8話
十分な休息と準備を整えたレイアです。
最終試験は、ありがたい事に面談から三日の猶予期間があった。その間に、一週間入れなかった風呂には入り、うまいものを食べて英気を養いました。無論、その間も日夜続けているトレーニングも忘れてはいない。一日の遅れを取り戻すのには二日かかるといいますからね。
後、両親にも最終試験まで残ったと電話をした。ハンター協会が受験生の死亡者を公式HPで公開しているらしく、生き残っているのは分かっていたが連絡をくるのを持っていたらしい。両親からも悔いが残らないように頑張りなさいと言われた。
さて…どんな組み合わせになるか楽しみだな。
最終試験会場にて。
おヒゲと髪の毛が微妙に変な形にカットされたネテロ会長がトーナメント表を発表した。無論、原作同様に一人だけ不合格になるあの形式だ。
「こ、これは酷い…」
トーナメント表をみて思わず声を漏らしてしまった。
運命の女神はどうやら私の事が嫌いのようだ。トーナメント表の並び順から見る限り、私の順位は下から二番目…要するに、レオリオより少し高い程度だ。まぁ、それはいいとしよう。
問題は、私の相手がヒソカだということだ。
私は、ヒソカが一番戦いたくないと言ったのになんて仕打ち!! ちなみに、ヒソカの印象値は下から三番目だ。この事からポックル死亡分、全員が1個づつトーナメント表を左に移動した事になる。
ミルキに引き続きヒソカとか…どれだけ運がないのだよ。
幸い、キルアが原作通りにボドロを殺してくれるだろうからいいけどね。仮に、原作通りの事が起こらなくてもクラピカとレオリオと戦う事が出来るので負ける事はない。
その後、第一回戦のゴンVSハンゾーの試合が行われた。ハンゾーの身体能力は実に素晴らしい。念能力無しでも雑魚の念能力者なら殺せる程の力を持っているだろう。ハンゾーが相手でなくて本当によかったと思うよ。ハンゾーは、ゴン相手だからこそ拷問等の卑劣な事をしてこなかったけど…私相手なら迷わずしてくるだろう。
まぁ、ハンゾーの残念な事に次の相手がポックルでは無くキルアという事だ。
・・・
・・
・
あれ?このまま進んだらキルアがハンゾーに勝利して合格してしまうのではないか。いや、違うな…仮にハンゾーを倒したとしても、他人の試合に乱入して相手死亡させたら不合格になるか。
「第二試合ヒソカVSレイア!! 両者 前へ」
私の悩みとは裏腹に…ノリノリの審判が私の名前を呼んだ。一応、ベンズナイフにミルキ特製の拳銃、イルミの針とそれなりの装備を揃えてはいる。だが、使う機会すら与えられないだろうね。力量が雲泥の差だ。
早く、家に帰りたいです。
「君かい…ギタラクルの番号札を奪ったのは? 期待しているよ?」
変態が私の全身を舐めまわすように見ている。
私も負けずにヒソカの全身を観察してみたが…とある一部が無駄に膨らんでいる。
「目が目がぁあ〜〜」
試合開始前から、見たくはないものを直視してしまい思わず叫んでしまった。
まさか、試合前からこのような精神的ダメージを受けるとは予想外だった。女性相手に使うには非常に嬉しい特技だが…下手に男性相手に使うと目が腐る。今後は少し自重しよう。
「何をしている早く前へ!!」
しびれを切らした審判が怒り気味で私に文句を言ってきた。
しぶしぶ、ヒソカの前へと移動した。なにやら、ヒソカが期待半分といった感じて私を見てくる…なぜだ!?
ヒソカ程の実力者ならば、見ただけで相手の力量くらいわかるはず。それなのに、何故私をそんな目で見る。
・・・
・・
・
あれ、そういえばさっき…「君かい…ギタラクルの番号札を奪ったのは? 期待してるよ?」とか言っていたよね。もしかして、イルミの番号札を実力で奪ったと思っている!? というか、イルミがヒソカに何も説明していない!!
まずいぞ!!
