どうもカトゥです。
タグにハーレムやらティファニアやら書いちゃってますが、主人公の生まれた時代は原作よりもかなり昔なので、ハーレム要員が登場するのには結構時間がかかります。
はじめのうちは領地育成や外交ばかりで色気の無い内容になると思いますが、長い目でよろしくお願いします。
まあ、主人公は前世で大魔法使いにまで昇りつめた猛者なのでヒロインが登場してもピンク色の話になるかは分かりませんが(笑)
王宮にて謁見
僕、アリストことアリスト・ラズム・コネサンス・ド・デュステールは今年で7歳になり、メイジとしては風のスクウェアになった。
原作ではシャルル王子が12歳で風のスクウェアになって建国以来の大天才と言われていたから、僕の場合はどうなるんだろう?
僕は1年ごとにメイジとして1ランク上がって、7歳でスクウェアになっちゃったからなぁ。
こんなに早くスクウェアになった理由は、魔法を想像する時の具体的な想像について僕の方がハルケギニアの人間より優れて
ごめん、中身はもうすぐ50歳だから許してほしい。
まあいい、なにせ風が発生する原理やら、風の性質やらを前世で知っていたからな。科学のかの字も知らないハルケギニアでは僕よりも魔法を発動する時に、頭の中で想像する具体的な魔法の効果を思い浮かべる事ができるメイジはかなり少ないんじゃないだろうか?
それこそ転生者か地球出身者くらいだろう。
あと精神が40過ぎのおっさんであることか。
最後に肉体が子供だということかな。
いくら精神が大人でも、体も大人である場合物事の習得には多大な時間と労力がかかるからなぁ。
子供の脳は柔軟で記憶力は大人よりも格段に良い。
僕の場合、体は子供、中身は大人を本当に実践しているから7歳でスクウェアなんていう馬鹿げた結果になったんだろう。
7歳でスクウェアは自分でも成長が早すぎると思うけど、なにせ自分の命がかかってるからなあ・・・・
魔法の練習は文字通り死ぬ気でやったよ。少しでも手を抜いたら冗談抜きで異端審問だからね。
そして今まで周囲の話を盗み聞きしたり、会話の最中にそれとなく聞いてみたり質問したりして分かったことなのだが、現在のガリア王はロベスピエール3世という人物で最有力後継者はその長男のカール王子らしい。
……カール王子って誰だよ。
原作時に王だったジョゼフは影も形も存在しない。もちろんその弟のシャルル王子もしかりだ。
ロベスピエール3世と言えばジョゼフ王の先々代の王でヴェルサルテイユ宮殿を建造した人物だ。どうやら僕は原作よりもだいぶ昔に転生したらしい。
そしてクルデンホルフ大公国はまだ存在しなかった。
クルデンホルフ大公国は原作開始時にトリステイン王国の王女だったアンリエッタ姫の先々代にあたるトリステイン国王フィリップ3世によって大公領を賜って建国された新しい国家だ。
原作開始時に45歳だったジョゼフが存在しないことからもしやと思ったが、案の定クルデンホルフ大公国は存在していなかった。
少なくとも原作より45年以上前だということだ。
はあ…原作までいったい何年かかるんだよ。
「アリスト、大丈夫か?
目が虚ろだぞ?」
おっと、考え事のし過ぎで父さんに心配をかけてしまったか。
じゃあそろそろ現実逃避はやめよう。
「いえ、大丈夫です」
僕は父さんに返事をして、正面にその存在感をありありと放つ豪華な扉を見た。
僕が7歳でスクウェアになったことは、ガリア国内はおろかハルケギニア中に広く知れ渡ったらしい。まあ、我が家は仮にも名門侯爵家だから当たり前だがな。
それで1ヶ月前に王宮から便りが来た。
なんでもガリア王が僕に会いたいらしく王宮まで参上せよとのことだ。ガリア王は我が家の財政状況を良く知っているらしく、旅費としてわざわざ1000エキューを渡されたのは名門侯爵家としては複雑な心境だった。
まあ、950エキューは使わずに貯蓄しましたがね!!
