9話
ハンターライセンスを手に入れ、実家に帰り家族愛を実感しているレイアです。
実家に帰ったら両親の熱い抱擁を受け、ちょっぴり恥ずかしかったが嬉しくもあった。しかし、家族というのは大事であると再認識した。
両親は、私が買ってきたお土産よりハンターライセンスに興味津々らしい。普段お目に掛かれない代物の為、触ってみたり記念撮影したりしていた。しまいには私のライセンスを使い、父親が早々にハンター専用サイトに繋げてみようとしたので止めに入りました。自宅でそんなサイトに繋いだらライセンス目当ての強盗がホイホイ来ちゃうぜ。
そんな両親との楽しい一時を過ごし私は作業場に戻った。
ミルキから何故かダイエットの報告とそれに伴う愚痴が私の所に届けられる。しかも、毎回メールの最後に早く、フィギュアを…といった凄まじいプレッシャーをかけてくる。
「こりゃ…マジでやらねば身の危険がありそうだな」
普段より一層作り込みますか…特に制服とか下着とかを。
数日後。
ハンター試験の疲れも癒え、フィギュアの構想も纏まったのでそろそろ本格的に念能力の師匠を探そうと道場へ足を運ぼうと思う。
もしかしたら、師範代が念能力の師匠になりかねないから手土産くらいは持って行った方がいいかな? フィギュアとかフィギュアとかフィギュアとか…いや、師範代は確か既婚者だったな。
・・・
・・
・
「リア充爆発しろーーーーー!!」
思わず、道端で心の叫びを大声で叫んでしまった。
既婚者だ…ふざけるな!! 俺がどれだけ欲しくても手に入らない存在を手にしている連中が憎くて堪らない。憎しみで人が殺せるなら軽く10回は殺しているだろう。
「見ちゃいけません」
「最近、変なのが多いな…」
ヒソヒソ
あら…近所の人の目が何故か白い。 まるで私が痛い人みたいじゃないか。
道場にて。
日頃お世話になっていた むさ苦しい男が充満している道場へと足を運んだ。全く、男しか居ないとかマジで終わっている道場だなと思うよ。まぁ、それでも流行っているのだから凄いけどね。
私は、別室に案内された。
しばらく待つと、30代位の無精髭のオッサンが部屋に入ってきた。何を隠そう、この野原ひろ〇みたいな人こそ この道場の師範代である。一見、ただのオッサンだが師範代になる位なので当然強い。
「お久しぶりです。師範代」
「よぉ、レイア。ちゃっかり、ハンター試験受かったんだって? とりあえず、よくやった」
本当にあんたの道場とゾルディックのおかげだよ。
ありがとう師範代。
というか、師範代も分かっているでしょう。私がなんでこの時期にここに来たのかをね。師範代の方からさりげなく裏ハンター試験の事を話してもらう為に来たのだからさ。
「ここに来たのは、試験合格の報告だけじゃないのだろう?でぇ、レイア…お前はどこまで知っている?」
私を見る師範代の目が鋭くなった。
あれ…なんか疑われている気がする。想定していた流れと少々違うが問題あるまい。ここは正直に答えておくのがいいだろう。嘘をつく意味もないしね。
「裏試験の事を少々…その件で、今日は師範代にお願いがあってきました」
「一体、どこで耳にしたのやら…で、言ってみな」
「私に念能力を教えてください!!」
ズサーー
師範代に土下座してお願いした。
私は、是が非でも心源流拳法という真っ当な所から学びたいと思っていた。ミルキ辺にお願いしても教えてはもらえるかもしれないが…しかし、ゾルディックの人達は、人に教えるのが得意そうには見えない。こういう基礎は、しっかりとしておいた方が良いと相場が決まっている。
「はぁ〜…レイアがハンター試験合格してからこの日が来るのは分かっていたが、タイミングが悪いな。教えてやりたいのは山々なんだが生憎と俺はプライベートの仕事があってな。だから、指導してやる事はできねーんだ」
え…この人、さりげなく私の念能力の指導よりプライベート優先しやがったよ。くっそ!! こんなのが師範代やっていていいのかよ ネテロ会長。ハンター協会に職務怠慢で訴えるぞ!!
