あらわれた
そろそろ、そして向こうでは
どうも遠坂時臣です。
うっかりではありません。神父に後ろから刺されたりもしません。
自分の世界に帰って来て早くも3ヶ月、帰ってきたその日に両親にイリアを紹介したら
「いい子じゃないか、よろしくイリアさん」
「女の子が欲しかったのよね〜」
異世界から女の子を連れて来た親の反応としておかしくない?
まあ、普通は異世界行かないし、異世界から女の子連れてくる事もないけどね!
イリアは養子として正式に「イクスヴェリア・遠坂」になりました。で、その当人は——
「…………おお」
——アニメを興味深々に鑑賞中です。
いやあ、こっちに来てから敏彦と試しに見せたアニメにドはまりしてからいろんなジャンルを関係無くガンガン見てます。
今のところ興味深そうに見ていたキャラクターが
Fate/Zeroの征服王とバーサーカー。
イリアの将来が不安でしょうがない。
「アララララライ!」とか叫びながら突撃してこないよね?
「アアアアアアア!」とか叫びながら街灯で殴りかかってこないよね?
絶対そうなりませんように……!!
「兄さん」
不安な事を考えていたらいつの間にか目の前にイリアがいた。
「どうした?」
「いえ、今後の事なのですが関わるのですか?」
「向こうの世界の事?」
「はい」
これは遠まわしに「関わるのをやめよう」って言ってる。
「そんなに気になるか?」
「私にとって脅威にはなりませんが注意はするべきかと思います」
「それは勿論そのつもり」
「まあ喧嘩を売られたら買いますが」
「……ちゃんと手加減してくれよ」
「勿論、殺しはしませんよ」
「……殺さないなら、いいのか?」
なんか違う気がするけど……?
「ハラオウンの様子はどうですか?」
「状態は安定したからいつ起きてもおかしくはないな」
「では?」
「俺が学校行ってるときに目覚めたら前に言った通りでよろしく」
「わかりました」
ひとまずの準備は整った。
あとは【世界】が安定したら再び出発だな。さて、なのはやアギトは元気かな?
「朝だぞー起きろー」
カーテンの隙間から朝日が差し込んでくる。もう少し、もう少しだけ寝かせて……
「仕方ありません、少々力技になりますが——」
「おはようございますっ」
一瞬で上半身を起こして笑顔で挨拶する。あ、危なかったよー……
「おはよなのは」
「おはようございます、なのは」
「『リニスさん』、アギトちゃん、おはようー」
起きてベッドから降りると空中に浮いているアギトちゃんと20歳くらいの薄い茶色の髪の女性、
『リニス』さんが私の着替えを持ってきてくれた。
「どうぞ」
「ありがと、リニスさん」
「いえ」
「リニス、そろそろなのはの親が来るぞ」
「わかりました、それでは」
次の瞬間リニスさんの姿は消えて立っていた場所には1匹の猫がいた。
それとタイミングを合わせてお母さんが部屋に入ってくる。アギトちゃんは既に隠れている。
「おはようなのは、今日もきちんと起きれたのね」
「おはようお母さん」
「それじゃあ、下に行ってるわね」
「うん、わかった」
お母さんが下に降りていってリニスさんの頭を撫でて
「それじゃあリニスさん、行って来ます」
≪いってらっしゃい≫
頭に響くリニスさんの声を聞きながら居間へと向かう。
【先生】達が帰ってしまってから4年が経ちました。
あの日公園で先生と出会って私の世界は大きく変わりました。
【魔法】との出会い、先生は【魔法】の危険性を当時の私でも解るように教えてくれたけど、私は【魔法使い】になる事を決めました。
それから先生と妹のイリアさんと先生の助手だったアギトちゃんと毎日のように【魔法】を教えてもらったり、遊んでくれたり毎日が凄い楽しかった。
そして先生が帰る時は先生に帰って欲しくなくてしがみついて……
——今思い出すと凄く恥ずかしい……!!
