第六十一話:真相
学園祭が終わり、グレモリーとバアルのレーティングゲームも決着がついた。
若手最高峰の力を持つとされる二つのチームの闘い。雌雄を決する直接対決のレーティングゲームを制したのは──サイラオーグだった。
無論、順当と言えば順当な流れなのだろう。
正史では使われた筈の『
一誠に勝つために、英雄派に勝つために鍛錬を積んだグレモリー。彼らは確かに強くなったが、サイラオーグとて何もしていなかったわけではない。
以前のプリシラとの戦い。聖人相手だったとはいえ、敗北一歩手前だった。この程度では駄目だと、更に自分の肉体を虐めて鍛え上げた結果が如実に出ていると言うだけのこと。
二つのチームが正史よりも強くなったことはだれにも分かる事は無い。しかし、それでも確かに強くなっている。
──しかし、それでも頂には届かない。
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「……お前、本気か?」
アザゼルは内密に連絡してきた相手に対し、呆けた顔で問う。
相手は苦笑を洩らしつつも、それに対して答える。
『当然だ。彼──今は彼女か。彼女の意志も確認済みだ。それになにより、これは兵藤一誠が提案したことだしな』
アザゼルへとプライベートな回線を開き、通信用の小型魔法陣を介して話すヴァーリ。
ただ、言っている内容はとんでもない。下手をすれば勢力図が塗り替わる──そんなレベルの話だ。
「……赤龍帝か。それにお前が乗ったって事は、それだけじゃないんだろ?」
『流石に鋭いな。分かっていたことだが、その鋭さは他の勢力からも疎まれ始めているだろう?』
「余計な御世話だ」
『その余計な御世話を振りまき過ぎて、何か企んでいるのではないかと邪推するものも少なくないと聞くが?』
堕天使の総督が「和議」だの「和平」だのと語りだした時点で、既に邪推されてもおかしくないだろう。
胡散臭いと言われるのもむべなるかな、である。
それよりも、とアザゼルは続ける。
「答えろ。誰が動いていたとしても、近くに兵藤がいるだけで手は出せない筈だ。奴の力は化物といっても良い。それこそ、聖書の神に匹敵する位にな。幾ら強大な力を持つ奴でも、下手に手を出せば返り討ちに遭うのは目に見えているだろう」
『俺も兵藤一誠もそれを分かった上で、この提案をしているんだ。……どうにも、彼女を狙うものがいる。それだけは事実だ。それに加えて、厄介なことに兵藤一誠も動けない状態になっている。この機に乗じて動く奴が現れるかもしれない──身内からな』
「……なるほど。赤龍帝の奴が動けない状態、か」
それならば、確かに手を出すには絶好の機会だろう。アザゼルは聖槍を持つ青年の姿を思い浮かべつつ、そう思考する。
とはいえ、彼女自身もまた強大な力を持つ。どれほどの力を以てしても滅する事の出来ない彼女を疎ましく思う者はいても、それを実行出来ていないのが現実だ。
だからこそ、それを知っていて動くのは、絶対の自信がある者か、または単なる大馬鹿者だ。
そして、今回動いている者は──前者だった。
「いぶりだす気か?」
『敵かどうか。それをハッキリさせるだけさ』
声だけでも、既に高揚していることが分かる。聖槍を持つかの英雄の子孫と、決着をつけることになる。それを期待しているのだ。
最後に一つだけ、アザゼルはヴァーリへと問いかける。
「それで、赤龍帝はどうして動けない状態に陥ったんだ?」
『俺も良くは知らないが……部下であるプリシラが言うには、「神に会いに行った」との事だ』
●
此処に来るのも二度目となる。
荘厳なる扉。暗い世界の中に一つだけ存在する、本来開けられる事の無いであろう最後の扉だ。
神器の最奥部。人類の集合無意識の一歩手前まで踏み込んだ一誠は、その扉の前に立っていた。
