第四十六話:リョウメンスクナ
星明かりに照らされる夜道。彼等は闇に紛れて動き続ける。
黒いローブを羽織り、最大限目立たず、尚且つ気配を殺して、目標を目指して動き続けていく。
目的の場所は、麻帆良学園中等部の生徒がいるという旅館。占拠する必要は無い、唯、いつでも攻撃できる立場にあり、動きを監視出来るのならば。
麻帆良に内通者がいる訳ではない。だが、確たる情報源として、『麻帆良には超能力者がいて、それが今修学旅行で京都に来ている』との情報を手に入れた。
誰が手に入れたのか、どうやって手に入ったのかは誰も知らず。
その情報を持って来たのは、蒼い髪の若い青年だったということぐらいしか、彼らには分からない。
垣根帝督を敵視し、尚且つ超能力者に敵意を抱いて排除すべきとしている彼等は、この機を逃さなかった。
前々から怪しいと目星を付けていた人間は居たのだ。超能力者の可能性がある人間をリストアップしていた。だからこそ、この場にいる者達は情報が正しいと悟る事が出来た。
関西呪術協会もいろいろと内乱でごたごたしている今、旅館を包囲していつでも攻撃できるようにし、垣根帝督に対して超能力者の情報を開示させる事、それが出来ないならば旅館の人間を皆殺しにする。
ハッキリ言えば、応じるなどとは思っていない。
だが、一般人に紛れていても、超能力者である可能性があるのなら始末しなければならない。超能力者は危険過ぎる、と彼等は思っているのだから。
そして、肝心の垣根帝督は旅館から出て行った。あちらには別働隊が向かうだろう。交渉は見届けるが、どの道情報が手に入れば用は無い。
だからこそ。
「──下衆共が。一般人を狙いに定めるか。そんな低俗な連中は、私の前に立つ資格は無い」
目の前に立つ少女のやっている事が、理解出来なかった。
黒いワンピースを着て、ブーツを履いた少女。カチューシャを付けている黒い髪は夜の闇と同化してなお、星明かりに映える。
何者かは分からない。だが、人間の様な雰囲気が感じられない。否、雰囲気と言うよりも気配。人間らしい気配がしないのだ。
仁王立ちで彼らを見つめ、両腕を組み、心底見下したような冷やかな目で男達を見据える。
目の前にいる少女の先には一本道。ここを抜ければ、旅館を一望して攻撃できる位置になる。監視としても絶好のポイント。
攻め落とすなら、ここに来る可能性は高い。誰でもそう判断するだろう。ゆえに、零はここにいた。
こいつも超能力者か? と男達は思考し、問を投げる。
「ふん、お前等如きの問いに、何故私が答えねばならん? 下衆は下衆らしく、地べたに這いつくばって無様に散れ」
相も変わらず見下した態度を崩さない。それに対し、男達は怒気を孕めて言いかえす。
「超能力者かと聞いているんだ。答えねば腕の一本や二本は貰う事になるぞ」
「ほう、出来るものならばやってみろ。お前等如きの力で私を殺す事が出来ると、本気で思っているのならな」
挑発する様な態度。それを受け、男達は魔力を精製する。
随分と挑発に乗りやすい。御しやすい相手だと、零は判断した。
西洋魔法。詠唱を開始した時点で、零はそう判断する。組んでいた両腕を解いて、右手の先を敵に向ける。
一斉に放たれるは、『白き雷』『紅き焔』『魔法の射手』の雨。
元々『雷の暴風』等の上級魔法は、普通なら覚える事さえ出来るモノでは無い。あの年で扱えるネギが異常過ぎるだけだ。
その魔法の雨を受けてなお、一歩も動くことなく、掌を向け──放つ。
空気を引き裂く一閃。高速で放たれるレーザーが立てる、金切り声の様な音が夜の闇に響き、男達は悲鳴を上げる間もなく消し飛んだ。
同時に雨の様に放たれる魔法の攻撃を、背にある白い翼で全て弾き切る。飴細工の様なのっぺりとした翼には、傷一つ無い。
