だいぶお待たせ致しました、861です。
今話、VSオルコット戦の決着と相成ります。
それでは、どうぞ。
『・・・ちょっとお待ちになって、まさか、それは・・・』
〈・・・その通りです。はじめまして、オルコットさん〉
『そう、そのまさかや』
・・・松原さんが取り出した黒い戦斧。
何処かで見たことがあるような気がしていたら、それの刃の根元に付いている琥珀色の宝石が点滅し始め、ISの【プライベート・チャンネル】の様に、わたくしの頭の中に知らない声が飛び込んできました。
『・・・念のために聞いておきますが、何故、〈それ〉なんですの? 』
・・・そう、そうなのだ。
主役級の〈ソレ〉ならば他にも、実質的な主人公元い、白き冥皇のやら、第二期の主人公であった夜天の主のやら、幾らでもあった筈。・・・ヒッ!?
『どないしたん? 』
『・・・な、なんでもありませんわ。
(何なのでしょうか、今の殺気は・・・!? )』
『さてと、理由やったな。
・・・悪いけどな、ウチが知る訳ないやろが、そんなん』
『清々しい程、バッサリですわね』
『仕方無いやろ。・・・まぁ、誰がやったかは検討つくけどな』
『誰がやったか・・・って、そっち、ですの?? 』
『まぁな。なんというか・・・、なんと説明したらえぇんやろなぁ・・・』
『そんな説明しづらいお方ですの? 』
『何つぅかなぁ・・・、普通に黙って仕事やっとるうちはええんやけどな。・・・そん人、木山さんちゅう女の人なんやけど・・・』
何故か、そこで話を一度切られた。
『・・・で、ともかくその、木山さんという女性がそれの開発者なんですのね? 』
〈ソレなんて言わないでください、失礼な……。
私にはちゃんと、【朧月】という名があります! 〉
『あら、これは失礼しました。それで? 』
『あぁ、続きやったな。その御仁、なんつぅかな、仕事やっとる時は見た事ないけど、平熱が他の人より高うて、普通なら我慢出来る温度を我慢できんのか、自分の容姿に無頓着なんかは知らんけど、妙なトコで脱ぐ癖あるんよ』
『・・・は?? 脱ぐ? 』
頭が、エンストしたように停止した。
・・・どうやら再起動するまで(°Д ゜)な間抜け面を晒していたようで・・・、
〈まぁ・・・、その気持ちはわかります〉
と、彼女(?)に同情された。
・・・なぜ分かったか?
松原さんが取り出した鏡みたいな楯に、映ってたからですわ。
『あ・・・、それで? 開発の経緯とかは、ご存知ありませんの? 』
『まぁ、概要だけなら、知っとるわ』『それで、そのような代物をお作りになった経緯というのは・・・』
『・・・さっきからやたら噛みつくなぁ、セシリアはん。
そんなに食い付くような代物なん、コレ? 』
〈聞き捨てならない事言いますね、マスタァ?
・・・私がどれ程の代物か、小一時間御教授致しましょうか?〉
首を傾げる松原さんと、拗ねる朧月さん?
