5話
先月、黄泉の国と言っても過言でもない場所から生きて生還を果たし16歳になったレイアです。
とうとう、原作クラピカと同年代になってしまいました。だが、ゴンやキルアと同年代じゃなくて本当によかった。あんなのと比べると萎えるからね。
そして、今日はハンター試験当日!!
両親には、記念受験だから一度だけ受けさせてくれとなんとか説得した。今こそ、道場やゾルディック家での成果が実る時なのだ。
そして先日、二年ぶりに道場に遊びに行って師範代とお話してきました。師範代曰く、運が悪くなければ合格するだろうとお墨付きをいただいた。恐らく、運が悪いというのは念能力者が相手の対戦試合や知識を問う試験でなければといった感じだろう。
まずは、第一関門。
何処にでもあるような定食屋の中へと入った。
「ステーキ定食」
定員の顔つきが微妙に変わった。
「焼き加減は?」
「弱火でじっくり」
ふふふ
事前試験をやらずに一気にここまで来られるのは転生者の特典だな。マトモにやっても、たどり着けるかもしれないが…それは、ゴン達と同じルートを辿った時限定の話だろう。他のルートで来る場合は、どんな試験があるかわからんからね。
奥の部屋に案内され、ステーキ定食を食べつつしばらく待つと地下100階に到着した。
食事を終えてエレベーターから降りるとそこには、むさ苦しいオッサン達で満たされていた。だが、10年心源流拳法道場に通いゾルディック家で二年間過ごした私にとって、この程度の雰囲気に飲まれはしない。
「これがあなたの番号札です」
係員から420番の札を渡された。
なぜ、こんな試験会場やキーワードも知っているのに来るのが遅かったのには理由がある。可能な限り目立たない為、一次試験開始直前に到着したかった。後、ゴン達の番号札をずらすのは得策じゃないと思ったからだ。下手したら、私がヒソカの番号札を狙う事になりかねないからね。
ヒソカの番号札を狙うとか考えただけでゾッとするわ。
「新顔だね 君」
背後から人柄の良さそうな小太りの中年男性が話しかけてきた。
ト、トンパきたーーーー!!
私は、お前を待っていたのだよ!!
「えぇ、今年はじめての受験です。よろしく」
「あぁ、こちらこそよろしく。俺はこうみえて35回もテストを受けているから分からない事があったら何でも聞いてくれよ。後、これはお近づきの印」
トンパがカバンから缶ジュースを取り出して私に差し出してきた。私は、それを受け取ると同時に小型の発信機をトンパに取り付けた。この死亡率の高い試験を何度も受験して生き残っているお前を私は高く評価している。要するにだ、お前に着いて行けば死ぬ事はまずない。おまけに、今回に限っては4次試験まではトンパがたどり着く事も知っている。
私の為に頑張って生き残ってくれよ。
「ありがとう。私は、少し疲れたので コレでも飲みながらあちらで休ませてもらうよ」
「あぁ、ゆっくり休んでくれ」
隅っこに行き、ジュースを捨てた。始まる時間までは、持っていた荷物の手入れをしておこう。いつ何とき使う事になるかわからないからね。
数分後。
「ぎぁあぁあーーっ」
はっ!!
悲鳴がした方を見ると、ヒソカが腕を切断しているシーンだった。もうそんな時間か…ならば、今からでも準備運動を開始しておこう。
更に数分後。
「では これよりハンター試験を開始いたします。どうぞこちらへ」
夢にまで出たハンター試験がいよいよ始まった。この試験をクリアしない事には、何も始まらない。
待っていろよ ピトー!! 必ずお前を手に入れてみせる。
ザザザザザザ
400人近い人数が一斉に移動を開始した。
ここでは、まだ発振器の出番ではない。迷う事の無い一直線の通路だからね。後は、自分のペースで踏破するのみだ。昔の私なら100km近いマラソンなど不可能だったが…今は違う!!
ありがとう 心源流拳法道場!! ありがとう ゾルディックの執事の人達!!
涙で汚れた枕カバーを変えた回数は数知れないが、今だけは感謝してやるぞ。
おっと、あまり妄想にふけっていると遅れてしまうな。自分のペースを守るのも大事だが…何より、主人公一行と同じペースというのが一番ダメだ。原作組と仲良く行動していては、ハンター試験後に再びゾルディックに行く事になりかねない。だから、一定の距離を保つべし。
気合を入れろ レイア!!
パン
自分の両頬を叩き 活をいれて、ゴール目指して走り出した。
数時間後。
ようやく、階段まで到着した。流石に、毎日鍛錬していても ここまで走るのは結構体力を消耗した。原作キャラ達は既に登り始めているのを後ろから確認したので、私は自分のペースを守りつつ登りきるまでだ。
さぁ、頑張るぞ!!
登り始めて数十分後。
上に登るにつれて、体力切れでくたばったように休んでいる連中を何人も見てきた。正直、実力不足な人達は、ここで脱落しておいたほうが幸せだろう。これからの道は、死亡率が跳ね上がるからね。
お!!
