第四十三夜:動き始める闇
修学旅行三日目。
二日目も多岐にわたるイベントが起こりかけたが、それらは全てネギとベルの頑張りによって、特に問題になる事無く終わった。
昼間は宮崎のどかによるネギへの告白イベント。
夜は朝倉主導による宝探しゲームのイベント。
前者はネギが倒れるという被害があったものの、夜には落ち着いていたので問題は無い。朝倉主導のゲームにしても、新田を焚きつければ自然と解散した。
修学旅行の夜は中学生にとって楽しみではあるものの、夜通し正座など皆勘弁なので、自然と解散したのだろう。
そして朝。
この日は京都及び周辺の地域を班ごとに散策する日だ。大阪に行くという班もあれば、京都で遊ぶという班もいる。
昼間は何も起こらないだろうと思っているが、楽観的な見方はしない。奇襲に対応する位の事は出来る。エクソシストとして育てられてきたため、奇襲の際に生じる微々たる殺気を感じ取って反応するのだ。
弾丸一発でも当たれば終わり。
常に死線を彷徨う彼ら彼女らは、心休まる時など無いに等しい。
「さてと。それじゃ、京都の散策に行きましょうか!」
だというのに、香奈は初めての京都に割とテンションが高くなっていた。
●
「……お前、今回の事は分かってるよな?」
呆れ気味の刹那に対し、香奈は京都の地図を確認しながら答えた。
「もちろん。ザジさんはいいんちょの班について行って貰うことにしたし、楓は風香ちゃん達の所に入って貰ったし」
二人とも、伯爵やイノセンスの事に関しては知らない。少なくとも、香奈と刹那はそう認識しているし、その為に別の班に入って貰ったのだ。
香奈と刹那はこれより本山へと向かい、京都で起こっているAKUMAの襲撃事件を解決しなければならない。
もしかすれば、こちらが察知できていないだけで伯爵達がイノセンスを察知しているのかもしれないのだから。
別ルートからネギとベルも本山へと向かっている筈だが、そちらを気にしている暇も無い。ノアがいる以上、まともに戦闘出来るのは長たる詠春──もしくは、元帥クラスの人間しかいない。
それほどの人材は、現状集まっていないのだ。イノセンスを狙う可能性が高い以上、ネギ達と同じルートを使う訳にもいかない。
「神楽坂の方に行かれても困るしな。こちら側の事情を知っているが、神楽坂自身はイノセンスを持たないんだ」
「大丈夫でしょ。素手でも相当強いし、いざという時の為に詠春さんが護衛付けてるんでしょ?」
「関西で伯爵を知る者は少ない。余り護衛に手を回せる状況でも無いが、お嬢様がいれば話は別だからな」
関西にとって最も守るべき存在がノアの傍に居るなど、本来ならあり得ないことなのだが──アスナは上手く誤魔化し切れているらしい。
アスナの事を知らない香奈はその辺りを再度確認して納得し、楓の入った班と言う事で一人の顔を思い浮かべた。
「それと……後考えておくべきなのは、超かなぁ」
「超がどうかしたのか? やたらと気にしていたようだが」
正史に置いて『未来から来た』という彼女の存在は、香奈の中ではどうおいたものか迷うようなものだ。なにせ、この世界の未来から来たのであれば、百年後の未来でも決着がついていない可能性が高く、過去に来たという事は敗北寸前まで追い詰められていた可能性が高い。
かと言って、正史の未来から来ているのであれば、自分の知る史実との食い違いや状況の違いで目的そのものが潰れている可能性もある。
どちらにせよ、何らかのアクションを起こせば直ぐに動けるようにはしておきたい所だ。
「鳴滝姉妹と同じ班だったんだよね、確か。楓がいるから、荒事になっても逃げ切れるとは思うけど」
