戻れた。
既に、早番の使用人達の働き出した気配を感じる。
アンリエッタ姫が滞在しているので、彼らも大変だろう。
「んー2時間位は寝れるかな?」
ツアイツは自室に戻り、シェフィールドさんは隣の部屋に
「では、おやすみなさいませツアイツ様」
と引上げて行ったので、少し仮眠を取る事にする。
流石に強行軍だったので疲れた……
たしか、今日がアンリエッタ姫の滞在の最後の日だ。
何事も無い事を祈りながら眠りについた……
………
……
二時間程仮眠を取り、少し回復したのでアルヴィーズの食堂に向かう。
まだ眠い……
これは、授業中に居眠りをしそうだ。
授業といっても、アンリエッタ姫の若手貴族対談で無いも同然なのだが……
一昨日、昨日で粗方の貴族の子弟とは話してたかr
「ねえ聞いた?
アンリエッタ姫って、ウェールズ皇太子狙いなんだって」
「聞いた聞いた!
例え話でも、天空の高貴なる殿方と地上の姫って話してたから……」
「随分と情熱的な恋文を書くらしいわ!」
おいおいおいおい……
もしかして、コレかよ?
原作の恋文奪還話って……
アンリエッタ姫から熱烈なアレを送るのかよ。
はぁ……
さっきまで、イザベラ姫と話していた為に王族のギャップに驚きも大きいぞ。
原作では、両思いだったが今回は一方通行だ。
しかし、見つかると同盟やらなんやらが、ご破算になる内容なんだよな……
アレか?
ラグドリアン湖の園遊会で、水浴び姿を見られた……
ウェールズ皇太子に責任でも追求するのか?
それとも、イタい女の様な一方的な内容で迫るのか?
この大事な時期に、この手紙イベントは僕の計画に齟齬をきたすかな?
手紙か……
悩むな。
早めにアンリエッタ姫を取り込んだ方が良さそうだ。
全く、このアンリエッタ姫は、どうにも困ったチャンだな。
惚れた女だったら、何とかしたいと保護欲を掻き立てるのかも知れないが……
とっとと、ウェールズ皇太子に引き取って貰わないと大変だぞ。