第三十話:修学旅行一日目
修学旅行当日。
ゆっくり目を開け、起き上がって背伸びをする。
軽くストレッチして、キッチリ目を覚ます為に洗面台へ向かい、顔を洗う。
柊の手に入れた手紙の仕掛けを解除していたら夜遅くになっていた。全く持っておかしなモンを持って帰って来たものだ。
魔法的な仕掛けがあるとはいえ、其処に『
解いて、見てみれば中身は何処かの誰かとの友好的な手紙。ただし、中身にも魔法的な仕掛けがしてあって、書いた本人か暗号のキーが無ければ読め無い様になっている。
ここまで高度な暗号文を良く作れたものだ。感心するよ。本当に。
軍用のアルゴリズムの方がまだ楽だ。あんなおかしな暗号使うとか、性格ひねくれてやがる。
………………。
いや、つまり読めたって事なんだけどね。
一回法則さえ見つけ出してしまえば読むのは楽だ。最も、法則を見つけるのに大凡四時間ほどかけてしまい、あまり寝て無いという事が問題か。
正解かどうかは今はもう分からないけどな。大体当たってれば十分だし、問題は無い。
手紙の中身は『とある魔術結社が共同してSMGに対抗しようとしている為、お前達も協力しないか?』というもの。
修学旅行が終わった後で始末しようかね。『スクール』は別の仕事があった筈だし。『猟犬部隊』にやらせるには荷が重い。レベル5は勝手に動いてる奴が半数だし、そもそも何処にいるか特定出来ない奴までいる。
恐らくは魔法世界にいるのだろう。半歩分ズレた世界にいるのなら、太陽系圏内でも捕捉する事が出来なくても不思議ではない。
猟犬部隊が強力な『
頭を働かせる為、コーヒーを飲む。
まだ眠いが、新幹線で寝てればいいや。多少はマシだろう。睡眠時間およそ三時間程度、演算も特に支障は無い。何かあっても大丈夫だろう。
そんな事を考えながら時計を確認し、時間を見て動き出した。
「起きろ!」
フライパンとお玉を持って、寝ている護の耳元で鳴らす。実際やられると迷惑極まりないが、時間的に起きないとヤバイ。予想以上に考え事に没頭してたらしい。
昨日から戻ってきている濱面を同じように叩き起こし、朝食の準備をしてさっさと食べる。
準備は予め昨日の内に終わらせており、荷物を背負って駅へと向かう。
メンバーは特に変わらず、俺、護、椙咲、仲芽黒。そして濱面。濱面に関しては俺らの所以外入れなかったと言った方がいいかもしれない。
不良だしな。
特に気にする様な奴は少ないが、人数が偏るからこうなった訳だ。
眠そうに目を擦る護と濱面を連れ、集合場所の駅へ到着する。
時間までは後二十分位か。意外と速く着いたかな。五分前行動は基本だし、まぁ良いだろう。
この位の時間帯だとみんな大体揃っている。各班点呼をして人数を確認、その後乗車という流れだ。
ちょっと離れた所を見れば、女子中等部の面々がいる事が分かる。
ウチのクラスの連中は女子がいる事が相当嬉しいらしい。特に椙咲辺りはもうヤバそうな目をしているんだが。
目標のハーレム王目指して頑張れ。
そこそこイケメンの筈なのに言動がセクハラじみてるからかなり引かれるんだよな。仲良くなるのは速いけど。
ちなみにウチのクラス。最初はハワイだとか沖縄だとか北海道いろんな事を言ってた。
一つの場所に五クラス、候補地は五つ。つーか二十四クラスとか多すぎと思うんだが。他所でも普通なのか?
最終的に椙咲が舞子がなんたらと語りだして、「もういいよ、京都でいいから」という雰囲気になった。
凄く、ウザかったです。
そんな事を考えていると乗車の時間になった様で、点呼をして人数確認。全員そろった事を確認して新幹線に乗車。今更だが班長は護。
押しつけた。
ま、そんな事はどうでもいいから放っておくとして、俺達のクラスと千雨達のクラスは車両が同じらしい。ちなみに俺達は3-W。
3-A全員と面識があるので、手を振って挨拶。零からは無視された。アイツ俺が作ったのに俺に冷たいんだが。何故?
