12話
ビスケと別れて早急にヨークシンへ足を運んだレイアです。
ヨークシンのある空港にて。
それにしても、ハンターライセンスの効力は実に便利だ。飛行機に乗る際に銃火器やナイフなどを持っていたとしてもスルーされるのだからね。そのおかげで機内にいる内に装備品のメンテを終える事が出来た。
ザワザワ
オークション開催中という事もあり空港には観光客で溢れており活気が感じられる。親子連れで来ている連中もいればカップルで来ている連中もいる。私は、命がけだというのにどいつもこいつも浮かれている様子で腹が立つ。
グダグダ言っていても変わらないから、さっさとミルキと合流して両親に会いに行こう。そして、オークション終了まで何としても守り切って見せる。
「えーーと、ミルキ様は何処にいるのだろ?」
空港ロビーを見渡してみた。
携帯で話した時には、俺もちょうどヨークシンに用事があるから一足先に行っていると聞いたので空港で待ち合わせをしたのだが…どこにも居ない。あの体格だから見落とすはずはないのだがな…私の方が早く着いたのかな。
コツコツコツ
私が辺りを見渡していると、一人の長身の男が近づいてきた。
無論、最初は人違いだろうと思ったが…完全に目が合った。その容姿は、10人居れば10人が振り返るほどの美男子だ。しかも、纏っているオーラがとても美しく、その者の才能の大きさが伺える。私的に言わせてもらえばビスケと遜色ない。
しかし、私はそのオーラよりも気になっている事がある。その容姿が…幽○白○のカラスとソックリなのだ。というか、むしろ本人だろうと言いたくなるくらいにだ。
このイケメンが何の目的で私に近づいてきているかはわからないが…言える事は一つ!!
私の身に危険が迫っているという事だ。
『発』が未完成の状態でビスケクラスの能力者から逃げ切れなど不可能だ。仮に『発』が完成したとしても想定している制約的に現状では、効果がない。
ならば、とる手段は一つだ。
ピピピピピ
携帯を懐から取り出し、ミルキに助けを求めた。
今ミルキが何処にいるか知らないが、近くまでは来ているはず。ミルキの性格から考えるに待ち合わせ時間に遅れるとは考えにくい。きっと、便所にでも行っているのだろう。
♪〜〜♪♪〜〜〜♪
なにやら、カラス(仮)もどこからか電話が掛かってきたようで私への歩みを止めて携帯を取り出した。
…というか、なぜに着信音がアニソンなんだよ!!
あの容姿でアニソンが着信音とかマジでありえない。どんだけ空気をぶち壊すんだよ。
『レイアか、何の用だ』
『何の用だじゃありませんよ ミルキ様。今、よくわからない人に目を付けられておりまして至急助けていただきたいです。オーラを見る限り、むちゃくちゃ強そうで…私なんかじゃ手も足も出ません』
もう、マジで強そう。爆弾とか使ってきそうな気配満々だもん。
『ほほぅ、どいつだ? 辺りには、それほど腕の立つ能力者は居なさそうだが?』
居なさそう? という事は、ミルキは私の近くにいるという事なのか? 再び辺りを見回してみるが…それらしき人物は居ない。私の見る限り、私以外の念能力者は、カラス(仮)のみだ。一体、どこから見ているミルキ。
『いやいやいや、現実 私の目の前にいます』
何やら、カラス(仮)が辺りを見回し始めた。もしかして、カラス(仮)も周辺を警戒している?私以外の敵がいないか調べているのだろうか…だが、そうだとしたら有難い事だ。ここでカラス(仮)が自分の能力を晒すという事は、私を見ていると思われるミルキに能力を披露するも同意義だ。カラス(仮)程の能力者ならば、他の念能力者がいる前で下手な事はしないと信じたい。
『いや、居ないだろう?』
いやいや、居るでしょう!!
しかしなぜ、ここまで話がかみ合わないのだろうか…もしかして、ミルキがいる空港がここではない?それとも、ロビーが違うのか?
『うーーーん、今私は○×空港の第一ロビーにいるのですが。ミルキ様はどちらに?』
『どこも何も俺も○×空港の第一ロビーだ。そして、今お前の目の前にいる』
・・・
・・
・
め、目の前だと!!
