ときをこえたさいかい
なのはと初めての『管理局』 --Ⅰ--
その日、先生の家で紅茶をご馳走になっていると来客を知らせる呼び鈴が鳴りました。
「来ましたか」
イリアさんはそう言って立ち上がる。
「なのは、私は彼を呼んできますので「客」を部屋まで通して下さい」
「はい、わかりました」
「リニスは茶をお願いします」
「はい」
「なのは、くれぐれも問題を起こさないように」
「だ、大丈夫ですよー」
「……そうですか」
「今の間は何ですか!?」
「早く応対に行きなさい」
「……はい」
——凄く納得がいかなかったけどお客さんを待たせちゃいけないから玄関へ急ぐ。
玄関の扉を開けると2人の女の人と私よりも少し年上の男の子がいた。
この人達がクライドさんの奥さんと息子さん、『リンディさん』と『クロノ君』なのかな?
——リンディさん、何歳なんだろう……?
「はい、何のご用でしょうか?」
訪ねたけど答えが返ってこない。
……あれ?なんでこんなに驚かれてるの?何か私変なことしちゃったの!?
と、とにかく表情を変える事無く笑顔のままで!
「どちら様ですか?」
「……あ!ご、ごめんなさい!」
リンディさんだと思う女性がやっと私に反応してくれた。
「あ、あの……こちらに『クライド・ハラオウン』という男性は……?」
よかった!やっぱりこの人がリンディさんだ!
「はい、いますよ」
「ええ!?」
「にゃあ!?」
え!?なになに!?
「母さん落ち着いて!」
「ご、ごめんなさいクロノ……」
び、びっくりしたの……
「とりあえず上がって下さい」
「は、はい」
「お邪魔します」
「……ま、まだ決まった訳じゃないわ……」
「……母さん?」
んにゃ?何か後ろでリンディさんが呟いている。
どうしたんだろう……
2人を応接間に案内して座ってもらったら丁度リニスさんが紅茶を用意して持ってきてくれた。
「どうぞ」
「ありがとう」
「どうもありが……!?」
あれ?リンディさんがリニスさんを見て凄く驚いてる?
使い魔ってそんなに珍しいのかな?そんな筈なかったのに……
「……そう、そうなのね——」
ボソッとリンディさんが何かを喋ったような気がした——
——その時、部屋の扉が開いた。
入ってきたのはクライドさん。
クロノさんは思わず立ち上がって凄く驚いた表情のまま固まっている。
リンディさんは——あれ?同じように立ち上がってるけど何だか表情が——
「と、父さん……?」
「クロノか……大きくなったな……」
「……!!」
「——あなた」
「リンディ……」
——リンディさんがゆっくりとした動きでクライドさんに近づく。
ああ、これから感動の対面なの——!!
「久しぶりだなリンディ……」
「——ええ、あなた」
クライドさんが感極まったようにリンディさんを抱きしめようとして——
滑らかな動きでリンディさんはクライドさんの腕を極めた——
——え?
「あだだだだだ!?」
「「えええええ!!?」」
クロノさんのと驚愕の声が重なっちゃった。
え!?何が起きてるの!?これがミッドチルダ式の感動の出会い!?
「り、リンディ!?」
「——ねえ、あなた。そこの女の子と横にいる女性は——ダレ?」
その一言で部屋の空気の温度が一瞬で下がりました。
「ええ!?」
「私達の事でしょうか?」
「か、彼女はなのはちゃんにリニスさん、で……!」
「そう、良い名前ね」
「あ、ありがとうございます……?」
「なのはちゃん、——何歳?」
「きゅ、9歳です」
「——死刑」
「リンディぃぃぃぃぃ!!?!」
「かあああさあああん!!?」
リンディさんの背中に半透明の魔力で出来た黄色い4枚羽根が出てきたの!!
「り、リンディ!?ち、違うんだ!?」
「——そうね、男は皆そう言うわ」
「いやいやいや!!そうじゃなくて……!!」
「——大丈夫よ、非殺傷設定だから☆」
「折れるうううううう!!」
「母さん!!落ち着いて!!」
「そんなに若い子がいいのおおおぉぉぉぉ!?」
「な、何が起きてるのーー!?」
「——落ち着かれましたか?」
「……申し訳ありませんでした」
あれからすぐにイリアさんが来てくれてリンディさんを鎮圧して事情を説明してくれました。
おかげでクライドさんも変な形になる事無くリンディさんの隣に座っています。
——若干腕の曲がり具合がおかしいです。
「事情はご理解いただけましたか?」
「……はい」
リンディさんが凄い恥ずかしそうに俯いたままになっちゃってる。
「まあ、誤解と言うのは誰にでもある事です」
「……うう」
「それではそろそろ「本題」に入りたいのですが」
「ほ、本題ですか?」
そう言うとイリアさんは良い笑顔で一枚の紙を差し出した。
うわあ、イリアさん凄く輝いた表情をしているの……