第71話
おはようございます。
ツアイツです。
久し振りにこの挨拶で、話がスタートしました。
現在、ギトー先生の風サイコーな授業を受けながら考え事をしています。
昨夜、父上から届いた梟便の手紙について……
アルビオン王国で展開している作戦について、初めての経過報告が来ました。
こちらも、イザベラ姫との会合の結果を報告。
彼女は協力的で有り、情報は流してくれる事。
竜騎士団長は、貧乳派なので父上と話が合いそうだし、騎士団員達も協力的な事。
そして父上からの手紙には……
先ず、良い報告です。
アルビオンに流している「男の浪漫本」ですが、順調です。
そして、順調故に間者が何人か、ウチとツェルプストー辺境伯の所で発見、捕縛したとの事。
悪い報告ですが……
間者ですが、レコンキスタだけでなく、アルビオン王家の関係者も居ました。
そう言えば、本名で書いてるし調べれば直ぐに分かるから当たり前でしたね。
何れこの学院に居ても、接触は有るな。
なので、トリステインに構えた屋敷は引き払う事にしました。
巨乳メイドズは、ハーナウ領に引き上げ。
管理はヴァリエール公爵にお願いし、傭兵さんのみ駐屯して貰ってます。
彼らも不要と言えば不要ですが、少しでも敵の注意が向けば儲けもの。
人質としての価値は無いし、最悪攻められても適当に相手をして逃げろ!
と、言い含めてます。
アルビオン王家に目を付けられた……
それは、「男の浪漫本」の中で、貧乳部門が発禁コードに引っ掛かったか、単純に巨乳部門に食い付いたか?
どちらも、一波乱有りますね。
しかし、著書が流れただけなので、どうこうされる問題ではないかな。
でも、貧乳部門について発禁処分となり著書に責任を追求する……
なんて、可能性は低いけれども、この世界の男達は性癖に対して厳しいから。
ジェームズ一世や、ウェールズ皇太子の考え次第だと思う。
これは、アンリエッタ姫経由で接触を図った方が良いかもしれません。
アンリエッタ姫に接触するには……
ルイズか、エレオノール様が良いかな。
巨乳関係でルイズ。
先の演劇関係でエレオノール様……
学院か?
アカデミーか?
エレオノール様の方が、安全かつ確実だね。
よし!
エレオノール様に手紙を送って段取りをして貰おうかな……
等と考えていたら、既にお昼です!
ちゃんと授業を聞いていないので、卒業出来るか不安になります。
アルヴィーズの食堂にて……
今回の食卓は、モテナイーズに囲まれています。
彼らの目的は、女生徒達から漏れ聞いた、アンリエッタ姫がウェールズ皇太子狙いは本当か?ですね。
僕に聞かれても答え辛いんですが……
最近、シャツの露出とフリルが激しくなったギーシュがしつこいです!
「なぁツアイツ?
女生徒達の噂のアレ……
君は聞いてるかい?」
「トリステイン貴族を差し置いて、アルビオンの皇太子狙いってこの国の立場はどうなるのかな?」
ギーシュの問に、レイナールが疑問をぶつけてきた。
確かに、トリステインの次期王女が、アルビオンに輿入れしたいなんて……
じゃあトリステインはアルビオンの属国化?
とも思われるわな。
流石は眼鏡君だ!
「確かに、アンリエッタ姫はウェールズ皇太子にお熱みたいだね。
でも婚姻は今の立場では無理でしょ?」
「でも、アンリエッタ姫本人が言ってるぜ?」
ギムリ……
脳筋の癖に、騙されないか。
「正直に言えば、アンリエッタ姫が暴走してると思う。
ただ、ウェールズ皇太子と結ばれたいだけで、他の影響を考えていない。
でも、君らが知ってるなら当然マザリーニ枢機卿も知っている筈だから……」
「彼らがとめる……か」
「……うん」
アンリエッタ姫、早く状況を知らせてこちらに引き込まないと駄目だ……
非常に嫌だけど、このまま独走させると先が読めないから。
男ばかりの昼食会は、重たい雰囲気で終わった。
楽しんでいたのは、食欲の減った周りから料理を貰ったマリコルヌ位か……
癒やしが、マリコルヌは嫌です。
そして、トリステイン国内が妖しい噂で持ち切りになった頃に、エレオノール様から連絡が有り、遂にアンリエッタ姫との会合がセッティング出来ました。
場所はアカデミーにて。
メンバーは、僕とエレオノール様。
シェフィールドさんはお留守番。
本人は、マジックアイテムで会合の様子は見れるし、僕が危険になれば乱入するから安心して欲しい、と。
全然安心出来ません。
先方は、アンリエッタ姫にワルド殿、そしてアニエス隊長率いる銃士隊のメンバーです。
グリフォン隊の連中はお忍びの為に参加はしないそうです。
ワルド殿の情報では、アニエス隊長が並々ならぬ情熱で会合の参加を希望したが、アンリエッタ姫に止められたそうだ……
ただの会合では、絶対すまなそうです。
それぞれの思惑の入り乱れた会合が幕を開ける!
トリステイン王国アカデミー内、エレオノールラボ!
王族を待たせる訳にはいかないので、結構前に僕がアカデミーに向かう。
出迎えてくれたエレオノール様は凄く不機嫌だ!
「お久し振りです。
エレオノール様……
あの、不機嫌そうなんですが?」
黙って応接室に通され、向かい合って座ったのだが……
沈黙が痛いです。
「ツアイツ殿……
お母様から聞きました。
ルイズとの婚約を希望したとか?
お似合いね……
若・い・し・ね!」
えーと、自分より先に妹が結婚って嫌なのかな?
嫌なんだろうな……
「はい。
その、ルイズとは幼少の頃に、既に婚約者でしたから……
それに、カリーヌ様から嫁にやるのは、ルイズだけと言われましたし」
エレオノール様は、クワッと目を見開いて
「私では、不満だと?」
「いえ、でもエレオノール様と結ばれるには、僕がハーナウ家と縁を切らねばなりませんから」
「…………」
「…………そうね。
私は、ヴァリエール家を継がねばならないわね。
ごめんなさいね」
「いえ、僕の方こそ姉と慕う貴女に気を使わせてすみません」
「…………姉、なのね」
「…………はい」
「私は、家の為なら貴方に嫁いでも良かったわよ。
こんないき遅れじゃ嫌かもしれないけどね」
そう寂しそうに笑い掛けられた……
その儚い微笑みは僕の心を随分と抉ったけど。
それから僕らは、アンリエッタ姫がアカデミーに到着するまで無言だった。
この別れ話を切り出している男女の様な、重たい雰囲気は……
正直辛かったです。
自惚れでなければ、エレオノール様は僕と結婚しても良いと考えていたのかな?
まさかね。
手の掛かる弟みたいな僕が、いきなり妹と婚約した事が気に入らなかったんだろうな。
表情の無い彼女の顔からは、何も読み取れなかった……