感想の中に周囲の人間の心境を見てみたいというものがあったので、前回の話の最後に主人公の父親サイドを入れてみました。
急いで書いたので駄文っぷりがいつにもまして発揮している、粗悪なできになってしまったかもしれませんが、よければ読んでください。
読まなくても作品を理解する上で不便な点はありませんので、無理に読まなくとも大丈夫です。
デュステール家の事情
僕、アリストことアリスト・ラズム・コネサンス・ド・デュステールは今年で8歳になった。
半年以上前に王宮にて僕がスクウェアであることを証明して以降、国内はもちろん国外の多くのパーティーに招かれた。
流石は魔法至上主義の世界と言ったところか。
僅か7歳で風のスクウェアになり、始祖ブリミル以来の天才と謳われている僕は、どこのパーティーに行っても多くの参加客に取り囲まれ多くの貴族たちと交友を交わすことができた。
しかし不思議なことに娘を紹介し、あわよくば僕に嫁がせようとする貴族は少なかった。
なかには娘を嫁がせようとした貴族もいたのだが、2回目に会う時に嫁がせる気はすっかり失せていたようだ。
別に、嫁がせようとしない貴族が僕に娘を紹介しない訳ではない。
紹介するにはするのだが、その仕方は娘と僕を結婚させると言うよりも友人として仲良くさせようとしているのだ。
これには疑問を持たざるを得ない。
魔法至上主義のハルケギニアで魔法使いという点では、自分で言うのもなんだが僕よりも有力な人物は少ない。将来性を考えればトップを独走状態だろう。
家柄としても大国ガリアの数千年前から続く由緒正しき侯爵家であり申し分ない。
まあ、実態は古いだけの貧乏貴族なのだが・・・
それでも見過ごすには惜しい優良物件だと思うんだけどなぁ。
まさか前世での大魔法使いとしての風格が滲み出ているから?
・・・・流石にそれは無いか。
不思議に思った僕は、風のスクウェアの実力を活かし父さんの書斎や屋敷の書庫に忍び込んで情報収集をした。別に原因を解き明かして令嬢たちにもてたい訳じゃない。
本当だよ?
水属性ではラインの実力があるので、風に比べると微力ではあるがその力も駆使した結果、今まで知らなかったデュステール侯爵家の事情と言うものが分かってきた。どうやら我が家はただの貧乏侯爵家ではないらしい。
数千年前、デュステール家はまだ伯爵家でトリステインとの国境に領地を持っていたらしい。
当時は財政も苦しくなく、土地も肥沃で王宮や軍にもそれなりの影響力を持っていたらしい。
だがその状況は2000年ほど前に一変する。
当時、聖戦が発動されておりデュステール家も当然ながら出兵した。ハルケギニアの国力を総動員するのだから当たり前である。
そしてその時の戦いで偶然ながらエルフの軍を相手に連勝するという大手柄を立ててしまい、爵位が侯爵に昇格し領地もガリアで1,2を争うほどの広大な領地に
本当だったらデュステール家としては万々歳で大国ガリアの中でも大貴族としての地位を磐石な物にしていただろう。
だが、世の中決して甘くは無かった。
変更先の領地はエルフが住む
そんな場所に多くの人間が住んでいるはずはなく、領民の数は伯爵時代よりも少ないうえに碌な商業すら存在しなかった。一応聖戦に参加する空中艦隊を整備するための大規模な港や造船所があったらしいが、聖戦終結後に需要が無くなり廃れたらしい。
それから2000年ほどの月日が経ち、エルフとの最後の戦いから数百年たった今でも領地の状況は転封当時とほとんど変わりが無い。
書庫の資料を見る限りこれはデュステール家の躍進を嫉んだ大貴族の画策らしい。
その貴族の名はセリューネ公爵家。
本来であれば我が家にとって仇敵といっても良いのだが、書斎で父さんの手紙を見た限りでは、デュステール家はセリューネ公爵家に頭が上がっていない。
どうやらかの公爵家は他の貴族たちが娘を僕に嫁がせないように圧力をかけているらしい。
内心の怒りを抑えてセリューネ公爵家についての資料を見てみる。
領地は我が領の近くであり面積こそデュステール領の半分ほどだが、人口は20万を超えているらしく総資産は5000万エキューを軽く越えているらしい。うわー。
王宮への影響力は大きく、軍でも親族の何人かが要職を勤めているそうだ。
えっ、我が家?なんか遠い親戚に軍で中間管理職やってる人がいるらしいよ。
中間管理職という言葉に少し共感を感じるね。多分佐官か尉官だろうね、将官じゃあないな。
数千年以上前から続く名門であり、王家との婚姻も1回や2回ではない。セリューネ公爵家はまさしく大貴族だろう。
我が家かい?もちろん我が家も数千年以上前から続く名門侯爵家だからね!
1回か2回は王族に触った事があるんじゃないかな?
・・・・・・なるほど、確かにいくら魔法の天才でもセリューネ公爵家を敵に回してまで貧乏貴族の息子に娘を嫁がせる貴族は少ないだろう。
父さんの手紙を見る限り僕はセリューネ公爵家の4女と結婚する予定らしい。うん、あからさまに軽く見られているね。一応、僕は長男でガリア建国以来の大天才だよ?
