時間が掛かりましたが861です。今回はセカンド幼なじみ登場回です。それでは、どうぞ。
※感想にて読みづらいとのご指摘が在りましたので、台詞一つに一行開けてみました。
そして明くる日、こちらは校舎、一年生教室前の廊下、SHRが始まる八分前。
廊下を早歩きで行くのは立ち位置複雑系真面目(ある意味苦労人ポジ)男子ガルシア・バルバロッサ。
因みに今日の髪型は、いつもの首の後ろ括りではなく、横っ撥ねな寝癖を目立たなくするためにしたウルフレッグである。
・・・閑話休題。
そうしてガルシアが自分の教室に入ろうとしたときに、廊下の向こうの一組の教室の前に最近会ったばかりの御仁を発見し、少し考えてから一組の方へ。
「・・・そうよ。中国代表候補生、凰鈴音! 今日は宣戦布告に来たってわけ! 」
「ほー、お前代表候補生だったのか、ツインテチャイナ」
真横から腰を曲げ覗きこむ。
「んなッ・・・?! アンタ、こないだの
「おい」
なによ!? 」
聞き返した鈴音とその場にいたガルシアに、一発づつ出席簿による打撃。やったのは織斑教諭である。
鈴音には直撃したが、ガルシアは咄嗟に右腕だけ展開した。
「読みが甘いぞ、バルバロッサ」
・・・筈が、出席簿の”面”による打撃がガルシアの側頭部を引っ叩いた。
「・・・ち、千冬さん」
「織斑先生、だ。二人ともSHRの時間だぞ。さっさと戻れ、正直邪魔だ」
「は、はぁ・・・」
「す、すみません・・・」
部分展開されたISの左腕を引っ込めるガルシア。
で、また来るから逃げるなと捨て台詞を残して鈴音は去っていった。
それを追いかけるようにしてガルシアもその場を後にした。
・・・因みに、この後脳天出席簿チョップを喰らった女子が複数名いたのだが、その場を立ち去った転入組の二人(無論ガルシアと鈴音)がそれを知るわけが無かった。
更に言えば、セシリアを除く1組教室の中にいた全員と、鈴音の内心はある意味穏やかではなかった。
分類し敢えてセリフとするならば、鈴音はさしずめ、
「一夏以外にISを動かした男子がいたっていうの!? なによそれ、そんな話向こうからは何も聞いてないわよ!? しかも専用機持ちですって!? 」
とまあ、こんな感じであろうか。
ついでに言うと、三組以外で知っていたのは、織斑教諭(搬入手続き関連)と更識会長(ヘリとISの入ったコンテナを間近で見た)ぐらいであろうか。
・・・本当はもう一人いるのだが。
まぁ、彼女は未だ表舞台に上がる事すら、どこぞの阿呆の所為で結果的に”させてもらえ”ない状況な為、この場においては敢えて名を伏せさせて頂くが。
それ以外の生徒の場合では、ただでさえ三度の飯より噂好きの十代乙女連中、その情報網を完全にすり抜け、むしろかいくぐるようにして眼前に事実だけ叩きつけられた為か、ある意味何もない地面から腕が飛び出してきたぐらいの驚きであっただろう。
だが彼にとってはそれもまた、知ったことではない。
むしろ、1組から4組までのクラス代表全員が専用機持ちだという事実に否応なしにやる気が漲るのであった。
(今もかは知らないが)某国民的人気な漫画の主人公風味に言えば、
「誰と当たるかまではわかんねぇけど、どいつもこいつも強そうなヤツらばっかだな。オラ、ワクワクしてきたぞ! 」
・・・な感じである。(言うまでもなく素人に毛が三本生えた程度のアレはノーカンである)
さて、今日の授業が始まるようなので、長々しい語りはこの辺としよう。
・・・・・・
そんなこんなで、昼休み。
怒濤の如き質問(という名の詰問)を警戒し、ガルシアは今日は独りで昼食を取る事にした。
そうしていつものように券売機で食券を買い、いつものように並ぶ。ちなみに、今日のガルシアの昼飯メニューは担々麺と八宝菜である、理由は特にない。
少々待ち、注文の品が出来上がったので、受け取って席を探してみるが、空いていたのが僅かだった。
そして、ようやく座った席の隣が何の因果か、俗に言う日中英の”一夏ラバーズ”であったものの、 それを気にせず食事に取りかかるガルシア。
その途中、担々麺の汁を飲み干したぐらいになって、隣の隣に座っていたセシリアと箒がなにやら不機嫌そうな声色で織斑少年に訊いてきたのでつい、
