4話
塗装作業を初めて十ヶ月目…今だに、実家に帰れず日々労働に勤しむレイアです。
塗装作業も順調に進み、もう一ヶ月もあれば完成しそうです。最後まで気を抜かずに突き進むぞ!! イルミが気に入るか次第で私の運命が決まるのだから…死にたくないでござる。
そろそろ、ワジマさんと特訓の時間だな。
庭にて。
この10ヶ月、筋トレや組手以外にも拳銃の扱いを教わっております。
パンパンパンパーーーン
「命中率は、三割といったところですね。やはり、射撃の才能はあまりないようですね。今からでもナイフに切り替える方がよろしいかと思いますが…」
「うーー、でも止まっている的なら命中率ほぼ100%ですよ!!」
ナイフの使い方も勿論上達したいが…私が一番求めているのには、銃の扱いだ。理由は、近距離から中距離まで汎用的に使える。そしてなによりナイフより一撃の殺傷能力が高いからだ。
「戦闘中に銃口が向けられると分かっていて止まる者は、まず居ないでしょう。後、正直に申し上げますと…その程度の銃弾、数発食らったところで我々位になれば行動に支障はありません」
確かに、こんな玩具の様な銃では念能力者相手には役不足だ。旅団の怪力馬鹿なんてRPGみたいなのを素手で受け止めていたからな。だが、念能力者といえども無傷というわけではないのも事実。変化系能力者とかだったら、RPGを食らって即死だったに違いない。要するに大事なのは、火力なのだよ。
「だったら、50口径のデザートイーグルでダムダム弾使用だったらどうかな?」
大口径の銃に国際条例で禁止されている弾なら、威力はかなりのものだろう。理想は、一cmの鉄板を貫通出来る位の銃が欲しい。
「なるほど…そこまで、殺傷力を高められると気を抜くと死にますね。気を抜かなくても、かなりの痛手ですね。ちなみに、レイア様はどのような目的でお使いになるのですか?」
ワジマさんの目が一瞬鋭くなった。
ゾルディック家の者に手をだすつもりなのか疑っているのだろう。誰が、そんな命知らずな事をするか!! 0.1mgでクジラが動かなくなる毒でも平気な連中だぞ…強化系でなくてもダムダム弾程度じゃ殺せる気がしない。そもそも、拳銃を向ける前に私があの世にいるわ。
「ハンター試験…どうしても、受からないといけないんだ。その機会を逃せば私には後がないから…オマケで言えば、自衛の為にね」
「何やら深い事情がありそうですね。わかりました…後日、その銃と弾をご用意いたしましょう。大口径の銃は、今までの銃と違って勝手が違います。ここにいるうちに練習しておいたほうがいいでしょう」
嘘!! 本当に用意してくれるんだ!!
あの大口径の銃があれば、一部を除くハンター試験の受験者やキメラアントの雑魚共には非常に有効だろう。本来なら、ライセンス獲得後に正規ルートで手に入れるつもりだったが思わぬところで手に入りそうだ。生きて帰る際は、こっそりとカバンに詰めて帰ろう。
「ありがとう ワジマさん!!」
「このくらいお安い御用です」
その後は、筋トレ・組手を行い一日の訓練を終えた。
ここにきて一年と十ヶ月目にしてようやく二の扉を開けきる事が出来るまでに成長しました。私個人としては、あの重量を誇る扉を二年で二の扉まで開けられるようになったのは快挙とも言える。きっと、三の扉を開けるには念を覚えないと不可能に近いだろうな…と少し思った。
その日の夜。
塗装作業が一段落した為 ワジマさん達に誘われて遊戯の準備をしているところです。
ジャラジャラジャラジャラ
「お若いのに麻雀をご存知とは博識ですな レイア様」
「いえいえ、本当に嗜む程度ですよ」
前世でも牌に直に触るのは数回程度しかなかった。基本は、ゲームセンターの脱マーと麻雀漫画で覚えた知識程度しかない為、本当に嗜む程度だ。オートリーチが無いと上がり牌を考えるのだって大変な位だから。
「ははははは、大丈夫ですよ。私達も嗜む程度ですよ」
と、笑いながら答えている。
笑いながら嗜む程度と入ってはいるが、私より麻雀には詳しいし 強いだろう。しかし、接待麻雀をしてくれるに違いないと信じてみる。きっと、大人の余裕というやつを見せてくれるんですよね。
「折角の勝負ですし、当番を一つ賭けてみませんか?」
当番?