「一応、聞きますけど…どんな仕事ですか?」
「念能力を知っているお前なら話しても問題ないだろう。俺の念能力は、念能力を撮影する事が出来る。通常のカメラだと、念能力は映らない。しかし、俺の能力はそれを可能にしている。どうだ、凄いだろう?」
…あれ? 師範代、自分の念能力について話過ぎだろう!! というか、なんて役に立たない能力だ。しかも、どこかで聴き覚えてのある能力だぞ。
「いまいち、凄いのだが凄くないのだが分からないです。それで、一体その能力で何をするのですか?」
個人的な予想では、犯罪者の念能力を記録して保管しておくと言った仕事なのだろうな。念能力者にとって他人に能力がバレたら対策を取られて非常に辛い状況に置かれかねないからね。
「おぅ、実は副業でA〇監督兼カメラマンもやっていてな。その仕事関係でちょっと海外に行く事になったんだ。だから、師範代の業務は全て高弟に任せる。だから、すまんな レイア…他を当たってくれ」
…は?
最近、耳が遠くなったのだろうか。師範代の口からありえない副業が聞こえた気がした。
既婚者のくせに、一体 ナニを撮影するきだよ!! どんだけ、メモリーの無駄遣いをしているんだよ。普通のカメラで十分だろう!!
「師範代!! 副業のせいで私に念能力を教えられないのは、納得しないけど理解した。でもさ…、いくらなんでも他を当たってくれって無茶苦茶でしょう。ここは、師範代として別の指導者を用意してくれるのが、普通の流れでしょ!!」
このまま、放置などされてなるものか!! 最低限、別の人への推薦状を手に入れるとかしないと詰む!!
「うーーん、俺の同期でウイングって奴がいるが…あいつは、既に弟子持ちだしな。………お!! 喜べレイア!! お前の指導に適任が一人いた。ちょっと、連絡してやるから待っていろ」
師範代が携帯電話を片手に部屋の隅で誰かと話している。
一体、誰なのか気になるが…それよりも、絶対にウイングって言ったよね。弟子もいる事からして、確実にあのウイングだろう。
世の中狭いな…。
数分後。
「喜べレイア。話が着いたから、三日後のこの時間にまた来い。お前さんの念能力の師匠に会わせてやる」
「ありがとうございます!! 流石、師範代頼りになります」
一体、誰に頼んだのかは知らないが一安心していいだろう。もし、ウイングが指導員だったら人生オワタだな。キルアフラグはもう沢山だ。
三日後。
本日は、師範代とこれから世話になる念能力の師匠の為に市販で売っている最高級品のお菓子を持ってきました。羊羹一本5万ジェニーと冗談みたいな価格のお菓子です。
売っている店も店だが…こんな高いお菓子一体だれが買うのだろうね。
「これ美味いな」
ムシャムシャ
「当然ですよ 師範代。高いんですから…」
二人で私が持ってきたお菓子を食べつつ待っている。
コツコツコツ
私達が美味しく、お菓子をいただいていると部屋の前で足音が止まった。
そして、中に入ってきた人を見て私は絶句した。
「久しぶりだわさ。全く、師匠を呼びつけるとはいい度胸じゃない”変態ジェームズ”」
「たかが、副業がA〇監督兼カメラマンをやっているだけでその呼び名は酷いですよ」
ここにきて、まさかのビックネーム到来だ!! ウイングと同期だからまさかとは思っていたが…あの超人が私の念能力の師匠になってくれるとは、嬉しい誤算だ。
「レイア、この人は俺の師匠のビスケット「オリバーーーー!!」…え」
ドゴォオオーーーーン
思わず叫んでしまい、気づけば壁の一部になっていたレイアである。
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レイアが師匠の家を訪れる前日の事。
「本日は、スタジオにゴリラ愛好家のゴレイヌさんに来ていただいております」
ブッーーーーーー!!
思わず口にしていたビーフシチューを噴射してしまった。
「ゲッホゲホ!!シチューが気管に…ゴッホゴホ」
というか、ゴレイヌさん あんた何をやってんの!?
それに、ゴリラ愛好家ってなんだよ…動物愛好家ならまだしもゴリラ限定ってあんたどれだけゴリラ好きなのだよ。念能力にする位だから、わからないでもないよ。
「初めまして、ゴリラ愛好家のゴレイヌです」
「実は、ゴレイヌさんはゴリラに育てられた過去を持っておられるそうです。しかも、飛行機事故でジャングルに不時着した唯一の生き残りでもあるのです。本日は、その時の再現映像からゴレイヌさんの感動ストーリーとゴリラの良さを皆様に知っていただきたいと思います」
飛行機事故でジャングルに墜落し、生き残った赤ん坊がゴリラに育てられて立派になる感動の再現映像が流れ始めた。
「ホワイトゴレイヌ!! ブラックゴレイヌ!!」
ゴレイヌの親役のゴリラが何故か念能力であった。突っ込みどころ満載のギャグ番組じゃねーか。というか、レイザーにも認められる程のチート能力者がなんでこんなドキュメンタリー番組に出演しているのだよ。
だが、この映像を見てはっきりした事がある。ゴリラに育てられる位の経験をしないと動物を具現化などできないという事なのだろう。ゴリラを舐めたり、ゴリラと遊んだり、ゴリラと裸の付き合いをしたり、ゴリラと…ゴリラと…
キモ!!
