第二十五話:吸血鬼VS超能力者
ネギがエヴァンジェリンに襲われた翌日。
教室内では、新田先生が連絡を行っていた。
「──と言う訳で、ネギ先生は体調不良で休んでいる。今日の連絡に関しては私が伝えておくので、しっかりメモを取って置く様に」
ネギは当然ながら一晩で回復する筈も無く。
多量の血を奪われ、魔力も枯渇状態。特殊な魔法薬と輸血で今日中には起き上がれるだろう、と学園長達は判断していた。
雪広は当然見舞いに行くと言ったが、新田先生の一言で抑えた。
「ネギ先生はまだ子供なんだ。偶には体を壊す事もあるだろう。だからと言ってあまり大勢で行くと返って疲れさせる。今日一日は我慢しなさい」
そう言われては、と渋々引き下がり、授業を受ける事になった。
千雨とアスナはもう互いに魔法関係の事を知っている。と言う事を知っているので、昼休みに屋上でネギの事について話している。
「昨日の夜に誰かを追いかけて行ったのよね」
「じゃ、そいつが吸血鬼か?」
桜通りで倒れていた宮崎を預け、誰かを追いかけて行ったと言うネギ。なら、吸血鬼を追って行って返り打ちにされたと言う事は容易に予想がつく。
そこで、誰が一番情報を多く持っているかと考え、二人とも同じ人物に辿りついた。
「潤也なら、何か知ってるかもな」
「電話してみる? 今ならきっと暇だろうし」
「そうだな」
そう言って携帯を取り出し、手早く電話をかける。
ワンコールで電話に出る潤也。いつもながら速いなオイ。と心の中で突っ込みながら語りかけた。昼休みで食堂にでもいるのか、周りの声ががやがやとやかましい。
『昨日の吸血鬼事件?』
「そう、何か知ってるか?」
ちょっと待ってくれ、と言い、携帯を切る潤也。基本的に秘匿すべき情報である以上、人の多い場所で話す訳にはいかないのだろう。
そうして数分経ち、再度潤也から電話がかかってきた。桜通りの吸血鬼について問いかければ、大した間もなく返答が聞こえてくる。
『要約すると、吸血鬼は千雨のクラスのエヴァンジェリンで、ネギはそいつを追いかけて行ったら大量に血を吸われて失血死寸前。今は輸血と治療を受けてる。ちなみにもう桜通りの吸血鬼事件は起きない。断言できるぞ』
本当に要約しまくった内容である。だが、その情報とてまともな方法では手に入らない。憶測が混じってはいるものの、概ね予想としては間違っていない。
千雨は納得した様に頷く。
「なるほど、だから先生は休んでたのか。というか、吸血鬼が本当にいたのかよ」
『正確には入院かな。明日か明後日までは来れないと思うぞ。吸血鬼を殺す方法を教えておこうか?』
「分かった。私が襲われても潤也が助けてくれるんだろ? ……と言うか、一般人の私に吸血鬼を殺すとか、そんな物騒な事させるな」
『そりゃあまぁ、そうだけど。方法位は知ってた方が良いかなぁと。』
「必要無い。大丈夫だろ。ありがとな」
通話を切り、携帯をポケットの中になおす。アスナはそれを見て、千雨に電話の内容を聞いた。
「潤也、何だって?」
「エヴァンジェリンが吸血鬼で、先生が追いかけて行ったら血を大量に吸われて入院中だと。後は桜通りの事件はもう起きないってさ」
「ああ、そう言う事。なら心配する事は無いでしょ」
残りの時間を談笑して過ごし、教室へ戻る。
●
夕刻。エヴァはPC室にて、茶々丸と結界について調べていた。
「どうだ?」
「予想どおりです。マスターが解いた呪い以外にも魔力を抑えている結界があるようです。科学技術も使われている為、マスターも今まで気付けなかったのだと思います」
「なるほど、凄いな。これが『ハイテク』って奴か」
「私も一応その『ハイテク』ですが」
そんな話をしながら学校から出る。時刻は既に五時を過ぎ、空は黄昏に染まっている。ちらほらと見える影は部活動に専念している生徒たちだろう。