幾ら、殺害禁止の試合でもこれはまずい。私が『まいった』の一言発する前に半殺しにされかねない。
「ちょ「試合は、始め!!」」
ヒソカに弁明をしようとした矢先に試合が開始された。
ヒソカが一歩でも動く前に『まいった』といって降参するしかない。この試合でケガをすれば次からの試合に支障をきたす。
「先に言っておくけど…ギブアップなんてやめてくれよ? 力んで殺しちゃうかもよ?」
ゾワ
一体どうすればいいのだ…『まいった』と言えばヒソカに半殺しにされる。というか、その一言を発することは出来るのか? 相手は、ヒソカだぞ…。
ジーーー
ダメ元でイルミに視線で訴えてみる『我窮地にあり、至急助けを乞う』と…。
・・・
・・
・
当然というべきだが、視線に気づいているが…何ら行動を起こしてくれない。
「な、何をすればいい?」
「くっくっく、そんなに怯えなくてもいいよ。なーに、ちょっとばかり準備運動をさせてもらえばいいよ? 君がコレを見えないのは知っているから、手加減くらいはしてあげるよ?」
ヒソカが人差し指を立てた。
見えないが…恐らく念で何かしらの文字や模様を描いているのだろう。
誰も助けてくれない…『まいった』も言えない…ならば、ヒソカに遊ばれて敗北する!!
「体が温まったら、負けさせてくれよ!!」
「勿論?」
敗北させてもらう為に戦う…なんて酔狂な事をしているのだろうな 私は。懐から拳銃を取り出し開始の合図を切った。
ドゥーーーーン ドゥーーーーン ドゥーーーーン
極めて強い念能力者相手なので、この拳銃も気にせず使えるのはありがたい。だって、当たっても多分死ぬ気がしないもん。周りの被害などお構いましに連射した。壁は崩れ、場外の試験官や受験生から非難の声が聞こえるが気にしている余裕などない。
しかし、流石はヒソカ…弾丸を普通に避けている。
くっそ!!
そして、一瞬で間合いを詰められた。
「いい銃だね…でも、腕前は三流といった処だね」
「よく言われます。でも、こっちの使い方は得意ですよ」
ヒュン
拳銃を捨てて、ベンズナイフに切り替えた。人体の急所目掛けて、振るうナイフを余裕綽々で避け続けるヒソカに腹立たしさを感じた。
せめて、ひとたち…
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「へぇー、案外やるじゃん」
流石は、兄貴お気に入りの変態ってところか…
遊んでいるとはいえヒソカ相手によく粘っている。銃の腕前はお世辞にも褒められたものじゃなかったが…ナイフの使い方は俺より上手いな。狙いも速さも申し分ないが…、相手が悪すぎる。
「おぃおぃ、あのヒソカに勝っちゃうんじゃねーか」
「それないよ オッサン。あの兄ちゃんもよくやっているけど、地力が違いすぎる。ヒソカはまだ、実力の1割も出してないよ」
ヒソカもギリギリでナイフを躱しているからタチが悪い。あと一歩で当てれそうだという微妙なさじ加減をしている。
だが、それもそろそろ終わりだな。
無傷なヒソカに対して兄貴のお気に入りは満身創痍だ。ナイフを避けながらサンドバックのように殴られている。素直に『まいった』と言って次の試合にかければいいのにな。あの怪我ではオッサン相手でも遅れを取りかねないぜ。
ドゴン
「おおおぉぉぉえぇぇえええー」
あぁ〜、ありゃキツイな。ヒソカのレバーブローが完全に決まった。
「ははは、ごめん ごめん? 思ったよりやるから力を入れちゃったよ。そろそろ、体も温まったしギブアップしていいよ」
「ゴッホゴホ…で、できればもっと早くそのセリフが欲しかったな。じゃあ、死ねえええぇぇぇぇぇ」
お気に入りが最後の力を絞って、ヒソカの間合いに飛び込んでいった。なんて無謀なと思った…しかし、お気に入りが左手に持っている物を見て驚愕した。
なっ!!
お気に入りが左手に持っているのは兄貴の針!!
一体どういう経緯だ!!
あの兄貴だぞ…人に物をやるような性格じゃないぞ。
プス
「残念だ。脇腹を狙ったのにな…『まいった』」
「君も合格? 次、頑張りなよ」
右手のナイフは、トランプで弾いたが左手の針に気を取られて回避が遅れたようだ。あのヒソカ相手に服だけとはいえ、攻撃を当てるとはね…。
お気に入りは、満足気な顔をしてそのままダウンした。
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全身がとっても痛いレイアです。
ヒソカの準備運動と言う名のサンドバックにされて、内蔵は勿論、肋骨にも何本かに罅が入った。おまけに、『まいった』と言ってからの記憶が無く…気が付けばリングの端っこで応急処置が施されて横にされていました。
やばいな…次の試合相手がレオリオとはいえ勝てるか微妙だ。
「ゴンと友達になりたいだと?寝ぼけんな!! とっくにお前ら友達どうしだろーがよ」
レオリオの大声が私の怪我に響く。
ッ!!
