第五十八話:血戦
「ぐ……ごほっ! クソッタレ……なんて威力だよ」
額から血を流し、まともに動かない左手を確認して、一誠は視線を上げた。
そこには、敵意を剥き出しにした赤龍神帝──グレートレッドが静かに佇んでいた。先程の暴虐は挨拶だとばかりに、立ち上がるのを待っているようにもとれる。
先の一撃でヘラクレス、ジャンヌ、ジークフリートの三人は戦闘不能にまで追い込まれ、その後ろにいたおかげで助かったアーシア達もほぼ虫の息と化していた。
放っておけば、まず助からない。
とはいえ、助ける義理も無いし余裕もない。グレートレッドを前にして、ようやくその事実に直面する。
「おい、曹操。死んでないんだろう、出て来い」
「……ゲホッ。やれやれ、こっちも死ぬ所だったんだけどね」
ゲオルクが咄嗟に禁手化したおかげか、それとも攻撃の殆どを一誠の聖なる右で相殺したからか……ともかく、一誠、曹操、ゲオルクの三人は比較的ダメージが少ない。
少ないだけで、大怪我と呼べる状況ではあるのだが。
瓦礫をどかしながら出てきた曹操とゲオルクに視線を向けた後、直ぐにグレートレッドへと戻す。
「流石に、想定外だな。ここまで化物だとは思わなかった」
「オーフィスが戦いを避けるくらいだから、相当だとは予測していたが……完全に見誤ったな、これは」
曹操とゲオルクがそれぞれ感想を述べる。
そう、完全に見誤った。──なにせ、最初から聖なる右の出力限界をぶっちぎった威力の攻撃をしてきたのだから。
でなければ、ここまで被害は出ていない。
『不死身』を自称するジークフリートが盾となり、ジャンヌの禁手の龍を盾として用い、ヘラクレスが受け止める……あの三人の防御を容易く貫いているのだ。死ななかっただけマシと言えよう。
「ゲオルク、『龍喰者』は?」
「準備に手間取りそうだ。それに、わざわざ待ってくれるとも思えない」
既に二撃目の射撃体勢に入りつつあるグレートレッドを見ながら、ゲオルクはそう言う。
一撃目──それも一誠が相殺しきれなかった衝撃波で、結界空間が崩壊しつつある。よく壊れなかったものだと言いたいが、禁手まで使用している為不可能ではないのだろう。
絶対的強者。二天龍さえ超える化物の力の一端。オーフィスと同位階の存在。
二撃目は、まず耐えられない。
「逃げるのが吉か? とはいえ、呼び寄せた以上は逃がしてくれるとも思えないな」
「あのレベルの相手じゃ、『覇龍』だって通じるかわからん。聖なる右の限界を超えてるんだ、まともに勝負した所で勝ち目は無いぞ」
「……神滅具持ち三人が禁手を使っても足元にも及ばない、か。出し惜しみをすると本当に死にそうだな、これは」
こうして話している時間ですら、本当はもったいない。
だが、グレートレッドの攻撃はこの空間内全域をカバーする。何処に逃げようと、仕切られた結界内では逃げ場そのものが存在していないのだ。
だからこそ、曹操は槍を掲げて叫ぶ。
「槍よッ! 神を射抜く真なる聖槍よッ! 我が内に潜む覇王の理想を吸い上げ、祝福と滅びの狭間を抉れ──! 汝よ、意志を借りて、輝きと化せッ!!」
荘厳なる真言。曹操の口にした呪文が進む度に、聖槍の先端が開いて莫大な光が輝く。
『
それを、戸惑う事無く曹操は使用した。
●
轟!! と暴風が吹き荒れる。
曹操の聖槍を中心として、莫大な光が辺り一帯に広がり続け、曹操自身の怪我を治していく。流石に血塗れになった服まで元通りにはならないが、近くにいたゲオルクや一誠──果てはジークフリートや木場達まで、グレートレッド以外の者の怪我が完治していた。
「これが、今回の『覇輝』の効果か……?」
「否」
