まほうつかいとは
--【魔法使い】--
「無いんですか!?攻撃魔法」
「ああ、そう言う意味じゃないんだ。「俺が」攻撃的な【魔法】使えないの」
使えたら凄いんだけどねー。
「折角だから【魔法使い】とは何なのかって所から説明しよう」
「はい」
「よろしくお願いします」
「【魔法使い】とはそもそもどうして生まれたのか?
誰が最初なのか?
それは何も解ってないんだよ」
「え?解らないんですか?」
「わからない、もう【いない】からね」
「「…………」」
「そもそも【魔法使い】にも出来ない事は沢山ある。
魂無き存在は蘇らす事は出来ない。
人の心に干渉する事は出来ない。
他にも幾つかあるよ」
「そ、そうなんですか」
「それで俺が何で攻撃魔法使えないかというと」
「はい」
「【才能】が無いの」
「才能、ですか……?」
「そう、【魔法使い】には全部で4つの【属性】がある。
【攻撃】——文字通りの意味で身体の強化とか攻撃的なものを司る属性。
【防御】——これはそのまま防御を司る属性。
【技術】——これは全ての【魔法使い】が持ってる属性で「空を飛ぶ」とか「物を作る」とかのは全部これに入る。
【医療】——まあ、説明する必要はないと思うけど肉体の治療や呪い、復元と言ったものだね」
「なるほど……」
「それで【魔法使い】はこのそれぞれの属性を10段階評価で持ってる」
「遠坂先生は?」
「俺は【防御:3】【技術:8】に【医療:8】って言われたな」
「【攻撃】はどうなんですか?」
アリサちゃん……君は何故それを聞いちゃうかなあ……
「こいつ【攻撃:0】だよ」
「え?ゼロなんですか!?」
「ゼロ……」
「ゼロですか?」
なんで皆で言う……!!
「あ、先生が!」
「せ、先生しっかり!」
テーブルに突っ伏した俺にアリサちゃんとすずかちゃんが慰めてくれる。ううう……
「……まあ、そう言う訳で【魔法】で攻撃をしようとすると悉く失敗するんだ」
「【技術】で攻撃系の道具は作れないんですか?」
「試したけど無理だった」
流石にこれには師匠も
——「ここまで出来んと逆に凄いのう」——
……師匠の呆れた顔思い出したら悲しくなってきた……
「そ、だから戦闘になったら俺は逃げる、いざとなったら銃とか爆弾とか物理的な手段に出る」
「なのはやイリアさんもそうなんですか?」
「——それなんだけど」
「?どうしたんですか?」
「イリアに関しては【攻撃:3】【防御:4】【技術:7】【医療:4】ってところ、
なのはちゃんは【攻撃:9】【防御:8】【技術:1】【医療:1】だった」
「……なのはの数値がおかしかった気がするんですけど」
「それについては同意だね、アギトの補助で技術が3に届くくらいかな」
「なのはちゃん……」
「それは【魔法使い】なのか武道家なのか」
「【魔法】を使うから【魔法使い】だと思う……」
「その結果フェイトが地面に顔面から突撃する事態になった不具合があったんだが」
——駄目だ、フォローしきれない……!
「他の皆が【魔法使い】を目指すとどうなるんですかね?」
「——それはないよ」
「え?」
「決して【魔法使い】は世界を席巻しない」
「どういう事ですか?」
……【世界】の人全てが【魔法使い】になる事は決してない。何故なら——
「——【魔法使いは1つの世界で1人なれたら良い方】だからね」
「「はい?」」
ああ、やっぱりそういう反応になるよね。
「理由は解らない、でも理由はどうあれ【魔法使い】が【世界】に広がる事はないよ。
【魔法使い】と『魔導師』の理論はそもそも違うし——」
——【魔法使い】を見つけられるのも育てられるのも【魔法使い】だけだからね。
「【魔法使い】は「寂しがり屋」でね……、つい捜してしまうんだよ。【魔法使い】になれる【素質】を持つ人をね」
「遠坂先生……」
俺の師匠も言っていた。
——「ここでお前に会えたのは「運命」なのじゃろうな」——
「「………………」」
いかん、空気が重くなってしまった。
「ごめんごめん、何だかしんみりとさせちゃって」
「いえ、そんな事ないです!」
「そうです、あたしこそ何も知らないのに馬鹿なこと言っちゃって……!」
「明るかった雰囲気返せ」
「アリサちゃん後でこの馬鹿、射撃の的にして練習頑張ってね」
「任せて下さい」
「いやっほー!!」
「「何で喜ぶの!?」」
「あ、あはは……」
長い事友人やってるけど敏彦の事は解らん……。
見ろ、アリサちゃんが完全に汚いものを見るかのような目で見てるぞ。
あ、敏彦と目があった。
あ、敏彦嬉しそう。
あ、アリサちゃんが耐えきれずに目を逸らした。
なんで俺を睨むの!?
——まあ、こいつのそんな能天気な所のお陰で救われたのは事実だしなあ。
……でも、何とかならないかなあ。
「アリサちゃんにすずかちゃん」
「はい」
「何ですか?」
「きっとなのはちゃんはこれから【魔法使い】としていろいろ大変だと思う。
どうかそれでもあの子の「友達」として横に居てくれないか?」
【魔法使い】の世界に引きずり込んだ身として、彼女の先生として——あの子には笑っていて欲しいんだ。
「勿論です!」
「当然ですよ。……まあ、ぶっ飛んだ事さえしなければ大丈夫ですよ」
2人とも笑顔で応えてくれる。——ありがとう。
「俺がいつでも横に居るぜ♪」
うん、お前はちょっと黙れ。少しでもお前に感謝した俺が馬鹿だったよ。
「でも、遠坂先生も一緒にいないとなのは悲しみますよ」
「あ、アリサちゃん!?」
「はい?」