13話
昨夜ミルキに賢者タイムのお礼だと言われてゾルディック式のお仕置きをされそうになったレイアです。流石にゾルディック式のお仕置きなんて一般人の私が食らったら廃人または死亡間違いなしなので等身大フィギュアを作成するという事で手を打ってもらった。
しかし…発動と同時にミルキが絶状態になったのは正直笑えた。人を殺すのはよくないとかまで言い出して、悟りを開ききっておりまさに賢者といった感じだった。
自分でいうのも何なのだが、ある意味自分の能力に恐怖してしまったよ。
ヨークシン近郊の両親が宿泊しているホテルにて。
それにしても…前世とは打って変わって両親と過ごす時間が短いとしみじみ思う。私の年齢だと大学又は専門学校、あるいは就職といった感じが普通である。学校の同期とかは、きっとエンジョイな学園生活を送っているのだろうな…モゲロと言葉を送っておこう。
それにしても、初日からかなりヘビーな仕事だな。
本日は、お父様がお仕事で地下競売に参加する事になっている。もちろん、その地下競売というのは普通に参加すれば死亡率100%の極めて危険な競売である。
当然、世界中のマフィアが運営するというだけあって会場にはガチムチの方々がひしめき合っている。その為、お父様の会社も一応ボディーガードを雇っている。地下競売は、基本的に三人一組で入るらしく、今回護衛として雇われた者は二名だけだ。地下競売のような危険な連中が集まる競売には、お父様と護衛二人で行き、昼間に行われる競売などにはお父様とお母様と護衛一人で行く予定なのだ。
お父様の会社が雇った護衛を見てみた。
うーーーん、町にいる筋肉質なゴロツキに黒いスーツを着させたらこんな感じだろうと思う容姿だ。会社も気を利かせて雇ってくれた事には感謝しよう。だけど、雇うなら最低限プロハンターを雇えよ!!
「そこの護衛Aと護衛B…ちょっと、私と力比べをしましょう。私に負けるようなら生憎と地下競売への護衛役はこちらに譲ってもらおう。もちろん、首というわけではなく色々と他にやってもらおう」
私はテーブルに肘をつき腕相撲の体制をとった。
「何を心配されているかは存じ上げませんが、我々もプロですのでご安心ください。それに、雇い主のご子息に怪我をさせたとなってはこちらも立つ瀬がありません」
仕事熱心なのも褒めよう…だけど、お前らでは役不足なのだよ。
「レイア…あまり、護衛の方々に無理をいうでない」
「そうよ レイアちゃん。みなさんお仕事で来ているんだから、そういう事はプロの人に任せてなさい」
言っている事は、確かに両親が正しい。しかし、ただの人間が念能力者…しかも幻影旅団の連中相手に1秒だって持つはずがない。実際、原作では開始と同時にフランクリンの攻撃で壊滅したのだからね。
仕方ない…ここは、力の一端を見せつけておとなしく裏方へ回ってもらおう。
腕相撲はあきらめて、壁に手を当てた。
それにしてもお父様もお母様も私の今の職業がなんなのかを完全に忘れている気がする。私は、これでもプロハンターなのだ。この世界でなるのが一番難しい職業といっても過言ではない職業についている一人なのだ。
だから、こんなライセンスを持たないような護衛より私の方を信頼してほしいよ。
「はぁぁあああああ!!」
バキバキバキーーン
私が手を当てた個所を中心に壁が少しだけ凹み辺りに亀裂が走った。本当は、漫画で見たウイングさんの芸当を真似をしようと思ったのだけど…あの人のようには流石にいかないな。師範代クラスは半端ないわ。
両親は、プロハンターになって何を身に着けたのだろうと思ったのか…何故か喜んでくれている。しかし、護衛の方は得体のしれない力を見て少し顔が青ざめている。
「これでもプロハンターをやっていましてね。それなりに実力はあると思っております。ちなみに、そこにいる彼は私なんかより遥かに強いですよ。試されますか?」
そろそろ、地下競売にいく支度を整えないといけないので護衛の方には申し訳ないがここで断るようなら実力行使させていただこう。
「「我々は、奥方の警護を致しますのでどうぞごゆっくりいってらっしゃいませ」」
うむ、護衛二人組が息をぴったり合わせて敬礼しながら答えてくれた。
物わかりのいい人って好きだよ。
では、話も纏まったところで研いでいてベンズナイフと整備中の銃を組み立てなおした。当然、普段身に着けている重石は外している。そして、お高い黒いスーツに来て懐にナイフと銃、そしていくつかの小道具を詰めた。
「レイア…先に言っておくが、地下競売はマフィアが仕切っている。その為、基本的に武器やカメラなどの電子機器の持ち込みは制限されている。持って行ったとしても入り口で回収されるのが落ちだぞ」
…え!?