「……ようやく、か」
感慨深い気持ちになるのも仕方が無い。この場において、一誠の望む答えが唯一存在するであろう場所こそが、この扉の奥なのだから。
『相棒が知りたい事を知っていればいいがな』
「知っているさ。思わせぶりな発言にしては、余りにも踏み入り過ぎてる」
聖書の神。ここに来ることになった発端の存在であり、なによりも知らなければならない真実を唯一知っている存在。
ゆえに、一誠にはこの扉を開けることに否は無い。
扉は重さなど無いかのように簡単に開き、奥へと続く通路が伸びていた。
──以前見た時は、すぐ傍に聖書の神がいた筈だが。
とはいえ、ここは聖書の神の独壇場。『絶霧』という創造の神器も存在する以上、内部をある程度作り変える事など造作も無いのだろう。
ここは魔城だ。死んだはずの神が統べる、今もなお世界に影響を及ぼし続ける神器の存在する魔城。
通路の奥にはまた扉があり、それを開けた先には薄暗い部屋と目の前に階段が。更にそれを降りた先には円卓があった。
一誠が入ってきた扉の方向を向いているのは、聖書の神。以前一度だけ見た、金色の髪に金の瞳。人体は黄金比を表したように眉目秀麗な男。白を基調とした包囲を着ており、暗い中でも一際存在感を主張している。
『ようこそ、兵藤一誠。私は卿を歓迎しよう』
階段を下り、円卓の前まで来た時、聖書の神はそう告げた。
正面に立つだけで圧倒されそうになるほどの存在感。気を張っていなければすぐにでも意識を落とされそうになる程、目の前の神格は絶対的だった。
『立ったままというのもなんだ。座るがいい』
十三の席が存在する円卓の中で、聖書の神の対面に座る一誠。
「……それで」
『分かっているとも。聞きたい事があるのだろう? 私に答えられることであれば、質問には応じよう』
あっさりと肯定の意を示す聖書の神。掌の上で動かされているような気分になるが、そんな事を気にしている場合では無い。
まずは一つ目。
「俺に死なれては困る、というのはどういう意味だ」
『どうもなにも、そのままの意味に過ぎんよ。卿に死なれては、私の思惑から外れてしまうのでね。もっとも、舞台裏から操るような真似は余り得意ではないのだが』
「……思惑?」
『ふむ、どこから話したものかな。一から話すのは少々骨が折れる。かと言って、中途半端では卿が納得すまい』
眉をひそめながら問い返す一誠に、少しだけ考えるそぶりを見せる聖書の神。
一誠はそれをただ見つめるだけで、聖書の神は少しした後、考えを纏めて口を開いた。
『そうだな、まずは根底である私の目的から話していこう──端的に言って、私の目的は次代の神の創造だ』
「次代の神、だと? そんな事が出来るのか? そもそも、神なんてのは創造するものじゃないだろう」
『普通ならばな。しかし、人から神へと成ったものも存在する。日本に住む卿ならば、なじみ深いものがあるのではないか?』
日本においては、高名な人物が没した後にそれを神として祀る事がある。大きく分けると二つあり、生前にこの世に恨みを残して没したものが祟りを引き起こすことを恐れてこれを鎮めるために祀るものと、生前に優れた業績を残したものを死後に神として祀ることでその業績を後世に伝えようとするものだ。
前者は天満大自在天神(菅原道真)、後者は豊国大明神(豊臣秀吉)・東照大権現(徳川家康)が代表例として挙げられる。
これを知っているからこそ、聖書の神は行動に移した。
『思い立ったのは死の直前だったがね。だが、おおよそ思った通りに事は動いている。──卿の持つ、この世界のものではない記憶は、私にとっても些か予想外だったが」
「──ッ!?」
何故それを知っている。誰にも話していない以上、どうやっても知る事は出来ない筈だと、一誠は思考するが──
聖書の神は、少しだけ笑みを浮かべながら告げた。