ウチのクラスの殆どの男子から睨まれた。視線に質量があったら駅が吹き飛んでるだろうな。
新幹線に乗り込む時、桜咲と一瞬目が合う。何かを気にしている様な感じ。
(何か聞きたい事でもあるのか?)
取りあえず念話してみる。わかってはいるけどな。
(念話を使えたのか? ……準備は出来ているのか?)
(この近くに待機させてる奴の中継だが、超能力でもこういう事は可能だ。準備は既に終わってるよ)
嘘で塗り固めるのも面倒だが仕方が無い。ちなみに『
既に『グループ』と『猟犬部隊』が入っている。関西とはこう着状態だ。下手に戦闘させたりはして無い。こっちだって好き好んで敵増やしてる訳じゃないからな。
というか、別に敵対する理由は無い。関西からすれば俺達に借りがある訳だしな。島根の一件で。
特に拒否する事も無くすんなり入れてくれた。むしろ喜んで入れてくれた。
(そうか……所で、よくもやってくれたな)
(何を?)
(とぼけるな! 御上が言っていたぞ、私とお嬢様を一緒の班になる様にしておけと命令されたとな!)
(えっ。何それ知らないんだけど)
何勝手な事してくれてんのアイツ? 女子中等部に関しては見てたらもはや犯罪に近いし、学園長室と職員室以外は基本零に一任してるから知らないんだけど。
おかしな魔力反応とかがあったら見る事もあるだろうけど。例:カモの仮契約魔法陣。
(……本当に知らないのか?)
(今初めて聞いた)
でもまぁ判断としては間違って無いだろう。護衛なんだから近くにいた方がいいだろうし。
というか、今思ったけど千雨達の班編成しらねぇわ、俺。……まぁ、何とかなるだろう。多分。
(所で、班ってどうなってんの?)
(……聞いていないのか? 私と長谷川さん。神楽坂さんにお嬢様、それと御上だ)
上々。零がいるなら問題無いだろう。俺は千雨達と同じように回るつもりだが、俺がいない時に何か起こっても何とかなる。
絶対起こさせないけどな。
そんな事を思いつつ新幹線に乗り込み、席について睡眠を取ろうとアイマスク。次の瞬間剥ぎ取られた。
「何だ……ですか」
「私の話を聞く前に寝ようとするとは、いい度胸じゃないか」
魔義流先生が無駄に威圧感を出して俺を睨んでいる。相変わらず俺様な人だ。これで頭の回転が速いのだから、手がつけられたものじゃない。
「いやぁ、どうせ一度聞いた話だと思ったんで大丈夫かなと」
「残念だが今初めてする話だ。心して聞け」
かなり面倒な先生。授業中も何故か武勇伝になるし。というか、この人の話って誰がどう聞いても創作としか思えない活躍の仕方なんだが。
神様と友達とか、巫女の友達がいるとか。まぁそれは今はいいや。
「女子中等部の3-Aが同じ車両にいる訳だが……ちょっかい出すなよ」
「何故ですか!?」
椙咲が直ぐ様反論。其処まで女子と仲良くなりたいか。
「中武研の部長もいるぞ?」
「その子は遠慮しておきます」
ああ、古菲か。確かに下手に手を出そうものなら投げ飛ばされるが、新幹線の中でそんなことしないだろ普通。
「まぁ、あっちのクラスにちょっかい出すようならホテルで夜通し正座な。後、説教と課題も用意してやるからありがたく思え」
その言葉で一斉にブーイングが飛ぶも、涸之先生の名を出したら一発で収まる。ある意味女子中等部の新田先生みたいな扱いだ。
「ちなみに大半の奴は知っているだろうが、あっちには長谷川の妹もいる。……死ぬなよ」
『サー・イエッサー!』
其処まで言う事か? 俺そんな危険人物扱いされてんの? ちょっとショック。
「話は終わりましたかー? 俺さっさと寝たいんですけど?」
「昨日の夜は修学旅行が楽しみで寝れ無かったのか?」
「いえ、単純に夜更かししただけです」
ニヤニヤしながら聞かれたが、顔色一つ変えずに応えるとつまらなそうな顔をされた。何でだよ。アンタそれでも教師か。
もう一度寝ようとアイマスクをしたら、また次の瞬間取られた。
「寝てんじゃねえよ。遊ぶに決まってんだろ。ホレ、トランプ」
椙咲にトランプを渡される。既に始まっているが、いつ出したよこれ。
「そして大富豪かよ。いい加減学べ。お前らじゃ俺には勝てない」
「ふ、今こそ革命の時! 俺の時代がやってくる!」
「ウルセェ濱面。革命返し」
「何ィ!?」
十分程度やるが、大富豪は俺が勝ち、ポーカーで手札の悪さに全俺が泣いた。毎回ポーカーでは勝てない。大富豪ならまだ何とかなるんだが。
運の悪さは最早マイナスの域。前にも思ったが何でだ。トランプの時だけ俺は『幸運 −A』とかついてんのか?
