7話
三次試験を楽勝に通過したけど、絶望のどん底に居るレイアです。
「はぁ…ありえないよ」
4次試験は、島全体を使ったサバイバルゲーム。自分の番号札は3点、自分のターゲットの番号札も3点、それ以外は1点と計6点を集める極めて単純なゲームだ。
しかし…ここで問題が発生した。
私のターゲットが301番…イルミなのだ。正直、自分のくじ運のなさに絶望したよ。原作では、女スナイパーがイルミを狩る者だったのだが…やはり、トンパの代わりに私が三次試験を合格したのが原因なのだろう。
誰がターゲットになってもいいように、番号札に対応した人名をしっかりとメモをしておいたのに無駄な苦労になった。いっそう、いもり三兄弟だっけ? あいつら全員を狙うのも有りだが…キルアのターゲットとハンゾーのターゲットに手を出すのも死亡フラグな気がするしな。
ここまで来て落ちるわけには行かない…最終手段を使うしかないな。
携帯を取り出して、私の数少ない変態と言う名の友?に電話を掛けた。
『レイアか、ハンター試験合格したか? 俺は、今 わりと忙しいから手短に要件を言え』
『フィギュア5体を作成するから、イルミ様が付けている番号札を譲ってもらえるように交渉して欲しい。ついでに、今試験を受けている全員の番号札と名前も提供する』
『…そのフィギュアは、期待していいんだな?』
『無論だとも、私を誰だと思っている?』
軽音学部に所属する少女達のフィギュアとそれにまつわるストーリーもつけましょう。ミルキならその価値が分かってくれるはずだ。
『詳しい状況を説明しろ』
ミルキがこちらの交渉に乗ってきてくれた!! これで百人力だぜ。私は、試験内容と受験者の名前を提供した。後は、神に祈って待つばかり…。
待つこと数十分。
なんの音沙汰もなく、島に着いてしまった。一体、何をしているのだ ミルキ!! ポテチなんて食っている場合じゃねーぞ。
「滞在期間はちょうど一週間!! その間に6点分のプレートを集めて また この場所に戻ってきて下さい。それでは、一番の方スタートしてください」
ヒソカがニヤケ顔で出発していった。続いて、イルミも出発していった。
おぃいいいい!!
まさか、ミルキがしくじったのか…一体、私はどうすればいいんだ。こうなれば、ポックルに狙いを定めるしかないか。
携帯を開き連絡を待っていると…出発の番が来た。
「絶対に生き延びてやるーーー!!」
荷物を背負い、森の中へと進み身を潜めた。
やはり、狙うのならばポックルが自分の獲物を仕留めた直後がいい。そうすれば、二点分のポイントがGET出来る。そうなれば、後はキルアが捨てるはずの三兄弟の番号札を狙おう。
それに、ポックルがここで死ねば…将来的にキメラアント陣営の成長を遅らせる事も可能であろう。
さぁ、いつでもスタートしてこいポックル!!
ポックルの尾行を始めて3時間。
ゾルディック家での経験が活きる!!
森の中での移動方法や気配の消し方などはワジマさんから習っておいて正解だった。ありがとう、ワジマさん…今度、御歳暮送ります。
ポックルの動きが止まった。
原作通り、人の背の丈程の高さのある草原地帯で自分の目標に止めをさすようだ。私の狙いは、ポックルが相手の番号札を手に入れて安堵した その一瞬だ。
近くでゴンも見ているかもしれないが、邪魔をしない事は分かっているので構う必要はない。私は、辺りが見渡せる木の上に登り銃口をポックルに合わせた。動く的に当てるのは下手だが…止まっている的なら外さないぞ。
ポックルが弓を構て…放った!!