チラリと茶々丸を見ながら、必要最低限の事を聞いておく。
「準備は居るか?」
「いえ、私の能力を持ってすれば今夜にでも落とせますが……」
「そうか、ならさっさとやる事にしよう。監視の目が気持ち悪くて仕方が無い」
そう呟き、その方向を見る。あちらも気付かれていると分かっていながら監視をしているのだろう。隠れる様子が無い。
「ふん。私が呪いを解いたからか」
どの道、今となってはもうエヴァをまともな方法で押さえつける事など出来はしないのだ。
高畑と学園長がいるが、昼間は秘匿の問題で魔法を使えず、夜は結界を抜ければ二人がかりでも勝てるか分からない。
口元を隠す様にして、茶々丸に告げる。
「実行は今夜だ。抜かりなく進めろ」
「イエス、マスター」
●
ちなみに同時刻。女子寮に侵入しようとして潤也の仕掛けた『オジギソウ』のトラップに引っかかり、アルベール・カモミールが瀕死で高畑に拾われたのは完全な余談である。
●
エヴァのログハウス。ここで、茶々丸は学園結界へとハッキングをかけていた。超から追加の報告があり、『テレポート』の様な能力を使えると言う事を頭に叩き込む。
クラッキングの作業をしている茶々丸を横目に、自分の体調や調子がどうかを確かめておく。
「────盗りました。結界を解除。これでマスターの魔力は戻る筈です」
エヴァンジェリンはその言葉を聞き、両手を握っては開き、久しい強大な魔力に感覚を確かめる。懐かしい感覚に、つい口元には笑みが浮かんでしまった。
「上々だ。さぁ、殺し合いに行こうじゃないか」
勢いよく立ちあがり、魔力で身体を強化しながら外へ出ようとする。その時。
とある
それは抗いたくても抗えない、吸血鬼であるが故の弱点。葛藤を繰り返しながらも、欲望に勝てず、その匂いのする方向へ向かう。
「マスター──?」
その様子に少しばかりの不信感を募りながらも、茶々丸は付き従う。
移動したのはわずか十数分。チャチャゼロを肩に乗せて空中を駆け、行きついた場所は麻帆良と外とを分ける橋だった。
「遅かったな。吸血鬼」
其処にいたのは、茶髪でホスト風の顔立ち、身長は高く、威圧感が唯者では無いと悟らせる。
かつて、『SMG』について調べた時、知った顔。『SMG』の社長として世界に知られ、その技術・科学力は代えられない価値があると各国の代表に悟らせた男。
──垣根帝督。
「何故、貴様がここにいる?」
感じていた筈の匂いは無い。だが、それよりも目の前の男の事が気になる。彼ほどの有名人は、この場に置いて余りにも場違いだ。
垣根はと言えば、エヴァの質問を聞いて、うっかりしていたとばかりに頭を掻く。
「ん? そうか、そうだった。──これなら分かるか?」
声が変わる。今まで話していた声とは全く違う、別人ともいえる声。そして、その音声は茶々丸のデータに残っているものだった。
「この声は……声紋一致、彼は長谷川潤也さんです、マスター」
その言葉に眼を見開く。目の前の男が長谷川潤也とは思えない。容姿も、声も、全く違うのだから。
「殺し合いをするつもりなんだろ? 結界の力が及ばないここに来てやったんだ、さっさと始めるぞ」
その言葉に呼応するように、三対六枚の白い翼が展開される。風を引き裂き、殺気を濃密に放ちながら、戦闘態勢を整える。
垣根個人にも目的はある。だが、売られたケンカは買うまでだ。相手が真祖の吸血鬼だろうと、負ける気はしない。
「──良いだろう、姿がどうであれ、貴様が長谷川潤也だと言うのなら、全力で殺してやる!」
そして、その身に秘める膨大な魔力が、魔法へと練り込まれる。
潤也は脚力のベクトルを操作、他複数の能力を用いて、音速の数倍でエヴァへと近づく。
「『闇の吹雪』!」
真正面から、膨大な魔力を練った攻撃が迸る。潤也はそれを反射し、エヴァへと返しながら近接戦闘へと持ち込む。