『幸運 A−』とかでは無く、『幸運 −A』だ。トランプに限り。
ポーカーに弱いって地味に嫌だよね。頭使って何とかなる類のゲームならいけるんだが。
……今一瞬、魔力を感じた気がする。周りを見てみれば同じ様に気付いた桜咲が動いて後ろの車両へ向かっていた。
千雨達の方に関しては零がいるから心配はして無い。が、出来る限り面倒は避けたい訳で。
流血沙汰は不味いが、いなくなるのなら問題無いだろう。そう思って魔力を未だ出している術者を転移させて車外へ出す。……偽物みたいだけどな。
式神か。関西の仕掛けかね。魔力は式神の方から出てたし、遠隔操作で何か仕掛けたんだろう。
そんな折、聞こえてくる3-Aの悲鳴。
「まて潤也。そのエアガンはどこから出した」
無意識の内に『王の財宝』から銃を出して構えていたらしい。ハッとして隠し、収納。気付いたのが護で良かった。
さて、どうしたのかと見てみれば、大量のカエルが其処彼処に現れていた。
「……カエル?」
「カエルだな。何でカエルがここに?」
「しらねーよ!」
コントの様に話す仲芽黒、椙咲、護。余裕ですね、お前等。こっちにいないからって。
悲鳴を聞いて魔義流先生が驚き、カエルを見た後俺達の方を見る。
「どうなっているんだ、これは? 取りあえず一番近い場所にいる長谷川……は、もう行ったか。それと椙咲、雨中、濱面。カエルの捕獲手伝って来い」
「潤也早っ。てか、え、仲芽黒は?」
「カエル捕まえられるか?」
「無理です。触れる事が出来ません」
「乙女か!」
後ろから何か聞こえているが、無視。
取りあえずさっさとカエルを捕まえる。随分デフォルメされてるけどな。本物のカエルと比べると可愛いモンだ。女子はこれでも嫌だろうけど。
実際、結構なパニックになってる訳で。
手当たり次第に捕まえては袋に押し込める。……というか、これどうやって出したんだ? 式神? でも水筒とかからも出てたみたいだしな。
千雨は頭を抱えてる。どうにもSAN値がガリガリ削られてるらしい。
「大丈夫か?」
「ああ……つーか、何だよコレ?」
「悪戯……なのかねぇ? 詳しい事は後で説明するよ」
「分かった……」
すっかり疲れた様子。まだ始まってもいないのにな。アスナの近くにいた奴は勝手に消えて行ったらしい。『
零は千雨達に近づくカエルだけを対処していたらしい。全然動いて無いし。
そんな時、ヒュンと燕が俺の横を飛んで行く。
何かを咥えていたが、アレは……親書か? ネギが学園長から貰ってた奴。俺関係無いから放っておいてもいいだろう。あっちには桜咲が動いてたしな。
さてはて、前途多難な修学旅行になりそうだ。
●
そして、清水寺に到着。
四月の生ぬるい風が肌を打つ。中々気持ちがいい。
距離としてはそれほどでも無いが、移動時間は長い。ここの見学を終えたら今日はもう旅館に行く予定になっている。
3-Aが集合写真を取っているが、女子中等部が全部終わった後男子中等部の番だ。ぶっちゃけ面倒。
行き先も予定も泊まる場所……は、一応分かれているが、ほぼ同じだ。キリキリと写真撮影を終え、清水寺の見学に入る。
「ここが、清水寺か……」
一応来るのは初めてだ。前世の記憶なんてもう残って無いし、仕事でも来る事は無い。国外が基本だし。
国宝なんだよな、ここ。修学旅行で来る以上、やはりここは外せないらしい。
見張りでも兼ねてるのか、一般人の中に混じって明らかに逸般人がいる。よく見れば意外と簡単に浮き上がる物だが、そいつらは洗脳してここでは騒ぎを起こさせない様にする。
