こんにちは、861です。
今回はガルシアのIS学園に来ての初戦となります。
それでは、どうぞ。
斯くして試合当日と相成った。
朝方も昼も特に変わった事件は起きず(強いて言わば昨日のメールの返信が来たくらいだが)、放課後となった。
「……さてと、少し走ってくるか」
「いいのか? この後、試合なんだろ? 」
脈絡なく言い出すガルシアに、怪訝そうな支倉。
因みに、これは教室内でのやり取りである。
「あぁ、試合前に軽く身体を動かしておこうか……、って事なんだが」
「それは構わないんだが……、どれだけ走るつもりなんだ? 」
「……グラウンド5周だ」
「……多いんだか少ないんだか、微妙な量だな、オイ」
しれっと言い出すガルシアに、若干頬がひきつる支倉。
「ランナーズハイってのか? アレが出てくるのがこの辺りなんだ。
それじゃ、行ってくる」
「あ、あぁ……」
そうして教室を去るガルシアであった。
「さぁて……、おいっちにさんしー、にぃにさんしー、っと」
ジャージに着替えグラウンドへ。
走る前に先ずは準備体操。
「……さてと」
そうしてランニング程度の速さで走り始めた。……とはいっても、一般人より遥かに速いが……。
実は、その様子はセシリア嬢に見られていたのだが、
そうしてあっさり五周走り終えたガルシアは、まだ走り足らんとばかりに+五周走り……、
「さてと、そろそろアリーナに行くかな……」
と、そのままアリーナに向かった。ランニングで。
◇◆◇◆◇◆◇
……わたくしがそれを見たのは偶然だった。
下校中ふと、なんという事もなくグラウンドの方を見た時、ひたすら走り続けている御仁の姿が見えた。
「……」
口を真一文字に閉じ、普通より遥かに速い速度で、ひたすら走り続けていた。
少しだけ、あんな御仁がいたかと首を傾げそうになったが、すぐに思い至る。
「……そういえばいましたわね、どのような御仁かは詳しくは知りませんが」
……気にしてはいたのだが、一昨日あたりから、三組前の廊下に人が集まる様になっていた。
話を聞いてみたところ……、
%名前は【ガルシア・バルバロッサ】というらしい。(さらに言えば彼はスペイン代表候補生……、だとか)
%IS学園に来る前はバルセロナの教会に所属していて、しかも【代行者】なる役職に就いていたんだそうな。
「……まぁ、どのようなモノかは聞き出せなかったのだけど、ものすごい転職ですわね……」
……だってそうだろう、神職(しかも、代行者と呼ばれる程の)からIS操縦者への転職なんて、自分からしない限りはそうそうあるものでは無い。
そうしている間も彼は唯ひたすら走り続けている。
そうしてちょうど10周走り終えたところで……、
「……なんだ、見られていたか」
と、今気がついたかの様に話し掛けられましたわ。あれだけの距離を走っていたにも関わらず、涼しい顔をして……。
「…………」
「……アンタ誰だったっけ? すまない、自分のクラスメイトの顔と名前を覚えるんで手一杯で、他所の連中の名前まだ覚えてないんだ」
一瞬、アレが頭に浮かぶも、冷静になって考えてみる。……編入して3日以内に学年の全員の名前を覚える……、そりゃまぁ無理ですわね。
「……なら、仕方ありませんわね」
「そうか。……それで? 」
「……わたくしは【セシリア・オルコット】。クラスは1年1組で、更に言えばイギリス代表候補生ですわ」
問われて名乗るのもおこがましいとは思いますが、彼に促され名乗りました。
「……俺は【ガルシア・バルバロッサ】。
1年3組のクラス代表で、更に言えばスペインの代表候補生だ。……序でに言えば元神父だ」
「あ……、それは御愁傷様ですわね。
それはともかく、一つ宜しいかしらMr.バルバロッサ? 」
