たたかいのおわり
『魔導師』 対 【魔法使い】 --決--
【炎の柱】が生き物のようにのたうち回り、森の木々を焼き払っていく。
「なるほど、なのはちゃんはフェイトの『電気変換』をアギトの【炎熱変換】を真似て応用したのか」
【雷】が横に走り鉄柱をなぎ倒す。
「見事と言っていいでしょう、これで彼女も【魔法使い】の入り口に立ちましたね」
周囲は空気そのものが帯電し、熱を持ち、全てのものに襲いかかる。
「しかしすげえな、見ろよ「炎」と「雷」と「蒼」っぽい翼がなのはちゃんの背中から出てて周囲の雰囲気と見るとここは何処の最終決戦だよ」
空中では「赤」「黄」「蒼」の3対6枚の半透明の翼を広げた【高町なのは】が滞空している。
「多分あの「蒼」は「プラズマ」じゃないか?」
「炎+雷=大変、てか」
「あ、周囲に7色に変化するシャボン玉のような物を出し始めましたね」
「プラズマボールか、綺麗だけどあの魔力量を考えると触れたら弾けるな」
「なにが?」
「肉体」
「訂正、どえらい事だわ」
7色に輝くプラズマボールが近くの水に接触した瞬間、一瞬で水が沸騰して蒸発した。
「俺しばらくシャボン玉に触れられないわ」
「あんた達!!」
3人の後ろから悲鳴に近い声がかけられる。
「どうした?」
「どうした?じゃないわよ!!これからどうするのよ!!」
そこには全身が緑色の布で覆われたフェイトを抱えながら3人に叫ぶプレシアがいた。
「どうするもなにもテンションがバーストしたなのはちゃんが落ち着くまで待つしかないね」
「力づくで止めないの!?」
「俺無理」
「どの業界でも死にます」
「出来なくはないですがチャンスなのでここできちんと【力の扱い】を覚えてもらいましょう」
「いやいやいや!!周りが大変な事になってるわよ!?」
「おーい!!」
後ろを見ると薄い膜のようなものに覆われたアリサ達がやってきた。
「あ、お疲れ様」
「こ、これは何が起きたんだ!?」
クロノが半分パニックの状態で時臣に掴みかかる。
「落ち着いて、今なのはちゃんは【魔法使い】になったんだよ」
「はあ!?」
「落ち着きなさい、ちょっとテンションが上がっているだけです」
「なんてはた迷惑な……」
「あはは、凄いねなのはちゃん……」
アリサは呆れ、すずかは苦笑する。
「なのはは大丈夫なんですか?」
なのはの父の士郎が心配そうに空を見ている。
「それについては心配いりません、今の状態は【魔法使い】になったら誰もが経験しますから」
「そうなの?」
「ええ、ただなのはちゃんは【攻撃】特化なので少々派手ですが」
時臣と士郎の2人が再び空を見る。
なのはは炎と雷を撒き散らせながら空中にとどまっている。
「しかし、あれ『魔法少女』でいいのか?」
「【魔法】使ってるから【魔法】少女でいいんじゃないか?」
「【リリカル☆フィジカル・【魔法】少女・プラズマ☆なのは】、ですかね」
「ジャンルが新しすぎる」
「時代が置いてけぼりだな」
「確かに最初と最後足して割れば『リリなの』だけどさ……」
イリア、時臣、敏彦が話しながら空を見ている。
「どう思いますか?兄さん」
「もうそろそろ落ち着いて降りてくるだろうね」
「良かった……」
「……うぅ……」
「フェイト!?」
フェイトが小さなうめき声を上げて目を開ける。
「おお!大丈夫かフェイト!!」
「ちょっと!なんで貴方が来るのよ!!」
「フェイト大丈夫ですか!?」
「うわああん!!フェイト良かったよおおお!!」
布でぐるぐる巻きにされたフェイトの周りに敏彦、プレシア、リニスにアルフがそれぞれ声をかけている。
瞬間——
「——イリア」
「了解しました」
時臣が小さな声でイリアに声をかけるとイリアは頷いて即座に動く。
「全員兄の周りに!!」
「ど、どうしたんですか!?」
「急ぎなさい!なのはの【特大】のが来ます!」
「「「「「!!」」」」」
その言葉に全員が上を見る。
荒れ狂う【炎】も——
撒き散らされた【雷】も——
漂う【プラズマ】も——
全てが静まっていた。
——否、『魔導師』も、【魔法使い】も、「一般人」も感じている——
空気中に満ちた極大の緊張感を——!!
なのはの背中の翼が広がり、両手を前に出す。
炎が、雷が、プラズマが
——一か所に【収束】する!!
「ちょ、ちょっと……」
「兄さんの家でやったゲームであんなシーン見た事あります」
「どれ?」
「最後の物語の7作目のドラゴン零式です」
「俺は惑星Ziの破滅の魔獣かな」
「「なのザウラー」」
「なんでそんなに余裕あるんですか!?」
「大丈夫大丈夫、防ぎきれるよ——多分」
「多分ーー!?」
時臣とイリアが持てる力を【防御】へと動かす。
——そして、桃色の光が柱となって地上へと落ちた。