「・・・別にどうでもいいんだが、それはどんな意味での”つきあう”、なんだセシリア? 」
と、ついつい突っ込んでしまった。
「ど、どんなと言われましても」
意識的な死角から唐突な突っ込みをされ、やや焦るセシリア。
「べ、べべ、別に付き合ってる訳じゃ・・・」
「そうか。セシリア、箒、どうやらあんたらの早合点のようだぞ」
「勝手に話を仕切るなガルシア」
「そうか、悪いな。いらんお節介だったか」
「なら始めからやるなガルシア。
・・・で、付き合ってないというのが事実なら、どういう関係なのだ一夏? 」
今度は織斑少年に問う箒。
「どういうって・・・、あぁ、そうか。二人は丁度入れ違いになるのか。
というか、そもそもなんでそんな話になってたんだ? 鈴はただの幼なじみだよ」
「幼なじみ・・・? 」
織斑少年の言葉に怪訝そうな声で聞き返してきた箒と、一夏をにらむ鈴。
そこから織斑少年はW幼なじみにそれぞれの事を説明した。
説明し終わり、箒と鈴が挨拶を交わしたところで、
「・・・ンンンッ! わたくしの存在を忘れては困りますわ、中国代表候補生、凰鈴音さん? 」
割り込んできたセシリア。
「・・・・・・誰? 」
「なっ!? わ、わたくしはイギリス代表候補生、セシリア・オルコットでしてよ!? まさかご存じないの? 」
「全然。あたし他の国とか興味ないし」
「そうか、なら俺にも興味抱くんじゃないぞ」
そう言いながらガルシアは席を立とうとするも、
「なに自然に退散しようとしてんのよアンタは。そっちのセシリア? はともかく、アンタに興味持つなってのが無理よ」
鈴に止められ、仕方なく座る。
「そうか。 俺はガルシア、ガルシア・バルバロッサ。スペイン代表候補生だ。
・・・とはいっても、まだ動かして約9ヶ月ちょいの俄仕込み、実質的に代表候補生歴半年も無いからな。はっきり言って興味持たなくていい、というか持つな」
右手で”ストップ”な構えをとるガルシア。
「・・・ふぅん、さしずめ素人からの速成コース叩き上げってとこ? 」
「そんな感じだな」
「い、い、言っておきますけど、わたくしあなたのような方には負けませんわ!! 」
若干
「そう。けど、戦ったらあたしが勝つよ。悪いけど強いもん」
それとは対照的に、まさにどこ吹く風と、余裕綽々な態度な鈴音。
「・・・・・・」
「い、言ってくれますわね・・・」
鈴の自信満々、余裕綽々、確信じみてはいるが嫌みではない言い方に、若干の怒りを覚える箒とセシリア。
「勝手に言ってろ、凰鈴音。というか、ごちそうさまでした」
その反面、あくまでもそれを聞き流すガルシア。
・・・下手しなくても生身? でISより強い連中を十指に余る程知ってる為、
「あ、そう、で? 」
としか感想が出ないからである。
ついでにいえば、
「そりゃあ、そもそも実力がなけりゃ専用機持ちにはなれんだろうよ。
・・・あ、いたな約二名。ド素人なくせに”御都合主義”で専用機持ちになれたヤツと、実力や与えられるに足る資格が無くても、”依怙贔屓”で専用機持ちになれそうなヤツが」
とか、知人の銀髪ならそう言いそうだな、とか思ったのである。
間違っても某鉄の男やイニシャルI・V・Eではない、むしろJ・E・Fである。
むしろガルシアからすれば、そっちが世界初なのである。
「・・・あんたは、どうでもよさそうね」
「悪いが、いちいち挑発にいちいち乗ってやる理由がないんでな」
「二度言いましたわね、いちいちと」
「さしずめ、挑発の一つ一つに一切の例外なく反応しない、といったところなのだろうが、わざと難解に言っているのかお前は」
「いや、言いたい事を言いたいまま言っただけだ」
「早口言葉みたいだな」
「どこがだ織斑少年」
「・・・あんたらさぁ、わざと? 」
ある意味同じことをやりかえされ、ややキレかけな鈴。ちなみに、割り込むタイミングを外され、やむ無くラーメンを啜っていた為、丼の中の麺は空っぽである。
「そんな訳があるか」
「・・・ふぅん。
そういえば一夏? 」
急に話を織斑少年に振る鈴。
「なんだ、鈴? 」
「アンタ、クラス代表なんだって? 」
「お、おう。成り行きでな」
「ふーん・・・」
何を考えているか端からは見えないが、何か考えている風でどんぶりを持ちごくごくとラーメンのスープを飲む鈴。