後は情報を絞り取ればOKだろう。
しかし……テンション高過ぎないか、こいつ等。フリーダム過ぎて呆れたよ。
清水寺から飛び降りろと言った奴がいたり、正に飛び降りようとしたり。
椙咲は意味の分からない事言ってやがるし。
「えー、ここ清水寺は『清水の舞台から飛び降りる』という言葉から連想される通り、世界有数のバンジージャンプスポットとして注目されている、今世界で最もホットでクレイジーな観光スポットです。
その高さは最早軌道エレベーターと見間違う程で、毎年ここを訪れる修学旅行の生徒には必ず一人や二人酸欠に陥る生徒がいると言う笑い話もよくありますね」
「ねぇよ」
「建立は……確か、平成四年。当時の有力武将、ド○・小西氏によって建造されたと聞き及んでおります」
「誰からだ」
「そうそう、平成十年に起きた、人類の半分を消し去ったあの忌々しき災害、『清水寺クライシス』によって半壊しましたが、平成十二年、当時の有力武将K○BAちゃんさんによって修繕されたのは、記憶に新しいところですね。
『清水寺クライシス』の一件によって、耐震偽装という言葉も注目されましたね」
「されてねぇよ」
「マジでどこのパラレルワールドから来たんだよお前」
何だよ清水寺クライシスって。初めて聞いたわ。
「いや、適当に説明してしまえばみんな満足するかなって」
『適当過ぎるわ!!』
男子中等部、3-W全員による総突っ込み。つーか全員聞いてたのかよ。
「もういいじゃん。清水寺クライシスの爪痕見たじゃん。舞妓さんいないんじゃここにいる意味無いじゃん。別のとこ行こうぜ」
「清水寺はそう言う観光スポットじゃねーよ! つーか学校でいく場所決まってんだから無理だって分かれ!」
言っちゃうとアレだが、舞妓に対する執着がキモイ。
隣では綾瀬が同じ様に(多分こっちが正解)解説している。
もうこいつ等と一緒にいると無駄だと判断し、千雨達のいる場所へ行く。
「潤也、新幹線のアレは一体何だったんだ?」
「ああ。千雨は知ってるだろ? 関西呪術協会」
キッチリ音を遮断しながら会話を始める。ちなみにアスナもいる。行きの列車でいきなり変なことが起こったので、事情を知っているであろう俺に聞きに来たらしい。
関西呪術教会の名を出すと、千雨はふと思い出した様に呟いた。
「それってアレか、春休みに会ったあの二人が所属してたっていう」
「そ。その組織が木乃香を狙ってんだよ。なんであんな地味な手に走ったのかは知らないけどな」
カエルを出すって、ホントに何の意味があるんだろうね。混乱させるって意味じゃ、確かに役に立ったかもしれないが。
「木乃香が狙われてるの?」
アスナが心配そうに聞く。小学校からの親友だしなぁ。気にはなるだろう。
「桜咲と零で護衛をしてる。後は俺もいるし、保険も準備してる。問題は無いよ」
「そう……潤也がそう言うんなら、大丈夫よね」
まだ気になってはいるようだが、取りあえず一安心しているらしい。其処まで信頼されてると失敗する訳にはいかなくなるじゃないか。
失敗する気なんか毛頭ないが。
千雨達と話している間に3-Aの他の子達は地主神社に行ったらしい。千雨達もそれを追って行き、俺達も流れに沿ってそちらへ向かう。
ふと後ろを振り返り、会話に耳を傾ける。
「先生ーっ! 椙咲が清水の舞台から落ちました!!」
「何!? 直ぐに探して来い!」
