わーにんぐ!
今更ですが、この物語は「原作キャラ死亡」「魔改造」などの要素を含みます。
なお、「とある魔術の禁書目録」要素も含みますのでご注意下さい。
気分を害すこととなっても責任は持ちませんのであしからず。
それでも良いと言う方は、Irregular World第二部「忘却世界のユートピア」をお楽しみ下さい。
プロローグ
『そこ』には何も無かった。
地平の果てまで存在するのは暗闇と所々に見える白のモノトーンのみで、動物も植物も、何もかもが『存在していない』世界。
否、それは否だ。
『そこ』には二人の人間──人間とは言っても、姿形がそうであると言うだけの存在。『中身』は人間という枠には収まらず、『神』という型にさえ収まらないような二柱の怪物たち。
ぶつけ合う力は常識から掛け外れ、ともすれば世界に存在する『神』たちでさえもがその力を畏れるほどの、計り知れない存在であった。
そう、少なくとも、片方は。
対峙する二つの影は明確に状況を語らせており、二つの影が争っていたのは周りの惨状を見れば一目瞭然であった。
雌雄は既に決している。
結論など語るまでも無く、勝者がどちらで、敗者がどちらか──そして、敗者がどうなるかなど自明の理。
故に、『少女』は呟いた。
「こんなものか」──と。
●
兵藤一誠はふと眼を覚ました。
時刻は真夜中の三時。早起きにしても早過ぎる時間帯で、「明日も学校だしさっさと寝るかー」と早く寝た一誠は気分よく寝なおそうとベッドに転がる。
体を丸めて寝ようとするが、妙に寝付けない。仕方が無いから起きて水でも飲むかと上半身を上げて軽く背伸びをする。
月明かりが薄暗い部屋を照らすと同時に、外側からこぼれる光が何かによって遮られ、影を創りだした。
それは人の形をしていて、窓の外に誰かがいるようだった。このような時間帯にこの状況。だれしもが思い浮かぶ恐怖の代名詞を脳裏に浮かべつつ、一誠は窓枠へと近づいていく。
最近は春が近付いていると言っても、夜は未だ冷え込む。にもかかわらず、一誠の額には冷や汗が浮かび上がり、手も汗で気持ち悪さを感じる。
ゴクリと唾をのみ、カーテンの端を掴む。数度深呼吸をし、意を決してカーテンを一気に開いた。
「……あれ」
しかし、予想と違ってそこには誰もおらず、月明かりが街を照らしている様子が見えるだけである。
「脅かしやがって……」と拍子抜けした一誠は、やっぱり寝なおそうとカーテンを閉めてベッドへ向かおうとする──その直前、動きが止まった。
誰かが、部屋の中に居た。
黒いローブを着ており、その顔も、性別すら分からないが……ただ、自分と同じくらいの身長であると言う事だけが、一誠には分かった。
つい先日、駒王学園三年であり、上級悪魔でもあるリアス・グレモリーの手で悪魔となった事を知らされた一誠であるが、それでも怖いものは怖いのである。
しかも良く見れば宙に浮いている。
「ゆ、幽霊……!?」
ビビりつつも、反射的に神器である『赤龍帝の籠手』を発現させる一誠。
一誠が『幽霊』と評した存在が、左手に出現した籠手へと視線を向けるのを感じた。言葉を発する事は無く、表情を窺う事も出来ない為、彼ないしは彼女が何を考えているのかが全く分からない。
人が恐怖するのは、圧倒的な暴力でも、絶対的な権力でも無い。
純粋なまでに、「分からない」事に対して人は恐怖を抱く。
なけなしの勇気を振り絞って相対する一誠だが、嫌な汗が背中を流れるのを感じていた。
理由のない嫌悪感と理解出来ない恐怖心をぐちゃぐちゃにミックスさせつつも、相手の一挙一動を見逃すまいと眼を見開き。
「──■■■■」
紡がれた言葉を理解する前に、一誠の意識は闇に堕ちた。