ポックルのターゲットは、致命傷は避けたが…予定通りしびれ毒で麻痺っている。
「水場は、すぐそばにある死にはしないさ」
そうだな 死ぬのは、お前だからね。さような…
ゾワリ
引き金を引こうとした瞬間、良くない感じがした。直感的に、頭を引いた。
ドゥウーーーーーーン
私が今まで頭のあった場所を何かが通過して後ろの木に直撃した。
くっそ!! どうみても狙撃です。
ポックルの番号札は惜しいが…今は、身を隠して逃げるしかない。恐らく相手は、狙撃銃を使う女スナイパーだ。原作ならイルミを狙って返り討ちに会うはずのヤラレキャラだが…くっそ、どこまでも想定外の事が起きやがる。
ドゥウーーーーーーン
ドゥウーーーーーーン
ドゥウーーーーーーン
私が木から降りて岩陰に隠れたのをいい事に逃げられないように釘付けにしてきやがった。しかも、この銃の威力が高いせいで岩がどんどん削られる。このままでは、隠れる場所がなくなってそのまま餌食になってしまう。
相手の弾切れを願うが…そんなミスをスナイパーがやらかすと思えない。
ドゥウーーーーーーン
ドゥウーーーーーーン
「まずいまずい…まじで死ぬって!!」
ぎゃーーー、どんどん岩が削られていく。
逃げ出そうにも一歩たりとも動けないでござる。私の番号札を差し出せば見逃してくれるだろうか…いや、私が相手だったら確実に排除しておくだろう。この試験の特性上 一週間以内ならば巻き返しが可能である為 ライバルを減らす意味でも生かしておくのはナンセンス。
シーーーーーン
後、数発で岩が崩壊しそうになったが…一向に打ってこない。まさか、弾切れか!? それとも、私が逃げるのを狙って撃ち殺す気か!?
どちらにせよ、安全が確認できるまで動けません。あと一歩でポックルとそのターゲットの番号札を手に入れられたのに…踏んだり蹴ったりだ。
ザザザザ
誰かが近づいてくる足音がする。
まさかと思った瞬間、私の頭上を針でめった刺しにされた女が通過した。
ドザン
イヤッホーーーーー!!
流石は、ミルキ様だ。必ずやってくれると信じていましたよ。
「ついでだから殺しておいた。後、これミルキから依頼品」
イルミが胸についている番号札を私にくれた。これで、私は6点分揃ったぞ!! 後は、奪われないように守るだけ。
「ありがとうございます ギタラクル様」
・・・
・・
・
…あれ?
イルミの胸に何故か、ポックルの番号札とそのターゲットの番号札が付いている。…見なかった事にしよう。きっと、ポックルは遅かれ早かれ死ぬ運命だったのだろう。私がこの世界に来た事でそれが少し早くなっただけの事だ。
イルミが立ち去っていった。
まさか、フィギュアがハンター試験合格のキモになるとは思ってもみなかったな。さて…後は、海岸近辺で洞窟でも見つけて篭ろう。ヒソカとハンゾーの活動圏外なら何とでもなるしね。
この時間を有効活用して、メンチ裸婦像を完成させておくぞ!! 折角だから、ネテロ会長の像も作って合体出来る仕様にしようかな。二つで一つの幻のフィギュアの誕生だ!!
***************************************************
***************************************************
***************************************************
海岸の小さな洞窟の中でひたすら、フィギュアを作っているレイアです。
「か、完成だ!!」
作成期間が短く、道具も無いので塗装まではできなかったが掘りを完成させた。何を完成させたかというと…メンチ裸婦像とネテロ裸夫像の二体のフィギュアだ。しかも、普通のフィギュアと異なり一部の箇所が合体できるという特殊仕様!! 時代の最先端をイっている事間違いなしだ。
それにしても、あまりに集中しすぎて七日という時間がまたたく間に過ぎ去ってしまった。 恐らく、もうすぐ定刻の知らせがくるだろうから荷造りをしておこう。
早いところ、この寒い洞窟とお別れしたいよ。事前に、どんな試験内容だか知っていたから寝泊りセットや缶詰などの食料を持って来られたが…ほかの受験者は大変だろうな。
「さて、誰が生き残ったのかな…」
私というイレギュラーが居るため、もしかしたら原作通りの人物が残っていないかもしれない。現に、ポックルはすでにご退場している。やはり、あまり活発に動くと私の嫁確保計画にも支障をきたす可能性があるから自重しておく必要があるな。
ボッーーーーーー!!
