第70話
アルビオン王国
王都ロンディニウムで、まことしやかに言われている噂話が有る。
アルビオン北方から、美乳派なる教義を広めようと貴族に接触を始めた司教。
アルビオンは現王及び皇太子が巨乳派であり、強硬派で有る事から衝突は免れないだろう……
しかし、最近になり
「全ての乳の元に集え!」
と言うハンパない思想を持った2人の教祖を擁する第三の教義。
貧巨乳派連合が現れた。
三つ巴の性乱かと思われた。
しかし、アルビオントップが推し進めている、半強制な巨乳派。
どうにも曖昧で、美乳派と謳っても金と宗教色の絶えない2派閥に対し
あらゆるジャンルの教典を多数提供する貧巨乳派連合の賛同者は増えていた。
その理由の一つは、個人の性癖をクリティカルに攻める「男の浪漫本」のジャンルの広さ。
伝え聞く、二大教祖の押し付けがましく無い人柄。
何よりも、乳に対する熱意の違いが明らかだ!
今までトップが巨乳派で有り、貧乳愛好家達は上辺はそれに習い貧乳趣味本など皆無だったし、大きさを別にチュエーションで攻める恋愛感など驚愕物語だ!
この「男の浪漫本」は、1人の教祖が全てを書いているらしい……
自らの性癖を押し付ける訳でもなく、全ての変態と言う紳士達に、これら男の夢と浪漫を提供し続ける人物……
この人物の噂こそが、王都ロンディニウムで今一番の話題だ!
多種多様に、しかも一定量が確実に出回る「男の浪漫本」だが、トリステインとゲルマニアからの販路が有り、著者を追求すると入荷ストップの為に、この噂が広まり続けている。
もう一つの黒い噂……
主に北方の貴族達の間で噂される。
美乳派に接触を持たれると、何故か正確に己が性癖のジャンルの「男の浪漫本」が一冊贈られるらしい。
しかも手紙が同封されていて
「乳を愛する漢達よ!
乳で争うべからず。
大いなる乳の元に集え!」
ただ、それだけなのだが、贈られた相手は贈り主の度量に心酔してしまう。
しかも、定期的にこの贈り物は届くらしい。
アルビオンの貴族で、おのれが性癖に自負を持つ漢達にとって……
いや、貴族以外の全ての乳愛好家にとっても、この「男の浪漫本」を手に入れられる者ならば。
著者に対して、どの様な人物なのか興味が尽きなかった。
可能ならば、彼の元に集いたい。
その教義を直接、教えて欲しい。
お互いに夢を語り合いたい。
そんな、都市伝説の様な噂話だった。
SIDEクロムウェル
ブリミル協会の一室で、金と酒に浸りながら思いを巡らす。
彼は、言いようの無い不安を感じていた。
美乳派への貴族の取り込み……
最初の食い付きは、まずまずなのだが、暫くするとイマイチな反応をされる。
取り込めたのは余り有能で無く、乳に対する拘りよりも金に執着する連中ばかりだ。
それなりに有能で、性癖も乳大好きな奴らは、何故か打倒王家を匂わすと
「乳を争いの道具に使うな!
大いなる乳の元に集え!」
と、同じ台詞を言って去ってしまう。
何故だ?
何故なんだ?
貴族など、精力と虚栄心の塊のゲスな人種なくせに、乳を語る時の純粋な目は……
あの目は危険だ。
ブリミル教でも敬虔な、そして盲信している信者の目だ……
「大いなる乳の元に集え」
誰かが、我々以外に乳で信仰を集めようとしている奴らが居る。
これは、早急に対策を練らねば……
私が、このオリヴァークロムウェルが!
偉大な美乳派教祖たる、私の野望に障害が出るだろう。
彼はワインを瓶から直接煽って飲み干すと
「誰か?誰か居ないのか?
早急に調べたい事が有るのだ!」
と、金で繋ぎ止めている信者達に調査をさせる為に騒ぎ出した!
レコンキスタの野望は、おっぱいを争いの道具にしようとした事で、僅かだが確実にヒビが入ってきた……
アルビオン王国
ハヴィランド宮殿
ウェールズ皇太子は、私室にて机の上に有る、二冊の本を前に悩んでいた。
最近噂の「男の浪漫本」の二冊だ。
噂は聞いていた。
しかし、実在するとは思ってなかった。
調べさせたら、直ぐに手元に届いたこの二冊の本。
彼は、この本を読んでから悩んでいた……
「おっぱいジョッキー」
そして
「はなまる幼稚園」
著者は共に同じ人物だ。
普通なら、一冊は王家の献上品としては中々の逸品だ。
美しい巨乳を持つレディが、乗馬技術を競い合う。
少し変わってはいるが、面白かった。
しかし……
この作品を書きながら、何故この様な幼女趣味な発禁指定間違い無い本まで書けるのだ。
これを父上に渡すのは……
同時に渡す事は危険だ!
しかし片方づつ渡すとなると、悩む。
何故だ!
何故、巨乳物語だけ書いてはくれぬのだ。
これでは、父上に報告出来ないではないか……
ウェールズ皇太子は、この本の著者を調べ、出来れば接触したいと考えた。
「誰か居るか?
早急に調べたい事が有るんだ!」
時を同じくして、敵対する各々のトップはツアイツを探る様に指示を出す!
真面目に本名で名前を出したツアイツは……
アホだったのだろうか?
三つ巴の戦いどころか、直ぐに双方からロックオンされた!
SIDEロングビル
アルビオン王国潜伏中の彼女だが、任務は順調だった。
元々、土くれのフーケとして活躍していた彼女だ。
盗むお宝を調査する替わりに性癖を調べワルドに報告。
彼がそのジャンルに会う本を選び贈るだけ。
贈られた相手のその後もチェックし、クロムウェルの美乳派に行きそうなら……
根こそぎ財貨を強奪する。
どうせ、クロムウェルからの資金だろう。
しかし工作資金が何度も貰える訳もなく、金に目が眩み美乳派に入っても貧乏になってしまう。
強奪した財貨は、ロングビルの物になる。
ツアイツに折半でと申し出たが断られた。
「危ない橋を渡らせているのに、上前をハネるなんて出来ない」
と……
今日も彼女は、貴族の屋敷を荒らし回る!
後ろに遍在ワルドを従えて。
「あーっはっはー!
笑いが止まらないね」
彼女は終始ご満悦だった。
遍在ワルドは、シェフィールドといいロングビルといい何故、同行する女性がアレなのだ!
と、悩んでいた。