6話
外でちょうどいい木材を拾って帰ってきたレイアです。
「まずいわ!! 作りなおし!!」
どうやら、私がいない間にハンゾーがメンチを怒らせてしまい。審査内容が洞察力や観察力から味をみる事になってしまったようだ。美食ハンターのメンチの舌を満足させられる人間なんて、両手で足りる程しかいないだろう。
要するに、この試験は詰みだ。
まぁ、そんなわけで今後の展開を知っているので隅っこでフィギュアでも彫ります。うーーん、メンチは思った以上に胸があるからな…イイ躰をしているな。ネテロ会長がイヤラシイ視線で見るのも頷ける。
まぁ、私はピトー以外 興味は無いけどね。
さて、ネテロ会長の為に力作を作るとしましょう。荷物からベンズナイフを取り出し、作業に入る。このナイフ地味に切れ味がいいんだよね。流石は名品だわ。
10分後。
「わりぃ!! おなかいっぱいになっちゃった」
どうやら、試験が終わったようだ。でも、考えようによっては無理もないだろう。受験者が作ってきたあれだけの寿司を一応は食べているのだから、そりゃ腹もいっぱいになるわ。
しかし、受験者の中に寿司を知っている人物が居ない事を前提とした試験も微妙だけどね。一応、いた場合の事も想定して試験をやるべきだったよね。
性別で差別するわけじゃないけど…女性って感情的になりすぎる。もう少し、理論的に行動して欲しい。
「二次試験後半の料理審査は、合格者0!!よ」
ザワザワ
周りがどよめき出した。
何年も修行を積んで死ぬ思いで二次試験まで来て、お腹がいっぱいだから全員不合格ね。では、納得いかないだろうね。無論、私も原作を知らなければ納得など出来ない。知っていても理解はするが納得はしないけどね。
「ふざけんじゃねェーーー!!」
あ…受験者の一人がメンチに喧嘩を売りに行った。
我々、全員の気持ちを代弁してくれた君に感謝を込めて私は十字架を切った。せめて、五体満足でありますようにと…。
パァーーーン
見事に場外まで吹き飛んだ彼は、地面に落下した。痙攣している事から、死んではいないようだ。
この時、私の頭の中には「無茶しやがって」のAAが横切った。
さて…今のイベントがあったという事は、もうまもなくか…。
数分後。
『それにしても合格者0はちとキビシすぎやせんか?』
ドォーーーン
上空に居る飛行船から、ネテロ会長が落ちてきた。
あの高さから落ちてきて無事とは…念能力者とは怖いな。生身で大気圏突入とかも出来るんじゃないかと思ってしまうよ。
ジィーーー
それにしても、恐ろしい程 鍛えられた体をしているな。ゾルディック家の爺といい勝負だわと思った。流石は、行きつけの掲示板で有名な「世界最強の魔法使い」と言われている事だけはある。
ちなみに…私のネテロ会長の評価は、前世と今ではだいぶ変わった。前世は、「世界最強の念能力者」だと思っていたが、ここ数年は「世界最強の魔法使い」という認識に変えた。
皆様も当然、ご存知のようにこの世界でも男性が30歳まであるモノを守り続けると魔法が使えるようになる都市伝説がある。ある魔法使いの証言によると「僕にしか見えない幼女が現れるようになった」と言っている。そんな馬鹿げた記事を見ていると100年以上もあるモノを守り続けた人物が書き込んだ記事を見つけた。その人は、自分より遥高みにいるのは「ハンター協会の現会長だ」と言っていたのだ。一般人ならこんな妄言ばかり書き込まれている掲示板など読み流すのだが…内容が内容だけに、私はある結論に至った。
ネテロ会長が長年生き続けている理由、念能力が極めて強い理由…それは、会長が「世界最強の魔法使い」だったからだと確信した。流石、〇樫ワールドだ…信じられない法則が存在する!!
おまけに、念能力が瞑想だけでなく妄想でも目覚めるなんて想定外だぜ。
「そこの受験生…さっさと乗らないと失格にするわよ」
え!?