エヴァンジェリンはベクトルの操作を知っている。それは近接戦闘では勝ち目が無いと言う事。
魔法の射手を地面に当て、粉塵に身を隠して距離を取る。
(当てが外れたな。だが予想の範囲内だ)
攻撃が通らないなら、空間ごと凍らせてしまえばいい。そう考え、詠唱を開始する。
当然、潤也がそれを許す筈も無く。風速百二十メートルにも達する砲弾をぶつける。
それを避け、茶々丸が対人用の結界弾を放つ。それにより、数秒動きを阻害された潤也。無理矢理それ引き裂き、近くの木を切り倒し、その枝を『座標移動』でエヴァの腕や足へ転移させる。
木を切った時点で何をするか予想がついたエヴァは移動しながら詠唱を紡ぐ。
『空間転移』系統の能力は、物体を飛ばしてから移動した地点に出現するまでに若干のタイムラグが発生する為、目視で見えていればエヴァの身体能力、反応速度なら避ける事は可能だ。
高速戦闘においては終点となるべき敵が常に移動し続ける為、完全に敵の動きを予測できなければ当てる事は難しい。
故に、基本的に奇襲にしか使わない。否、使えない。
「『おわるせかい』!」
当然、砂煙で見えていなくても、一瞬前まで其処にいた為、疑うことなく魔法を発動させる。
「こっちだよ」
潤也はエヴァの後方へと転移し、その拳を握りしめる。
膨大なベクトルを操作し、集約されたその拳は障壁を貫き、エヴァへと向かう。それを防ごうと腕で庇うが、庇った腕ごと殴り飛ばし、木々を薙ぎ倒して数百メートル吹き飛ばされた。
防いだ腕は折れている。だが、真祖の再生力を持ってすれば気にする様な事では無い。
(コイツは
そして、再生を続けながら詠唱を始める。
「リク・ラクラ・ラック・ライラック 契約に従い 我に応えよ 闇と氷雪と永遠の女王」
魔力が渦巻き、詠唱に続いて冷気が発生する。
(面倒な事はされる前に潰すか──)
雷撃の槍を飛ばすも、同時に『氷楯』で防がれる。雷速にさえ対応する、それが真祖の吸血鬼の身体能力だ。
そして、幾重にも張り巡らされる対人結界。茶々丸が辺り一帯にしかけ、起動させたもの。
「咲きわたる氷の白薔薇 眠れる永劫庭園 来れ 永久の闇 永遠の氷河!」
だが、そんな物で縛られる潤也では無い。白い翼で結界に耐えきれない負荷をかけ、無理矢理破壊させる。対人用の結界とはいえ、垣根が相手では数秒止められればいい所。端から期待はしていないだろう。
体が自由になり、まずは邪魔な茶々丸を破壊しようと動く。視線が自然と茶々丸の方へと向いた。
「氷れる雷をもて かの者を囚えよ」
こちらは唯のガイノイド。特殊な電磁波で脳の役割を果たす中枢に妨害をかけ、動きを阻害し、『原子崩し』で消し飛ばす。
「ケケケケケ!!」
同時に後ろからチャチャゼロが大振りのナイフを振り下ろす。当然反射し、そのまま白い翼で破壊する。
「妙なる静謐 白薔薇咲き乱れる 永遠の牢獄 『終わりなく白き九天』!!」
エヴァの背後から、巨大な氷の竜巻が巻き起こる。雷氷の蔓が潤也へと襲いかかり、凍らせようと力を振るった。
「そんな物でどうにかできるとでも思っているのか?」
放たれる冷凍雷撃。それに対して『未元物質』で法則を塗り替えた爆炎をぶつける。冷凍雷撃が凍らせようと、爆炎がとかそうと、互いに攻撃をぶつけ合う。
エヴァは膨大な魔力をつぎ込み、冷凍雷撃の数を増やす。それに対し、潤也も爆炎の規模を上げた。
だが、エヴァンジェリンは同時に詠唱を開始していた。
「解放・固定『千年氷華』──掌握。術式兵装『氷の女王』」
瞬間、エヴァを中心として大気が凍りつき始める。魔力が渦巻き、その効力で大気の気温が急激に低下しているのだ。
氷となってエヴァの周辺に現れたそれらは、鋭利な形を持ってエヴァの武器となり、潤也へと向かう。膨大と言って良い数だが、それでも単純な物理攻撃である以上は意味を成さない。
