ばんちょうつれてこい
もう1人の自分と--
「——ほう?」
「もう一度言う!!貴様は私では無い!!!」
シグナムははやてを抱きしめデバイスを突き付けながら言い放つ。
「…………」
「し、シグナム……」
「ご安心ください、主はやて私は——」
「クククク……」
「「!?」」
もう1人の【シグナム】が俯いて肩を震わせている。そして勢いよく顔を上げる。
【ハハハハハハハハ——!!!】
【シグナム】は顔を歪めて笑う。楽しそうに——声を出して笑っている。
「正体を現したか!!」
【ハハハハハ!!そうだ!!【私】は【私】だ!もう、貴様などではない!!】
「なに——?」
次の瞬間、もう1人の【シグナム】の全身が紫の炎に包まれる。
「え——」
「主!!」
咄嗟に後ろへと飛び、離れた場所にはやてを降ろす。
「シグナム!?」
「主はここに!!」
即座に騎士甲冑を纏い、前に出る。
炎が消える。
「な——!!」
シグナムが目を見開く。
5メートルはあろうかという巨体、
4本の紫の炎で出来た馬のような「下半身」
眩い銀色のフルプレートに身を包んだ「上半身」
4本ある腕には魔力で出来た長槍と長剣、そして同じく魔力で出来た2枚の盾を持っている。
関節からは紫色の火が絶え間なく吹き出している。
その姿はまるで馬に跨る「騎士」にも見えた。
「き、貴様は——」
シグナムが思わず問いかける。
【我は影……真なる我……】
「真なる、我……?」
【それ】は静かに告げる。
【全ては主の為に、——さあ!『蒐集』を始めよう!!】
「!?」
「シグナム!?」
「その場を動かないで下さい!主!!レヴァンティン!!」
『<了解、装填>』
【まずは……貴様からだ!!】
デバイス、レヴァンティンを構えシグナムは突撃してくる【影】を迎え撃った。
「くっ!!」
【どうした騎士よ、この程度か?】
シグナムが悔しそうな表情のまま剣を振り下ろす。
しかし【影】は盾で攻撃を防ぎ長槍で即座に反撃する。
「ぐっ!!」
【まだまだ】
「!?」
一瞬で間合いを詰め、盾で殴りかかる。それを避けると長槍と長剣を巧みに使い連続攻撃を仕掛けてくる。
「レヴァンティン!!」
『<装填、シュトゥルムヴィンデ>』
「陣風!!」
レヴァンティンから魔力の込められたカートリッジが使用され排出される。
シグナムの言葉と共に振られたレヴァンティンから衝撃波が幾つも放たれる、しかし全て【影】に届く事無く盾で防がれる。
【遅い】
挑発するように4本の腕を広げ悠然と立つ【影】
「おのれ……!!」
【来ないのか?ならば、こちらから行くぞ!!】
「な!?」
勢いよく跳躍して空を走るようにシグナムに接近する。
「紫電一閃!!」
レヴァンティンの刀身に魔力を乗せ迫りくる【影】を迎撃する。シグナムのレヴァンティンと【影】の長槍がぶつかり合い衝撃波が生まれる。
「きゃあ!!」
「主!!」
【よそ見をしている場合か?】
「しまっ——」
はやての様子に気を取られた瞬間、レヴァンティンを弾かれ盾2枚を勢いよく振り下ろされ防ぐ事も出来ず地面に叩きつけられる。
「がああっ!!!」
「シグナム!!」
「いけません主!!」
這ってでも向かおうとするはやてだがシグナムに止められる。
「だけどシグナムこのままじゃ!!」
「……心配いりません」
痛む体を無視して気丈な笑みをはやてに向けながらゆっくり近づいてくる【影】を牽制する。
【終わりだな】
「いや、まだだ」
【貴様の攻撃は当たっていないぞ】
「なら、これから当てればいい」
【減らず口を、ならば終わらせてやろう】
「————」
「シグナム!!」
はやてが悲鳴を上げる、シグナムが力を振り絞り、【影】が4本すべての腕を振り上げ——
「バスター!!!」
【なに!!?】
突如響き渡る声、オレンジの閃光が【影】の背中で炸裂した。