武器がない私なんて、ただの一般人と変わりないじゃないか。それとも、【賢者タイム】だけで旅団相手に逃げ切れってことか…どう考えても無理ゲーだ。旅団がすべて男性で構成されているならまだしも、私の記憶の限り何名か女もいたはず。女性が相手だった場合、秒殺されてしまう事間違いなしだ。なんせ、私の防御方法は手持ちの武器を『周』で強化して攻撃を相殺または反らす事をメインにしているのだからね。
「これが持ち込めないといろいろと不都合があるのですが…なんとならない?お父様は、美術商だし…オークションにも過去何度か出ていたコネでなんとか…」
「うーーん、レイアが使っているのはベンズナイフだったな…美術品としての価値も非常に高いからそこらへんでゴリ押しすればなんとかなるか。ただし、銃の方は流石に無理だな」
顎鬚を引っ張りつつお父様が、知恵をひねってくれた。
ナイフだけか…まぁ、銃だけと言われるよりマシだからよしとしよう。
「旦那様、そろそろ地下競売のお時間です。準備をお願いします」
私たちの話がまとまった所で護衛Aが時間を知らせてくれた。
さて…自ら飢えたオオカミの巣窟に飛び込むとするかな。
地下競売が行われる会場にて。
ガヤガヤ
私たちの周りには、ガチムチの人たちで埋め尽くされ…どいつもこいつも今から戦争でも始めるのかといった雰囲気を漂わせている。
全く、この高級感溢れるホテルに不釣り合いな連中ばかりだ。
お父様は、私のナイフを持ち込むために別室でマフィアの方々と交渉中だ。一応、ミルキに譲渡したライセンスを再び借りてハンターライセンスの権力も使いゴリ押ししてくれとお願いしておいた。
「どんなかんじですか ミルキ様」
会場に集まっているマフィアの方々を眺めているミルキに話しかけた。
「一般人としては、それなりに出来る奴も混ざっているが雑魚である事には違いない。数人ほど、念能力者がいるようだが…大したレベルじゃない」
マフィアの幹部連中が集まる事が多いから、それなりの人が腕の立つ人材が多いのだろう。まぁ、そんな連中でも時間稼ぎの駒にはなるだろうね。
出来る事なら今回の地下競売に来るであろう…クラピカの仲間の念能力者には、是が非でも生き残ってほしい…主に餌的な意味でだけどね。
「待たせたな レイア。持ち込み不可だから、預かると言われたが…ライセンスを見せて出品する予定の競売品を持ってきたと何とか持ち込ませてもらったよ。ライセンスがなければ流石にできなかった芸当だろうな…便利な物だな」
「だからこそ、ハンターになったんですよ」
世の中、金と権力で大体の事がまかり通る。その象徴こそがハンターライセンスなのだ。
私は、両親からライセンスと愛用のベンズナイフを受け取った。そして、両親の隙をみてライセンスをミルキに再び返却した。
「では、我々も行きましょうか。ミルキ殿・・・息子のわがままに付き合っていただき本当にありがとうございます」
「いいや、気にしなくていい。私が好きでやっている事だ」
両親には、ミルキの事を私のベストフレンド?として紹介してある。学校でも浮いた存在だった息子に友達がいたとは…と半泣きしたお母様の顔はまだ記憶に新しい。
そういや、私の学校生活って荒んでいたよな。毎日が修行…フィギュアづくり…そりゃ、親も心配するわ。自分でいうものアレだが…容姿にはそれなりの自信があるのに年齢=彼女居ない歴だったからね。まぁ、彼女の面については近い将来、現れる予定だから心配ないけどね。
そして、私達は会場の席へと移った。
・・・・
・・・
・・
・
静まり返った壇上に二人の男が登場した。二人とも堅気の人間に見えなくはないが…ご存じのとおりフランクリンとフェイタンである。無論、この先の展開もすでに分かっているのでミルキと打ち合わせ済みだ。
ミルキと私はすでに臨戦状態だ。お父様も私達とは別の意味で臨戦状態だ。
「皆様ようこそお集まりいただきました。それでは堅苦しいあいさつをぬきにしてくたばるといいね」
「ダブルマシンガン」