気が付けば、みんな飛行船に乗り込んで移動する様だ。どうやら、メンチが説得されて試験内容がゆで卵になるようだ。
「乗ります 乗ります!! 待ってください」
移動すること10分。
ビューーーーー
原作通り、クモワシの卵を取る場所まで来たのだが…想像以上に谷が深い!!はっきり、言いましょう…原作一行はキチガイだ。幾ら、谷底が川だからといってなんの準備も無しに飛び降りるなど狂気の沙汰だ。
何より、クモワシの卵がぶら下がっている糸が落下地点になければノンストップで谷底だぞ。既に、何人かの受験生が捕まる糸が無くそのまま落ちていっている。私は、飛び込むなんて無謀な事はしないぞ。
ロッククライマーが降りていった後を辿って降りる!! これが模範解答だ。
二次試験も勝利を確信して、ロッククライミングを始めた。
言うまでもなく、二次試験も難なく通過した。
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原稿もスタジオも設備も完成した。
残るは…声だけだな。
『ワジマか、執事候補の女で具現化系か操作系の奴を何人か連れてこい』
『かしこまりました ミルキ様』
念能力で何人もの声色を出せる能力を作らせて、一人何役もやらせれば余裕だろう。他にも原画作成用に専門的な念能力を開発させたリもしている。
一度作った念能力は、普通破棄できない。生涯変える事が出来ない念能力を他人の都合で決めるのは、酷いと思うかもしれないが それは間違いだ。
むしろ、救済してやっていると言っても過言ではない。
なぜなら、ゾルディック家の執事候補には高い能力が求められる。勿論、執事候補の中には 能力が低い奴も存在する。能力の低い奴の末路は、ミケの餌と相場が決まっている。
レイアは、なんの肉か知らずにミケに与えていたらしいがな…
俺は、そんな破棄されそうな人材に救いの手を差し伸べてやっているのだ。そんな訳で、俺は出来損ない共から神のごとく崇められている。
命の恩人でもあり、生涯食っていける職を与えてやっているのだから当然といえば当然だがな。
『そういれば…レイアの奴は、今ごろハンター試験の真っ最中だったな。…イルミ兄ぃに殺されてなきゃいいがな』
『そればかりは、ご武運を祈るしかありません』
今回のアニメが売れたら、またレイアにネタを提供させて儲けさせてもらうとしよう。
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一人密室に閉じ込められたレイアです。
「ど、どうしよう…」
三次試験会場のトリックタワーに着いて、到着早々にタワー内部に入る為の入口を見つけたまでは良かった。まさか、私が入った入口が…「多数決の道」だとは想定外だ。これでは、四次試験でトンパが狩れない。
しかし、考え方を変えればこの部屋に入れば原作組と一緒に行動する事になるので三次試験合格はほぼ確実。下手に試験内容が分からない、入口に入るよりかは幾分かマシだという事もあるか。
三次試験を合格しない限り、四次試験なんて出来ないのだからここは前向きに考えるとしよう。原作組が来るまで作成途中のメンチ裸婦像でも作ろう。最終試験の面談時にプレゼントして印象値を確保する為にね。
数十分後。
ガコンガコン
扉の入口と位置を確認する音が聞こえた。
今まで、ひたすら原作組との遭遇を避けてここまで来たが とうとう限界だ。決して、原作組が嫌いというわけではない。ただ、あいつらと付き合うと幻影旅団とか命懸けの駆け引きが多過ぎる。
さて…裸婦像を見られると困るのでカバンにしまっておこう。
もしかして、私の今の立場って仲のいい四人組に見知らぬ一人が加わったトンパ的ポジションじゃないか。そうなると、最初の死刑囚との勝負でやはり先発を切って信頼を買うのが一番かな。
ストン
「…」
「って!!」
「…」
「…」
降りてきた全員が何やら微妙な顔をしている。
まぁ、盛大な別れを告げて僅か数秒で再開したのだからわからないでも無いが…恥ずかしい連中め。
ジィーーー
やはり、キルアの身体能力は群を抜いているな。ゴンも現時点のキルアには劣るが、かなりいい筋肉だ。後、クラピカは…男だな。レオリオは…どうでもいいや。
「初めまして、私はレイアという。本来、敵同士の受験生とはいえお互い協力して三次試験を頑張ろう」
人間関係何事も挨拶が肝心だ。先手を打って挨拶をする事で相手に好印象を与えておくとしよう。
「俺は、ゴン!!」
「クラピカだ、こちらこそよろしく頼む」
「レオリオってもんだ、よろしくな」
「キルア……アレ、あんたどっかで…」
キルアが私の事をうっすらではあるが、覚えているようだ。できれば、知らないふりをして欲しかった…最終試験後にゾルディック家に同行させられない為にも気を利かせてください。
「二年程前に、一度だけ…像を作りに」
「あぁ!! あの時のアンタか…よく生きていたな。正直、死んでいると思ってた」
言われずともよく生きていたと思うよ。
もう、ゾルディック一家と執事のせいで枕カバーがどれだけ犠牲になったと思っていやがる。などと強く言えるはずもないので、素直に笑ってごまかした。
「キルア、知り合い?」
「仕事先のお客様です!!」
ゴンが無邪気な顔をして恐ろしい事を言ってきたがった。回答によっては、人生のターニングポイントなりかねない。
ゴン…なんて恐ろしい子!!