一誠の呟きに対し、曹操が口を開く。ただし、その声は曹操のものでは無く、もっと荘厳で、辺りに響く声だった。
それを、一誠は一度聞いたことがある。僅かに声を聞いただけだが、それだけで忘れられない存在感を示した驚異の存在。
──聖書の神。
「私の遺志を呼び起こしたのは正解と言えよう。此度の件は、卿らには手に負えまい」
その瞳の色は黄金。髪の色こそ変わっていないものの、その圧倒的とも言える存在感を間違える事は無い。
「てめぇ……まさか、曹操の体を乗っ取って出てくるとはな」
「ふふ……そう言うな。私としても、ここで君に死なれては困るのだ。厄介な存在を敵に回したものだが……まぁ、あれとまともに相対できる存在は、他にもいるだろう?」
「……オーフィスか」
呆気に取られているゲオルクを無視し、一誠と曹操──聖書の神は会話を続ける。
「だが、まずはアレをどうにかしないと生き残れないぞ」
一誠が向けた視線の先には、既に射撃体勢に入ったグレートレッドの姿があった。
膨大な力の塊が渦巻き、今にも放たれんと照準を定めている。だが、それを見ても聖書の神は余裕を崩さない。
「あの程度であれば問題は無い。だが、余り全力で来られても困るな──それに、卿らはここでは邪魔にしかならん。退くが良い」
指を鳴らすと同時に、崩壊しかけていた結界が再構築される。再度作り出された結界は、ゲオルクが作った物よりもはるかに強く、堅牢となって。
「これは──『絶霧』の力、か……?」
更に指を鳴らし、今度は地面から骸骨の兵隊が姿を現す。何をするのかと思えば、聖書の神は気絶している者達を骸骨に持たせ、結界の外へと運ばせているようだった。
「こっちは、『魔獣創造』……どうなっている……?」
ゲオルクが絶句し、一誠が考え込む。結界から全員を出すと同時に聖書の神は一歩前へと踏み出し、自分が前衛を受け持つとばかりに槍を構えた。
だが、聖書の神とて初期状態で挑むつもりは毛頭ない。最大の力を最高の状態で発揮してこそ、ようやくグレートレッドと相対し得るのだから。
「──禁手化」
ドンッ!! と空気が爆発する。輝きが増した聖槍に手を添える聖書の神は、懐かしいモノを見る様に目を細め、調子を確かめるかのように槍を振るった。
グレートレッドが放つ、暴虐の塊に対して。
「──ッ!」
凄まじい衝撃が辺り一帯に轟き渡り、閃光が世界を覆い尽くす。
切り裂かれた力の塊は斜めに突き進み、地面を大きく抉って消滅する。今度は、結界が揺らぐ事すらない。
「ふむ、こんなものか。久方ぶりに力を振るったせいか、勘が鈍くなっているな」
軽く槍を回しながら、聖書の神は軽く言う。
下手をすれば肉体ごと消滅してもおかしくないような攻撃を、なんでもないかのように切り裂き消し飛ばす。──これだけの存在が、魔王と同格など信じられる筈もない。
その辺りを問い詰めたいところだが、それよりも先に聞いておく必要がある事が出来た。
「……その禁手、曹操のものなのか?」
「いや、この者の禁手はまた別だ。これは私だけが使える一つの隠し要素、と言ったところか」
ならばひとまず安心できる。扱っているのが聖書の神だからというのもあるだろうが、聖なる右の一撃を超える攻撃が出せるなら、曹操の脅威度を引き上げなければならない所だった。
いや、どちらにしても曹操は英雄派の中で最も警戒すべき男ではあるのだが。
「兵藤一誠、卿は残れ。他の者は結界の外に出した、ゲオルク──だったか。卿はここから出るが良い。ここにいては巻き添えで死ぬぞ」
「俺を残らせる意味はあるのか?」
「卿はどのみちあれと闘うつもりなのだろう。であれば、斃すべき敵の力量を知ると言うのは悪くない」