ゾワ
その瞬間、フランクリンの両手の指が開き会場全体に嫌なオーラが充満した。異変に気づきすぐさま辺りの連中も戦闘態勢に移るが、念能力者相手にその初動の遅さは致命的だ。
フランクリンから発射された念弾により人間が紙屑のように消し飛んだ。
この瞬間、私の能力発動だ。相手の至高の快楽を提供し悟りを開かせる究極の技をね。男性に生まれたことを感謝し後悔するといい。
「争いは何も生まぬ…【賢者タイム】!!」
発動と同時に大量の血液がごっそり奪われた。貧血からくる眩暈に襲われはした。しかし、ここで意識を失う訳にもいかないので歯を食いしばり耐えた。
「あへぇらぁ〜……」
「フランクリンどうしたね?」
仲間の異常にフェイタンが気づくが何故フランクリンが攻撃を止めたかは理解できまい。
「てめーら、どこのもんだ!!」
「生きて帰れると思うなよ」
「早く、外部と連絡をとれ」
会場は、突然の襲撃により混乱していた。だが、これでいい…これこそ私たちの狙いなのだ。
さぁ、マフィアの皆様がた…私達が逃げるまでの餌役よろしく頼むよ
「逃げますお父様。お母様がいるホテルまで急ぎます。だから、黙って私たちの指示に従ってください」
「あ・・・あぁ、分かった」
勇敢なマフィアの方々が生身で旅団に挑むなか私達は扉と反対側にある壁の方へと移動した。入り口の扉の向こうには旅団が複数人待ち伏せしているのだ。そんな方向から逃げるなどナンセンス!!
「ここからは、よろしくお願いしますよ ミルキ様」
「言われるまでもない」
こうして、ミルキとレイアの凸凹コンビの無双が始まった。
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フランクリンの戦意を根こそぎ奪い取り、マフィアの方々を餌に逃亡に走っているレイアです。
マフィアと幻影旅団…改めて思えば、どちらも糞みたいな職業の連中だ。一般人から見たら害でしかないという意味でね。似た者同士仲良く殺しあえとエールを送っておこう。
さて、前置きはこのくらいにしておき早々にこの会場から逃げるとしましょう。
コンコン
入り口の反対側にある壁を軽く叩いてみた。
「思ったより厚いな…流石は、高級ホテルの会場といったところか。だが、あまい!! ———おりゅあーーー!!」
ミルキから貰ったベンズナイフ二号…通称ベンちゃん2号に掛かればこの程度の壁など熱したナイフでバターを切るより簡単に切れるのさ。
シーーーーン
確かに、大人が二人くらい通れる位の大穴を開けるべく壁に切り込みを入れたのに壁が崩れ落ちない。
「俺が変わろう」
ミルキが私の横に来て、壁に向かってヤクザキックをぶちかました。
ドドドーーーーン
壁は、私が切り込みをいれた形通りに綺麗に外れ反対側の壁にぶつかり粉々に砕け散った。
…おぃおぃ、一体どんな脚力しているんだよ。壁が水平に飛んで行って粉々に砕け散るなんて恐ろしすぎる。これがゾルディックの血筋なのか…本当に同じ人類なのか改めて疑問に思うよ。
「ミルキ様…ちなみに、試しの門はいくつまで開けられます?」
「試しの門?…あぁ、うちの正門か。ここに来るときは6の門まで開けたが、それが何か?」
6だと!! ということはだ…両扉合わせて128トンもの重さを開けたのか。
「レイア…話し込んでいる時間はなさそうだぞ」
お父様の言葉を聞き、今がどういう状況なのかを思い出した。マフィア沢山とフェイタンの試合が始まって1分も経たないうちにすでにマフィアは半数にまで減らされていた。会場にいたクラピカの仲間の念能力者も能力を使い少しは役に立っているようだが…まもなく崩壊するだろう。
だって…扉の向こうには幻影旅団のお仲間がいるのだからね。
しかし…それにしても、お父様は妙に落ち着いているな。
「お父様は、怖くないのですか?」
「怖いさ…私は、荒事専門ではないからな。だが、息子の前でみっともない恰好はできんだろう。それに、私はレイアを信頼しているからな」
