おのれときおみ
彼女の【想い】
「ううう……」
「ほら、キビキビ穴を埋めなさい」
「先生達がやったらすぐに終わるじゃないですか……」
「それでは反省になりません」
「先生〜」
「気持ちは解るけど頑張りなさい」
「にゃあああ……」
文句を言いながらもなのはちゃんは止まる事無くスコップで穴を埋めていく。
「——なのはちゃん」
「はい、先生」
「君は今日から【魔法使い】だ」
「——はい」
俺の様子に気づいてなのはちゃんが背筋を伸ばしてこちらを向く。
「その【力】は尊敬され、畏怖される。高町なのは——君はその【力】で【何】を成す?」
「何もしません」
はっきりと即答する。
「何もしないとは?」
「そのままの意味です、私は【魔法】に方向性を持たせたくありません。困ってる人とかには使うかもしれませんが「組織」や「正義」なんて事には使いたくありません。
——だって【魔法】は【ちょっとした可能性】に過ぎないんですから」
最後に笑顔でそう答える。
「……はあ」
「溜め息!?」
「アホですか」
「あれ!?罵倒されてる!?」
イリアも呆れてる。——いい意味で。
「【魔法使い】は必ず人と関わります。【寂しがり屋】です、例えどんなに避けていても【魔法使い】を探してしまいします。
……もしも兄が面倒事に巻き込まれるから、と思ってそう言っているのなら気にしないでいいです」
あれ?俺が言う所であってイリアが言う所じゃないよね?
「それを踏まえてもう一度聞きます、貴方は【魔法】で何をしたいですか?」
「——私は友達の為に、先生の為に使いたいです!」
なのはちゃんがはっきりと告げてくる。
「私まだ子供です。
私はあの寂しかった時に先生に救われました。
先生と出会えて、先生が【魔法】を教えてくれたおかげで私はスクライア君やリニスさんやリンディさん達と出会えました。
全て先生のおかげなんです!」
「それは【魔法使い】の打算だよ」
「それでも!!」
なのはちゃんが叫ぶ。
「打算でも!私は先生に救われたんです!!私は——」
顔が倒れそうなくらい真っ赤になっている。
「私は「時臣」さんが好きなんです!!」
それだけ言いきるとなのはちゃんは顔から湯気と電気を出しながら倒れてしまった。
——どこのビリビリですか……
「それで、どうするんですか兄さん?」
「好意を向けられるというのは嫌でもないよ」
「なるほど、ロリコンと」
「違います」
そう言う意味じゃないから。
「わかっています、決して彼のようになると思っていませんから」
じゃあ、その疑いの眼差しをやめてくれないかな?
「これから忙しくなりますね」
「話題を変えたね、急に」
「気のせいです、それとも兄さんの趣味趣向を詳しく論じますか?」
「これから大変だな」
「話題を変えましたね」
そりゃ変えるよ!
「今回の戦いを見て管理局は【魔法使い】を引き入れようとは思わないでしょう。もしも下手な事をすれば文明崩壊しますからね」
そりゃ本気出せば生身で戦艦とか真っ二つに出来るからなあ……
しかも向こうの攻撃はこっちに効かないし。無理に誘って敵対されるよりは「そっとしておこう」のほうがいいだろうし。
リンディさんには個人的な大きな貸しがあるから余計な事はしないだろう。
でも——
「「彼」もこれでこちらに真正面から関わろうとは思わないだろう」
「そうですね、きちんと「見て」くれて助かりました」
そう、あの【結界】の中には俺達以外に「もう1人」いた。
正確には「入れてあげた」んだけど。
「なのはが【魔法使い】になったあたりで逃げ出しましたが」
「それはしょうがない、俺だって逃げるよ」
まあ、これであの【転生者】【小山田顕】も大人しくなるだろう。
——だってなんかしたらプラズマ飛んで来るんだよ?
「それよりも気になったのは管理局の今回の動きの「原因」です」
「ああ、あれか」
リンディさんから教えてもらった「情報」、今回何故こんなにも動きが早かったのか。
それは——
「聖王教会からの『予言』——か」