我が家をその辺にいる浪費家の馬鹿貴族と一緒にするなよ!!!
そんな訳で僕と付き添いの父さんは現在、王宮の
29という数字が僕の言葉の現実感を増しているね?
「謁見の許可が下りました。くれぐれも陛下にご無礼を働かれぬように」
1000エキューもくれた人にそんなことするわけねえだろ。僕は心中でそっと呟く。
扉の横に立っている衛兵が僕達に注意し、扉がゆっくりと開かれた。
我が家とは違い木が擦れ合う変な音は出ない。
「………!」
扉が開かれた瞬間、僕は目の前に広がる光景に思わず息を呑んだ。
扉の先にあった謁見の間は無駄に広く、荘厳な雰囲気に包まれていた。
部屋の入り口からまっすぐと延びる真紅の絨毯は、貧乏生活が染み付いた僕では思わず踏むのを躊躇ってしまうほど高級感が溢れている。
絨毯の横には、お前ら絶対その格好では戦場に出ないだろ、と突っ込んでしまいそうになるほど華美な装飾が施された制服を着ている衛兵たちが列をなしている。
衛兵たちの目には好奇な色が感じられた。恐らく7歳でスクウェアになった僕に興味を抱いているのだろう。
謁見の間には衛兵たちの他にも少なくない数の貴族が控えており、その誰もが僕に視線を向けている。
そして何よりも視線が強いのは…絨毯の向こう側、あれ一つで城が買えるんじゃないかと思ってしまうほど豪華な玉座に座るハルケギニアの最大国家ガリア王国の頂点に君臨する人物、ロベスピエール3世だ。
過酷な政争を勝ち抜いて王座に座っているだけあり、その雰囲気には王者としての風格がある。
玉座は他よりも1段高い床にあり、僕と父さんは玉座から15mほど離れた場所で
そのラインから先には衛兵が存在しないので分かりやすい。
「面をあげよ」
渋みのきいた声が静寂に包まれた謁見の間によく響く。
「はっ」
ロベスピエール王の言葉と共に僕たちは顔を上げた。
初めて近くで見たロベスピエール王はガリア王家特有の青い髪で端正な顔をしたおっさんだった。前世だったら小さな声で「クソッ垂れのイケメンがっ」と呟いていたところだが、今そんなことはしない。
僕の精神が大人で良かったなぁ、王様よぉ。僕に感謝しろよ。
冗談だ。
「デュステール候、手紙にも書いたが貴様の息子が齢7歳でスクウェアになったと耳にしてな、予もその傑物を見てみたいと思ったまでよ。遠路はるばる御苦労だったな」
「はっ、勿体無きお言葉にございます!!」
ロベスピエール王は父さんの返事を聞き満足げに頷いた。その様子は凄く偉そうだった。まあ、実際偉いんだけどさ。
「では、デュステール候の息子よ、名はなんといったかな?」
ロベスピエール王は僕に視線を向けた。その眼光は過酷な政争を潜り抜けた経験を物語っているかのようにかなりの鋭さを持っている。
こんな視線を向けられたらただの7歳児じゃあ、下手すりゃ泣くぞ!!