上の方から光が見えてきた。
「到着…っと」
ふぅ〜
登りきった先には、既に受験者が沢山いた。どうやら、私は最後尾に近かったようだ。おっと、次の試験が始まるまで休んで体調を整えておこう。ここからは、試験官であるサトツのペースに付いていかねばならないからね。だが万が一見失った時には、この発振器が役に立つ。
水分補給をして少し休んでいると辺りが騒がしくなってきた。
そして、一匹の猿が死んだ…全く、キモイ生態系だな。改めて、〇樫ワールドに生存する生き物の生態系に疑問を感じた。もっとも、そのような生態系でなければ、私のピトーも現れないのだけどね。
「それでは まいりましょうか。二次試験会場へ」
立派なおヒゲの試験官が走り出した。私はすかさず、試験官の真後ろと陣取った。命懸けのマラソンだ。ここだけは、自分のペースが乱れようとも決して離れまいと心に誓った。だって、死にたくないもん。
30分後。
ふっ…分かっていたさ。
迷子になりました。気が付けば、目の前にいた試験官が居なくなり左右にいた受験生も消えていた。どうしてこうなった…最前列を常に走っていたのに、後ろの方で悲鳴が聞こえた為、一瞬振り返ってしまっただけでこの有様だ。流石は、詐欺師のなんとやら…。
だが、ここで諦めるレイアではない。ちゃんと、こういう時の対策として熟練受験者(トンパ)に発振器を付けているのだから。まだ、そう離れてはいないはずだ。
私は、発振器の目標の位置を確認した。
ザザザ!!
その瞬間、横の茂みから76番のプレートを付けたおっさんが飛び出してきた。
・・・
・・
・
「チェストーーー!!」
ドゴン
私は、76番の男の懐に飛び込んで手加減無しの正拳突きをお見舞いした。この12年間、ハンター試験の為に修練を積んできた私の腕力は、試練の門を二の扉まで開けられる程に成長している。そのような腕力を持つ人間の拳をいきなり食らった人間は、あたりどころがよくて悶絶するだろう。
「ぐぅぅうううぇええええええーーー」
「悪く思うなよ」
76番が苦しむ中、私は早々にこの場を立ち去った。
傍から見たら私が悪人に見えるかもしれないが、それは大きな誤解だ。私の記憶が確かなら、76番はヒソカから逃げ出してきた一人だ。要するにだ、76番がこっちに来たということはヒソカが私の方に来るという事だ…RPGで言うならばMPK(モンスタープレイヤーキラー)と言ってもいいだろう。
マジで迷惑だ…死ぬなら一人で死ね。
よって、私はヒソカに生贄を差し出し逃げる事にする。そう、全力で!! 人間命懸けになれば信じられない力を発揮するというが今がまさにそうだ。この足の速度ならば、ミケの餌当番になっても捕食される事は無かっただろう。
10分後。
「はぁはぁ〜」
一心不乱に走り続けたおかげで、全身汗だくになった。しかし、おかげで生き物に騙されることなく二次試験会場へと到着した。
「の、のどが渇いたぜ」
本当ならもっと楽にこられるはずだったが、ヒソカ絡みはやはり不確定要素が多いな。だが、ヒソカに目を付けられないだけ僥倖と言える。全く、自分の才能のなさに感謝したい位だわ。
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現在、二次試験真っ最中のレイアです。
勿論、お題は「豚の丸焼き」だ。しかも、二次試験会場のビスカの森にいる豚は世界一凶暴と言われている程だからタチが悪い。本当に、試験官はいい性格をしている。
「さーて、豚は何処かな」
さっきから、探して入るのだが…一向に豚が見つかりません。正直、ここの豚如きには遅れを取る気はないのだが、そもそも獲物がいないとか酷すぎる。
これでも、ブ…じゃなかったミルキとは仲がいい?から豚ともお近づきになれると思ったのにな。
ドドドドド
少し離れた場所で地響きがした。
これは、間違いなく豚の足音だ。私は、すぐさま足音がする方向へ走った。辺にいた受験者も同じ獲物を狙っているようで一気に集まってきた。
私が、現地に到着した時には既に豚達は壊滅状態だった。ゴン達が豚の弱点を大声で叫んだせいで全員が急所狙いで一網打尽にされている。
なんてこった。
しかし、まだ豚は残っている。辺りを見回して、なんとか受験者の餌食になっていない豚を発見した。ほかの受験者より早く、そして確実に仕留める!! 豚目指して一直線で走った。
豚も私に気づいて突進してきた。
自ら、倒されに来てくれるとは、ありがたい。せめて、苦しまないよう一撃であの世に送ってやろう。拳に力を込める。
「未来の為に死ねーー」
トストストス
ドーーーーン
私の拳が豚に届く前に、はるか後ろから何かが投擲された。その形状は、ヒジョーに身に覚えがあり、かく言う私も一つ所持している。
決して、忘れていたわけじゃないが…出来る事なら不干渉で貫きたかった。
「二ヶ月ぶりですイ…ヒィ」
「………」
振り返り挨拶をしようと思ったが、名前を言おうとした瞬間 自分が死ぬシーンが見えた。なにやら、口をカカクカク動かしているが何を言っているかわからない。だが、名前を口にするなという事だろう。
そして、イルミは私の獲物だった豚を持ち去って行った。
・・・
・・
・
「私のブタさんが…こうなりゃ、最終手段だ」
既に豚の軍団は壊滅、これから新しい豚を探すにしても時間がかかる、試験官が食べられる数には限界がある。
ならば、取る手段は一つ!!