リングの方を見てみると対戦順番が原作から微妙にズレたのが原因であろう。キルアとイルミがリングの外でにらみ合っている。
ここにきてやっとキルアがイルミの存在に気づいたか。
えっと…キルア試合は、ハンゾーだったはず。ハンゾーに負けたらボドロと試合になるはず。という事は、キルアはハンゾー戦で戦わずして負けるだろう。それがこの世界の予定調和といったところだろう。そして、ボドロ戦で相手を死傷させる事になるはず。
ならば、私は不干渉を貫き通す!!
なにやら、イルミの発言で扉の方に受験生と試験官が扉の前に集まっている。どうやら、ゴンを殺すとか発言をしたのだろう。それにしても…原作主人公って人を惹きつける才能が凄いな。ゴンを守る為にあれだけの人が動くのだからさ。
私なんて、怪我の治療をされてそのまま放置だよ。ちょっと扱いがアレじゃない? これはハンター協会に文句を言ってもいいレベルだと思うのだよね。
これでキルアの実家フラグは確立した。私は、少しでも自分の傷を癒す事に専念しよう。そして、この時間を有効活用する為にミルキに進呈するフィギュアの構想でもねっておこう。
「やぁ、目覚めたというのに随分と無関心だね。三次試験では、お仲間だったんだろう?」
イキイキとした顔のヒソカが私の所にやってきた。きっと、乱戦になる事を望んでいるのだろう。会長と手合わせしたくてウズウズしているように思える。これだから、戦闘狂は困る。
「イルミ様の前に立ちはだかるなんて冗談じゃありません。私は、自殺志願者ではありませんので…。それより、全身が痛いです」
「痛いように殴ったんだから当然?」
まるでジャイア〇みたいな言い訳をしてきた。
顔面をぶん殴りてー!!
だが、そんな感情をぐっと堪えた。
「率直に聞きます。あなたから見て私の才能は、どの程度の物ですか?」
「君…自分に才能があると思っているの?」
グザ!!
あまりの率直は発言に私のガラスのハートが砕け散りそうになった。
「もう少しオブラートに包んでくれても…」
「僕、正直者だから? でも、君も悪くはなかったよ。アレをつけた状態でそれなりにいい動きをしていたしね?」
そういえば、体が無性に軽いと思った。治療の際に誰かが外してくれたのだろう。私のすぐ横にいつも付けているワジマさんお手製の筋トレ用グッズが置かれていた。日常生活に溶け込みすぎて忘れていた。次の試合では、忘れずに外そう。少しは、まともな勝負ができるようになるはずだ。
では、早々に休むとしよう。
「悪いけど…次の試合の為に体調を万全にしたいので、少し寝ます」
「あぁ、オヤスミ?」
どうせこの後の展開は読めている。私にとっては、ヒソカ戦が終わった以上もはや残りの試合など消化試合も同然。
オヤスミ私の意識。
数時間後。
「…なさ、起きなさいって言っているでしょうが!!」
ハッ!!
仮眠のつもりが熟睡してしまったようだ。しかも、目覚めればあら不思議…石造りの部屋だったはずが、ご立派な部屋に早変わりしていた。
「試験は!? というか、メンチさん なぜここに!?」
「99番が不合格で試験は、終わったわ。それにしても、ココが何処かと言う質問より、何故私がここに?という質問が先に出てくるなんて…まるで私に会いたく無かったみたいじゃない」
あ・・・やばい。
「そ、そんな事ありませんよ。こんな美人な試験官に会えるのならば、このレイア 地の果てまではて参じるつもりです」
シャーシャーシャー
やばい、メンチが包丁を研いでいる。
ゴクリ
まさか、会長が私を売ったのか!!
いや…それはないか。仮に、会長が私を売るならば早々に売っていたはず。そして、最終試験前に私はメンチの手によって処断されていただろう。
「口だけは達者のようね。それで、あんた私に何か言う事があるんじゃない?」
「メンチさん…お尻におできが「死ねぇえええ」グゥェェ」
ヒソカに殴られて痣になっている位置にレバーブローがお見舞いされた。
病人に追い打ちをかけるなんてハンターは、血の涙もないのか!!