〈あ・・・、ホントすまんかったわ。だから、へそを曲げんといてぇな〉
〈分かれば良いんです〉
やっぱり、自分を客観的に見て、奇妙な事をしているのだろうという自覚はあったらしく、P・Cで朧月さん? に謝罪する松原さん。
『(・・・それでも、端から見ていて変な光景ですわね。
杖・・・、と言っても、厳密には戦斧なんでしょうが・・・、が喋ったり、目の前でそれに謝る人がいたり)』
『・・・なんや』
『なんでもありませんわ』
・・・二人の様子をガン見してたら、おもいっきりジト目されました。
『〈そうか。さて、言うまでも無いやろうけど、コレについては、口外せんでくれへん? 〉』
『それについては構いませんけど・・・、』
〈なんですか、勿体ぶって〉
『さっきから気になっていたのですが・・・、どうしてコアの反応が3つ・・・、〈待ちぃや、そこから先は言うたらあきまへんえ? 〉』
こちらの発言を遮るかのように、松原さんがP・Cで割り込んできた。
・・・ご丁寧に、某未来人の
「禁則事項です♪」
なポーズまでして。
『・・・一応聞いておきますが、もし、言いふらしたら? 』
『そりゃあ・・・、』
『そりゃあ、なんですの? 』
『「月夜ばかりと思うなよ」
とか・・・、
「・・・去んどくれやす」
とかやなぁ・・・』
・・・松原さんは、背筋がざわつくぐらい?ニタリ?という擬態語が付きそうな悪い笑顔になりやがりました。
『片方はともかく・・・、い、去んどくれ?? 』
『身も蓋も無く言えば、
「この世から消え失せろ」
っちゅうことや』
『どうしてそこまで・・・? 』
『簡単な話、【機密保持】や。
言外に
『代表候補生なら判る理屈だよな』
と聴こえる様な言い回し、多少上から目線なのは、まぁ仕方ないとして・・・、
『・・・まぁ、わからなくはありませんが。その割にそっちに関しては興味なさげですのね・・・』
『ん? こっち? 』
『簡単に言えば、〈現状、この世の誰一人とて到達していない領域に片腕突っ込んでいる〉・・・そういう事ですわ、おわかり? 』
・・・正直、ここまで説明して、まだ無関心だったら、これ以上説明する気力が正直、失せてくる。
向こうもそれが伝わったのか・・・、
『はー、
んで、
「奇蹟が起きた!!」
て大燥ぎしとったらしいわ』
ようやく理解されたようですが、なにやら聞き捨てならない言葉が……?
『え、大の大人が大燥ぎ・・・』
『そや。他のスタッフ曰く、
「数日研究室に籠もりっきりで、あまりにも出てこないから心配してたら、唐突に出てきて、絶叫した次の瞬間、真横に倒れ込んだ」
・・・んやと』
『ぜ、絶叫・・・?? 』
『流石に文言までは知らんけどな。
さて、そろそろ決着でも付けよか』
そう言って、朧月を片手から両手に構え直す松原さん。
こちらも、SRMk-?を構える。
そうして数秒の対峙の後・・・、
『・・・一気に終幕と参りましょう。お行きなさい、ブルー・ティアーズ!! 』
『さぁ始めよか、朧月・サイズフォーム! 』
がチャリと斧頭が真横を向き、エネルギーの刃が発生した。
『・・・一々凝ってますわね、それ! 』
『どういたしまして、な! 』
そうして、中断されていた試合は再開された。
『大体の癖は掴ませて頂きました、先程のようにはいきませんわよ! 』
『あんなもんで癖が判るっちゅうんか、流石代表候補生やな!! 』
『褒めても、手は抜きませんわよ、松原さん!! 』
『逆にこっちが困るわ、んな事されたら!
・・・だぁもぉ、鬱陶しい!! 』
・・・こうなってくると、確実に出てくるのは経験の差。癖を掴んでからは、徐々にではあるが、松原さんに掠る様になってきた。
『これでもヒョイヒョイ躱すんですか・・・、どんな反射神経してますの、まったく! 』
『喧しいわ! こちとらこれでもギリギリのカツカツなんや!
つぅか、褒めとんのか貶しとんのかわかりずらい台詞吐くなや気が散る!! 』
・・・そう言いつつも、彼女は当たるか当たらないかのギリギリで回避し続けた。
そうこうしているうちに、唐突に回避運動(+朧月をバトンの様に回転させてのレーザー弾き)を止め、距離をとった。
『・・・? 』
『・・・なぁにをやっとったんやろうな、うちは。ようよう考えてみれば、一々躱しとるより・・・、』
そのまま正面での両手構えから刃先を真下に向け、中腰と膝立ちの合の子のような体勢をとり・・・、
『・・・叩き落とす方が効率的やもんな!!』
全速力でこちらに飛び掛かって来た。
・・・が、わたくしの真横を擦り抜け・・・、
『背中、がら空きですわよ!! 』
『とっくに想定済みや、そんなん!! 』
こちらがチャンスとばかりに放った背中狙いの狙撃は、呆気なく躱された。
『躱されるのは織り込み済み、ついでに片足、貰っておきますわ!! 』
しゃがみ込むように回避した松原さんの左足に、BTのレーザーを直撃させる。
『・・・しまった!? こんにゃろ、そこ動くなや!! 』
身体を反転させて此方へ突撃してくる松原さん。
『掛かりましたわね!! 』
真正面に向けてライフルを連射し、更に片方のみとなったミサイルを発射する。
『喰らうか、アホんだらぁ・・・っ!! 』
初弾を身体を捻るようにして躱し、それ以降はビットに棒高跳びするようにして叩き落としながら回避し更に・・・、
『そんな!? 』
飛んできたミサイルは、ブレードを投げ付けて相殺させられた。
『案の定やな、セシリアはん!