それに──
「──神上へ至ると言うのであれば、この程度の事が出来なければ話にならんぞ?」
聖書の神は笑い、槍を掲げて強大なエネルギーをグレートレッドへと放つ。
濃縮され、最早一つの概念にまで練り上げられた神器の一撃はグレートレッドの胸部を貫き、一時的に怯ませる。だが、みるみるうちに傷が修復していき、グレートレッドは何も無かったかのように叫び声をあげた。
「GYAOOOOOOOO──ッ!」
先程よりも強力な一撃。一誠達へ敵意を持って排除にかかるグレートレッドを見ながら、聖書の神は急かすようにゲオルクを退避させる。一誠はオーフィスへの言伝を頼み、ゲオルクは結界の外へと消えた。
「どの道、彼奴が残っていても役立つ事はあるまい。私がいる以上、『絶霧』の所有者はいなくとも問題無い」
「……それは、お前が『絶霧』の力を使えるって解釈で良いんだな?」
「然り。そもそも、神器を作ったのも、神器システムを作ったのも私だぞ? システムの根本が私の手中にある以上、そこから枝分かれしている神器も神滅具も等しく使用可能だ」
このようにな、と槍を持たぬ左腕を振る。
それだけで連続して落雷が起こり、巻き起こった霧が集まってグレートレッドの動きを封じ始めた。
(『煌天雷獄』と『絶霧』の力を連続して……とんでもない化物だな)
だが、それだけにこの状況では頼もしい。
各種ランキングで番外扱いされているグレートレッドは、オーフィスと同質──言うなれば、一つの概念にも近い存在だ。
それゆえ、グレートレッドを殺す事は困難を極める。まともに闘っても力の総量を削り切れない以上、消耗戦で敗北するか単純に力負けするかしかない。
だが、一誠の右腕は違う。
『龍殺し』の特性を帯びた聖なる右は、それ単体で龍の力を削ぐことが容易となる。だが、これもまた不完全な出力装置。一誠が持つ力の総量は計り知れないが、それを出力する聖なる右に限界がある以上、グレートレッドとの戦闘で力負けする事は確かに考えられることだ。
だが、聖書の神の力は悠々とそれを超える。
更には、他の神滅具まで使用して闘う。
一誠の不思議そうな視線に気づいたのか、聖書の神は的確に一誠の疑問に答えた。
「神滅具の殆どは私の神話から形作られている。それゆえ、私が力の使い方を知っていたところで、別段おかしくはあるまい」
(……確かに、神滅具は『赤龍帝の籠手』や『白龍皇の光翼』なんかの『魂が封じられた』神器を除けば、聖書の神の神話から作られていると言える)
『黄昏の聖槍』は言うまでも無く、『絶霧』は天地創造を、『魔獣創造』は天使の創造を、『煌天雷獄』は恐らくノアの大洪水の神話をそれぞれ用いられているのだろう。
上位四つの神滅具に限らず、他の神滅具にも言えることだ。
神器を自分の手足のように扱う──それはまるで、初めから聖書の神が自分の為に作り出した様にも思えるが──
──真実は、分からない。
「なにはともあれ、彼奴も本気になった。今までのような生温い攻撃ではなく、本気で私達を殺しに来るぞ──覚悟しておけ」
「言われるまでも無い」
聖なる右を振るい、超巨大な剣を以てグレートレッドの体躯を両断する。僅かにでも挙動が遅れればもうけもの、程度の考えではあるものの、龍殺しの特性を備えている事を鑑みれば、それくらいはむしろあって当たり前だろう。
僅かに力が削がれ、両断された身体が瞬時に再生していく。それはさながら時が巻き戻っているようにも見え、感じられる力が目減りしていないことに対して微かな焦燥感を覚える。
集束する攻撃では無く、広範囲に広がる攻撃を連続して繰り出すグレートレッド。溜める動作が必要無く、雨のように暴虐の嵐が吹き荒れた。