絡繰茶々丸、葉加瀬聡美も同じ班であり、万が一の場合は頭脳労働を担当してくれるだろうと思考する。風香と史香は恐らく足手まといだろうが。
「……ま、今考えても仕方ないか」
思考を一端打ち切って、刹那と香奈は歩き出した。
●
ネギとベルは本山へと向かっている。目的は当然、関西の長へと渡す親書を運ぶためだ。
幾つかの電車を乗り継ぎ、時折地図で場所を確認しながら歩を進める。途中で土産物や食べ物屋に目をつられることがあったが、今は駄目だと互いに言い聞かせる姉弟。
「……ここよね」
「その筈だけど。関西呪術教会の本山の場所、ちゃんと此処を差してるし」
「伏見神社ってとこに似てるな」
大量の鳥居と竹林、長い階段が続く山。恐らくは頂上に屋敷があるのだろうが、これでは行き来が酷く不便そうだという印象を受けたネギ。
まぁ、これなら安全を確保するための術位は仕掛けられそうだと感想をするベル。
以前来た時は二人とも小さかったので、余り記憶を頼りにはしていない。地図が間違っていない以上は此処だろうと、ベルとネギは階段を登り始めた。
「詠春さん、元気かしら。しばらく会ってないし……奥さんも病気で亡くなってる筈なのよね」
「お父さんたちもあんまりその事を話題にしないしね」
「木乃香さんが居たから、宿なんかじゃ話はしなかったけど……よくよく考えてみれば、木乃香さんが麻帆良に来た後なのよね、木乃香さんのお母さんが亡くなったのって」
何時だったかしら、とベルは視線を彷徨わせながら考えに耽る。
一分ほど考え、およそ六年ほど前だと思いだす。当時病気になったとは聞いていなかった筈なのだが、そう言うモノなのだろうと納得していた。
「六年前に京都に来たのはそれを聞いた後だし、今考えれば京都に来たのは葬儀のためだったって分かるけど」
「……僕、あんまり覚えてないなぁ」
「そりゃそうよ。アンタはまだ小さかったし。大体、京都に来た事があるって事さえ忘れてたでしょうが」
六年前と言えば、ネギはまだ四歳、ベルでも六歳だ。当時の記憶が薄れていて当然だろう。
「まぁ、あんまり掘り返して欲しい話でも無いでしょうし、黙ってた方が……ん?」
「どうしたの?」
話の途中で立ち止まり、鳥居の柱まで歩み寄る。何かを見つけたらしく、ジッと柱を見つめている。
ネギはベルの傍に近寄り、何を見ているのかを確認した。なにやら柱に刻まれているらしく、魔力を持った文字の様だとベルはいう。
「文字っすか。珍しいっすね」
「ルーン文字みたいなものなのかな」
「そうね、それに近いと思うわ。私自身、日本の陰陽術っていうのはあんまり詳しくないんだけど……記号や文字列を使った術式って言うのは西洋魔法にも存在するし、別にそれがおかしいって訳じゃないのよ」
問題は、何故ここに刻まれていたかだ。
可能性としては二つ。もともと関西が仕掛けていた術か。それとも親書を奪う為に通るであろう道に仕掛けた過激派の罠か。
前者であれば、連絡が行っている筈なので発動する筈は無い。だが後者であれば、発動すると厄介なことになる可能性がある。放っておくのは些か不味いだろう。
「……まぁ、文句言われても事前に連絡してたから大丈夫よね。相手は詠春さんだし」
「良いんですかい、姐さん」
「いいのよ」
罠が作動して一大事、となると色々問題が起こる筈なので、柱に仕掛けてあった三か所の紋様を破壊しておく。
陰陽術に関しての知識が無い為にどんなものかは分からないが、 気がついたのは運が良かったという事だろう。
「さて、先を急ぎましょうか。あんまりのんびりしてると日が暮れるわよ」
「うん!」
ネギがそう答え、一歩踏み出した瞬間、空から何かが飛来した。