これで面倒な翔びモンは丸落としや! 』
そうして、完全な隙がうまれたわたくしに降り下ろされる鎌。何故かコマ送りに見えた。
『(そんな、わたくしが・・・負ける!? )ふ・・・っ、ざ、ける、なぁぁっ!!! 』
・・・それは、何に対してだったのか。
代表候補生としてのプライドか、それとも、『あの事件』からオルコット家当主として血を吐くような道を歩いてきた故の意地か。
何かを掴む様に無意識に手を伸ばしたその直後、わたくしの叫びに応えるかのように、一機だけ残っていたビットから放たれた一筋の蒼光が、【あり得ない角度で曲がり、打鉄に直撃】した。
そうして・・・、
〈試合終了、勝者、セシリア・オルコット〉
何があったか、当人であるわたくしがわからないまま、勝利を告げるアナウンスが鳴った・・・。
『・・・いやあ、参った。完全に地力の差が出たなあ・・・』
困ったように頭を掻く松原さん。寧ろ、参ったのはこちらの方がだと思う。
『・・・むむむ』
『なんや、眉根に皺なんぞ寄せて? 』
『何故勝てたかが分からないからですわよ』
『んあ? そんなアホな話が・・・、あったな』
『ええ、ありました』
『勝手に曲がる訳がないんやから、自覚無いだけで何かしたと違うん? 』
『それがわかればここまで悩みませんわ』
『・・・ともあれ、おめでとさん。敗者はさっさと失せる事にするわ』
『貴女も、相当でしたわよ?
・・・つかぬことをお聞きしますけど、ISランクは? 』
『ん? ・・・確か、B判定貰っとったわ』
『〈B判定+量産機であの動き・・・。これで専用機使わずだなんて、薄ら寒い話ですわね。
これで、貴女の専用機が楽しみになってきましたわ〉』
『どういたしまして。それじゃあな、うちは保健室でダウンしとるわ。あーしんどかったー』
そうして、松原さんは去って行った。
そして流れるアナウンス。
後を追いかけるようにわたくしもアリーナを後にした・・・。
◇◆◇◆◇◆
「・・・しまった、見逃した」
既に辺りは若干暗く、かなりの時間寝ていたようだ。
「・・・おぉ、やっと起きたか」
「ん? 態々すまないね」
「当たり前だろ。私達、同室の仲じゃんか」
「確かにな」
「・・・食えるか? 」
「頂こう」
取り敢えず、彼女が複数持っていたパンを貰って食った。
「・・・結果、聞かねぇのか? 」
「明日にでもわかるからな、別にいい」
「そっか」
「・・・さて、自室に帰るかな」
「肩貸すか? 」
「そこまで酷くない」
「そっか、ならさきに行くぜ」
「ああ」
・・・To be continued next chapter・・・.
因みに、こうも凄まじく時間が掛かった訳は、・・・途中でコラボ書いてたたからです。
他人のキャラを動かすが大変でした、はい。
ついでに言えば、最後辺りに出てきた彼女、モデルがいる半分オリキャラなのですが……、
あるジャンルに詳しい人ならば閃くはずです。
……彼女のCV、どこかのでは沢城みゆきさんでしたな……。
それでは