会話が切れたのを幸いと、ガルシアは食器を片付ける為に席を立った。
・・・食器を戻したぐらいでテーブルを叩く音を聞き、慌てて席に戻る。
「・・・何事かと飛んで来てみれば、何を噛み合わない会話してるんだお前らは」
・・・戻って来たタイミングとしては、鈴の家が中華料理屋(むしろ食堂)で、織斑少年が週に何度も行っていたという話の辺り。
「さっきはさっき、今は今でしょうが」
「そりゃそうだろうな。ところで織斑」
「なんだよガルシア」
「お前の特訓も兼ねて、俺の専用機の慣らしに付き合ってくれないか? 」
そのセリフにピクリと反応する三人と、BL的解釈をする腐っている一部の女子。
「いや、それはありがたいんだが・・・」
「だが、なんだ。あれか、この三人が吼えるのか? そうかそうか、そうなのか」
某フレミングの手の形で鈴音、セシリア、箒を指差しながら、何故か次の展開が読めてきた為、自然と織斑少年を見る目が憐れみ混じりになるガルシア。
「そんな目で見るなよガルシア」
「・・・〈
「〈何でわざわざ
「〈聞こえるように言って、後が面倒になりたくないからだよ〉
・・・そんなわけで、俺は失礼する。
じゃあな、幼馴染み'sとイギリス貴族な代表候補生、それでもって、環境と口だけ一端なへっぽこルーキー? 」
手のひらを後ろに向けて振りながら歩き、
『それでもって』
の部分で振り返り、これでもかと皮肉を込めて口角を吊り上げるガルシア。
そしてそのまま、学食を出ていった。
そうして放課後、遠く(人の来なさで)のアリーナにてひたすら専用ISにて修練、ただし今日は開始時間はやや遅めで、相手は織斑。
何故かと言えば、このアリーナに来る前に第3アリーナから引っ張って来たのだが。
「さぁ、やるぞ」
「・・・お、おう」
ガルシアに促され雪片弐型を構える織斑少年。
一方ガルシアが構えるのは、墺州レーテヴェルク社製58口径狙撃銃【アイゼンイェーガー】。
威力よりも射程と貫通力を重視した、この時代珍しい、銃剣付きのレーザーライフルである。
「あれ? そのISって・・・」
「あぁ。コイツが俺の専用機だ。 さぁ、一分一秒が勿体ない、実戦形式でビシバシやるぞ! 」
そうして、ガルシアと織斑少年の戦闘修行が始まった・・・。
「よし、今日はここまでだ・・・って、大丈夫か織斑」
「・・・だ、大丈夫な訳、ないだろ」
数時間後、地面に大の字でへばっている織斑少年と、それを中腰で見下ろしながら呼吸を整えているガルシア。
「だろうな、見ればわかる」
「ひ、他人事みたいに言うなよなァ・・・! 」
「すまない、あれは初心者相手にやる密度じゃなかったな」
「そんな事無いぞ? 実際、色々とためになったしな。
・・・いきなりこっちに来たのは驚いたけどな」
よいしょと起き上がる織斑少年。
「・・・んー、なんとなく第三アリーナに行ってみれば、箒とセシリアがISで喧嘩していて、お前が暇そうにしてたからな、つい」
「つ、つい!? ・・・まぁいっか、ほらよ」
足下に置いていた【アイゼンイェーガー】を放る織斑少年。 投げられたそれをガルシアはしっかりキャッチし、IS内に格納した。
「さてと、上がるか。課題点はさっき言ってあるから大丈夫だよな」
「わかってるさ。
・・・まぁ、さっきは模擬戦中にいきなり、
『お前、一度も銃を撃った事無いだろ。 これ、貸してやるからやってみろ』
・・・って、アイゼンイェーガーだったか? 渡された時は面食らったけどな」
・・・それは模擬戦の途中である。
実戦訓練の最中、ガルシアは織斑少年の動きについて何か気づく度に、
「ばか正直に真っ直ぐ飛び込んでくるな、同じ瞬時加速を使うのなら、大回りして照準から外れた瞬間に来い」
とか、
「攻め一回に攻撃一回で終わらせるな、間合いに入ったら攻めを継続させる気概でいけ」
・・・とか言っていたのだが、手合わせがある程度進んだところで一時中断させた。
そして、対射撃戦闘について軽く質疑応答し、先ほどのセリフを言ったのである。
で、織斑少年にアイゼンを貸し、ガルシアはもう一丁、今度はカービン銃タイプのアサルトライフルを展開し、射撃も含んだ形式での実戦再開。
