はじまります
なのはと初めての『魔導師』 --Ⅰ--
「人は死ぬとゆっくりと時間をかけて【魂】という【書物】が次の新しい生の為に白紙の新しいページを開く」
先生はコーヒーを飲みながら説明してくれる。
「だが稀に次のページを開く事がうまく出来ずに俗に言う「前世」の記憶と人格を持ったまま生まれる場合がある。それを【転生者】と言う」
私は聞きました。「それはすごい事なのでは?」と
「いや、それは違う」
先生は首を横に振る。
「白紙こそが「正常」であり残っているのは言わば「異常」だ。そして転生者は必ず【異常】を持っている。
——尋常ならざる力か、
——異質なまでの叡智か、
どれにせよ歪んでしまっている存在は災いしか呼ばない。そしていずれ【力】に耐えきれず自壊する。
そんな面倒なものに関わりたいとは思わないね」
確かに彼を見ると歪んでいるとしか思えないほど大きな魔力を持っているの。
「全く何なのかしらあいつ」
アリサちゃんがうんざりしたように言う。気持ちはわかるけどそんなに露骨な表情しなくても……
「でも、あんなにアリサちゃんに文句言われても諦めないのは凄いと思うよ?」
「すずか……、じゃああいつのいい所一個でもあげてみなさいよ」
「…………な、なのはちゃん」
「アリサちゃんが大好きでしょうが無い所」
「そこの何処がいい所なのよ!?あんたらも目付けられてるでしょ!」
「え?」
「なんで意外みたいな顔なの!?」
「ま、まあまあアリサちゃん落ち着いて」
私がセリフにアリサちゃんが突っ込んですずかちゃんがなだめる。これがいつもの私達の風景。
<誰か、聞こえませんか——>
でもそんなゆったりとした日々はあっさりと終わりを告げました。
「リニスさん」
「はい、間違いなく『魔導師』の『念話』でした」
夜中に突然聞こえてきた言葉。すぐに起きると既に人の姿になっているリニスさんとアギトちゃんが傍に来ていた。
「おいおい、これって指向性無しか?」
「そのようですね、いったい何を考えているのやら」
リニスさんも溜め息をつきながらアギトちゃんの意見に賛成してる。私も信じられない、こんな『魔法』を大っぴらに使うなんて……!!
「魔導師の念話って素質があれば誰でも聞けるんですか?」
「そうですね、それなりの魔力があれば聞こえると思います」
「魔導師の魔法の使用ってこんなんでいいのか?」
「いえ、管理局が魔法の概念の無いと認識した世界では基本使用は禁じられている筈です」
「ここはどうなんですか?」
「すみません、そこまでは……。ですが少なくともこの世界で魔法の使用は許可されているとは思えません」
「じゃあ、何だったんださっきのは?」
「おそらく、他の魔導師を探していたのではないかと」
「ってことは」
「やっぱりこれが原因なのかな」
私達が揃って視線を落とすとそこには青色をしたローマ数字が刻まれた宝石が4つほどあった。
つい3日ほど前【揺らぎ】を感じて【索敵】したところ『これ』を見つけた。
それなりの魔力が込められて何かの術式のようなものが刻み込まれている。
なんの制御もなく魔力を放出していたのできちんと【封】をして保管している。
見た所一番大きな数字で「ⅩⅣ」と書かれているので少なくとも14個はあるって事なのかな……。
「見た感じではまだ少なくとも10個はあるでしょう」
「これっていったい何なのかな?」
「少なくとも【魔法使い】絡みじゃねえな」
「これは『ロストロギア』だと思います」
「ロストロギア?」
「今の技術では解明できない物をそう呼びます、これはその一種かと」
「なんで急にここに?」
「すみません、そこまでは……」
「とりあえず明日なのはが学校行ってる間にあたし達が探しとくぜ」
「うん、じゃあ私はそれまでに【捜索】で捜しておくね」
「わたしは何かあった時の為に起きていますのでなのはは寝て下さい」
「あたしも起きとくから安心して寝な」
「ありがとう」
私は2人にお礼を言ってベッドに入る。
いったい誰がこんなものをここにばら蒔いたんだろう?何の制御もない魔力の塊みたいなものを——
そんな事を考えながら私は眠りについた。
次の日になり学校に行く前に宝石の魔力を感じた大まかな位置をリニスさん達に伝えていつも通りに学校に行きました。
学校ではアリサちゃんが終始ご機嫌でした。理由は珍しく小山田君がお休みだったらです。
……学校を休んで喜ばれるって……
そして学校の帰り道——
!!魔力!?
「どうしたのなのは?」
「う、うんちょっと……」
「あ、あれ!」
すずかちゃんが指をさした場所には力無く横たわっている『フェレット』が1匹いました。
——間違いない、このフェレット。『フェレットの姿をしている』だけだ。
「どうしたのかしら?怪我をしているようには見えないけど」
「お腹がすいてるのかな?」
「とりあえず鮫島を呼んでうちがよく利用してる動物病院に行きましょう」
うーん、何があるかわからない……私が預かろう。
「あ、私がいい病院知ってるから私が連れていくよ!」
「え?そう?」
「うん!任せて!」
「噛まれたりしないように気を付けてね、なのはちゃん」
「わかったよすずかちゃん!それじゃあね!」
すぐにフェレット?を抱えると家に向かって走り出す。同時にリニスさん達に連絡する。すぐに来てくれると連絡が返ってきた。
うーん、何が起きてるんだろう……、この子は知ってるのかな?