げきは
己をこえるとき
「はあああああああああ!!」
【——!】
裂帛の気合と共に流れるような動作で連撃を仕掛ける。
【影】は長剣、長槍、2枚の盾を使って全て防いでいく。
「まだだああああああああ!!」
『<装填、装填>』
連続して魔力の籠ったカートリッジが使用されレヴァンティンの刃に魔力が纏っていく。
「紫電、一閃——!!」
【——!?】
今までにない重さの斬撃の連続が【影】に襲いかかる。
攻撃自体は防いでいるが僅かにだが【影】が押されている。
——『<聞こえます?>』——
——『<ああ、聞こえている>』——
斬撃の最中にアリサから念話が届く、シグナムは答えながらも攻撃の隙を緩めない。
——『<もう少しで攻撃をします、それで何とか隙が作れると思います>』——
——『<わかった、任せる>』——
念話が切れると同時にレヴァンティンを勢いよく下から上へ振り上げる。攻撃は防がれたが【影】を後ろに引かせる程の一撃を繰り出す。
【——!】
【影】から一度大きく下がり呼吸を整える。
かなりの魔力を込めて攻撃したがいまだ【影】本体には攻撃が入っていない。
【それが全力か?】
「いや、肩慣らしだ」
【影】の言葉に軽口でシグナムが答える。
「全力はこれからだ」
それだけ言うと肩から軽く力を抜き【影】を正面に見据える。
「受けてみよ、我が一撃を——!!」
『<ボーゲンフォルム>』
シグナムの言葉に同期するようにレヴァンティンが形を変える。「剣」から「弓」へと——
「シグナム……」
「心配ですか?」
離れた所でシールド魔法を展開しつつユーノがはやてに問いかける。
その質問にはやては首を横に振る。
「ううん、私は信じとる。シグナムが絶対に勝つって、だって——」
そう言ってシグナムを見る。彼女の剣は弓へと形を変え魔力で出来た矢を引き絞っている。
「——家族の勝利を信じるのは当然や」
——家族の勝利を信じるのは当然や——
何処からかそんな言葉がシグナムの耳に入る。
それを聞いて思わず笑みを浮かべてしまう。
——やはり、貴方は我等の最高の主です——
【影】は2本の武器を交差させ待ち構えている。
今までどんなに攻撃を加えても突破する事が出来なかった。
だが今なら——
「いくぞ、レヴァンティン」
『<了解>』
長い間共に戦ってきた相棒が点滅で応える。
「駆けよ、隼!!」
その言葉と共にカートリッジが使用される。
「シュツルムファルケン——!!!」
魔力を帯びた矢が音速の壁を越え、【影】に一瞬で到達する。
直後生まれる衝撃、——しかし【影】は魔力の矢を前に踏みとどまる。
【まだ足りない】
「ああ、わかっている」
【——?】
「私1人では、な」
『<シュート>』
突如上から落下してくる2つのオレンジの閃光。
【影】は咄嗟に盾を上に向け防ごうとする。——が
「『<バンカーバスター!!>』」
オレンジの閃光は盾のただ一点を貫き、大爆発した。
【グガアアアアア!?】
今まで破られなかった盾を呆気なく撃ち抜かれ至近で爆発の直撃を受ける。
そのせいでシグナムの放った矢との均衡が崩れる。
【ガアアアアア!!】
盾を持っていた手でも武器を支え、何とか防ぐ。
「あんなに容易く盾を抜くとはな」
【!?】
間近で聞こえる声、【影】がその声の出所を探す。
「ここだ」
【!?】
上を見る、そこには弓を剣に戻し、その剣を鞭のように形を変え今まさに突撃しようとしていた。
【キ、キサマ——!!】
「感謝するぞ、貴様のお陰で少しは理解出来た」
【ナ、ナニ——?】
鞭状の剣に魔力を流し込む。
「私は——怖かったんだ、剣を振るう事しか出来ない自分がただ平穏に過ごせるのかと——」
一瞬だがシグナムは自分を「家族」と言ってくれた主を見る。
彼女は自分の勝利を信じている。
「何事も挑戦あるのみ——だ」
【ガアアアアアアアアアアアアアアア!!!!】
【影】が武器を軋み上げさせながらシグナムへ挑もうとする。
「残念だが——もう遅い」
鞭状の剣を一気に振り上げる。
「シュランゲバイセン・アングリフ!!!」
振り下ろされた剣は【影】の体と武器に纏わりつき刻む。
【アアアアアアアアアア!!!】
「さらばだ」
【影】の武器は砕け、魔力の矢が体へと進み爆炎と衝撃波が周囲を包んだ。