その中、高速で疾走する姿が一つ。
「余り舐めてくれるなよ?」
聖槍を一振りするだけで聖書の神へ向かった攻撃の殆どは消し飛び、残りは『絶霧』による霧で壁を作って防ぐ。一誠はこの程度ならば問題無く聖なる右で相殺できるため、心配などしていない。
地表に降り注ぐその攻撃は大地を揺らし、爆音とともに衝撃波をまき散らす。
その中を一瞬で走り抜け、聖書の神は聖槍を横薙ぎに振るってグレートレッドの皮膚を切り裂こうとした。
だが、その刹那。グレートレッドの姿が視界から消える。
「何?」
視界にとらえられないほどの速度を以て、グレートレッドは上空へと移動していたのだ。
巨大な質量が凄まじい速度で動いたせいか、辺りには暴風が吹き荒れるが──聖書の神はそれを気にした様子も無く、槍を構えてそれを投擲する。
音速をはるかに超えて穿たれる槍。喰らったところで死ぬわけでも無いグレートレッドは、敢えてをそれを受け、ほぼ同じタイミングで魔力の塊を撃ちだした。
「む──」
「チッ!」
槍を手放した直後の聖書の神では、あの攻撃を防ぎきれない。そう判断した一誠は、瞬間移動さながらの速度で聖書の神へと近づき、そのまま攻撃圏内から脱出しようとするが──
──聖書の神は、それを拒否した。
「──禁手化」
鼓膜が破れるかと思う程の爆音が響き渡り、辺りに土埃が舞う。
グレートレッドの攻撃が通った部分は一直線に地面が抉れており、聖書の神と一誠はその中央に無傷で立っていた。
「……ふざけた野郎だ。『絶霧』の禁手まで使えるのか」
「その辺りについては説明した筈だが。まぁ、元々神器──中でも神滅具というのは膨大な可能性の塊だ。卿の持つ『赤龍帝の籠手』と『白龍皇の光翼』は、神滅具の中でも変わり種ではあるがね」
可能性の塊──それは、裏を返せばゲオルクでもこの規模の防御壁を張れることが可能になると言う事。曹操だって、可能性を突きつめれば聖槍の力を更に引き出せるようになるだろうし、レオナルドも同じだろう。
そして、一誠とヴァーリもまた然り。
「私の力を
「……まて、切り離しただと? それは、つまり」
「そうだな。神器──詳しく言うなら、神滅具を作ったことで私自身の力の総量が削れたと言う事になる」
ならば、現在の方が力が強いと言うのも頷ける。かつては肉体があった故に神器システムを間接的にしか操作できなかったが、今は魂の残滓が神器システムの中枢に存在している。
曹操の肉体を借りてこの場に存在しているとはいえ、システムと直結していると考えて良いだろう。
ならば、今の聖書の神は全盛期の力を振るえると言う事になる。それがどれほどのものかは、一誠には想像がつかない。
「心配せずとも、『覇輝』を使ったとて意識まで表出させることはあるまいよ。今回が特別なだけだ。次は無いと思いたまえ」
「分かっているさ。あんたの力を借りるつもりは毛頭ない」
簡潔に告げ、一誠は聖なる右を振るう。振るうと同時に爆風が吹き荒れ、土埃を吹き飛ばし──グレートレッドの巨体を、その眼に焼きつける。
あれが超えるべき壁。
あれが斃すべき敵。
あれが──この世界の頂点だ。
「どのみち、アンタも超えるつもりだ。目標は世界最強──グレートレッドを斃せるようにならなきゃ、意味が無い」
オーフィスとの約束が果たせない。それは、一誠の矜持に関わる。
現在の力を考えれば、プリシラの件は直ぐにでも片付けられる。誰が仇かは知らないが、取りあえず全滅させれば問題無いだろう。
だが、グレートレッドはそうもいかない。現時点で最強に相応しい敵である以上、己もその高みに上がる必要があった。
