starligth様からのリクエスト
【魔法使い】達の日常です
リクエスト--【魔法使い】達の日--
「はあああああ!!」
「——ふっ!」
2人の少女の拳がぶつかり合う。
それは周囲へ衝撃波となって広がる。
木々は薙ぎ倒され建物は一瞬で吹き飛ばされる。
2人の少女は磁石のように弾かれると距離をとる。
1人は栗色の髪に濃いオレンジ色のジャージを着た10歳にも満たない少女。
1人は黒色の髪に黒色のジャージを着た15歳程の少女。
栗色の髪の少女はその手から周囲へと迸る【雷】を生み出す。
黒色の髪の少女はその手に一瞬で黒一色の禍々しい戦斧を握りしめている。
「全力で来なさい」
「はい!!」
黒髪の少女の言葉に栗色の髪の少女は大きく頷き、
——【炎髪、灼眼】!!——
響くような言葉と共に髪は火の粉を撒き散らしながら紅く染まる。瞳も同じように紅くなる。
それと同時に周囲に熱気、いや高熱が暴れ回る。
衝撃波で倒されていた木々は一瞬で炭状になる。
地面の砂は赤くなり、まるで周囲一帯が火口のように変貌する。
しかし黒髪の少女には何一つ影響はでない。
「——では」
「——はい」
2人は構える、まるで空間そのものが圧迫されるような感覚の中——戦いは始まった。
「なんという終末光景」
少女同士がぶつかる瞬間、誰かがボソッと呟いた。
そこは南国にあるような小さな珊瑚礁の綺麗な島「だった」——
島のあちこちで大小様々なクレーターが島の穏やかな景観を台無しにしている。
島の端にあったはずの山は今では大きなクレーターとなって海から海水が入り湖のようになっている。
白く太陽の光を反射して輝いていた砂は今も赤く熱を持って正反対のイメージを周囲に与えている。
木々は焼け、炭状になった物や焼け尽きて灰になったものがそこらかしこに散乱している。
しかしその島の中心だけはヤシの木が傷一つ無く、真っ白なテーブルクロスが敷かれた丸テーブルに座る4人の男女がいた。
「訓練お疲れさま」
「「「「お疲れさまでした」」」
4人はジュースの入ったコップを掲げ乾杯をする。
テーブルの上にはいろんな種類のお菓子がのっていて乾杯が終わるとつまみ始める。
「じゃあ、お菓子を食べながら簡単な反省会をしようか」
4人の中の唯一の男、【魔法使い】遠坂時臣の言葉に2人の【魔法使い】と【補助】は頷いた。
「じゃあまずはイリアから」
「わかりました」
頷き【魔法使い】イクスヴェリア・遠坂はさっきまで行っていた「訓練」を振り返る。
「純粋な真正面からの【攻撃】、
高密度の魔力を纏った【防御】、
【炎、雷、プラズマ】を用いた【属性攻撃】も悪くはありません。
ですが攻撃が直線すぎるのが1つ、
属性を変える時の時間がまだかかるのが1つ、
最後にまだ高密度魔力の制御が甘いですね」
「ううう、すみません……」
「頑張れロード!ロードならできるって!」
「出来たら出来たで怖いんだけどね」
イリアの指摘にテーブルに突っ伏すついこの間【魔法使い】になったばかりの9歳の少女、高町なのは。
その横でなのはを励ます今はなのはと同じくらいの背格好の【魔法使いの補助】アギト。
誰にも気付かれないように呟く時臣。
ここ作られた世界、【匣庭】で【魔法使い】達の日が始まる——
「当面の課題は高密度魔力の制御と属性の素早い活用だね」
「はい!頑張ります!」
「フェイントをかけた戦い方は今後いつもの組み合いに少しずつ混ぜていきましょう」
「わかりました、でも【収束】は……?」
「【収束】については高密度魔力や属性変換をきちんと練習していけばおのずと精度が上がるよ」
「そういうわけです、まずは周りを固めていきなさい」
「はい!」
笑顔でなのはは答える。
「将来的には【収束】した高密度プラズマを分散したり拡散出来れば戦闘の幅も広がるでしょう」
「頑張ります」
「ロードなら楽勝だぜ!」
「ところで高密度魔力の範囲ですが」
「あ、はい。今は大体20メートルくらいです」
「広範囲での戦闘を考えるとやはり物足りない距離ですね」
「でも攻撃は無効化できるぜ?」
イリアの言葉にアギトが答える、そこへ時臣が話しかける。
「確かに攻撃は無効化できるけど遠距離から攻撃された場合、相手を補足しきれない可能性がある」
「その通りです、いかに敵より優れた技術、能力を持っていても相手を知らなければ的確な行動はできません」
「あ」
「つまりはそいう事です、今後はただ高密度の魔力を周囲に展開するのではなく、薄く広範囲に展開して相手を補足し、攻撃される前に無力化する、といった行動も必要です」
「はい!」
「なのはの攻撃は基本的に大振りなものが多いですから少し小技を考えた方がいいかもしれないですね」
なのはの技は武道以外では【炎】を纏った攻撃、
最近新しく【雷】と【プラズマ】が使えるようになったがまだ制御が甘い。
「確かに今は魔力や火力で押し破っているけどいつまでもそれで通じるとは思えないな」
「ええ、ですからいくつか即応出来る技が必要かと」
「そうだね、それじゃ残りの時間はそこら辺を考えようか」
「「はい!」」
「わかりました」
「それじゃ、まずは——」
時臣がホワイトボードを【取り出し】マジックで書きこみ始める。
そこへイリアやなのはから意見が出る。
こうして【魔法使い】達の日は過ぎていく。