「あわあわ、何で自分から跳んだのかな!?」
「仲芽黒、お前が分からないというのが、俺は分からない」
「……凄かったな。写真を取ろうとした時のアレはもはや友達と言う距離じゃ無かった」
「アレはもう恋人だよ。椙咲の奴、脊髄反射でダイブしたし」
護と濱面の会話を聞いて現状を理解し、放っておいて先に進む。
同じ様に大半の生徒が気にすることなく地主神社へ向かって行く。俺が言うのもアレだが、薄情ですね、お前等。
●
地主神社。いわゆる縁結びだとか、恋愛成就だとかの話が多い神社。其処に来た訳だが、雪広と佐々木が落とし穴に落ちてた。どういう状況だよ。
「誰かが落とし穴を掘ったんじゃないのか?」
疑問に答える様に零がそう言う。いつから居た、お前。
こんな人の往来が多い場所で、人二人が落ちる様な落とし穴掘れるとは思えないが……ロ○ット団かよ。
つーか、落とし穴って結構危ないんだぞ。落ちて周りの土や砂が崩れればそのまま生き埋めだからな?
「というか、零。お前俺の名前勝手に使っただろ?」
「何の事やら? ……冗談は置いておくとして、別にこっちの方がいろいろと都合がいいからいいだろう」
それはそうだが、言われの無い事で責められるってのは気分が悪いんだよ。
「千雨とアスナ、木乃香はあっちの音羽の滝と言うのに向かったぞ」
千雨達のいるであろう方向を指差しながらそんな事を言う。分かってるならお前が行けよ。何の為に女子中等部に転入させたと思ってんだ。
結局俺も向かう訳だが。
「……どうする。私も飲んでみるか……?」
「これを飲めば、結ばれる……?」
音羽の滝を前に数名がブツブツ言っている。こっちに来た男共は耳を澄ませて聞いている。ストーカーかよ。
雪広、佐々木、鳴滝姉妹等は迷うことなく縁結びの滝の水を飲み始めているんだが……。
……アルコールの匂いがしないか? あの滝。
「ちょ、ちょっとだけ飲んでみるか……」
「私は飲む。飲んで結ばれる……」
「あー、二人共。覚悟してるとこ悪いが、それ飲むな」
千雨とアスナがこっちに非難めいた視線を送る。まるで「覚悟したのに邪魔するのか」みたいな。というか、目が訴えてる。
「その滝、アルコールが含まれてる」
「……え?」
匂いだけだが、屋根の上を透視すれば酒樽が置いてあるのが見える。誰だよ、酒樽なんておいたバカは。関西の悪戯ってこんなレベルなのか?
さっさと通報だ。
「先生、どうやら酒樽を仕込まれていたらしく、3-Aの数名が間違って飲んでしまったようですが」
「む、そうか。新田先生。どうしますか? 私は男子中等部に伝えて来ますが」
「そうですね。私は飲んで無い他の子と飲んでしまった子たちをバスに運びます」
俺、意外と先生からの信頼はあるんだ。成績的な感じで。素行は普通だからな。偶に千雨関係で暴走するだけで。
「……そっか、酔ってから潤也に運んで貰えば自然な流れで抱きつけるじゃない」
「それを口に出してる時点でどうかと思う」
後もう少し自重しようか、アスナ。最近暴走気味だぞ。小声だったとはいえ、近くにいた俺には聞こえてたし。
千雨ならともかく、アスナを背負って運ぶって無理じゃないか? 対外的に。気にする様な俺でも無いが。
でも「彼女です」とか言う訳にもいかないしな。言ったら言ったで大騒ぎだろう。いろいろと。
朝倉とか早乙女とかが大騒ぎしそうだ。そんな事になった場合どの道〆るけども。
こうした事もあり、予定を多少切り上げて旅館へと向かう事となった。