私は、電話を切りすかさずゾルディックでお世話になった際にミルキと一緒に撮った写真を見た。そして、カラス(仮)とミルキの写真とを見比べた。
before after before after before after before after before after
何度写真を見比べても、完全に別人としか思えない。イルミが変装しているといわれた方が納得いく位の変化だ。
「それで、その腕の立つ念能力者とやらは何処だ?円を150mまで広げてみたが誰も居ないぞ」
ははははは
もはや笑うしかない。
「いえ…ただの勘違いでした。お久しぶりですミルキ様」
カラス(仮)改め、ミルキに挨拶をした。遺伝子とは恐ろしいものだ。
空港の駐車場にて。
ミルキに頼んでおいたものを受け取る為に場所を移動した。あまり人目に付く場所で出すものではないからね。
「全く、親父を説得するのに骨を折ったぜ。何とか一本貰ってきてやったんだからな」
「感謝しております」
そう…ミルキには私の戦力アップの為にいくつか道具の手配をお願いしたのだ。無論、タダでそのような雑務をやるほどゾルディックが甘くないのも知っているから、それなりの報酬を提供する。
ミルキが車のトランクから無骨なナイフを取り出し、私に渡してきた。
「ベンズナイフの後期型だ。毒などは仕込めないが、切れ味に関しては折り紙つきだ」
私が持っているナイフより数段すぐれた品なのがよくわかる。ナイフに込められているオーラが研ぎ澄まされており、『周』を使わずとも切れ味は最高級の日本刀などと大差ないだろう。
ナイフを手に取り、軽く振ってみる。
ヒュヒュヒュン
「実によい音だ。それに、手に良く馴染む」
「気に入ったようだな…後、これが「キャーーー、ひったくりよ!!」…」
ミルキから次の品物を受け取ろうとした時、女性の悲鳴が聞こえた。何やらひったくりらしいな…まぁ、この時期はスリとかそういう輩も多いだろうね。オークション目当てで金をたんまり持ってそうな人が多いからね。
ダダダダダダ
何やらひったくりらしき男が私たちの方へ向かってきた。おそらく、私たちの横を通り過ぎるのだろう。当然、ミルキは我関与せずといった雰囲気が読み取れる。普段なら私も関与する事は無いだろう…タダで人助けする程、優しい性格じゃないからね。
だけどさ…新しいおもちゃを手に入れたら試したくなるのが人の業ってやつでしょう。
私たちの横を難なく通過していく瞬間、私はナイフを振った。
ヒュン
「相変わらずナイフの扱いだけは、いい腕してんな。まぁ、そんな事はさて置き…これがお前に頼まれた弾丸だ。50発までしか用意できなかったから次の補充までは大事に使え」
「50発も用意してもらえるなんて…流石はゾルディックですね。こんな短期間に劣化ウラン弾を用意できるなんて思っても見ませんでしたよ」
通常のダムダム弾だけでは不安があったので、劣化ウランを用いて弾を製造する事で威力強化を狙ったのだ。これを食らえば、並の念能力者ならば悶絶または即死間違いなしだろう。
数十メートル先からまた悲鳴が聞こえた。
「切れ味が良すぎるのも困り物だな…数十メートルも走ってようやく自分が切られている事に気づくんだからな」
「その通りですね…ではミルキ様、お約束通り両親を第一にお願いします。後、これがお約束の物です」
私は、懐からこの世で一番価値があると言われるライセンスを渡した。
ゾルディックを雇うのだ…これくらいの報酬は当然だ。それに、今回の相手は下手すりゃ幻影旅団だからね。その危険手当も考えればこれでも安いくらいだ。
「あぁ、確かに受け取った。安心しろ…ゾルディックの仕事に失敗はない」
本当に頼りになるよ…これからもよろしく頼みますよ ミルキ様。
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ヨークシンにあるテラスで優雅に紅茶を飲んでいるレイアです。
本来であれば一分一秒でも早く両親の元に駆け付けたいのでが、幸いオークション開始は明日からだ。要するに、明日から三日間に蟻一匹近づけさせなければいい。そして、ミルキと一緒に今後の作戦を立てている最中だ。
あまり原作知識を晒す事は好ましくはないが、両親の生存率を上げる為に可能な限りの情報を教えた。ヨークシンに旅団が来る事と全員の容姿、団員の能力情報などを提供した。
無論、なぜ知っているといった顔をしているが知り合いにそういうのに特化した念能力者がいるという事で話を無理やり閉じた。
「しかし分からんな…何故、そこまでの事を知りつつ両親をこの街から遠ざけない。下手をすれば両親ともども死ぬぞ」
「それについては、自分でも自分自身をバカだと思っている。だが、こんな変わり者の息子を大事に思い、育ててくれた親が私にいいところを魅せようとしているのだ。それを応援するのが息子ってもんでしょ」
そう…本当にバカなことをしている。両親を気絶でもさせて実家に連れ戻せばそれで終了だというのにな。
本来であれば、お父様の大事な仕事をほっぽりだす形で終えてしまえば社会人として終わってしまうが…今回だけは違う。オークション自体は行われるが、オークション品は念能力のコピー品だ。時間とともに消えてなくなり、その後は各方面で大炎上間違いなしだ。
「家族の為に陰ながら頑張るのか…そういうのは嫌いじゃない。安心しろ、ゾルディックの仕事に失敗はない」