執事の人達の仕事内容を把握しているわけではないけど…掃除当番や食事当番のことだろう。こういう場で断るのは空気が白けるのは確実!! Noと言えない日本人としては頷く意外選択肢は用意されていない。
まさに、公明の罠。
「では、全員の賛同が得られたところで始めるとしよう。ミケ餌当番を賭けて…」
ミケ…どこかで聞いた事があるような気もするが思い出せない。確か、サザ〇さんに出てきた白猫がそんな名前だった気がするな…いや、あれはタマだったっけな? まぁ、名前からするに可愛らしい子猫or子犬に間違いないだろう。
しかし、執事の皆さんの顔が結構マジになっている。
たかがゲームだというのに、まるで命懸けのゲームをしているかのような空気が漂っている。なにやら、不吉な気配が漂っている。
私が牌を集めて積み上げる為 手を伸ばした時 一斉に執事の手が伸びた。
シャシャシャシャシャシャシャシャシャシャ
執事が競うかのごとく、凄まじい速さで牌を自分の手元に集めて積み上げていく。あまりの速さに、呆然としてしまった。一体、何をしているんだ!!
カチャ カチャ カチャ
気が付けば、私以外の人は準備を終えていた。
「さぁ、レイア様も早くお準備を。既に勝負は、始まっておりますよ」
こうして、勝てるはずのない勝負が幕を開けた。
・・・
・・
・
数時間後。
何もかも燃え尽きたレイアです。
やはり、ゾルディックの執事は只者ではない…鬼、悪魔、鬼畜!! まさに、そんなの言葉がお似合いな人達だと再認識した。
「天和!!」「大三元!!」「国士無双!!」と麻雀初心者でも聞いた事がある役満を連発してきやがる。はっきり言って、あの速さのイカサマに素人の私が付いていけるはずもない。
接待麻雀どころか、完全にカモにされた。そして、向こう二ヶ月間ミケの餌当番という重要任務を引き受ける事になった。
そして、ミケの姿をみて再度枕を濡らすレイアであった。
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あれから一ヶ月、ミケに軽く捕食されつつも生きながらえて私の運命を決める日がやってきました。
以前に全員の身体測定もどきを行なった部屋でゾルディック家の家族像のお披露目です。それにしても、世界最強クラスの人物たちが集まりすぎだろう…ここにいるだけで、漏らしそうだ。
しかし、その中にはキルアとミルキが居ないのが謎だ。この一家で私を少なからず私を立ててくれそうなミルキがいないのは正直まずい。イルミの魔の手から私を守ってくれる人が誰も居ないという事になるからだ。
キュッキュ
イルミが針の手入れをしている。その様子は、無表情だが楽しそうな雰囲気が伝わってくる。
「あ、あのーミルキ様はどちらに? 出来る事ならば、当方の命に関わる上ご同席お願いしたいのですが…」
「ミルキは、今療養中じゃ。ここは、ワシが代表して採点してやろう。安心せい…ちゃんとした像なら、約束は守らせるわい」
流石は、ゾルディック家の良心と名高いゼノだ!!
それにしても、ミルキが療養中…そして、キルアが居ない。これは、キルア家出イベント発生した後じゃないか!! すっかり忘れていた。覚えていれば、ミルキの体調が治ったタイミングでお披露目をしたのにな。
「はい、よろしくお願い致します。では、これが私の約二年の歳月を掛けて作り上げたゾルディック家皆様の像です!! 」
バサーーー
被せていた風呂敷を取った。
私の汗と血と涙の結晶とも言える作品がゾルディック家の方に初めて披露された。
「ほほぅ、これはナカナカじゃの」
ゼノがヒゲを引っ張りつつ褒めてくれた。
私的に言わせて貰えば、完璧だと思う。像と並んでもらって同じポーズをしてもらえば瓜二つと言って申し分ない。身体的特徴は、完璧にトレースした。流石に、念能力者特有の雰囲気までは醸し出せていないが…像の正面に立つと萎縮してしまいそうな威圧感を感じる事が出来る。
「よい像だな…」
ゼノに引き続きシルバにも好評のようだ。やはり、わかる人にわかるようだ。嬉しい限りだ。
「まぁまぁ、良くやったわ」
「お母様、これ部屋に飾ろう」
キルアの母親とカルトは、絶対に気に入ると自信があったから当然の結果だ。なんせ、キルアを真ん中にして両方の手を二人が握っている像にしているからだ。キルアの心境をリアルに再現するために困り顔にしたものポイントだ。
ミルキ像は、椅子に座ってPCを操作している像にしておいた。まさに、瓜二つだ。ポテチまで再現しておいた。
イルミ像も無論、完璧だ。憎しみを込めて作ったからかもしれないが、他の像以上に禍々しい雰囲気が伝わってくる気がする。
「い、いかがでしょうかイルミ様」
「…………」
無言のまま針を磨いている…そして、イルミの手が一瞬ぶれた。
トス
気づけば、足元に針が刺さっているが…あまりの速さに何も見えなかった。もしかして、この針で自害しろと言うことなのか…嫌でござる。絶対に死にたくないでござる。死ぬ時は、嫁の胸の中と心に固く誓っている。
私の涙目を見たゼノが少し微笑んでいた。尊い命が今にも消えそうだというのに何という事だ。やはり、ゼノも鬼畜だと…。誰でもいいから、今すぐミルキをこの場に呼んできてくれ!! この場を乗り切る為ならミルキ専属のフィギュア造型師になっても構わんぞ。
私が半泣きになっているとイルミが立ち上がり、こちらに近づいてきた。足音は聞こえないが、死神が一歩ずつ近づいてくるのがよく分かる。
あぁ…ここで人生終わりなのかな。ごめんね ピトー…君を助けてあげられなくて。
最後に遺言くらい聞いてくれるかな…死ぬ前にお父様とお母様に産んでくれたお礼などなど伝えたいな。後…少しでいいので、像の代金として私が死んだ後に両親の口座にお金を振り込んであげて欲しいな。私が最後にできる親孝行はこの位かな。
「ソレ、あげる」
…え!?
