改革3年目の領地報告
「アリスト様、こちらが本日の書類となります」
サラは抱えていた紙の束を、軍事協定締結後に運び込まれた少々古い執務机の上に置いた。
「うん」
僕は最近始めた朝食後の紅茶を飲みつつ、紙の束をパラパラと
前世でもこうして飲み物を飲みつつ実験レポートを眺めたものだ。
まあ、あの頃は紅茶なんて
「今日はー・・・前年度の報告書、とっ・・・装備の調達報告とー、翼人の新規移住報告・・・!?」
予測していなかった内容に思わず紙を捲る指が止まった。
次の紙に捲ってしまったのを慌てて戻し、もう一回その報告書を良く見る。
翼人の新規移住希望者に関する報告
ヤラの月 フレイヤの週 オセルの曜日
本日夕刻、翼人の集落に新たな翼人の一団が到着。
我が領と翼人との協定を知り、保護を求められる。
翼人たちには我が領への恭順の意志が認められる。
翼人との協定により、翼人73名の我が領への居住を許可した事をここに報告する。
翼人集落管理長 ルッセル
報告書には他にもあれこれ書かれていたが、要約するとこんなものだった。
ヤラの月、フレイヤの週、オセルの曜日・・・1月7日か。
今日は1月9日なので2日前になるな。
まあ、問題ないでしょ!
人数も少ないし、我が領の負担にならないのなら気にすることもない。
むしろ増えてくれれば翼人たちへの新たな責務を増やす口実にもなるし、今は大した事柄ではない。
「・・・さーて、お次は・・・?」
僕はその書類を捲って次の書類を見た。
「——— 最後はファットン領への輸送隊の帰還報告・・・・ね。
なるほど」
僕は一通り書類をざっくりと眺め終え、タイミングよく飲み終わった紅茶のカップを机に置いた。
すると今まで後ろに控えていたサラが新たな紅茶を入れてくれる。
「では、私はこれで失礼いたします」
「うん、君も頑張れ」
サラは普通の人が聞けば適当に言ったと受け取られる僕の激励の言葉で本当に嬉しそうな笑顔になり、静かに一礼して部屋から出て行った。
毎朝繰り返されるやり取りだが、いつもサラは僕が言葉をかけると嬉しそうにしている。
うん、あの子は本当に可愛いな。
前世の後輩もあんだけ純粋だったら、僕も可愛がってやったのに。
まあ、その前にホモか疑ったかもしれないがな!
僕は一枚目の書類、前年度のデュステール領についての統計資料が書かれた報告書を見た。
デュステール領に関する統計報告書
デュステール領
ガリア王国北東国境地帯に位置し、ゲルマニア領、エルフ領に接する
面積8000k㎡
人間人口58800人
翼人人口800人
総合人口59600人
穀物自給率23.810%
歳入165万エキュー
交易輸出額172000エキュー
交易輸入額601000エキュー
家臣団800人
諸侯軍600人
一次産業従事者比率99%
二次産業従事者比率1%
三次産業従事者比率0%
軍事
フネ10隻
竜騎士20騎
メイジ200名
騎兵300騎
歩兵100名
駐屯可能兵力
フネ800隻
竜騎士1200騎
騎兵120000騎
メイジ・歩兵200000名
砲亀300頭
防御陣地
永久陣地8箇所
エルフとの国境線全域に塹壕、簡易防壁
固定火砲800門
備考
協定締結領への武器輸出は今年度の収支報告には含まれない。
家臣団は業務内容より一次産業従事者とみなす。
駐屯可能兵力については聖戦時のみの数値である。
時期によって一次産業から2次産業に移転する場合は一次産業従事者とみなす。
ふむ・・・まあ、改革前よりかは良くなっているんじゃないのか?
家臣団が一次産業従事者に含まれているのには反論できない・・・!!
備考の最後の欄に関しては、領内に多く存在する軍事施設の周辺に住む農民、つまり我が領の全農民が副業として定期的に軍事施設整備をしても、二次産業従事者には数えないという意味だろう。
改革を始めて2年しか経ってないし、こんなもんだろう。
僕は確認済みのサインをして次の書類に取り掛かった。
今日もいつもと変わらない日常が始まる。
書類仕事が終わったら、またサラと散歩でもしようかな?
現時点でのハルケギニア地図
デュステール領はガリア王国の一番右上
更新する度に多くの感想、ありがとうございます。
申し訳ないのですが明日は早朝からかなり忙しいので、感想の返信は明日の夜にします。
感想は毎回じっくりと読んでいるので、今日は申し訳ないですが投稿後の返信はできません。
せっかく感想を頂いているのに申し訳ないです。
追伸
私は感想が大好きです。
長くても一言だけでも好きです。
でも長いとテンションが上がります。
すると・・・あら不思議!
なんと更新速度が少しだけ上昇する!!ような気がしないでもないと思うかもしれない気分になるのかな?