弾幕の如く張られる氷の武器を目の前に、潤也は舌打ちした。
(……数が多い。面倒だな)
橋の周辺まで凍りついている。それだけの魔力を持つ事は、素直に感嘆に値する事だ。
「氷圏内は全て私の支配下だ。逃げられると思うなよ」
指を軽く上げる。それだけで、潤也の足元から氷の槍が生成され、潤也の体を貫かんと迫る。
「むしろ、逃げると思われている方が心外だな」
避ける動作すら見せず、地面から生えた槍を次々と砕ききる潤也。ここに来て、この二人の戦闘は千日手に成りつつあった。
エヴァの攻撃の密度が半端ではない。幾ら反射でどうにでも出来るとはいえ、相手の姿さえ見えないほどの物量では攻撃のしようが無い。
試しに、辺りに転がっている大きめの氷の破片を蹴り飛ばすが、直後にその真逆から巨大な氷の柱が飛んでくる。捕捉が出来ない以上、攻撃が当たる筈も無いのだ。
潤也自身の身体能力はほぼ普通の人間同等──原石の能力によってエヴァの動きは視認できる程度まで上がっているものの、弾幕で目隠しされてはそれも意味を成さない。
エヴァの『
だから、片手に圧縮した魔力を使用して『闇の吹雪×十六』と言ったふざけた技すら使用可能とする。
一発でも十分な殺傷の威力を備えているというのに、それが十六本も纏めて撃たれるなど想像すらし難い。
「クソッタレめ。六〇〇万ドルの懸賞金は伊達じゃねぇな」
戦闘経験は潤也の数倍、数十倍、数百倍と上を行く生きる怪物。そもそもまともに戦って勝てる相手では無いのだ。
しかし、それを可能にする。しなければならない。
で、あれば。この弾幕を抜けられるだけの攻撃力を持つ能力を使う必要がある訳だが。
(……『原子崩し』が適任か)
右腕に白い光がループし始め、放たれた一瞬で氷を融解させて貫く。広範囲に攻撃したい所だが、多方向に同時にと言うのは少し面倒だ。当てずっぽうにやって当たる相手では無い。
故に。
「コイツを実戦で使うのは初めてだが……まぁ、良い」
空間が揺らぐ。其処から現れるのは、四つの駆動型の腕の様なモノ。その先は折り畳まれた
三本の銃身を束ね、回転するように作られたモノ。
それでいて、火薬の力を使わずに発射されるモノ。
電磁力の原理を利用して金属砲弾を撃ち放つモノ。
前脚保護カバーの側面には、こう書いてある──
そして、一気に上空へと跳躍した。ベクトルを操作した上で風を操作し、足場を確固とした状態でエヴァを視認する。
目があった瞬間、エヴァからの強烈な猛攻を受けた。橋の下は川だ。水には事欠かない。
「『氷槍弾雨』『闇の吹雪×二十』ッ!!!」
雨の様な氷の槍が上空の潤也へと飛来し、その中心を貫くのは禍々しいまでの魔力を放っている『闇の吹雪』だ。まともな人間なら、オーバーキルも良いところだろう。
しかし、それでも潤也には届かない。
「──射出」
瞬間、音が消える。
否、音が消えたと錯覚するほどの爆音が鳴り響き、開いた保護カバーの内部にある銃身から、四つある砲身一つにつき分間四〇〇〇発もの弾丸が発射された。
氷を砕き、空気をかき乱し、音が消滅するほどの轟音を立てながら、押し潰すかのように上空から弾丸がエヴァへと襲いかかる。
「この程度で、殺せると思うなよ若造がァッ!!!」
音速のおよそ三倍以上の速度を持つ弾丸をことごとく避け切り、かき乱される暴風の中を無理矢理抜け、潤也の目の前へと肉薄する。
弾幕で潰せないのなら、物量で潰せないのなら──奴自身を凍らせてしまえば良い。
出来るかどうかは賭けだったが、少なくとも呼吸が出来なくなれば止まらざるを得ない。それは、生物としての絶対的条件だ。これが意味を成さなければ、生物としての前提を覆す事に他ならない。
しかし、『長谷川千雨』の双子の兄である以上、そんな事はあり得ない。
