おひさしぶり
寝耳に水とは正にこの事です
「うん、身体、精神共に異常は見られない。少し疲労は見られるけど後は問題ないよ」
俺がそう言うと周囲から安堵の息が聞こえてくる。
「あ、あの、ありがとうございます」
「いえいえ、こちらこそ「いろいろ」収穫があったからね。……ところで」
周囲を見渡して一言。
「人、多く過ぎない?」
病室に10人以上いる人に俺、【遠坂時臣】は思わず呟いた。
「……なるほど、それが君が「経験」した事か」
「……はい」
「シャマル……」
「ええ!?なんでそんな目で私を見るのヴィータちゃん!?」
「リイン……フォース……!!」
「良かったな、名前を貰えて」
「イリアちゃんが俺に対して容赦なさすぎる件について」
「普通にやりました、ちょっとスッキリしました」
「なんという笑顔、許せる」
「え!?良いんですか!?」
「あなた、クロノが……!!」
「ああ……!なぜその場に居られなかったのか……!!」
「……」
「クロノさん、ちょっと冷ましたお湯です。これで薬飲んで下さい」
「ありがとう、ユーノ……」
簡単に聞きだした「向こう」での体験について皆がいろいろ感想を言っている。
「はじめまして!私高町なのは!よろしくねはやてちゃん!」
「私はフェイト・フェイトテスタロッサ。よろしくねはやて」
「うん、よろしゅうななのはちゃん、フェイトちゃん」
「気をつけなさいはやて、はいこれ」
「ありがとうアリサちゃん、ほんでコレなんや?……【なのはマニュアル】?」
「アリサちゃん!?」
「そこになのはに対してやってはいけない事とか近づいてはいけないタイミングとか書いてあるから」
「アリサちゃんにとって私は何なの!?」
「言葉は通じるけど常識が通じない生き物」
「いきもの!?」
「あはは……」
はやてちゃんの前ではアリサちゃんとなのはちゃん、フェイトちゃんが自己紹介をしている。
「はいはい、皆静かにー。そろそろいろいろ説明しなきゃいけないから席についてー」
俺が手を叩いて促すと皆が持ち込んだパイプ椅子に座っていく。
「それじゃあ、当人も目を覚ましたのできちんとした説明を行っていきたいと思います」
「「「「よろしくお願いします」」」」
「よろしくお願いします、ではまずはやてちゃん」
「はい」
「君、どれくらい寝てたと思う?」
「え?2,3日くらいですか?」
「いいや、君は「10日間」目を覚まさなかったんだよ」
「えええええええ!?」
はやてちゃんが凄い驚いてる。まあ、気持ちは解る。
「本当です、主」
「そうなのよ、朝起こしに行って何の反応なくて……」
「すげえ心配したんだぞ」
「……そうだったんか……ごめんな皆」
はやてちゃんが守護騎士達に頭を下げた。
「いえ、主が無事だった。それだけで我等は満足です」
「ザフィーラ、ありがとなー」
「さて、皆さんの中には今回の事件に関して【魔法使い】の仕業と考えている人も多いと思う」
そう言って見渡すと何人かが目を逸らした。あれ?思ってたより多いぞ……どんだけー。
「率直に言うと今回は【魔法使い】は手を出してなかった」
「「「「「!!?」」」」」
「「そんな馬鹿な」的な表情浮かべないで貰えますか」
「異常事態=【魔法使い】」
「よし、敏彦お前後でイリアの技の練習台な」
「くそっ……!どうしてこんな事に……!!」
「満面の笑みで言うな、言葉と表情一致してねえから」
「……少しいいかね?」
「どうぞ、グレアム提督」
手を上げてグレアム提督が質問してきたので答える。
「では今回の彼女の昏睡はなぜ起きたのかね?」
「簡単にいえば『闇の書』が原因です」
「「「「「ええ!?」」」」」
おお、はやてちゃん達が凄い驚いてる。
「そんな馬鹿な!!そんな兆候は一度も……」
「そうだ!全然何の問題も無かったんだぞ!!」
「落ち着いてくれ、これから一個ずつ説明していくから」
「皆ちゃんと聞こ、すみません先生」
「あ、ああすまない」
「……わるい」
「いえいえ」
はやてちゃんの言葉にシグナム達が謝る。
「『闇の書』が原因なのは間違いない、だけど今回はそれに幾つもの周りの事情によってここまでの事態になったんだ」
「周りの事情、ですか?」
「その通り」
「それって……?」
「【小山田顕】」
「!?」
名前を聞いて皆が驚く。それを見ながら俺は言葉を続ける。
「『管制人格』」
「わ、私か?」
リインフォースが自分を指差しながら驚く。
「そして——」
視線をグレアム提督とリンディさん達に向ける。
「全てのきっかけは【11年前の『闇の書』の主】から始まっているんだ」