せかんどぶれいく
王様と会うのは初めて
アギトの救出から1週間、自己紹介から俺の【魔法】の事を教えたら
「あたしも使えるか!?」
と聞いてきたので調べたところ古代ベルカ式を扱う為の体なので今のままでは使えないと伝えた。
「どういう事なんだ?」
「君自身は「古代ベルカのユニゾンデバイス」だから【魔法】は使えない」
「そうなのか……」
「だが君が自身を「古代ベルカのユニゾンデバイス」という括りを気にしないのであれば魔法が使えるように出来るけど?」
「そうなのか?」
「ああ、だが【魔法】を他の人間が知れば狙われるかもしれない。それでもいいのなら全力で応えよう」
俺の言葉にアギトはしばらく悩んだ後、「【魔法】を使いたい」と頼んできたのでアギトの体を少々いじり【魔法】を使えるようにした。
——断じてエロい事はしていない、エロい事はしていないぞ。
大事な事なので2回言いました。
簡単な結論を言うとアギトは「古代ベルカのユニゾンデバイス」ではなく「【魔法使い】の術式補助」になった。
リンカーコアや体の術式など【魔法】を使う為に改造した。なんだか魔改造みたいな感じになっちゃったけど本人が喜んでるからいいか。
1週間経ってアギト【魔法】の【基礎】は扱えるようになった。……悔しくなんかないもん。
「そして到着しました」
「急にどうしたんだ「マイスター」?」
「その「マイスター」はやめてほしんだけど……」
何故かアギトに「マイスター」って呼ばれるようになったんだよ。俺がアギトに【魔法】使えるようにしてから呼び方が変わったんだよな。
「何言ってんだ、マイスターはマイスターだぜ?」
「まあ、いいけどね」
ご主人様とか呼ばれてたら絶対に呼び方変えさせてたね。
「ところでマイスター、なんで急にここに来たんだ?」
「簡単に言うと「勧誘」かな?」
「勧誘?」
今俺達がいるのは「ミッドチルダ」と呼ばれるリリカルなのはでは有名な世界らしい。
そのミッドチルダの海岸沿いの一角に来ている。
時間は真夜中、格好は【魔法使い】の格好だ。見つかったら言い訳無用で御用だな……。
「ここに誰かいるのか?」
「よーく【視て】ごらん?」
「…………あ!」
「そういうこと」
ここら一帯を【認識】すると下の方に人工的な空間が存在する。恐らく遺跡の類だろう。
「なんだこれ?」
「古代ベルカ時代のものさ」
「え!?」
——【Ubergang(転移)】、【Bestimmungsort(指定地)】——
「ほい、到着」
「相変わらずマイスターの術式は洗練されてて凄えな」
「これに関しては慣れだな」
一瞬で遺跡の中に移動、目の前には棺のような長方形の石で出来た箱が1つ。
「マイスター、これ……中に誰かいる」
アギトが棺の周囲を飛びながら【探査】をして俺に告げる。
「ああ、しかもご丁寧に【封】までしてある」
「封印って事か?」
「果たしてそれを望んだのが自身か他者か」
「?」
「ま、開けて直接本人に聞いてみますか」
「ええ!?」
——【Offnen(開封)】——
石棺の封を外す、蓋がスライドし、中が見える。
——そこには少女がいた。5,6歳だろうか、どこかの民族衣装な服を纏った少女はゆっくりと瞼を開く。こちらを見て少し悲しそうな表情をする。そんな彼女に頭を下げて話しかける。
「初めまして、ガレアの王『イクスヴェリア』。お目覚めの気分はどうかな?」
『冥府の炎王、イクスヴェリア』
それが私についた名、私は『マリアージュ』と呼ばれた人の屍を利用した兵器のコアを生み出す事が出来る。
そして私と契約した『操主』はそのマリアージュを指揮する事が出来る。
それによって膨大な破壊と殺戮が起きた。例え私が望まなかった事とはいえ私が生み出した軍団によって引き起こされたのならばその責は全て私にある。
「初めまして、ガレアの王『イクスヴェリア』。お目覚めの気分はどうかな?」
眠りから覚めてその言葉を聞いた時、また戦争が始まるのだと思った。私が望まなくても私と契約した『操主』が望めば私は——
「おい、聞いてるのか?」
目の前で恐らくユニゾンデバイスと思われる30センチほどの存在が私の前で手を振っている。
「……聞こえています」
「だったらちゃんとマイスターに返事しろよ」
「……マイスター?」
『マイスター』と呼ばれた人物に再び視線を向ける。
黒い先の尖がった帽子、
全身を覆うゆったりとした黒一色のローブ、
顔は立てた襟によって伺う事は出来ない。
「あなたは、戦乱を望むのですか?」
「いやだ、めんどい」
………………え?
「え?ええ?」
目の前で少女が凄いうろたえている。
「戦乱とか興味ない、マリアージュ?操主?だから何?」
「絶対に命令を聞く軍団ですよ?恐怖も感じずに戦うんですよ?」
「いや、それぐらいなら自前で用意できるし」
「わ、私の知識や知恵は戦乱の世に必要不可欠だと思いますよ?」
「戦乱とかもう無いから、凄い前に終わっちゃってるから」
「え、ええ?」
あれ?聞いた話だと戦乱とか嫌がってるって聞いたんだけど何でセールスマンみたいに勧めてくるんだ?
「な、なら何故私を目覚めさせたのですか?」
「イクスヴェリア、という人間に会いたかったのさ」
「私に……?」
「冥府の炎王でもない、ガレアの王でもない。イクスヴェリアという1人の人間に会っていろいろ話がしたかったのさ」
「話がしたい……?それだけの為に……?」
「その通り、だけどその前に君の『体』を何とかしないといけないようだな」
「……!」
イクスヴェリアの瞳が大きく見開かれる。気がついてはいるみたいだな。
「……解るのですか?」
「普通解る」
「あたしでも解る」
「……貴方達は一体?」
「【魔法使い】だ」
「その補助だ」
「「よろしく」」
俺達が揃って手を差し出すと一瞬呆然としていたが俺達の手を取って
「よろしくお願いします」
彼女、「イクスヴェリア」は笑顔で答えた。