「そうか、ならこっちからもいいか、Miss.オルコット? 」
「別に構いませんわよ? 」
「そうか……、今日の昼ン時に1組のヤツに訊いたんだが、この間、織斑少年に対して、ちとマズい事言ったらしいな。
で、それはそれとして、宗旨替えでもしたのか? 」
言外に、このやり取り自体に対する違和感を滲ませるMr.バルバロッサ。
「……それはそれ、これはこれ、ですわ。TPOってのご存知ありませんの? 」
「そんぐらいは知ってるさ、時と場所と場合だろ? ……そうなるとアレか、一定ライン以下のヤツに発動するんだな、ソレ」
「ま、そういう事ですわね。さて、こちらからも宜しいかしら? 」
今度はこちらからの質問の番。
「なんだ? 出来れば手短に頼む」
「わたくしもそちらのクラスの人にお聞きした際出てきたのですが、【代行者】とは、何なんですの? 」
「……それを聞くか」
尋ねた途端、彼はものすごく微妙な顔になりましたわ。
彼にとってどうやら答え難い質問だったようですわね。
「……そこまでお嫌でしたら、聞かない事にしますわ」
「……すまない、助かる」
「……深々と頭を下げられても困りますわ。まぁ、正直言って気にはなりますが……、
「……それも口を噤まさせてくれ。 上からきつく言われてるんでな」
これ以上無いくらいのしかめっ面で溜め息をつくMr.バルバロッサ。
「……そこまで言われると、逆に気になりますが。貴方、一体何者なんですの? 」
「俺か? 俺は、右手に聖書、左手に
この剣にて斬り裂くは、神の敵か国家の敵か……。そんな男だよ。」
心底疲れた様な面持ちで、似合わない格好つけた言い回しをするMr.バルバロッサ。
……それはそれとして、気になる単語が幾つかあったが。
「……神父なのに代表候補生、在り方自体が矛盾してますわね貴方」
「……慣れたよ、とっくに」
ぶっきら棒に、どこか哀愁漂う雰囲気を纏って呟くMr.バルバロッサ。
「と、とりあえずご苦労様ですわね……」
「……ん、ああ、ちょっと待ってくれ、電話だ」
そう言うと、彼は電話に出た。
「…………」
『はいもしもし、
……あぁ、あんたかコトミネ。あー、ギルからは大体聞いてるんだが、災難だったな。
……まぁ、あんたがその程度でお陀仏になるとは、奴も俺も思っちゃいなかったが、な。
……ん? 今、どこだって? そう言えばそっちには言ってなかったな。
IS学園だよIS学園、今俺はスペインの代表候補生やってんだよ。
織斑少年がアホしなきゃ、俺は継続的に神父やってたのになぁ……、今更だが。
見舞い? 週末にフユキ行くから、そん時まで無いとは思うがくたばるなよ? それじゃあな』……あぁ、悪かったな」
「あの……、今の相手は? 」
「……コトミネキレイって言ってな、ある意味同僚だな。で、漢字はこれ」
そう言うと、携帯の履歴をこちらに見せてきた。
なるほど……、『言峰 綺礼』ですか。
「……そういえば、そろそろ行かないとまずいのでは? 」
「げ、確かにそうだな、……じゃあな、Miss.オルコット」
「えぇ、それでは」
……そうして、Mr.バルバロッサは走り去っていった。
「……こう言うの、『掃き溜めに鶴』と言うのでしたっけ? 」
◆◇◆◇◆◇◆
「待ちましたか? 」
「そんな事ないわよ? 私も今来たばかりだから」
アリーナに到着し、ロッカールームにてISスーツを着用し、【ラファール・リヴァイヴ】を装着しフィールドに出ると、三年生は既に待機していた。
「……人が増えると面倒なんで、さっさと始めませんか? 」
「……どうして? 」
「……ジロジロ見られるの好きじゃないんです、仕事とかならともかく。
それに、一方的に対策研究されるのも癪ですし」
「……一体何歩先まで心配してるのよ、君は……」