「……少しやり過ぎたか。まぁ、アイツには捕える事が出来なかったとでも言えば良いだろう」
零は小さく呟き、翼を戻して携帯を取り出した。
そのまま弄って誰かに連絡をし、数回のコールを経て相手が電話に出る。
「……ああ、私だ。全員滞りなく始末した。……ああ? 始末したんだよ。捕えられなかった……チッ、仕方がないな。別の場所に向かえばいいのか? 人を機械だからとこき使いやがって……うるさい。ともかく、始末に動けばいいんだろう……分かったよ、捕えればいいんだな」
零が怒鳴る様に何度か返すが、電話の相手は怯む事無く淡々と尻拭いの為の仕事を言い渡す。
渋々仕事を引き受ける事になり、機嫌を悪くしつつも指定された場所へ向かおうと動き始める。
「面倒臭い。何故私が動かねばならんのだ」
溜息でも吐きそうな零だったが、その表情はあくまでも──どこまでも機械的だった。
●
ネギは、半分出かけたスクナを見て驚きながらも、その近くにいる千草を目指して全速力で飛んでいた。
「兄貴、敵だ!」
カモが咄嗟にそう告げる。視界の先に映ったのは、いくつもの符。それを巧みに杖を操作して避け、符の投げられた方向へと目を向ける。
その先には、数人の陰陽師。鬼も多数いて、ネギが相手をするには最悪の相性でもある神鳴流の剣士もいる様だ。
考えれば当然の事。
幾らなんでも、ここに来るまでの道中にいた者達だけの筈がない。この場所をも守っておけば、万一防衛網を抜けられたとしても迎撃に移る事が出来るし、防衛網に居る者を数名呼び戻せば挟み撃ちにも出来る。
だが、挟み撃ちにする事は出来なかった。詠春が予想以上に多くの陰陽師達を迎撃したからだ。
それでも、数分時間を稼ぐだけならば十分過ぎる。唯一人の西洋魔法使い──それも数えで十才の子供──を足止めする事など、過激派の者達にとって造作も無い事だろう。むしろ、出来なければ陰陽師としての沽券に関わる。
現に物量に押され、ネギは先に進めないでいた。
桟橋に降り立ち、真正面から魔法で攻撃をしようとしたネギに対し、陰陽師達は所狭しと鬼を召喚して迎撃する。
近距離戦に弱いネギは退くしか出来ず、さながらリアル鬼ごっこの様な──というより、リアルに鬼に追いかけられるという状況に陥っていた。
魔法の射手で迎撃しつつ、杖に乗って上空を飛ぼうにも符を投げられて直線ルートでは向かえず、烏族さえいる為に空を飛ぶ事は自殺行為とさえ取れる。
ネギは、目の前で徐々に鬼神が復活していく様を見ているしかなかった。
「……もう、だいぶ出ているね」
そんな折、一人の少年が現れる。
フェイトはネギの事を気にかけず、近くにいる陰陽師の一人に回復用の符を貰い、傷と魔力を回復させる。流石に無くなった左腕は無理の様だが。
それを見て、ネギは咄嗟に思いつく。
「西洋魔法使いが、関西の人とどうして仲良くなってるのさ!!」
ある意味で、詠春達の苦労を水の泡にする様な言葉。味方に西洋魔法使いが混じっているとなれば、仲間割れを起こすのではないか。そう期待した。
だが、それを示すには証拠が足らな過ぎた。
「……おい、今の話、本当か?」
「どうだかな。こっちを惑わせる為の策だろう。ガキの癖に頭が回る」
「…………」
フェイトは何も言わない。肯定も否定もせず、ただ傷を回復させながらネギを見るのみ。
そして一瞬の後、光の柱がより強く輝いた。
「おお、これが……」
「素晴らしい……これなら、西洋魔法使いを倒す事も難しく無い……」
陰陽師達の視界の先にあるのは、リョウメンスクナ。かつて千六百年前に打ち倒され、封印される事となった飛騨の大鬼神。