優雅に紅茶を飲みつつ、イケメン面のそんな事言われたら女だったらイチコロだろと思うくらい破壊力のあるセリフだ。男である私でもちょっと惚れそうだったぜ。
だが、それでこそ頼りになる。
「期待しています ミルキ様」
その後は、両親から貰った仕事のスケジュールを元に身辺警護の計画を練った。お母様もお父様のオークションを見るべく現地に来る為、ミルキと私で一人ずつ守る事にした。ミルキには、お母様を任せた。非力な女性を守るには、私より圧倒的強者であるミルキが適任だろうと思ったからだ。
「こっちは、問題ないがレイアの方は大丈夫なのか? 幻影旅団が相手だと正直荷が重いだろ」
幻影旅団を相手に一般人を抱えながら問題ないと言い切れるミルキがうらやましい。これだから、才能の塊は…。
「確かに、荷が重いです。だけど、ミルキ様も流石に二人を抱えてまともに幻影旅団とやりあえないでしょう。それに、私もそう簡単に殺されませんよ。こう見えても物心つくころから道場に通い、ゾルディックで涙を流し、念の師匠に凹られていたわけではありません」
「涙どころか血反吐も吐いてただろ…。それで、そこまで言い切るって事は、かなり使える『発』なんだろう?今後の事も踏まえて系統と能力を教えておいてもらおうか」
系統と能力か…あまり、教えるべきものではないが仕方あるまい。ミルキとしては、私がどの程度の実力で旅団相手にどこまでやれるか把握しておきたいのだろう。無能な味方程、脅威はないからな。
「あまり口外で下さいよ。私の系統は、操作系です。一応、四大行と応用まで全て習得済み?かな。『周』『凝』『流』は、師匠から既に実践レベルと言われた。その他は、一言でいえば鍛えるだけ無駄と言える程度の才能です」
「…本気(マジ)で?」
「割と本気(マジ)」
・・・
・・
・
「よし…今すぐ、両親を気絶させて帰宅させるぞ」
「えぇぇぇぇぇぇぇ!! さっきと言っている事が180°変わっていますよ。ゾルディックの仕事に失敗はないと言っていたじゃないですか!?」
「レイアの『凝』と『周』を見てこれならいけるかなと思ったが、生憎とその他の物が全然だめだとは想定外だ。普通、基礎があってこその応用だろう。というか、詐欺もいいところだろう」
「大丈夫です!! 『流』も師匠から太鼓判押されました」
「他は?」
「…『隠』が少々」
「実践レベル?」
「…後、2.3年鍛えれば」
・・・
・・
・
ミルキと私の間に長い沈黙が訪れた。
やはり、ミルキでも難しいか…旅団を数人同時に相手どる可能性もあるのだ。そんな中、お荷物が私を含めて三人もいれば、いかにゾルディックといえども厳しいだろう。もし、ミルキが今回の依頼を破棄するような事になったら、本気で両親を連れ戻す必要がありそうだな。
「はぁ…依頼を受けた以上、依頼主が取り下げるか死なない限り依頼は継続される。報酬も先に貰っているからな。やるだけやってやるよ」
おぉーーー!!
両親を本気で連れ戻す算段を考えていたが、ミルキの思わぬ発言に感動した。引き受けた依頼は、完璧にこなす…まさにプロの鏡。
「ありがとうございます ミルキ様。私に出来る事があれば何でも言ってください。出来うる限りやらせていただきます」
「現金なやつめ…そうだな、まずは『発』を見せてもらおう。レイアの能力次第では、この局面を乗り切れるかもしれん」
「了解。とりあえず、場所を変えましょうか。後…念のために確認ですが、替えの下着は持っています?」
「当然、あるが…それと何の関係が?」
「あるなら問題ありません。後、絶対に怒らないで下さいよ」
「善処しよう」
さて…ミルキ自ら実験台になってくれるとは嬉しい誤算だ。ミルキ程の念能力者に効果があればほぼ間違いなくこの能力は使えると実証されるも同然。
「そういえば、なんて能力なんだ?」
「能力の詳細は、お楽しみを…決して害はありません。むしろ、心からあらゆる穢れが抜け落ち悟りが開けます。おまけに、至福の時を味わえます」
「敵に至福と悟りを与えてどうすんだよ!!」
流石のミルキも突っ込みを入れてきた。
「ご安心ください。一見、戦い向きの能力では無さそうですが…これが存外使えるのですよ。後で、身を持って味わってください…私が最強と自負する『賢者タイム(ケンジャタイム)』を!!」
無害ゆえに無敵という誰かの言葉がある。これが意味することは、無害だから強力…ならば、相手に有益な事をすれば最凶になるはずだ。しかも、制約もいろいろつけた。おまけに、操作する箇所もきわめて局部のみ…これだけの条件がそろえば鬼に金棒だ。
ちなみに能力名は、クラピカに対抗して付けた名ではない。むしろ、前世では非常に馴染みのある言葉から取ったものだ。こっちの世界では、電脳ネットにも掛からない言葉だったけどね。
さぁ、ミルキよ下着の貯蔵は十分か。
念能力名:賢者タイム(ケンジャタイム)
タイプ:操作
発動場所:対象の大事なところ
射程距離:10m前後
対象:一人
効果範囲:発動と同時
発動条件:-
持続時間:相手次第(対象によって個人差有)
解除条件:相手次第(対象によって個人差有)
制約:?対象の名前を知っている事
?対象が男性である事
リスク:対象が失った【ピーー】の10倍の量の血液を失う
特記事項:相手が勝手に絶状態になる可能性がある