それから数発撃ち合って言ったのが、
「とりあえず、どうしたってISより銃弾が速いのはわかったか? わかったなら実践に活かすんだ、わかる前より少しでも躱せるようになれ」
・・・である。
閑話休題、ISを収納する二人。
「そういう訳で織斑、ここでまた明日だな」
「・・・そういやそうだな」
そ
そして、その場をあとにした。・・・ただし、織斑少年は第三アリーナに戻ったのだが。理由? 彼がガルシアに半ば拉致られるまでどこにいたのか、言うまでもなかろう。
といっても、わりと近くなので大した差は無いのだが。
で、ガルシアは更衣室のシャワー室でシャワーを浴び、ISスーツから制服に着替え、アリーナをあとにした。
・・・因みに、第三アリーナの方はどうなったかといえば。
織斑少年をガルシアにかっ攫われ暇をもて余したセシリアと箒が(若干八つ当たり混じりで)試合していて、白熱しすぎた為か、時間的には織斑達より少し早く上がった。
そして、その少し早くの差によってちょうど、着替える為に更衣室に入った織斑少年と、箒がエンカウントする結果となった。
そして鈴は結果的に、遠くに見えた織斑少年の背中を追いかける形となったのだが。(織斑少年は後ろにいた事に気づかず)
・・・まぁ、そこで何があろうが、それはガルシアには与り知らぬ事なのだが。
で、時間は経過し午後八時を優に過ぎ、とっくに晩飯時間は過ぎ去った頃。
がルシアがなんとなく寮内をぶらぶらしていると、1025室の前に今朝会ったばかりのツインテ女子(何故かボストンバック装備)がいるのを発見。
原因不明の悪い予感が沸き上がり、そのまま観察していると、彼女は1025室に入って行ったので、そろりそろりと部屋の前へ。
己のお節介焼きっ振りにうんざりしながらも、中のやり取りに意識を集中する。
どうやら部屋代われだのなんだのと揉めている様だ。
そのくせ同じ内容をくるくる、くるくると、繰り返している。
業を煮やしノック三回、そうして乱入した。
「さっきからなんだなんだ、不毛な無限ループを繰り返して」
「・・・絶妙な割り込みだなガルシア」
「本業スキルを使っただけだ、箒。いや、呼び捨てにし合う仲でもないから、Senorita'篠ノ之でいいか? 」
「・・・箒でいい、その呼ばれかたは、何故だかは知らないが背筋がぞわぞわする」
「そうか」
「ところで鈴」
「なによ一夏? 」
鈴の足下のボストンバックに気がついた織斑少年が話しかける。
「それ、荷物全部か? 」
「そうだよ。あたしは
「随分とまぁ、身軽なヤツだな」
へー、といった感じで感心するガルシアをスルーし、W幼なじみの言い合いは再開された。
そして、激昂した箒がベッドの横に立て掛けてあった竹刀を握り・・・、
「あ、馬鹿———」
織斑少年が制止する暇もなく、箒は竹刀を鈴に振り下ろした。
「———全く、少しは頭を冷やせ。
それと、これは余計だったか、鈴? 」
・・・が、それは割り込んだガルシアによって止められた。 展開された右腕と、一緒に展開された一丁の銃剣の腹によって。
「そうね、今のは大丈夫だったわね」
「だろうな、なんせ 俺たち代表候補生だからな」
そう言ってガルシアはISの部分展開を解く。
「ていうか今の、生身の人間なら本気で危ないわよ? 」
「う・・・」
バツが悪そうに顔を逸らす箒。
「ま、いいけどね。・・・で、さっきのナニよ」
細かいコトは気にしないとばかりのからっとした態度で、ISの部分展開を解く鈴。
「アイゼンイェーガー、俺の機体の後付装備だよ。因みに、
そう言って1025室を出るガルシア。
・・・そのすこし後、一夏が大きなヘマをやらかしたのだが。
———次の日、生徒玄関前廊下に
『クラス対抗戦日程表』
なるものが張り出されたのだが。
第一回戦
一組代表:織斑一夏 VS
二組代表:凰 鈴音
そして、
第二回戦
三組代表:ガルシア・バルバロッサ
VS
四組代表:更識 簪
となった。
---to be continued.
如何でしたでしょうか?
この次あたりからジワリジワリと変わっていきますが、大して期待しなくても結構です。
ついでにですが、ガルシアの専用機のモチーフですが、
【 -X 103AP】
これがヒントです。
それでは。