『何を驚く。そも、卿の右腕の力は私が与えたものだぞ。次代の神の候補として神滅具まで持つ以上、気にかけるのは当然だ』
まぁ、私が与えた、というのは少々語弊があるかもしれないが、と続ける聖書の神。
聖なる右の力は、本来この世界には
それは、『異界の神』という存在を聖書の神が知覚したことに始まる。
ある時、聖書の神はこの世界のものでは無い、異質な力を感知した。どんな理由から知覚出来たのか定かではないものの、聖書の神はそこから異界を知ることにした。
物理法則を超越した、特異なる法則に支配された異界。それを、その世界の住人は『天界』と呼ぶ。
永い時をかけて僅かながらに接触する事に成功した聖書の神は、その力を『こちら側』へと引き摺りこみ、ある一人の人間に付与した。その際、この世界に存在するシステムを調整し、『魔術』と称して異界の物理法則を適用する事が可能となった。
そして──同時に、異界から引っ張ってきた力の影響で更に別の世界と繋がり、誰とも知れぬ記憶が流れ込んだ事で、今の一誠の人格が形成される事と成ったのだ。
『卿に付与したのは、ほぼ同時期に「白龍皇の光翼」を手に入れたのが旧魔王の血筋の者だったからだ。「赤龍帝の籠手」か「白龍皇の光翼」。私にとって、次代の神と成るべき器として選ぶのはこの二つのどちらかの所有者だった。……だが、白龍皇の方は旧魔王の血筋の者が手に入れてしまったのでな。仕方なく、という訳ではないが──卿がその力を手に入れる運びとなったのだよ』
「……何故、二天龍の魂を封じた神器の所有者の内、どちらかを次代の神に仕立て上げようとしている」
『その方が都合が良かったから、では不満かね?』
「不満だな。──ドライグとアルビオンを神器の中に封印したのも、それが理由か?」
『正解だよ。元々二天龍を封じた神器の持ち主のいずれかに託そうとは考えていた。二天龍は「覇」を象徴する存在だった上、神格を超えるだけの力も保有していた為だ』
更に言えば、一誠達の次の世代まで待つつもりは無い。死力を尽くして準備した以上、次の機会は何時になるともしれないのだから。
もっとも、必要だと思えば今ここで殺す事さえ厭わないだろうが。時間が必要なだけで、やり直しがきかない訳ではない。
しかし、それを一誠に言えば、計画が破綻する可能性を秘めている。ならば何故、素直にすべてを吐露したのか──それを聞くと。
『卿は約束を破らんのだろう。ならば、オーフィスと交わした約束を守る上で「神上」に至る必要があるのは自明の理。ここで話した所で、卿の行動は変わるまい』
京都でのグレートレッド戦。神滅具の力を最大まで引き出した聖書の神でさえ、勝利する事は叶わなかった。ならば、それよりも上回る必要があるのは言うまでも無い。
女、金、地位、名誉。その程度で動く俗物であれば、次代の神になる資格は無しとして、此処で精神を消し潰す気でもあったと、聖書の神はいう。
とは言ったものの、龍を宿すと言う事は必然的に異性や強敵を惹きつける。一誠に一人や二人女がいても不思議ではないと聖書の神は思っていたし、強敵を惹きつけることで神器や魔術の力を底上げする狙いもあったらしい。
性格こそどうにもならないが、これはドライグに任せた。力を振るうことに関しては意欲的な部分が存在した為だろう、この結果は僥倖と言える。
だからこそ、聖書の神の計画はおおむね順調であると言えた。
「『神上』の事を、お前は知っているのか?」
『具体的な部分は分からんがね。既存の神格を超える力を持った神格──そういう風に、私は認識している』
聖書の神は魔術師ではないし、かの世界における『天界』に住まう者でもない。そのため、『神上』という存在については概要程度にしか知らないらしい。
京都で言っていた事は、既存の神格である自分を超えられないなら、『神上』には至れないと──そういう意味だったのだろう。