派手な音を立てながら着地し、その全貌を現した何か──それは、通常では考えられない大きさの蜘蛛と、その蜘蛛の上に乗るニット帽を被った少年だった。
「まさか罠に気付かれるとは思ってへんかったわ。結界が発動せん以上は、俺が相手するしかないしな」
柱の方に一度だけ目をやる少年──小太郎は、嬉々として構えながらそう言う。事前に準備していた結界に入らない以上、本山から増援が来る可能性があるが、ネギとベルに柱の仕掛けを見破られた時点で次善の策は用意している。
千草が発動させた結界が辺りを覆い、外部からの知覚を不可能にする。事前に仕掛けた『無限方処の術』──一度入れば出られない隔離空間を作る術──程ではないが、それなりに強度もある術だ。
そもそも、ネギとベルの技量で気付かれると想定すらしていなかったのだ。ある意味では仕方ないとも言える。
「君は……?」
「どう見たって敵でしょ。過激派の一人なんじゃない?」
緊張感が無い様な会話をしつつも、『戦いの歌』という身体強化の魔法を使い、周囲の警戒を怠らない。
魔法を発動させるための媒体には頑丈な指輪を用いている。二人とも普通の魔法使いよりずっと多いので、特殊なものでなければ媒体の方が耐えられないのだ。
「楽しめそうで何よりや。ほなやろか、西洋魔術師!」
気を足に集中し、前傾姿勢から一気に加速する。俗に「瞬動」と呼ばれるそれに対し、狙われたネギは術師じゃ無いことに驚きつつも冷静に対処する。
近づくと同時に振るわれた拳を逸らし、バックステップを踏みつつ無詠唱の魔法の矢を放つ。
小太郎はそれを紙一重でかわし、再度至近距離へと踏み込もうとした瞬間。
「『魔法の射手 連弾・雷の十五矢』」
ベルの詠唱した魔法の射手が飛んできた。小太郎は踏み込もうとした足を戻し、背後に控えさせていた蜘蛛に攻撃を受けさせる。どうやら、蜘蛛は小太郎にとっての盾の様な役割らしい。
ネギへと視線で合図を送り、頷いたのを確認して小太郎へと近づく。
「女殴るんは嫌やねんけどな」
「あら、そう言うのは自分より弱い人に言うべきじゃない?」
不承不承と言った様子でベルを迎え撃とうと構える小太郎。だが、そこで彼の予想の斜め上を行く動きを見せる。
動きが、ぶれた。
なまじ瞬動などを使える分慣れていないであろう、直線に向かいながらも左右に蛇行している様に見えるという奇妙な動き。通常はアメリカンフットボールなどに使われる、相手を「抜く」為の動きだ。
理屈で言えば、相手の目の前で短くステップを踏み、左右どちらに動くか分かり辛くしたもの。とはいえ、小太郎とて素人では無い。動き自体は奇妙だが、左右にぶれる分瞬動より速度は劣る。読み切る事は出来ないが、目で見て対処できないほどではないのだ。
だからだろうか。一瞬ベルの輪郭がぶれた様に見え、次の瞬間には大地が反転していた。
「がッ……!?」
何が起こったのか、理解が及ばない。だが、顎に走る痛みと地面で打ったであろう後頭部の痛みが現実である事を教えてくれる。
確かに動きは見切っていたし、次の瞬間に左右のどちらかに動くのかまで『身体全体の動き』を見て判断できた。それに合わせて身体を動かそうとした瞬間、小太郎の視点が反転していたのだ。
「『魔法の射手・戒めの風矢』」
動きだそうとした刹那、ネギの魔法によって動きを封じられる小太郎。地面に縛りつけられ、動く事すらままならない状態へと追いやられた。
舌打ちして何とか逃げ出そうと図るものの、直後に守りの為の蜘蛛をベルに『白き雷』で吹き飛ばされ、ネギに魔法を重ねがけされたことによって手詰まりとなった。
「……俺の負け、か」
戦闘と呼べるほどの戦闘でも無く、一方的にやられたのが堪えたのだろうか。小太郎は抵抗を止めて溜息をつく。