「まぁ、そんな感じだね」
キルアの援護により、この話題はここで終了した。
空気が読める子って、素晴らしいよね。
こうして、四人と一人の微妙な関係の集団が三次試験をスタートさせた。
第一の試験。
予定通り、雇われ試験官との対戦です。
やはり、トンパ同様にここは私が先手を打つのがいいだろう。
「何でも有りのルールである以上、相手が何をしてくるか分からない。ここは、私が先手で味見をしてこよう。それに、君たちは私の事を信頼しきっていないだろう?そんな奴に、二勝二敗になった場面で登場された日には目も当てられないだろう」
「た、確かにな…だが、あんた大丈夫か? 相手は見るからに強そうだぞ」
強そうね…軍人ならあのくらいが基本でしょう。ゾルディックの執事に比べれば雲泥の差で笑えるわ。
それに、真っ向勝負などそもそも考えてないので心配無用だ。ミルキより貰ったブツをついに使う時が来たか。如何程の威力か試させてもらおう。
「問題ないさ。何でもありなのだろう?」
満場一致を確認して、私はリングに上がった。
「勝負方法を決めようか 俺はデスマッチを提案する!! 一方が負けを認めるか、死ぬまで戦う」
原作キルアの言うとおり、喉を潰して時間いっぱい拷問でもする気だろうね。
「その提案受けよう」
「その覚悟 見事!! それでは、勝負!!」
ハゲ軍人が、突進してきた。
ハゲの行動と同時に私は、懐から愛用品のミルキ特製のよくわからない合金で出来たデザートイーグルを構えた。言うまでも無く、弾丸はダムダム弾仕様だ。重さは、約70kg近くあるから弾切れになった際は鈍器でも使える。
「ちょ…」
ハゲも私が何を持っているかに気づいたようだが、既に遅い!!
「さようなら」
囚人相手に情けなど不要。むしろ、被害者の親族達からしたら寿命より長い刑期を与えるよりスッパリと死刑にして欲しいに決まっている。
私は、躊躇無く引き金を引いた。
ドゥーーーーン
プシャーーーーー
弾丸は見事にハゲの頭を貫いたようで…見事に頭部が消し飛んだ。そして、背後にあった壁を砕いた。威力が余り過ぎたようだな。だが…
良い威力だ。
「これで、私達の一勝で問題ないね」
電子プレートに「1」と表示されるのを確認して、自軍の位置に戻った。
「銃を持っているなら先に言えよ…負けるかヒヤヒヤしたぜ」
恐らく、銃が無くても勝てただろうが…わざわざ、手の内をばらす必要はないだろう。最終試験では、レオリオと戦う可能性が濃厚だからね。
「その銃…兄貴の特製だね。意外だな…あの兄貴が他人に物をやるなんて」
「やっぱり、わかるんだ。お互い持ちつ持たれつの関係ですよ…多分」
さて…これで勝利したから、残るは二勝。
記憶だとゴン、クラピカの順で試合が進むはずだから勝利は確実だな。
さて…銃のメンテナンスでもして試合が終わるのを待とうかな。この調子ならば、時間内にクリアも可能だろう。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
道を開けるふりをして襲い掛かってきた殺人鬼を目に止まらない速さで心臓を抜き取ったキルア程に無いにしろ、レイアと名乗る青年も危険だな。
身のこなしをなどからもわかるが、長年何かしらの武道をやっていたのだろう。おまけに、殺傷力が極めて高い拳銃まで持ってきている。今後の試験内容次第では対策を考えなければならんな。
「手が止まっているよ クラピカ」
「すまないゴン」
だが、今は感謝しないとな…こうして全員が合格する為のアイディアを提供してくれたのだからな。
それにしても、厚い壁だな…いつになったら反対側に出るのだ。