地海月様からのリクエスト
鎌田とフェイトとすずかの日常
別名、リア彦の1日です
リクエスト--3人のひととき--
「——フェイト、もう一度言ってごらんなさい」
「お願いフェイト、私達を困らせないで」
時刻は昼前、テスタロッサ一家が仮住まいしている家の居間で緊張した空気が流れている。
厳しい表情でフェイトを睨んでいるプレシア・テスタロッサ。
その隣で難しい表情でフェイトを見つめているアリシア。
「フェイト……」
「……はあ」
少し離れた所ではオロオロしているアルフと溜め息をついているリニス。
フェイトは困った表情をしながらも2人に口を開いた。
「あ、あの母さん、お姉ちゃん——」
「全く、さっきの事は聞かなかった事にしてあげるから——」
「——敏彦さんと遊びに行ってきます!」
「「なんでえええええええ!!?」」
悲鳴が家を揺るがした。
「な、なんであんなのと!?」
「約束してたから——」
「ふはは!馬鹿め!奴は死んだわ!」
「敏彦さんなら玄関の前で待ってるよお姉ちゃん」
「なんで律儀なのよ!!」
怒りながら腕をゆっくりとハンマー状に変化させていくアリシア。
それを見て慌ててフェイトが止めに入る。
「何してるのお姉ちゃん!?」
「決まってるでしょ!フェイトに近づくあの馬鹿をそこらへんの壁の染みにするのよ!!」
「アルフ!リニス!!」
「ま、任せろ!!」
「気をつけていってらっしゃい」
「いってきます!」
フェイトは2人の使い魔に目配せをすると大急ぎで玄関へ向かって走っていく。
追いかけようとするプレシアとアリシアの前にアルフとリニスが立ちはだかる。
「ちょっと!なんで邪魔するのよ!!」
「リニスどいて!あいつ仕留められない!」
「お、落ち着け!」
「アリシアもプレシアも少し頭を冷やして下さい」
「「そこをどけええええ!!」」
「「落ち着け!!」」
飛びかかる2人、迎撃する2人。
今ここにテスタロッサ家の激闘の幕が上がった。
「お待たせしてごめんなさい!」
「大丈夫だよ」
「そうそう、こっちが急に誘っちゃったわけなんだから気にしなくていいよ」
玄関の前には敏彦とすずかが待っていた。
「いやー2人ともごめんね!急に外に遊びに行こうなんて誘っちゃってさ」
「い、いえ!」
「そんな事無いです!」
「ほうほう、ならば早速行こう!」
「「はい!」」
敏彦が目的地の方角へ指をさしながら話す。
フェイトとすずかは笑顔で頷いてそれぞれ両脇に付いて寄り添うように一緒に歩き出した。
「と、いうわけで公園に到着!」
敏彦が万歳しながら宣言する。
そこは海鳴の中央にある公園だった。砂場やブランコなどの遊具が一通り揃っており子供連れの母親達がちらほらといる。
「ここを今日の昼食地はこことする!」
そう言うとリュックの中に入れていたシートを手際よく広げてバスケットを置く。
「さささ、お座りになって、そしてお昼を食べよう!」
「あ、はい」
「失礼します」
「くっくっく、我がお手製の昼飯を見よ!デデーン!」
「「わあ……!」」
バスケットを開けると中には言っていたのは綺麗に詰められたサンドイッチと唐揚げやタコさんウィンナー、ウサギ型にカットされた弁当の定番のメニューだった。
「これ全部敏彦さんが作ったんですか?」
「おうよ!家庭科10段階中10だZE!」
「わあ……!」
すずかもフェイトも驚いている。フェイトに至ってはキラキラした瞳で昼食と敏彦を見ている。
「凄いですね敏彦さん!」
「そこまで感動されると俺メチャ感激、この前時臣に「数Ⅲと英語の区別がつかない」って言った時にされた顔が心にグッサリしてたからな」
「そうなんですか?」
「そうなのよー、2人とも勉強おろそかにしちゃ駄目よ。時臣が可哀そうな目で見てくるから」
「わ、わかりました」
「頑張ります」
「それじゃ食べよっか!いただきます!」
「「いただきます」」
敏彦が手を合わせるとフェイトとすずかもそれに続いて手を合わせる、そして3人は昼食を食べ始めた。
「凄く美味しいです!」
「気持ちいい天気の下で可愛いオニャノコと一緒に食べれるなんて俺は勝ち組」
「「か、可愛い……!!」」
2人とも顔を真っ赤にしてもじもじしながらも嬉しそうな表情でサンドイッチを食べている。
「まだあるから遠慮せずに食べていいよ」
「は、はい」
「デザートも用意してあるからゆっくりするべきそうするべき」
「「はい!」」
その後デザートを食べながらまったりとした時間を過ごす3人。
フェイトもすずかも終始楽しそうな表情が崩れる事無く、帰りはそれぞれの家まで敏彦がきちんと送り届けた——
「以上が今回の「敏彦とすずか、フェイトのまったりピクニック」の概要です」
そう言ってイリアはフェイトとすずかの楽しそうな表情の写真とレポートをテーブルの上に置いた。
「おのれ……!貴方アレの保護者でしょ!なんとかしなさい!」
「保護者じゃないから、そして今までにない無茶振りしないで」
「フェイトがあぁ……フェイトがああぁぁ……」
「恋愛は本人の自由でしょう」
「あたしはフェイトが決めたんなら応援するぜ」
「「フェイトオオオオォォォォ!!」」
「帰ってください」
遠坂家の居間で家族の恋愛問題で悶える親子の姿があった——