「……ちょいと前に、油断慢心からひどい目にあった事がありましてね、それ以来、こちらにどれだけ優勢でも用心して掛かるようになったんですよ。……で、さっさと始めませんか? 」
催促する理由を聞いた後、若干呆れた口調の三年生に対し、至極真面目な顔のガルシア。
「それもそう……、ねぇッ!! 」
「……っと、煽った俺が言うのもなんですが、いきなり撃ちますか!? 」
「……それにクロスカウンターかます君は一体何なのかしら?! お陰でシールドちょっと減っちゃったわよ!! 」
「いきなりライフルぶっ放しておいてそれ言うんですか!? 」
「知らないわよ、てか、そっちはバズーカじゃないのよ!! 」
「撃とうとしてきたら撃ち返すしかないじゃないですか!! てか、貴女が速射技能持ちだったとはね!! 」
いつの間にやら弾幕ではなく、言葉のぶつかり合いになった二人。
……とは言うものの、戦闘は継続中であり、手を変え品を変え武器を変え、追いかけ追いかけられ撃ちつ撃たれつ躱し躱され上へ下への右へ左へと鬼ごっこは、五分十分十五分とじわりじわりと長くなっていく。
……さっさと終わらせようというガルシアの思惑とは裏腹に、長くなればなるほどその分だけ、見物人は増えるばかり。
とはいっても、別にガルシアが弱いわけではなく、ただ単に、『止まった的を射抜くのは得意だが、動く的を撃つのが若干苦手』というだけなのである。
それを誤魔化すため、『相手の動きを予測して、撃ち込む』という、やたら面倒な手法をとっている訳なのだが……、幸か不幸か観客からのガルシアへの実力評価が高いレベルになっているのは彼のみぞ知らず……。
さて……、いい加減に面倒になってきたガルシアは、あるものを取り出し構えた。
「さてと……、やっぱり使い慣れたモノの方が手に馴染むな」
「……何それ、君は何処かの奥州筆頭なの? 」
「誰ですか、それ? 」
「……『伊達〇宗 BAS〇RA 』で調べなさい」
「後で調べます。さて、どこぞのメイド長は射程36間ですが……、」
「……なによ」
「……俺の射程は、108間です!! 」
そうして、ガルシアは身体を大きく捻り、右手に持った三本を目一杯ぶん投げた。
「……うわっ、危ないわね!! 」
投げナイフ(実は黒鍵)を投げて生まれた隙に、瞬時加速で突っ込み……、
「……隙ありィ!! 」
左手に持った三本でぶった斬った。
そうして試合は終了。
「あーぁ、負けちゃったわね……、次は負けないから」
「次……、いつになります? 」
「……校内戦だったら、再来月の学年別対抗戦かしらね」
「……再来月、なら俺の専用機もとっくに届いてるでしょうし、本当の意味で全力出せそうですね」
「アレで全力じゃないっていうの……。ま、そりゃそうよね」
「ええ、まあ。それではお先に失礼します」
「そう、それじゃ」
……そうしてガルシアはピットに撤収した。
観客もちらほら帰り始めた。
所変わってガルシア達の自室。
「……お疲れ、どうだった? 」
「一応、勝った。
……あぁそうだ、週末俺、ちょいと出掛けるから。許可は明日にでも取るけどな」
「ふぅん……、要件は? 」
「知り合いの神父に仕事を押し付けられた。ついでに言えば、そいつ入院中でな……」
「……随分と深い溜め息だな、どこなんだ? 」
それに対しガルシアは……、
「……なぁ支倉、冬木市って知ってるか? 」
と、返した。
To be continued…….
如何でしたでしょうか?
……原作にて戦闘シーンのない相手の戦闘、地味に書くのが面倒でした、はい……。
そういえば、あの三年生、パーソナルデータ出てましたっけ?
名前有るのに付けたらアレかと思いまして、名無しだったんですが……。
それでは。