「はっ、私はデュステール家が長子アリスト・ラズム・コネサンス・ド・デュステールです。
此度は陛下のご尊顔を拝見する機会をいただき大変ありがたく思う所存です」
とりあえずこれだけ言えりゃあ十分だろ。ロベスピエール王の表情を見ると少し驚いた表情をした後ににやりと笑った。
「ほぉ……10にも届いておらん子供が予の視線を受けてなお、そのような返答ができようとは……
噂を耳にしたときはまさかと疑っていたが、どうやらスクウェアというのは真のようだな。
だがどうせならば、7歳の子供がスクウェアスペルを使っている1000年に一度あるかないかの珍しい光景を見たいのでな。
試しにこの場で偏在をしてみるがよい」
ロベスピエール王が衛兵に何らかの合図を送ると、1人の衛兵が僕に杖を差し出してきた。
差し出された杖を確認すると、王宮に入る際に取り上げられた僕の杖だった。多分、僕に魔法を使わせることははじめから決まっていたのだろう。
僕は立ち上がり杖を構える。謁見の間にいる100人以上の人間が僕に視線を集中させる。以前、実家での練習中にもこのような状況はあったが、それとは比較にならない重圧を感じる。
とても7歳の子供が魔法を唱えられる状況ではない。
だが、僕は中身が40過ぎのおっさんだ。
しかも前世での肩書きは大魔法使いだ。
なら…ここ、ハルケギニアでも大魔法使いになってやろうじゃないか!!!
日本物質化学研究所(通称魔法使いの花園)序列9位『呪殺の大魔法使い』橋本渉いざ参る!!!
「では、僭越ながら私の魔法をご覧下さい……ユビキタス・デル・ウィンデ!!」
僕の周りを一瞬光が包む。いつもと違い精神が高ぶっているせいなのか、その光は普段よりも強く感じられた。
光が収まった時、僕の隣には僕と全く同じ姿の偏在が5体存在していた。
「見事だ!!!」
ロベスピエール王は偏在の成功を確認した途端、玉座から立ち上がって僕を褒めた。
「ありがたきお言葉にございます!」
僕と偏在たちは一斉に跪き礼を述べる。自分からは見れないが、なかなかにシュールな光景じゃないだろうか?
ロベスピエール王の声に続くように謁見の間には僕を褒め称える声が響いている。
隣にいる父さんの顔を横目で見ると、それはもう嬉しそうだった。
唇がプルプル痙攣してますよ、お父さん。
その夜、王宮では晩餐会が開かれた。出席者は僕のことを建国以来の天才やら始祖ブリミル以来の大天才と褒め称えた。
晩餐会に出てきた食事は実家では見たことも無いほど豪華なもので、僕はついつい食べ過ぎて晩餐会の後半にかなり苦しい思いをしたことは、貧乏貴族ゆえの苦労だろう。
翌日、王宮を発つ際にロベスピエール王自らが見送りに来てくれて杖をくれた。
あまりの好待遇に恐縮してしまったが、なんでも彼は非凡な者が大好きらしい。
貰った杖は原作でタバサが持っていたような僕の身長よりもだいぶ大きい木製の杖で、恐らく1m50cmくらいあるのではないだろうか?
持ち手の先端は円形の輪になっており、輪の中心には黄金でできた金具で固定されている巨大なサファイアがある。
多分これ一本でデュステール家の生活費(使用人込み)100年分は軽く補えるだろう。
父さんはあまりにも高価な褒美に失神しかけたし…
馬車の中でロベスピエール王から貰った杖を持ってくれている父さんの手がプルプルと震えているのはきっと馬車の揺れのせいだけではないだろう。
ああ、貧乏って本当に嫌だ……
「アリスト、大丈夫か?