『ただ今を持ちまして第4次試験は終了となります。受験生のみなさん 速やかにスタート地点へお戻り下さい。これより…』
どうやら、定刻のようだ。完成したフィギュアと某女スナイパーが使わなくなったライフルを背負い一週間お世話になった洞窟を離れた。
最終試験では、流石にスナイパーライフルを使う機会はないだろうが…今後、役に立つ機会もあると思って回収しておいた。ハンター試験の受験者だけあって、女ながら大口径対物ライフルなんて持ち歩くなんてすごいな。正直、こんなのが人間にあたったら消し飛ぶぞ…。まぁ、私が持っている銃もあまり人の事を言えた代物ではないけどね。
ハンター試験合格まであと一歩!!
気を抜かずに頑張るぞ。
スタート地点にて。
集まったメンツは、予想通りだった。
ポックルの代わりに私がいること以外、全て原作通り。
「よぉ!! あんたも残ったか」
「当然だ…と言いたいが、運がよかっただけさ」
実力で生き残れると思ったのだが…ターゲットがね。Lv1でラスボスに挑むくらいに無理ゲーだったからね。
「敵同士にかける言葉ではないが…お互い頑張ろう」
「あぁ、あんたも頑張りなよ」
レオリオとたわいない会話をして別れた。
それにしても…キルアってなんでイルミの存在に気づかないのだろう。顔は確かに変わっているが、服装や針などはそのままだと言いたい。何年も兄弟をやっていて、気づかないのは正直どうかと思うのだけどね。
まぁ、どの道 次の試験で気づくことになるのだけどさ…
『皆さん、おつかれさまでした。それでは移動しますので飛行船にお乗りください』
飛行船の中にて。
用意された私室に篭もり、拳銃とライフルをばらして綺麗に掃除をしております。いくら、見つからない為とはいえ海辺の洞窟はまずかったな…潮風で銃が痛む。拳銃の方はミルキ特製の為、サビひとつないが…ライフルの方は、非常に厳しい。
「もったいないが、破棄だな。やはり、道具はミルキ特製に限る」
重さもさることながら、一体何の素材で出来ているのだろうか。もしかしたら、ミルキの念能力あたりが絡んでいるのかな?
『これより、会長が面談を行います。番号を呼ばれた方は…』
遂に来たか!!
会長の為に作り上げた、渾身の新作をプレゼントするときだ。これで私の印象値はウナギ登り間違いなし。しかし、よくよく考えれば…キルアが自滅してくれるから印象値など関係ないのだがね。
えーーと、原作ではなんて質問だったかな…。
「ハンターになりたい理由」「一番きになる相手」「一番戦いたくない相手」だったかな。
面接室にて。
部屋に入ってみると純和風の部屋でびっくりした。
会長が何処出身か知らないけど、恐らく日本贔屓している事は間違いないだろう。確か、「心Tシャツ」とかいうマジ勝負の時しか着ない服まであるらしいからね。
「落ち着きがあって良い部屋ですね」
「ホッホッホ、若いのに分かるかい?まぁ、座りなされ」
用意された座布団に座った。
うーーん、どのタイミングでアレを出そうかな…万が一、この部屋が監視カメラとかで見られていたら確実にメンチが乗り込んで来てバラされそうだな。
キョロキョロ
「そんな、警戒せんでも監視などされておらんよ。まず、お主に質問じゃ。なぜ、ハンターになりたいと?」
ハンターになりたい理由…そんなの念能力が欲しいからです!! など口が裂けても言えないな。裏試験の事を知っていて受験しているなんておかしいからね。
いや…違うな。そもそも、念能力が欲しいからハンターになりたいわけじゃない。私は…
「愚問です…嫁を手に入れる為です」
「…はて、私も耳が遠くなったかの〜。今まで聞いた事がないような理由が聞こえたわい。すまんが、もう一度言ってくれんか?」
何度でも言ってやる!!