二次試験会場にて。
会場には、豚が焼けるいい匂いが充満している。
私は、その中で獲物を探していた。言うまでもなく、豚を横取りする相手をね。今回の試験は、豚の丸焼きを試験官に食べさせる事だ。その過程までは、指示されていない。
やはり、全員が豚を一人で狩る事が出来るのでそれなりに腕が立つ。その中から、私の実力で確実に排除可能で、騒がれない人物に目を付けた。
私は、気配を殺して背後に回り込んだ。そして、一気に首を締めた。
ギリギリギリ
「安心しろ。殺しはしない…ただ、試験が終わるまで寝ていてもらおう」
「ふざ…ぁ」
ドサ
締め落とした受験者を森の中に隠した。
どうせ、この受験者は最後まで残れないのは明白。ならば、未来ある私がそのチケットを有効活用させていただこう。
さて…いい具合に焼けたし、試験官様にご馳走しに行くとしよう。
二時試験会場のプレハブ内で。
いやー、それにしても本当に70匹の豚の丸焼きを食べるとはね。一体どんな、念能力なのだろう。もしかして、王と同じ食べる程強くなるとかじゃないよね?
「あたしは、ブラハと違ってカラ党よ!! 審査も厳しくいくわよー」
厳しくね…ハンゾーのせいで怒ってしまい誰も合格にならないから、厳しかろうと優しかろうと関係ないのだけどね。一応、表向きは頑張っておこう。
「二次試験後半、あたしのメニューはスシよ!! 」
ザワザワ
ほとんどの者が顔を傾げている…無論、私も演技をかねて傾げておいた。目立つのは得策じゃないからね。
「それじゃ、スタートよ」
全員が一斉に厨房に走った。
さて…私は、どうしようかな。無駄な努力をするのも気が引ける。かといって、何もしないと試験官に怪しまれる。ならば、適当に料理を作ってこの場を乗り切るかな。
「えーと、冷蔵庫には何が入っているかな…」
調味料、野菜、果物、肉と結構マトモな材料が揃っている。当然の事ながら、魚は入っていない。
おろ…なんだ いい物があるじゃない!!
素材の中に卵を見つけた。
寿司といえば、一般的には魚だが…前世では、天ぷらとかカルビとか色々な寿司ネタがあった。当然、そんなお寿司は邪道だと思う。しかし、卵だけは別だと思っている。卵のお寿司美味しいからね。
それに、卵焼きならばお母様と一緒によく作ったな。味付けが母とそっくりとお父様も褒めてくれた。一般家庭の料理程度では満足しないだろうが…まぁ、作っておいて損はないだろう。
数分後。
「魚ぁ!! お前 ここは、森の中だぜ!!」
私が、黙々と卵焼きを作っているとレオリオの大声が聞こえた。
あいつ絶対狙ってやっているだろう。わざわざ、ヒントを大声で叫ぶとかどうかしてやがる。それにつられてハンゾーも過敏に反応したのがマズかったのだろう、受験生が一斉に外に飛び出していった。
そして、私一人だけ残された。
「これで完成と…」
出来上がった卵焼きを綺麗に切って、ご飯の上に載せた。忘れずに海苔も巻いておいた。安っぽいお寿司だが…これも間違いなくお寿司には間違いないだろう。
誰もいないうちに一度くらい味見してもらっておこう。やる気が無いわけじゃない事をアピールしておかないとね。
「お待たせしました。これがスシです」
「へーあんたは、魚だけがスシじゃないって知っていたんだ。本当なら、魚が良かったのだけど、まぁいいわ 試食してあげるわ」
ここの生態系の川魚を所望するとは、なかなかゲテモノ好きなんだなこの人。
メンチが私のお寿司を掴み口へと運んだ。
モグモグモグ
「まるで、ダメね。スシを知っていた事は評価するけど、料理の腕前が全然ダメね。そもそも、スシの卵焼きと言うのはね………」
・・・
・・
・
な、長い…なんで、卵焼き一つで3分以上もお説教を受けないといけないのだ。そんな、素人同然の連中が作った料理にこの人は何を求めているのだよ。
「よって、不合格よ。作り直していらっしゃい」
「了解です」
予想通りとはいえ、不合格。
まだ時間もあるし、他の受験生を見習って魚で寿司を作ろうかな…いや、確かこの後ネテロ会長が来るよな。ならば、メンチの裸婦像でも進呈すれば喜ばれる事は間違いないだろう。
この試験を通過できれば時間は、たっぷりありそうだし…1/10等身位の像ならいけるだろう。今のうちに、じっくり観察させていただきましょう、その肢体をね。
きっと、完成品をプレゼントしたら印象値が上がり最終試験で対戦回数を多く割り当ててもらえるだろう。
俄然やる気が出てきたぞ!!