それからしばらくして私達はリニスさんと出会いました。
リニスさんは『プレシア・テスタロッサ』さんという『魔導師』の使い魔をやっていたそうです。
プレシアさんは事故で娘のアリシアさんを亡くしてしまいプレシアさんはアリシアさんを生き返らせる為にクローンを造ったそうです。
でもクローンは記憶移植を行ってもアリシアさんにはならず、プレシアさんは『アルハザード』と呼ばれる古代文明の都市に行く手段を探しているそうです。
リニスさんはそれを知って止めようとしましたが失敗してこの世界に流れ着いたそうです。
私と会ってからプレシアさんの元へ戻ろうとしても戻れなせんでした。
その後リニスさんと話して私が魔力供給をしていく事になりました。
もしもプレシアさんの元に戻れるか、プレシアさんと会えたらリニスさんに協力する約束です。
——やっぱり「家族」は仲良くして欲しい、と思うのは私のわがままでしょうか。
————リニスさんには話していないけど【死者蘇生】は【魔法使い】にとっては
「条件さえ整えば不可能ではない」話。
人には【記憶】だけでは足りない、【魂】という【設計図】がなければ本人には決してならない。
「どんなに外見を取り繕っても中身が違えばそれは別物にすぎない」
前に先生が行っていた言葉、先生は【死者蘇生】に関して何か思うところがあるみたいだった。
あの時は聞けなかったけど今度会えた時に聞けるかな?
そんな事を考えながら家族で朝ご飯を食べて学校に行く為にバスを待っています。
5分ほどするとバスがやって来てバスに乗っていつも座っている席に向かうと
「おはようなのは」
「おはようなのはちゃん」
金色の髪の実業家の両親を持つアリサ・バニングスちゃんと、
紫色の髪の資産家の家の月村すずかちゃん。
2人とは1年生の時に知り合って以来の友達です。
「おはようアリサちゃん、すずかちゃん」
「今日確か体育がマラソン測定なのよね。面倒だわ」
「そう?」
「別に面倒じゃないけど?」
「あんた達2人と一緒にしないで」
「えー」
「前にあんた達がサッカーで超絶機動したせいでサッカークラブ入ってる子が物凄く落ち込んだじゃないの!」
「ちょ、超絶機動なんて……」
「すずか、小学生どころか普通のサッカーは空中でボールを取り合わないから」
「にゃはは、あの時は凄く楽しかったね」
「そうだね」
「ねえ、今私の話聞いてた?」
「今日のマラソン頑張ろうね!」
「そうだね」
「無駄か!今までの話は全て無駄か!」
アリサちゃんが両手を天に向けて「うがー!」って言いながら伸ばしてる。
でも「学校のテストなんて100点は当たり前」って言ってるアリサちゃんも大概だと思うけどなー
——でも、すずかちゃんには私も思う事がある。
——それはすずかちゃんは【吸血鬼】だってこと——
最初は「人」とは違う感覚があって【魔法使い】なのかな?と思ったけどアギトちゃんが
「あいつ【吸血鬼】じゃねーか」
って言っててそれで判明した。
お兄ちゃんはすずかちゃんのお姉さんの「忍」さんとお付き合いをしてる。
一度お兄ちゃんが何の連絡もなく忍さんの家に泊まって朝に家に帰って来た。その日は晩御飯がやたら豪華だったのを覚えている。
気になったのは帰って来たお兄ちゃんの纏っていた気配がいつもと違った事。
何かお兄ちゃんとは別の「気」が混じり合っていた。アギトちゃんと話した結果は「何がしかの契約」を行った可能性。
……な、何をしたんだろう……?
それからお兄ちゃんと忍さんが付き合いだした。精神に作用するようなものではないみたいだけど。
そんな事を考えていたら学校についた。3人で話しながら教室に入る、アリサちゃんとすずかちゃんとは1年生から同じクラスなの。
「やあ、3人ともおはよう」
「うげっ」
アリサちゃんが声と一緒に嫌悪の表情を浮かべる、
すずかちゃんも声には出さないけどあまりいい表情はしていない。
私?【魔法使い】は表情と感情の繋がりを自由にできるの、便利なの。
「何の用よ」
「挨拶しに来たんじゃないか」
「あっそ、じゃあ席に戻りなさいよ」
アリサちゃんが威嚇しながら「彼」を遠ざける。「彼」はニヤニヤしながら席に戻っていく。
彼、『小山田 顕(おやまだ けん)』君は2年生の時に同じクラスになってから何度も話しかけてくる。
でもアリサちゃんもすずかちゃんも彼の事はあまり、いや十分に嫌悪している。
小学生とは思えない言動、私達に向けてくる視線。
何度もアリサちゃんにあしらわれても気にする事無く話しかけてくる。
実際アリサちゃん達だけでなく、クラスの大半から嫌われちゃってる。
【魔法使い】からすれば「彼」とは決して関わり合いたくない。
【魔法使い】にとって【転生者】など迷惑以外の何物でもないから——