「残念だったわね。闘うのが好きみたいだけど、このくらいじゃ私達には勝てないわ」
「ほぼ二体一だったけどね」
「あら。その状況で挑んできたのはコイツよ。選択権は向こうに有ったんだから、その辺りをとやかく言われるのも困るわね」
ベルは小太郎の頬をつつきながらそんな事を言う。実際、親書を奪う為に他のメンバーを連れて来ること自体は出来た筈なのだ。それをしなかったのは、単に小太郎の落ち度だろう。
小太郎は視線をベルへと向け、一つだけ気になった事を聞く。
「……なぁ、さっき何やったんや、アンタ」
「気になる? やったこと自体は単純よ、誰でも思い付くこと」
詰まる所、『タイミングをずらす』為のもの。アメフトの動きとて、元は相手に止められない為に、タイミングを合わせられない為に生み出された技術だ。
基本となるのは先程の蛇行する様な動きだが、そこから速度に緩急をつけるだけでも初見の相手には十分通用する。武術に在る様な動きではないどころか、そもそも対人戦闘を念頭に置かれて生み出された技術ですらない。
それを応用し、小太郎が動く直前に瞬動で距離を詰めたのだ。
「意外と難しいから、練習しても出来るものじゃないわよ。ネギだってまともに出来ないしね」
「お姉ちゃんの動きがおかし過ぎるんだよ。ぐにゃぐにゃ曲がってる様に見えるし」
ベルの才能はそちらに向いているのか、これらの動きを魔法を掛け合わせて応用する事まで出来る。ネギ曰く「ぐにゃぐにゃ曲がる」とまで言わしめるほどに。
「……そんなモンがあったんやな。知らんかったわ」
「そりゃそうでしょ。使ってるのは私以外いないもの」
生み出したのもベルなのだ。これを見せた時は、ナギもアリカも相当驚いていた。なにせ、慣れてくると本当に動きがぶれる。まぁ、実際に重要なのは横では無く前後の動きであり、フェイクとしての意味はそれなりに在るものの、左右にぶれても実際には余り関係が無い。
とはいえ、ナギは初見でも捕まえられたのだが。
「なるほど。参考になったで──それがわかりゃあ、負けへん!」
小太郎の背中、地面と接している部分から影が浮き出て犬の形をとる。小太郎の種族としての能力──犬神だ。
そして同時に、小太郎の身体にも変化が起こった。
髪が伸びて手足は犬の様になり、身体全体が白い気で覆われた状態となる。狗族特有の獣化らしい。
「変身した!?」
カモが驚いて声を出し、ネギとベルは一旦距離を取って出方を窺う。拘束していたネギの魔法は獣化と犬神の併用で無理矢理引き千切られたが、それを気にするほど余裕は無い。
直ぐに詠唱に入るベルと、無詠唱で魔法の射手を撃って牽制するネギ。小太郎はそれを軽く避け、先程の瞬動を超える速度でネギへと肉薄した。
「今だけ近けりゃ、援護もできへんやろ!」
攻撃魔法ではネギにもあたってしまうし、捕縛魔法でも小太郎は避けるだろう。
「男なら男らしく、拳で語れやッ!!」
振るわれた右腕を避け、カウンターとして小太郎の顔面に拳を入れる。この程度の速度であれば、反応出来ない事は無い。
昔似た様な事をラカンも言っていたし、ラカンと比べれば小太郎など恐れるに足らない。彼はもっと強く、速く、理不尽だった。
高速の戦闘に置いて、ネギは小太郎の攻撃を受け流す様に腕や脚を使う。独学で学んだものだが、それは例えるなら中国拳法に酷似した動きだ。
「ふッ!」
息を吐くと同時に小太郎の攻撃を受け流し、そのままの勢いで鳩尾へ掌底を当てる。
「がッ──クソッ、やるやないか!」
かなり強めに入れた筈なのだが、獣化した所為か、身体が頑丈になっているらしい。ネギの攻撃で意識を失う事無く一歩踏み込む。