「ふふ……その意気だ。卿には期待しているよ」
手元に戻ってきた聖槍を構え、更に力を引き出す。表出していた光はさらに輝きを増し、うねりを上げて刃と化す。
最早手加減する事を止めたのか、グレートレッドは先ほどとは比べ物にならない威力の爆炎を吐きだした。それは二条城を含めて結界内全域に撒き散らされ、逃げ場のない灼熱地獄となる。
左手に持った杖を用い、魔導書から複数の魔術を並列起動させる一誠。同時に禁手化し、魔術を倍加させる。
「さてはて、野郎相手に何処まで魔術が通じるかな、っと」
『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!』
赤黒い閃光がグレートレッドへと直進するも、グレートレッドは高速でそれを避けて空中から急降下──その巨大な体躯を生かし、一誠を押しつぶそうと腕を伸ばした。
しかし、単純な物理攻撃であれば一誠には避ける手段が多々存在する。
一歩で数百メートルの距離を取った一誠は、間をおかずに聖なる右を振り上げ、その巨大な剣でグレートレッドを両断せしめんとする。
本来「避ける必要性のない」攻撃ではあるが、本能的に「龍殺し」の力を嫌っているのか、グレートレッドは回避に移った。
「逃さん!」
『絶霧』を使用して一時的に足場を作り、空中を疾走する聖書の神。地上に降り立っているグレートレッドへと、莫大な力を持った槍を投擲する。
それを喰らって咆哮するグレートレッド。自分よりはるかに劣る二人に対して、いらつきの様なものを感じているのかもしれない。
だが──あくまでも、二人の闘いは時間稼ぎに過ぎない。
高速で上空へと移動したグレートレッドは、鬱陶しく感じた二人を確実に殺す為、この空間ごと消し飛ばしかねない威力の力を集束しはじめた。
「クソがッ! あんなモン、どうやったって防ぎきれねぇぞ!」
「私の力にも限界がある──それに、力を使い過ぎた。この者の肉体も、内側からぼろぼろになっている」
聖書の神が振るった力は、その土台となる肉体があってこそだ。本来の肉体であればともかく、英雄とはいえ人間の体では、複数の神滅具の全力を使うというのは負担が大きすぎる。
このままでは、死ぬ。
あっけなく、死ぬだろう。
そんな事などお構いなしに、グレートレッドは躊躇なく強大な力の塊を撃ちこんだ。
だからと言ってあっさり諦める二人では無い。一誠は聖なる右を振るい、聖書の神は聖槍の力を最大限まで引き出して相殺しにかかる。
バヂヂヂヂヂヂィィィッ!!! という強力なエネルギーのぶつかり合いが起こり、余波だけで辺りの建物が崩壊していく。
「お、おおおおおおおおおおおおォォォォォォォォォォォッッッ!!!」
出力が、足りない。
絶対的に、圧倒的に、完璧なまでに、出力が足りない。
既に右腕の感覚が無くなってきている。グレートレッドの攻撃が一誠達の攻撃を消滅させ、呑み込まんとしているのだ。
──それは、絶望の象徴のようでさえあった。
迫り来る巨大なエネルギーの塊。逃げる事すら敵わない絶対の一撃が一誠たちを飲み込まんとして──
「──来たか」
バヂィッ!! と空間を引き裂き、グレートレッドの攻撃を相殺する形で莫大なエネルギーが後方から放たれる。
衝撃波で吹き飛ばされるも、一誠はもはやその程度の事に頓着しない。
「……ようやく来たか。待ちくたびれたぜ」
黒を基調としたゴスロリを着た少女。それ単体で完成している、「究極の一」とさえ言える力を持つ存在。無限を象徴する龍。
「遅れた。ゴメン、イッセー」
──オーフィスが、イッセーを守るかのように立ち塞がった。
オーフィスさんマジヒロイン。