もっとも、彼一人で地球上に存在するあらゆる生命を滅ぼす事さえ出来そうな気はするが。
『とはいえ、「神上」に至ったとしても、卿が覇道を志さぬのならば
「……神上に至る事と、覇道に何の関係がある」
『あるとも。少なくとも、私にとってはな。──覇道とは力を求める道であり、悪しきもののように扱われるが、そうではない。
「覇」とは、天下の為に惨を除き、暴を払い、義を尊び、威武強大にして、人々が皆おそれる支配者の事を言う。私がそうであったと自惚れるつもりはないが、少なくとも悪くない治世を築いていたと思っている。力によって統べることが悪と言うのならば、それは価値観の違いだろう。──それを決めるのは統治者では無く、統治される者たちなのだからな』
唯一神たる聖書の神。その持論として、「道は大別して二つ」であり、それは外側に向かうか内側に向かうかで決めるものだとして。
彼にとっての覇道とは「人を導くもの」であり、求道とは「己を変えるもの」であると言う。
なれば王道とは何か。と問えば、王道とは「人を導くもの」だと言う。
同じ「人を導くもの」として存在する、覇道と王道の違い──それは、「力」によるものか「仁義」によるものか。ただそれだけの違いだ。
『私の征く道は王道では無い。ゆえ、王道楽土を目指す者にとっては目障りであろうな。……「信じる者は救われる」などと言っても、私自身に信徒全てを救うだけの力は無かった。今も、昔も』
自嘲するような口調で、聖書の神は微かに笑う。
『神器を創り、人間が超常存在に対抗できるようになったかと思えば、今度はそれを利用しようと様々な勢力が動く始末。結果的に「
聖書の神に恨みを抱く神格は少なくない。彼らの信徒を奪い、彼らの神話を民間の信仰レベルにまで落としたのは紛れも無く聖書の神自身なのだから、それを否定するつもりもない。
向かって来る者を叩き潰す事は容易だった。元々最高クラスの力を持つ神格だ。神滅具を創ったことで総量が削れたとはいえ、それでも敵になり得るのは一部の存在のみ。
しかし──問題となったのは、神器を奪えると知った他勢力だった。
人々の信仰は天界の源。『システム』を創ることによって神の慈悲や加護を行き届かせることも出来たが、それでも総数には限界が存在する。
信徒でなければ救う必要はないなどとは思わない。神の慈悲は皆に平等だ。
ゆえに、神器を奪う為に人間を殺す他勢力を、黙ってみている事は出来なかった。
「だが、敵対している悪魔や堕天使を滅ぼさなかったのは何故だ。お前ほどの力を持っていれば、殲滅する事は容易かった筈だ」
『それは我々と悪魔、堕天使の三勢力で一つの神話になっているからだ。三位一体と言った方が、卿には分かりやすいだろう。元の意味とは違うがな。
ともかくとして、我々が「善」を司るなら悪魔達は「悪」を司っている。太極図を知っているだろう。あれを如実に表した関係だとでも思えば良い。──どれか一つの勢力が滅びること自体が、我々全ての衰退を意味しているのだ』
「……アザゼルは、そんな事を言っていなかったが」
『堕天使は元々私の部下だったからな。知っていたのは旧魔王と私のみだ』
知っていた者たちが死んだ後も、聖書の神は神器システムを利用してバランスを保ち続けてきたらしい。
時には敵とされる筈の悪魔勢力に力を貸してまで──である。
『必要なのはバランスだ。善悪どちらかに傾く事が良いとは言えんよ。それに、我々は立場上憎み合う怨敵だが、一つの神話体系として協力する同士でもあった』
そもそも、三大勢力の間に和平条約など存在する意味が無い。
旧魔王と聖書の神が生きていた時代は、互いに滅ぼし合う敵という立場だったとはいえ、三つ巴の状態になっても善悪のバランスが取れていた。