自分が具現化系でも絶対に動物を具現化するのは止めようと思うレイアであった。
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ビスケによって、全治三日の傷を負わされたレイアです。
ビスケ曰く、なんか悪口を言われた気がしたのでとりあえず殴っておいたそうです。この世界にビスケッ○・オリバなんて架空の人物が居ないというのに女の勘の良さにビックリだよ。
そして、本日改めてビスケと対峙しております。
「先日は、失礼致しました。気が動転して変な事を口走ってしまいました。改めまして、今日からよろしくお願いします」
「生きていて良かった。てっきり、殺しちゃったと思ったわ」
改めて、鍛えていて良かったと思ったよ。きっと、一般人なら死亡していたよ。まぁ、この際そんな事は些細な問題だ。
「最初に言っておくけど9月から私用で出かけるから8末までしか指導出来ない。だから、選ばせてあげる。『基礎だけみっちりやるノーマルコース』か『基礎から応用まで一通りやるハードコース』か『基礎・応用はもちろん実践までやるスペシャルハードコース』…ちなみに、ハードコース以上は寝る間も惜しんで鍛えるから死んでも文句を言わない事が絶対条件だわさ」
分かってはいたが、8月までか…間違いなく、グリードアイランドに参加する予定なのだろう。その際に、足手纏いになる可能性がある弟子など邪魔というわけか。
わかります・・・私の才能は、所詮その程度のもの。
本音を言えば、キメラアント誕生までみっちり鍛え上げて欲しかったが…そういう訳にもいかないか。
この年齢まで念能力を手にできず、才能も乏しい…そんな私が選べるコースなど決まっている。キメラアントが出現する約一年後までに私は、最低限師団長クラスから逃げられる位の力を手に入れなければ行けないのだ。
「理由は言えませんが、私には強くならないといけないのです。だから、この身がここで潰れるならソレまでです…だから、『スペシャルハードコース』でお願いします!!」
「死んだほうが楽と…言っても無駄なようね。はぁ〜、分かっただわさ…まず、あんたがどの位強いか見てからプランを立てるから、私を殺す気で攻撃してきなさい」
私の実力を見て、どこまで死なないかの限界点を図るのだろう。
ビスケがどこからでも来なさいといった感じで正面に立っている。はっきり言って、私が攻撃しやすい様にわざと隙を残しておいてくれているのが性格の厭らしさを感じる。
私程度の攻撃、いつでも対応できるといった感じだ。まぁ、間違っていないのだろうが…腹が立つよ。
普段つけている重石を外して、ベンズナイフを片手にもう片方には拳銃を手にした。
ここまで実力の差があると絡めてなど無意味だろう…それに、ビスケは私がどの程度死なないかを見極めたいだけだ。…ならば、正面から行かせてもらおう。
「では、お言葉に甘えて…殺す気で行きます!!」
まずは、初手…銃口をビスケに向けるふりをして、ぶん投げた!!
「えっ!?」
ビスケは、少し驚いたようだが余裕の笑みで投げた拳銃を避けた。
ズドン
後ろの木に当たり、めり込んだ。
弾を撃ってくると思っていたのだろう…しかし、自慢でないが銃の腕前は三流だ。だから、鈍器として活用したのだ。あの銃は、重量がバカみたいだから本気で投げれば余裕で人が殺せる位の威力になる。
私は、ビスケとの距離を詰め左手に持ったベンズナイフで急所を狙いつつ、回し蹴りを放った。無論、空振りに終わる。
「なかなか、良い蹴りだわさ…だけど、正直過ぎる」
「ですよね〜」
元より、当たるとは思っていないが会心の一撃だと思った蹴りが楽々回避されると少々悲しい。では、もう少し攻撃に変化をつけて行ってみよう。攻撃途中で軌道を変えるのは、肉体的に少々つらいがやってみるかな。
「さぁ、どんどん来なさい。後、私からも反撃をするから耐えなさい」
「了解、ビスケ師匠」
了解とは言ったものの…耐えられる気が全くしない。
手加減してくれますよね?