「嫁を手に入れるためです!!(キリッ」
何やら会長の目が私を哀れんでいるように見える。いやいや、きっと私の思いのたけに感動をしたのだろう。
「色々と辛いだろうが…がんばりなさい。次の質問じゃ、8人の中で一番注目しているのは誰じゃ?」
よくわからないが…言われずとも頑張りますよ。
「注目ですか…やはり、405番ですね。他にも注目している人はいますが、405番が秘めている才能が凄まじく高いのが要因ですね」
私の嫁を将来的に殺害する天敵だ。ヒソカやイルミ、キルアなども当然注目しているが、私にとって一番の注目は君ひとりだ。
「ほほぅ…。では、あの中で一番戦いたくないのは?」
「44番!! 301番!! 99番!! 294番!!」
一番など決められるはずもない。だけど、命の危険が高い順に番号を並べた。もちろん、今挙げた誰もが私より実力が上で勝てる見込みも0だと言うこともある。
「いや…一人なんじゃが」
「まぁまぁ、そう言わずに…コレを」
私は、即席で作ったプレゼントボックスに入れたフィギュアを会長に差し出した。言っておくが、賄賂じゃないぞ!! 尊敬する魔法使いへの贈り物だ。
「何のつもりか知らぬが、賄賂を贈っても無駄じゃぞ。とりあえず、お主が一番戦いたくない相手は最初に挙げた44番にしておくわい」
「ケチ…でも、会長のために丹精込めて作った私の作品は受け取ってね。調べたらわかると思うけど、一応私のホームコードも付けておいたから」
心残りはあるが、私は目的を果たしたのでそのまま部屋を退場した。
翌日、会長のヒゲと髪の毛が何やら鋭利な刃物で切断された。一体、誰が会長を襲ったのかは定かではないが…身の程知らずもいるものだと思った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
全く、今年の試験は随分とキワモノが揃ったわい。
念能力が使えるあの二人は当然として、新人がここまで多い年は本当に珍しいの。全員が若く、将来が楽しみじゃわい。
新人と言えば、あの420番はどうやって301番の番号札を手に入れたのだ。念能力者でもない彼があれほどの念能力者から番号札を奪えるとは考えづらい。まぁ、後で彼担当の者から話を聞けばよいか。
「それにしても、あそこまであからさまに賄賂を送ってくるとはな…わしの為に作ったという位だから手作りなのだろう。どれ、ここは一つわしが採点してやろう」
420番が置いていった箱を開けてみた。
「ほほぅ、これは凄いな」
二体の像を箱から取り出した。今まで名品と呼ばれる品物を沢山見てきたが、この像もワシが見てきた名品と勝るとも劣らぬ良い作品だ。美術館に飾られていても何ら不思議でない作品じゃわい。
少し荒削りな箇所はあるにしても、何よりこの像に込められているオーラがとても美しい。作った本人は、念能力者でないのだから無意識にやっていたのだろうな。
99番と405番同様に別に意味で将来が楽しみじゃわい。
ただ…
「なんで、ワシとメンチ君がモデルなんじゃ…しかも、裸婦像」
こんなのがメンチ君に見られたら、三途の川行きじゃぞ 少年。しかも、ワシの一部とメンチ君の一部が合体する仕様なんてものを見られたら、一族郎党殺されかねんぞ。
カポカポ
「ネテロ会長、最終試験のことでちょっと・・・」
ワシが像を合体させて遊んでいたところに、最悪のタイミングでメンチ君が部屋に入ってきた。
「メ、メンチ君…部屋に入るときはノックくらいせんか」
メンチ君がいつの間にか包丁を手にしていた。その包丁からは、一つ星ハンターに恥じない凄まじいオーラを纏っていた。
少年…これは、一つ貸しじゃぞ。