故に。
今までで最も苛烈に、膨大に魔力を注ぎ込み、潤也ごと空域一帯を凍らせようとする。
「ハアアアアアァァァァァァァッ!!!」
大気が氷結していく。ガトリングレールガンによる爆風と熱で周辺の氷が融解、または破壊されている事で、一次的に氷霧が発生していた。
月明かりに映える極小の氷は幻想的に輝き、潤也の背に現れた三対六枚の白翼をより幻想的に魅せる。
「惜しいな。俺じゃなかったら勝てたかもしれん」
使った能力は『
『この世に存在しない素粒子を生み出し(または引出し)、操作する』能力 。及びそれによって作られた『この世に存在しない素粒子(物質)』
それは、絶対零度下において動く事の出来る物質を作り出せると言う事。体温は熱量の移動をベクトル操作で阻害して保っている為、凍死する事は無い。
三対六枚の翼は弓矢の様に引き絞られ、六か所の人体の急所へと狙いを定める。
「お前の負けだ、吸血鬼」
そして、凶悪な力を持つ翼が放たれる──
●
学園長達がその場に着いた時、辺りは悲惨だった。木々は薙ぎ倒され、凍っているものもあり、地面は抉れている。
「遅かったですね、学園長殿」
その場に立っているのは一人。垣根帝督。白い翼は既に消えている。
そして、その足元に倒れている一人の少女。エヴァ。未だに血は流れ続け、地面を赤く染めていた。
「……お主がこれをやったのか?」
「そうですよ。『
学園長の方を向き、説明を始める。
「相手が賞金首、それも『
それは戦闘を前提として言っている。暗に学園が抑えきれていないと告げている様なものだ。
その言葉に学園長が唸る。
「……何故、責任者であるワシに言わなかったのじゃ?」
「先日、『英雄の息子』が襲われ、『
信用度の問題だ。
呪いをかけていて、それを自力で解ける状況下においていると言う事。解いた後の対処が遅れていると言う事。生徒が襲われているという状態で対処しないと言う事。
そんな連中を、信用などできないだろう。
「どの道こちらで片をつけるつもりでしたしね」
両手はポケットに入ったまま、戦闘の雰囲気など感じられない。
そして、それを感じていた未だ生きていたエヴァンジェリンが、潤也の首へと噛みつこうとする。
「危な──」
高畑の警告は遅い。既に噛みついてしまっている。致命傷に近い傷を負ってなお潤也へと牙を向くその気概は評価できる。だが、それでも彼女がやった事は無駄としか言いようが無かった。
噛みついたエヴァンジェリンは、灰となった。
『
『甘い香りで誘い、その血を吸った吸血鬼を問答無用で灰に返す』能力。
真に恐るべきは、死ぬとわかっていても吸わずにはいられない誘惑性を持つこと。
AIM拡散力場である『吸血鬼を招き寄せる死の匂い』のためか、 無差別広範囲に作用するので、何もしなくても吸血鬼をおびき寄せて殺してしまう。
吸われる事が前提である以上、潤也自身の吸血鬼化や失血死を防ぐ作用もあると思われる。
対吸血鬼において、最凶の能力。
「さぁ、これで証明できたでしょう。貴方方の目の前で。『真祖の吸血鬼、「
存在しない恐怖にうなされる事は無いだろう。明確に死亡が確認されたのだから。自分たちの目の前で。
殺すならもっと早く殺せた。それをしなかったのは、簡単に言えば『死んだ』と言う事を学園側に認知させる為。
エヴァンジェリン程の力を持った魔法使いを何処かの勢力におけば、勢力図など簡単にひっくり返る。それをしないと信じさせる為。
映像でもいいが、それだと作ったもの・加工したモノだと思われると面倒極まりない。
そして、長谷川潤也では無く、垣根帝督として現れたのは、不必要に名を売らない為。
証明するには、目の前で殺すのが手っ取り早かったのだ。だからこそ、彼らが来るまで殺さなかった。
これより、垣根と学園の