いやいや…信頼されても幻影旅団相手に立ち向かうなんて通常無理ゲーですよ。あの見た目の濃い連中、世界屈指の実力者たちですよ。私は、ある意味裏ワザ的行為を行う事で男性団員ならばなんとか退けられる可能性があるけど…女性団員相手には無力にも等しい。
と言いたいのは山々だが…守り切って見せますよ。その為に来たのですからね。
「さっさと、このビルを出るぞ。いくら俺でも束になってこられたら守りきれん」
「そうですね…では、最短ルートで地上に向かいましょう」
私は、右手の人差し指を天井に向けた。
「それは、名案だな」
ミルキの脚力と私のベンズナイフがあれば、先ほどと同じように天井に大穴を開けることもたやすいだろう。ご丁寧に敵が待ち伏せしていそうな階段やエレベータなど使うのはナンセンスですからね。
ここは、地下5階…地上に抜けるまで誰にも出会わない事を切に願う。
・・・
・・
・
「これでラストーーーー!!」
ベンズナイフで天井に円の形で切り込みを入れ、その後ミルキがとび蹴りを天井に食らわせる。そうするとあら不思議…天井がアイスのふたのようにきれいに外れるではりませんか。
ドドゥーーーーン
「ハンターというのは、全員こうなのかレイア?」
何の事だろうかと思うが…おそらく、身体能力の事なのだろうな。明らかに一般常識を逸脱しているからね。私程度の実力でも大人一人を背負って一階分程度の高さなら飛び越えられるからね。
これも、すべてビスケのおかげだわ。寝る間も惜しんで修行に勤しんだかいがあったというものだ。
「私程度のハンターなら腐るほど…しかし、あそこまでの実力者は本当に一握りですね」
あまりミルキを待たせるのも悪いので、お父様を背負いさっさと1Fに移動した。これで外に止めてある車にのって逃げれば任務完了と…幻影旅団は全員気球で脱出するはずだから追っては来ないだろうね。
「一息ついているところ悪いが…チョンマゲとマッチョ。どっちが好きだ?」
「贅沢言えばどちらも嫌いかな。私は、女性が好きなノーマルな男だからさ」
「なら、あの女の相手をするか?」
ミルキが指差した方を見てみると…スパッツを履いた妙齢の素敵な女性がいた。マニア心を擽る格好をしやがって…もしかして、これも相手の作戦なのか!? そうだとしたら、恐ろしい奴だな。いろいろな意味でね。
決めた!! ミルキへの等身大人形は、マチのエロ下着verにしよう。楽しみだわ…ばれたら殺されそうだけどね。
とバカを言うっている場合じゃなさそうだな。
「不本意ながら全力でチョンマゲの相手をさせていただきます」
「父親に車をとってこさせろ。辺りにいるのはこいつらだけだ。父親を死なせたくなかったら死ぬ気で足止めしろ…」
お父様に車をとってくるようにお願いし、見送った。
「まだ、生き残りがいるじゃねーか。地下の連中は、何をやってんだ。やっぱり、俺らが行くべきだったなウボォー」
「どっちでもかまわねーさ。こんな活きのいい野郎がまだいるんだからな」
「気をつけなよ。どっちの能力かは、知らないがフランクリンを強制的に絶にしただけでなく意味も分からない念仏を唱えさせているようだからね。完全に操作系ね」
うはw
フランクリンがそんな状態になっているのかよ。いろんな意味でヤバイなそれ。
「…恐ろしい能力だな。意味不明過ぎて」
「だから、生け捕りにしなよ。解除方法を聞き出す」
マチから軽く死刑宣告を受けた。解除方法を聞き出したら殺されるってことか…まぁ、私の能力は解除も糞もないけどね。その人の耐性次第だからさ。時間が来れば勝手に治るさ。
「いいかレイア…急所は、守りつつ1分間持ちこたえろ」
「1分…実力差的に考えて長くないですか?」
「なら死ぬだけだ」
冷たいでござる。ミルキが冷たくて死にそうです…実際死にそうです。
「念能力者同士の戦いでは、実力差が必ずしも勝敗に関係しないという事を見せてあげましょう」
大見得を切ったのはいいけど、ノブナガの精力が人並みであることを神に祈るレイアであった。