目が虚ろだぞ?」
大国ガリアの中枢、首都リュティスの中心に鎮座する王宮。その中でも際立って華美であり威風を放つ扉の前で、私は隣にいる息子に声をかけた。
「いえ、大丈夫です」
そう答えた
僅か4歳で魔法を習い始め、その3年後にはメイジとして最上級のランクであるスクウェアに到達した魔法の天才だ。
一生かけて魔法を修練してもスクウェアに届かぬものがいる中、この子は7歳でスクウェアにまで成長した。
これは6000年もの歴史を持つハルケギニアでも空前の快挙だ。属性こそ始祖ブリミルが使ったとされる虚無ではないが、その才能は間違いなく始祖ブリミルに準ずるものだろう。
その才能は王の耳にも届いたらしく、一目でも見たいと言うのでわざわざ王宮まで参上したのだ。
デュステール家の状況を詳しく知って以来、もはや王宮なぞ縁の無い場所と思っていたが………
一度で良いからこの大国の頂点に君臨する王に会ってみたい。幼い頃に抱いた夢が、まさか息子が叶えてくれようとはな。
流石は私の息子と言うべきか。
「謁見の許可が下りました。くれぐれも陛下にご無礼を働かれぬように」
扉の横に立っている衛兵がそう言うと、目の前の扉はゆっくりと開く。
謁見の間に入った瞬間、中にいる人間達の視線が息子に集中した。
そのどれもが好奇の色を含んでおり、息子をまるで道化を見るような目で見ている。
苛立たしい……!!
息子は見世物ではないのだぞ!
ああ、叶うことなら今すぐ彼奴らの首をへし折ってやりたい。
だが、そのようなことをすれば私のみならず、息子にも処罰が下ることになるだろう。
口惜しいが、今は耐えるしかない。
なにやら王と会話をしたような気がするが、そのような些事はどうでも良いのだ。
私は一刻でも早く周りの馬鹿どもに息子の偉大さを知らしめてやりたいのだ!!
「……だがどうせならば、7歳の子供がスクウェアスペルを使っている光景を見たいのでな。
この場で偏在をしてみるがよい」
おお、ようやく息子がその力を周囲の無能に教えてやる時が来たぞ!
さあ息子よ、王宮のアホ共にお前の力を見せ付けてやるのだ!!
息子は杖を持つと、すぐに偏在を唱えることなく精神を落ち着けているようだ。
ふふ…せっかちな馬鹿共を焦らしているのだな……!
だが息子よ、私も我慢ならんのだ…早くお前の実力を見せてくれ!!!
私の想いが通じたのか、息子はその瞳に覚悟の炎を燈す。
おお、立派な顔つきだ。私は誇らしいぞ。
「では、僭越ながら私の魔法をご覧下さい……ユビキタス・デル・ウィンデ!!」
息子の周りを一瞬光が包む。なんだか普段より光が強い気がするが、きっと気のせいだろう。
光が収まった時、全く同じ姿の息子が6人存在していた。
あれ?息子の偏在はいつも2,3体ではなかったか……?
…
……
………
気のせいだな。息子はきっと普段から偏在を6体ほど出現させていたはずだ。
流石は私の息子!!!
「見事だ!!!」
王が玉座から立ち上がって息子を褒め称える。
大国ガリアの王に私の息子が褒められた!!!
私は自分のこと以上に嬉しく感じた。ああ、今すぐ息子を抱きしめてやりたい!
「ありがたきお言葉にございます!」
息子は奢らない態度で王に対し礼を述べた。
ああ…息子よ、立派に成長したのだな!
父は嬉しいぞ!!!
謁見の間にいる馬鹿共も息子を口々に褒め称える。
ふんっ……先ほどまで息子を散々馬鹿にしたような目で見おって!!
貴様らがどのような言葉を吐いても私は全く嬉しさを感じんわ!!
このとき、私の唇が震えていたのは厚顔無恥な馬鹿共への怒りからだと思いたい。
今回で主人公が生まれた大まかな年代が判明しました。ついでに主人公の前世の事も少し出てきましたね。
主人公が謁見したガリア王ロベスピエール3世は原作時のガリア王ジョゼフ1世の先々代にあたり、ヴェルサルテイユ宮殿を建造した人物です。
現在、原作時に45歳だったジョゼフは影も形も存在しておりません。
そしてクルデンホルフ大公国はアンリエッタの祖父であるフィリップ3世に大公領を賜って建国されました。
このことからも分かる通り、主人公が生まれたのは原作開始から50年以上前になります。
ハーレム形成はまだまだ遠い道のりです。