しかし、先の大戦によって旧魔王は死亡。同時に聖書の神も死に──全ては、歴史の闇に葬られた。
「……なるほど。知りたい事は大体知れた」
『ならば良い。──では、私から一つだけ頼みがある』
至極真剣な表情で、聖書の神は語りだす。
『いや、頼みと言うよりは取引か。本来、卿に頼むのは筋違いと言えるかも知れんが……天界に存在する、私の作った「システム」。それを破壊して欲しい』
「『システム』を破壊? 信徒を救う為の『システム』なんだろ。壊したら……」
『全て承知の上だ。これは私の自惚れが招いたことである以上、私がやるべきではあるのだがな。──全ての信徒を救う事さえ出来ない以上、「システム」は不平等の塊でしかあるまい』
人間を愛するが故に、ごく少数とはいえ幸福を与えている「システム」を破壊する。
全ての人類を分け隔てなく救えるのならばともかく、限られた数の人々しか救えないのなら、それは単なる不平等の表れだと彼は言う。
神とは本来、人々が信じ、平等に幸福を与える存在だ。
それと同時に苦難や試練を与え、人々を試す存在でもある。
神が世界を創り、世界を回す──そう言う風に考えられていた時代も、確かにあった。
『今の時代に、神など必要無い。信仰が無くとも人は生きていけるし、神がいなくとも世界は回る』
願った事、全てが叶う世界では無い。
古来、人間が信仰していたのは神では無く自然だった。現存する「神」という存在は、多かれ少なかれ人間の思惑が存在している。
人がすがるような、信仰が無ければ存在する意味の無い神など、単なる偶像に過ぎない。
ゆえに、一誠が「覇道」を志し、聖書の神を含めた全ての神格を殺して信徒を奪い──一誠自身が俗世に手を出さなければ、その時点で世界から「神」は消失する。
こう考えると、覇道とは一つの宗教を作り上げるようなものとも言えるかもしれない。
だからこそ、聖書の神は一誠に「覇道」を志すことが必要だと説いた。人間に「自然」を信仰させるように、人々に神を捨てさせるために。
それが人間のあるべき姿だと、聖書の神は告げる。
「……分かった。可能であれば、『システム』を破壊しよう。だが──」
『分かっているとも。先も言ったが取引だ──報酬として、神器システムにおける管理権限を卿に譲渡しよう』
神器の力の源はシステム内部に存在する。システムの権限を譲渡すると言う事は、神器に対する力の供給を止めることさえ可能だ。
とはいえ、顕現させる為の器にも力は存在するため、システムを掌握したとしても神器の使用を完全にやめさせることが出来る訳ではない。
神滅具であれば、器でさえ相当な力を有する──ゆえに、神滅具だけは器まで集める必要がある。
「神器システムを、か……」
そちらの管理権限まで明け渡すと言う事は、システム内部に存在する聖書の神の遺志が消えることを意味する。
聖槍に潜む遺志とて、このシステムの遺志と繋がっているのだ。消えてしまうと言う事は『覇輝』が使用不可になってしまうと言う事。
一誠からすれば好都合だが、相手が相手だけに裏があるのではないかと勘繰ってしまう。
『だが、ただでと言う訳にもいかん。卿が神に至る資格があるかどうか──それだけは確かめさせて貰うぞ』
視界の端から風景が変わる。薄暗い部屋の中から円卓が消え、一誠と聖書の神が立ち上がると同時に椅子が消え、囲っていた壁が消える。それと同時に無限に続く大地が視界に収まった。
空は暗く、月明かりに照らされているそこは──何も無い不毛の大地。人も物も何も無い、ただ地平の果てまで大地が続くだけの場所。
魔術が使えないことに舌打ちしつつ、一誠は何時でも動けるように構える。
聖書の神は構えるでもなく、一誠の様子を観察するように視線を向けるのみ。
『では──始めよう』
踏み込んだ一誠とそれに反応した聖書の神の拳が、同時に振るわれた──。