十分後。
ヒュンヒュン
ナイフの風の切る音が聞こえる。
何度、急所を狙い振っても決してビスケに届く事は無く切れるのは空気だけ。これが純粋な身体能力の差…才能の差だというのだろうか。ナイフの使い方に自信があったのに、十分近く振って服にすら掠らせる事ができない。
ドン
「これで32回目」
「ぐおおおぇえええ」
美少女モドキから脇腹に打ち込まれた拳が、私の体をくの字にさせた。その小さい体から放たれたとは考えられない程の威力だ。流石は、身長3m越え?の筋肉怪人だ。
しかし、ヒソカ戦でも同じような痛みを味わった…悲しい事に痛みに耐性がついてきた。
まだ、耐えられる。
「よく耐えるだわさ。 何の目的があってそんなに頑張るか知らないけど、男の子なんだから一度決めた事は最後までやり遂げなさい」
「りょ、了解」
肉体に蓄積されたダメージからして後1.2発食らえば立ち上がれなくなるだろう。ならば、最後にアレをやってみますか。前世で読んだ漫画を思い出しつつ、練習に勤しんだ技を披露しましょう。まだ、練習中で不安要素大有りだけどね。
体を極限まで脱力させ、手足を鞭のようにしならせて皮膚を打つ打撃技をね!!
ナイフも指先に固定できる用の小道具も用意してある。
ブラーンブラーーン
脱力させて両手を振り子のように振る。
「へぇ、それがあんたの隠し玉?」
「練習中ですが…そんなところです!!」
鞭のような両手でビスケに最後の猛攻を仕掛けた。
ヒュヒュヒューーン
ナイフを持った腕でビスケの行動範囲を狭めて、もう片方の腕でビスケ本体を狙う。これが私のやり方だ。ヒソカもそうであったようにベンズナイフだけは、念能力者相手でも確実に避けるまたは防ぐといった事が分かっている。
無論、この程度の作戦でビスケに攻撃を当てられるなど思ってはいない…だから、更に小細工をする。
ビスケがナイフを回避し、私のもう片方の腕を回避しようとした瞬間 腕の関節を外した。
ゴキン
「———ッ!!」
関節を無理やり外す事で激痛が走る。しかし、これでビスケが想定していた攻撃の射程が急に伸びた事になる。
私の目の前で今まで楽々と回避していたビスケの目が一瞬だけ鋭くなった。
目の前の光景がスローモーションに流れている。私の腕がビスケの体に蛇のように巻きつき背中に平手打ちを食らわすのが見えた。
捉えた!!
パーーーーーーーーン!!
風船が破裂するような乾いた音が響いた。
「ぎゃぁぁぁぁあああああああーーーーーー!!」
手のひらから来る痛みに私は思わず叫んでしまった。
ダメージを与えたと思ったのに、逆にこちらがダメージを与えたれた。手のひらを見てみると皮膚が弾けており、真っ赤に染まっていた。
「バカ!! 治療するから来なさい」
この後、ビスケの治療により手は無事に元通りになった。もちろん、治療の際にいろいろと無茶をやったことなどを責められた。しかし、何気に弟子思いの良い師匠だなとちょっと感心した。これで、本当に美少女だったらちょっと惚れたかもと思った。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
最初は、師匠に自分の弟子の指導を頼むとか、ふざけた事を言った”変態ジェームズ”にお灸を据えに来るつもりだけだった。だけど、レイアに会ってちょっとだけ気が変わった。
レイアの印象は、まさに昔のジェームズと雰囲気がまるで同じだった。自分の欲望に素直でアホで才能がない。
まぁ、努力する才能は持っているようだけどね。
昔を思い出すつもりじゃなかったけど、グリードアイランドに参加するまでの期間どこまでこの子が強くなれるか暇つぶしで引き受ける事にした。
「本当、何の目的があって努力しているか知らないけど…頑張る男の子って素敵よね。………後、この子ソッチ系もいけそうだし。将来的に…グフフフフ、楽しみだわさ」
治療を終えて疲れ切った顔で寝ているレイアの顔を見て思わず、将来が楽しみだわと思ってしまった。主に、ソッチ系の意味で…。
それにしても、ナイフ・銃・隠し持っていた針…どれもこれもめったにお目にかかれないような一級品を一体どういう経由で手に入れたのだろう。
後、気になるのは最後にレイアが使った打撃だ。あの打撃…食らえば一般人なら激痛で死んでいても不思議でない位の威力が込められていた。私も堅で防がなければ、結構痛かったと思うしね。
あといくら殺す気でかかってこいと言っても…私の容姿に対して一切の容赦なく殺す気でくる辺り、少なからず将来に心配を感じるわ。
本当に色々と隠してそうな子よね。
辛気臭い事は、ここまでにして…明日からどういうプランで育てるか考えなくちゃね。時間的に考えて、精孔は無理やり起こす事にしよう。本当にジェームズを鍛えた時の再現になりそうだわさ。
こうして、レイアの地獄の日々が始まりを迎えた。