その神々しく強い魔力を放出させながら、スクナはこの世界へと現れる。
そんな中、突如として吹いた暴風が桟橋を襲う。
凄まじい暴風で橋の上にいた陰陽師達は尽く吹き飛ばされ、湖に落ちる事となった。残るのは暴風の外にいたネギと、敢えて残らせたとでも言う様な暴風の中心にいたフェイトの姿。
そして、フェイトの目の前に空間を引き裂く様に現れたのは、潤也。
「鬼ごっこはもう終わりか?」
潤也はポケットに手を突っこんだまま。ハッキリ言って隙だらけであり、達人レベルで無くともこの隙を突けば誰でも倒せそうだと、フェイトは思う。
しかし、それはブラフだと既に気付いている。
どれだけ隙だらけであろうと、どれだけ敵意が無い様に見えても、攻撃すれば何故か自分に返ってくるのだ。
何度もやられている。だからこそ分かる。
カウンターとは違う。本当に全く動いていないにも関わらず、何をやってもダメージが通らない。
左腕は無く、怪我は治療はしたものの、魔力は完全には戻っていない。
詰みだ。どうやった所で逃げられないし勝つ事は出来ない。せめて一発でも拳を打ち込んでやりたいが、やっても自分にダメージが返ってくるだけなのだろう。
「君は、何故彼女を守ろうとするんだい?」
最後に、問う。
「言っただろォが。俺が人を守るのに、理由はいらねェだろ」
直後、未元物質によって生成された白い槍がフェイトの急所を貫く。
何度か『未元物質』によって攻撃を受けた障壁は、その物質によって解析され、フィルターがある事を露呈させた。
簡単に言えば、これは『一方通行』の反射の壁にも同じ事が出来る。
ベクトル変換による壁は完全では無い。太陽光や空気など、必要なモノは最低限反射しない様に計算式が構築されている。当然だ、光を完全に反射すれば何も見えず、空気を反射していれば呼吸が出来ず、音も聞こえない。
詰まる所、魔法使いの障壁にも同じ様な『穴』がある。反射の壁と同じように、生活に必要なモノを防がないよう設定されているのだ。
それを逆算し、『未元物質』を用いて
これにより、強力な白い翼による攻撃はフェイトの使う曼荼羅のような障壁に防がれる事無く──肉体へと直撃する。
槍を引き抜き、潤也はそのまま前に倒れたフェイトの頭を踏みつぶした。
余程思い切りやったのか、桟橋には放射状に亀裂が入ってへこみ、バキバキと嫌な音を立てる。
辺りには白い血が流れ、脳髄が飛び散っている。『これ』が本物だと確認した後、少し離れて『
強力な青白い光線は桟橋を破壊し、フェイトの肉体を蒸発させた。
「……よし、俺の用事は終了と」
返り血一つ無く、埃一つ付いていない服をはたきながら、そんな事を呟く。
白い翼を霧散させ、振り向く。その先には、桜咲が居た。
「……さっきのは……殺したのか?」
「ああ、殺したよ。お前等が気にする事じゃ無い。これは俺の個人的な用件だったからな……まぁ、依頼と被ってるから文句も無いだろう」
肩をすくめつつ、潤也はそう答える。
それより、と前置きし。
「アレどうすんだ? 放っておくわけにもいかないだろう」
目線の先にあるのは、完全に現界したリョウメンスクナ。流石に大鬼神と呼ぶべきか、神々しく、雄々しい。しかしその強大さを目にしてなお、桜咲の眼の戦意は失われない。
この眼は、覚悟を決めた眼だ。少なくとも、潤也にはそう見えた。
「このちゃんを、助け出す」
「お前に出来るのか?」
単純な問い。実力的に見ても、リョウメンスクナの攻撃を掻い潜って木乃香の場所までいけるとは思えない。
現にスクナはこちらを見て、攻撃を仕掛けようと拳を振り上げている。先ほどの光景を見て、最優先で倒すべきと千草が判断したのだろう。
だが、それは間違いとしか言いようがなかった。