あまりの衝撃的な言葉に脳が着いていかない。混乱している私を華麗にスルーして部屋を退場していった。
イルミが…この針を私に!!??
え、どういう事!? 誰か説明を!!
「ミルも気に入ったようじゃな。言うまでもなく、合格じゃ。よかったのぅ…お主もこれで自由の身じゃ」
自由…あぁ、なんて素晴らしい言葉なのだ。
「ウオ・・・・・ウオッシャーーーーーー!! 生き残ったぞぉーーー」
周りの視線など気にせず叫んでしまった。
今日ほど、生を実感した日はないだろう。目から心の汗が止まりません。
「そういえば、お前さん。像作成の報酬を全くもらっとらんそうじゃの…折角だからこれをやろう。もし、殺したい奴がいたら4割引で引き受けてやろう」
ゼノが懐から名刺を取り出して私にくれた。
4割引…むしろ、9割引位にしてくださいよ。確か、ひとり殺すのに10億位でしょう? 私のような一般人が貴方のようなプロを雇えるはずないでしょう!! などと言えることもなく素直にお礼を言った。
金では買えないコネと言うのは、非常に大事だからね。
「ありがとうございます!! 機会があれば是非ご依頼させていただきます。 それでは、今日まで約二年間お世話になりました。実家に帰り、ハンター試験を受けようと思いますので これにて失礼致します。…後、帰りにミルキ様のお見舞いに行きたいのですが、どちらに?」
キルアの母親が執事を呼んでくれた。
私は、執事に連れられて部屋を退場しミルキのお見舞いに行った。
こうして、約二年間お世話になったゾルディック家を生きて帰れる事になった。お土産は、地元で売っていたゾルディック饅頭などの地元のお土産を沢山買って帰ったよ。
後、見舞いに行ったミルキから像の報酬のおまけと言って、とても重い箱をくれた。中身がなんなのかは知らないが、きっとイイ物に違いない。
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キルアの野郎には、感謝しねーとな。
レイアが実家に帰る前に手ブラでお見舞い来たので即興でフィギュアを数体作らせた。完成度は、相変わらず高い。しかも、短時間で2体のフィギュアを塗装有りで作り上げるとは思ってみなかった。
なんでも、魔法少女をモチーフにしたらしい。暇だったので、どんな魔法少女か聞いてみたら、脱げば脱ぐほど早くなる金髪ロリ幼女と白い悪魔と呼ばれるロリ幼女が周りの迷惑や物的損害を度外視した超絶バトルを繰り返す話らしい。
俺の直感が正しければ、これは儲かる。
『ワジマか、お前は確かジャポン出身だったな?ちょっと、やって欲しい事がある』
『何でも、お申し付けください』
『実はな…』
ワジマに命令した後に俺は、レイアから聞いた話にちょっとした要素を取り込んだ話を書いた。
二ヶ月後の深夜にジャポンで社会現象を巻き起こすアニメが放映されたのであった。その内容は、こんな感じだ。ロリ幼女の鞭打ちシーンや非殺傷とは名ばかりの殺人的魔法戦を繰り返す超弩級の変態アニメと言ったところだ。
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タイトル:「魔砲少女 本気(マジ)狩る なのは」
原作:レイア
監督:Milky
シリーズディレクター:Milky
シリーズ構成:Milky
脚本:Milky
キャラクターデザイン:レイア
音楽:Milky
アニメーション制作:ボルビック
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レイアの知らないところで名前が売れるレイアであった。