「ハンターなれた事に感謝しなさい。本来なら、八つ裂きにして魚の餌にしてやるだから…無くすんじゃないわよ ホラ」
どうやら、ハンター殺しは重罪らしい…よくわからないが助かった。メンチから投げられたハンターライセンスを受け取った。
ほほぅ、これが噂のハンターライセンス!! 本当に見た目は地味だな。
「あ、ありがとうございます」
「それと、もうすぐハンターライセンスの説明会をやるから参加しな。場所は、案内表示を見ながら勝手に行きなさい」
ライセンス説明会場にて。
部屋についてみると私が最後だったらしく、ゴンとイルミが口論している真っ最中に入ってきてしまったようだ。無駄に注目を集めてしまい視線が痛い。
それにしても、ゴンって凄いな…念能力者のイルミの腕の骨を腕力だけでへし折るんだからさ。一体、どんな手品だよ。後、無駄に直感が優れている…イルミが針を埋め込もうとしたのを察知して逃げるのだからさ。こいつの才能が妬ましいわ。
「諸君、よろしいかな?」
会長が止めに入り、ゴンとイルミの試合はそこで終わった。その後、ハンターライセンスの説明が滞り無く行われた。
説明を聞けば聞く程、すごいカードだと思う。
民間人が入国禁止の国の90%と立入禁止区域の75%に入れるとか、公共施設の95%がタダとか、売れば人生7回遊んで暮らせるとか…特典が盛り沢山だ。
個人的には、立入禁止区域の75%に入れるのが特にいいと思う。ピトーを手に入れた際はひと目につかない場所に隠れようと思っているからね。まぁ、木を隠すのなら森の中というのもあるけどね。
当然のことながら規約等も多く、説明の大半がそれに関する事だった。まぁ、必要最低限事項さえ覚えていれば問題ないだろうと思い、殆どを聞き流した。
20分後。
「ここにいる7名を新しくハンターとして認定致します!!」
くっくっくはっはっはっはっは!!
ついについに、私の人生の課題であったハンター試験を合格した!! これでピトー獲得の足がかりを手に入れたに等しい。
年甲斐も無くガッツポーズをしてしまった。
後は、念能力だ!!
一体誰が私を師事してくれるのだろう…もしかして、誰かが訪ねて来てくれるわけではなく自分から教えを請いに行くのかな? ゴンとキルアは、たまたま行った天空闘技場でメガネのオッサンと出会い覚えていたからね。
裏試験のことなので誰かに聞けないしな…やっぱり、道場の師範代に相談かな。
「では、解散!!」
会長の合図とお供に集まった七名が散っていった。ゴン一行は、キルアを助け?に行くのだろう。わざわざ、殺し屋の総本山に行くなどアホの極みと言いたい。
さて、私はまず両親に電話をしよう。合否に関わらず、心配をしているだろうからね。ついでに、電脳ネットでここら辺のお土産屋を探そう。折角、遠くに来たのだからお土産を買って帰らないとね。
「おぃ、あんた!! キルアが居るククルーマウンテンって知ってんだろう? 以前に仕事の関係でどうとか言っていただろ」
私が、携帯を取り出して両親に無事の報告をしようとした時に空気が読める(笑)レオリオが話かけてきた。
はっきり言おう…私は、これ以上原作組みと絡みたくない。
「よかったら、案内してよ」
「私からも頼む」
ゴンとクラピカまで私の元にやって来た。
「悪いが、私も色々と都合があるので案内する事は出来ない。だが、電脳ネットで調べてもらえば場所もわかる。ライセンスを使わずとも行ける場所なので、悪いが自力で行ってくれ」
「そっか〜、わかった。またね〜」
ゴンが元気に去っていった。
「あぁ、さようなら」
こうして、私は原作一行と別れた。
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「ほれ、後たったの100kmじゃぞ」
くっそ!!
イルミ兄ぃとの取引で、体重を30kg落とすからレイアに番号札を譲ってくれと言ったのは早計だった。幾ら、フィギュアに目が眩んだとはいえこれは辛い。
じいちゃんが全面的に協力してくれる事もあり、体重がどんどん落ちてきているが…その反面、趣味に裂ける時間が大幅に減った。
「はぁはぁ…まだ、100kmもあんのかよ」
「取引したのじゃ、諦めるんじゃの。それにしても、ダイエットすると聞いた時は耳を疑ったが…本当に、欲望に素直じゃの。まぁ、ワシから言わせてもらえば孫にこんな機会を与えた小僧に感謝したいくらいじゃわい」
レイアの野郎め…これで、くだらないフィギュアだったら地獄を見せてやるぞ。
もうすぐ、公開予定のアニメの準備で忙しいのに、こんな事に時間をさかせやがって…こうなったら、即効で痩せてダイエットを終わらせてやる!!
「うぉおおおおおおおおおおおおお!!」
「その調子じゃ」
ミルキのダイエットは、僅か一週間で体重を30kg落とす事に成功をした。その間、レイア宛にひたすら愚痴のメールが届けられ、身の危険を感じて命懸けでフィギュアを作成するレイアであった。