「──ほう、俺に攻撃する、か」
巨大な拳はまっすぐ潤也へと向かい、桜咲もろとも潰す心算で、高速で放たれる。
一瞬のうちに気付いた桜咲は間一髪で回避に移る事が出来た。だが、潤也は避ける素振りさえ無く、回避した桜咲の眼にはそれがスローで映っていた。
拳は高速で潤也を潰そうと向かう。潤也は口元の笑みを崩さず、虫でも払うかのように左手をぶつける。
唯それだけ。それだけの動作で、スクナの腕は弾き飛ばされた。
●
「そんな……馬鹿なッ!」
千草は目の前の光景を信じられずにいた。
仮にも神話にさえ残る様な大鬼神。封印されて力が多少弱まっている事も視野に入れていたが、現界した途端に近くの龍脈から魔力を吸い始め、力を徐々に上げ始めた。
それに愉悦を感じ、口元にはつい笑みを浮かべてしまう。
だが、何か大きな音がしたと視界に入ったのは、フェイトが頭を潰されていた所だった。
フェイトは過激派の中でも相当な実力者。それを倒すとなれば、策を練られる前に倒す事が優先だと。そう判断した。
四本の腕の一つで潰そうと攻撃を仕掛けたまでは良い。
だが、こちらからは何をしたのか全く見えなかった。特殊な術でも使ったのか、純粋な膂力なのか。いや、流石に膂力だけで鬼神の拳を弾く事は無理だろうが。
ともかく、大きく弾かれた。
どのみち依頼の達成条件が過激派の駆逐である以上、遅かれ早かれこの状況に陥っていたのは間違いないだろう。
●
「上等上等、そう言う無鉄砲さは嫌いじゃ無い」
首の骨を鳴らしながら、潤也は小さく笑みを浮かべる。
最善は「出る前に止める」ことだったが、この依頼において最も脅威となるフェイトの始末に時間をかけ過ぎてしまった。そこだけは失敗だな、と溜息をつく潤也。
まぁ、先の事で鬼神にもベクトル操作が通じる事が分かった。であれば、体躯だけの鬼神など恐るるに足らず。
うねりを上げて振るわれる豪腕も、力のベクトルを操作されてしまえば何の意味も持たない。
「失せろよ、雑魚」
ベクトルを操作してリョウメンスクナの足元へと移動し、そのまま殴りつける。二面四つ手の巨躯の大鬼は、それだけでバランスを崩して湖へと倒れ込む。肩に乗っている千草と木乃香も同じように倒れて行くが、そうさせるつもりは無い。
距離はそう遠くなため、位置を把握して木乃香を近くに転移させる。
桜咲は目の前にいきなり現れた木乃香にビックリしたようだが、抱えた後潤也に礼をして、直ぐ様背中の翼をはばたかせて空へと飛ぶ。
一連の流れを呆けて見ていたネギは、桜咲が空に飛ぶのを見てまた驚き、杖に乗って隣へと移動する。
「あ、あれはどうするんですか!?」
スクナを指差しつつ、ネギは問うた。
「……恐らく、彼がどうにかしてくれるでしょう。人質がいない今、全力で戦えるでしょうし」
一度だけ振り向き、また前を見て行こうとした所で──月詠が現れた。
月詠の足元には空中を移動する為の魔法陣があり、それに乗って移動してきたようだ。
「クソ、またお前か──」
木乃香を抱えたまま、桜咲は焦った様に言う。両手がふさがった状態で、勝てる可能性など万に一つも無い。
そんな桜咲の前に、一人の人物が現れた──
●
少々面倒だな、と思う。
ベクトル操作が通じる事が分かり、敵ではなくなった鬼神リョウメンスクナ。コントロールしていた近衛の血の力が無くなった事で、自由に暴れる事が出来ると悟ったのか、二面の口を大きく開けて、何かを叫ぼうとした所で──
──何かが、恐るべき速度で飛来した。
それはスクナの顔面に直撃し、後ろ向きにまたも倒れる。
スクナに直撃したそれは、石柱だ。フェイトが使った『冥府の石柱』の残骸。それを手元に転移させ、自転のベクトルを用いて音速の数倍の速度で飛ばした。