ネギは一瞬ふらついた小太郎の隙をついて距離を取り、同時に詠唱を終えて待っていたベルが魔法の射手を放った。
「『魔法の射手 連弾・雷の十七矢』」
「犬神ィ!」
練られた魔力と気の量の違いか、小太郎の犬神は魔法の射手の威力を減衰させるだけにとどまり、打ち破るには至らない。
だが、それだけで十分。小太郎は最低限の被弾を覚悟してネギへと走り、ネギはその小太郎を見て動く。
「『魔法の射手 連弾・雷の九矢』!」
「効かへんで!」
吹き荒ぶ魔法の射手を掠りつつもかわし、ネギへと肉薄する小太郎。ベルは既に別の魔法の詠唱に取り掛かっており、ここなら行けると小太郎は確信し。
「来れ虚空の雷、薙ぎ払え! 『雷の斧』!」
雷系の
弾き飛ばされた小太郎にベルの『白き雷』が連続して直撃し、戦闘不能にまで追いこむ。
此処までやれば勝負ありだろうと思うも、先程の事があるので安易には近寄らない。『戒めの風矢』を以て拘束し、気絶している事を確認してから、二人は息を吐いた。
●
「あらま。あそこまであっさりやられるとは思わんかったわ」
結界内部、ベルとネギから離れた場所で千草が一人呟く。実際、二体一なら苦戦しても善戦はするだろうと予測していたのだが、二人の実力が予想以上に高い事に驚いた。
一対一でも小太郎は勝てないだろう、二体一なら尚更だ。あれでは月詠も危ない。
まぁ、どの道小太郎は捨て駒程度の価値しかないのだ。負けても特に文句は無い。実力を試す為の当て馬として、十分に役割を果たしてくれたと言える。
伯爵が気にかけている姉弟。現状の実力と周囲の調査。それが、千草に与えられている命令の一つだ。
とはいえ、あの程度の子供が何故伯爵の眼に止まったのか疑問に思っている千草だが、その辺りはどうでもいい。命令である以上逆らう事は無い。
「……ノア様。こちらは終わったようです」
『ああ、そうかよ。どうせ動くのは夜だ。適当に暇潰しとけ』
マーシーマのぶっきら棒な声が念話で届く。結界は既に解除しており、ネギとベルは小太郎を連れて本山へ向かったようだ。
『エクソシストの餓鬼どもを手っ取り早く潰すには、一か所に集めるのが一番だからな。こっちも直ぐに終わるだろうよ』
マーシーマがやっているのは、過激派の殲滅──もとい、AKUMAの餌とするためにアジトを回っているのだ。
余計な情報をペラペラと話されても面倒だし、情報を消すにはやはり口封じが一番楽だ。何体かエクソシストと鉢合わせしたようだが、既に破壊されている。
生き残っている者はおらず、あちらは手詰まり状態で途方に暮れている事だろう。
「しかし、集まっているエクソシスト全員と言うと、少々危ないのではないでしょうか」
総勢六名。詠春も含めれば七人が、この京都に集まっているのだ。幾らノアとはいえ、大丈夫なのかと問う。
『舐めてんのかよ、テメェ。俺が元帥でもねぇエクソシストに負ける訳ねぇだろうが」
元帥レベルともなれば無傷で済む可能性は低いが、マーシーマはノアの中でも戦闘に特化している。ワイズリーなどよりは余程安心できるだろう。
『それにどうやら、「剣帝」の奴も京都に入ってるらしいしな』
『剣帝』──千草はその人物について知らないが、千年伯爵に協力している人間だと聞いている。実力の程は知らないが、それなりの強さらしいと噂されている為、援軍としては上々なのだろう。
まぁ、実際の所、マーシーマも会った事は無いのだが。と言うより、ここ十年くらい誰にも姿を見せていない。
死んだとされていたが、千年伯爵がそれを否定する為にまだ生きていると認識されている。
「そうですか。それでは、月詠を回収した後にそちらへ戻ります」
念話を切り、千草は月詠がいるであろうシネマ村の方向へ歩き出した。