4女の3歳の誕生日に僕と会って婚約発表をするそうだ。へー、初耳だー。
手紙の文面はセリューネ公爵家の一方的な通達であり、傘下貴族への手紙と思われても不思議ではなかった。
これを知った当初はセリューネ公爵家に対する深い憤りと共に、一体何故こうなったのかと言う疑問を持ったが、それも調査を進めていくうちに理由が分かってきた。
デュステール領は土地が荒れ果てているので、作物が良く育つはずが無く農業は芳しくない。
その結果、人口を維持できるだけの食料は得られず、餓死者が大量に発生してしまうだろう。
それを防ぐために周囲の領地から食料を大量に購入するのだが、その大口取引先がセリューネ公爵家であり、他の取引先貴族も大半がセリューネ公爵家の傘下貴族だった。
過去にご先祖様の中にはセリューネ家に従うが我慢ならず、他の貴族と食糧輸入を取引したそうだが、輸送の際にどうしてもセリューネ公爵派の領地を通らねばならず、『偶然』山賊に輸送中の食糧を奪われることが頻発したそうだ。
空中輸送などでセリューネ公爵派の領地を通らずに食糧を輸送することもできるのだが、その場合、輸送費が高騰し貧乏貴族のデュステール家では必要な量の食料が買えなくなり、本末転倒になってしまう。
そんなことがあって以来、デュステール家はセリューネ公爵派と食料取引を続けている。
そしてその食料購入費はデュステール家の財政に重くのしかかっており、領の財政が逼迫している大きな要因の一つだ。
実はデュステール家の財政が逼迫している大きな要因はもう一つある。
デュステール家はエルフとの境界に位置するということで、エルフの攻撃に備えてそれなりの軍備も整えなくてはならない。
これは領地を賜った際に当時の王と教皇から命じられたことでもある。
なのでこの費用は削ることができず、結果、領の収入の半分が消えることになる。
もちろんこれは装備の維持費と調達費、聖戦発動時に使用される施設の整備費であり、兵士の訓練費なんて金のかかる要素は入っていない。
結果的に装備こそ立派だが訓練も満足に行えないほど財政状況が悪いので見掛け倒しの弱兵になってしまい、これもセリューネ公爵派から侮られる要因になってしまっている。
一応、王宮からは軍事費として幾許かの財政援助は受けているが、それで軍事費全てが補えるわけでもなく、我が家の財政は逼迫している。
というか王宮からの援助金が途絶えたら、デュステール家は間違いなく破産するだろう。
もちろん、そんな状態の我が家が王宮で権力闘争などできるはずも無く、デュステール家は今では名ばかりの名門貴族になってしまった。
とりあえず以上が僕の調査の結果分かったことだ。
僕はスクウェアになったことでようやく貰った1人部屋にて、今まで分かってきたデュステール家の状況を整理し終え、ほっと一息ついた。
どうやら僕の家は想像以上に厳しい立場に立たされているようだ。
こりゃあ、ただ領地を発展させれば解決できる問題じゃあないな。
このままだと僕は見たことも無いセリューネ公爵家の4女と結婚させられてしまうだろう。
セリューネ公爵家が今までデュステール家にしてきた仕打ちを考えると、結婚なんて断固拒否だが、今の状況では拒否が許されることはないだろう。
幸い7歳でスクウェアになったことは周囲に知れ渡っているし証明もされた。
僕の不老がばれる頃には、間違いなく僕はオールド・オスマン並みに高名なメイジとしてハルケギニア中で有名になるだろう。
異端審問回避の最低条件は達成したわけだ。
これからは魔法の練習は控えて、領地経営に乗り出してみるとするか。
まずは父さん達の説得だが、あの子供に甘い人達のことだ・・・渋るとは思うが、最終的には許可してくれるだろう。
前世の職は研究員で、ゼロの使い魔の世界では全く活用できないものを研究していたが、趣味は読書だったからそれなりの知識はある。
実家は農家だし、退職後は田舎で悠々自適なスローライフを過ごす予定だったから、農業の知識もそれなりにあるつもりだ。
流石に婚約には間に合わないが、僕が結婚しなければならない時までにはまだまだ時間はある。
その時までにセリューネ公爵家の要求を拒否できる力を蓄えなければ、前世も含めれば50年間守り続けてきた童貞を奪われることになってしまう・・・!!!
別に童貞を捨てたくないわけじゃあないが、気に入らない奴らの思い通りになってむざむざ童貞を捨てるのは、とてもじゃないが我慢なら無い。
そんなことになったら前世で魔法使いとしての心構えを教えてくれた大賢者殿や共にリア充撲滅運動を繰り広げた同期の賢者にとてもじゃないが顔向けできない。
見てろよセリューネ公爵家、お前達に俺の童貞道を阻ませはしない!
もはや大魔法使いを超越し、
・・・・あーあ、自分で言ってて悲しくなってきた。
今日はもう遅いし寝よ・・・
話の中で主人公は独自の調査を行いました。
中身は50歳だとしても8歳児に機密文書を見られた名門侯爵家ってどうなのよ、という違和感を持たれた皆様のために説明させていただきます。
まず、デュステール家は名門侯爵家といっても実態は貧乏貴族なので、家の中にいる衛兵はそこまで多くはありません。
そして衛兵の側から見れば、主人公は身内であり、風のスクウェアだとしても赤ん坊の頃より知っている子供であるので、警戒度は大幅に下がります。
その隙をついて主人公は偏在を使って書庫や書斎に忍び込んだ訳です。
もちろん、息子に甘い両親に頼み込んで書庫などに入ったりもしたので、魔法の実力だけを使って調査をした訳ではありません。
以上が一応の理由ですが、不満に思われる方は感想にてお願いします。
できる限り説明する所存であります。
今回の話で主人公の実家であるデュステール家の事情が判明しました。
事情を知った主人公はいよいよこの作品の主題である領地経営に乗り出そうとするわけですが、どうなるんでしょうね。
多くの感想、ありがとうございます。作品を書く上で大変励みになっております。
感想はいつでも大歓迎です。