運動量は速度×質量と単純な計算式で表される。故に、巨大な質量を持つ石柱を音速の数倍と言う恐るべき速度で放った際の威力は、計り知れない。
あんなものを食らわされれば死んでもおかしく無いのだが、其処はやはり鬼神。耐え得るだけの頑丈さを持っている様だ。
こうなれば、どれ位でその頑丈さを超えるかいろいろと実験してみたいものだが。
「……でもなぁ……」
余り長々とやると予想外の事が起きる可能性がある為、手早く用事を済ませることに異論は無く。
潤也の背中の空間が陽炎のように揺らめき、水面に映る波紋の様に揺れる。
何も無い空間から出てくるのは、無数の手、手、手。膨大な数の義手が、所狭しと現れていく。
動かすには信号を送る必要があり、その為にはアンテナでもある耳の辺りに付けた特殊な円形の機械と『
ガチャガチャと音を立てながら、空間を埋め尽くす様に現れた大量の手は、いっそ壮観でさえあった。
人のような肌色で、作り物のような光沢で、堅く、滑らかという、矛盾を体現したようなものである。動作も普通の腕とは違い、『マネキンが球体関節に依らず動いた様な』動きを行う。
本来ならば、サイボーグの様に人体に改造を施してこそ使える特殊な方法だ。
だが、仕舞う場所を『
仕舞う場所はともかく、信号に関しては恐らく潤也にしか出来ないであろう方法だ。サイボーグになると言うリスクを払ってこそ得られるリターンを、潤也はリスクさえ支払わずにリターンを得ている。
「な、なんや……あれ……」
未だスクナの肩に乗っている千草は、潤也の背後の奇妙な状態に驚きを隠しきれない。
その当人である潤也は、相当数の義手を『王の財宝』から引っ張り出した事を確認して、能力を発動させる。
即ち、この義手を使う事で最大限活用される能力『窒素爆槍』
ボンッ!!! と凄まじい音を立て、比較的近い距離にあるかなりの窒素を圧縮して作り上げられた、全長数百メートルにも及ぶ巨大な槍が現れる。
窒素が一か所に急激に圧縮されたが為に起こる暴風を身に受けながら、その無色透明の槍の切っ先はスクナへと向いていた。
『掌から放つ』という特性を利用し、その掌自体を無数に増やす事で出力そのものを跳ね上げる。これを分裂させれば、数百と言う槍の雨がスクナへと降るだろう。
だが、それでスクナが死ぬとは考えにくい。どうやったら死ぬかなぁ。と考えつつも、動きを止める為に槍を放つ。
高速で放たれた槍はスクナの腹部を貫き、湖に縫いつける。
「………………うん。やっぱこれしか思いつかねーな」
頭を捻りつつ考えるも、答えは一つしか出ず。
腹部を貫かれて動けず、瀕死の状態でも潤也に敵意を持つ事を止めない。スクナの上に降り立った潤也だが、スクナは潤也を掴もうと腕を伸ばし、それを触れて折る。邪魔されると面倒だからだ。
そのまま能力を解き、同時に『右手の能力』を発動させる。
その右手でスクナに触れると、触れた個所から力が弱まって行き、光の粒子となって消えていった。
『
その右手で触れた異能は、何であろうと問答無用で消滅させる。仮にも神であるスクナに効くかは疑問でもあったが、やっぱりアレも異能の対象らしい。
どこに消えたかは知らないが、取りあえずはもう現れる事は無いだろうと思考する。
そんな事を考えていた時、携帯のコール音が鳴る。
ポケットをあさくって携帯を取り出し、電話に出る。
「何だ」
『垣根さん、そっちに面倒なのが行ってるので、始末お願いできますか? 一応追わせてはいたんですが』
「面倒なの?」
そう、オウム返しに聞き返した所で、
「貴様がSMGのメンバーか!?」
無駄に大声で叫ぶ、大柄の男が桟橋の向こうに立っていた。