14話
ノブナガとマジで対面しているレイアです。
正直言って、かなりヤバイね。能力を使った戦いでは、名前のわかる男相手限定で最低限負けない自信があったけど…身体能力に開きがありすぎる。観察する限り腕力・瞬発力・持久力のどれをとっても私の二倍…いや、三倍近くあるように見受けられる。
よくよく考えれば、ノブナガの能力って原作でも出ていなかった気がする。唯一の戦闘シーンがクラピカの仲間の首チョンパだったからね。居合関係の能力なのか…それとも純粋な剣術なのか見当がつかない。
だが…私を生け捕りにすると言っている以上、すぐに殺される事だけはないだろう。まさに、不幸中の幸いというやつだ。
「俺らの目的は、オークションの商品だけだ。こんなところで無駄な時間を食っている暇はね。小僧…今すぐ、フランクリンのかけた念を解除しろ。そうすれば、見逃してやってもいいぜ」
「そんなに殺気込められて言われても全然説得力がありませんよ。解いたところで殺されない保証はありませんからね。それに…あっちのデカい人は、どうにも見逃してくれそうな雰囲気ないじゃないですか」
ウボォーが『ガハハハハ、こいつむちゃくちゃつぇええええ』と大声で叫んでいる。それには、完全に同意するよ。強化系を極めた奴を相手に一歩と引かずに戦っているのだ。そんな変態と戦いつつ、マチへの警戒も怠っていないとはね。とんでもないレベルだよ。
「派手に暴れやがって…まぁ、いいや。死なない程度にしておいてやる」
来る!!
ノブナガが居合の構えをとった。その瞬間、10m位離れているにも関わらず自分が真っ二つになる鮮明なイメージが浮かび上がった。
防御系の念がとてつもなく不得手な私にとって、ノブナガの念を込めた殺人的な殺気はかなり厳しい。極寒の地に全裸で居るほどではないが…冬のオホーツク海で寒中水泳を行っているような気がするといったところだ。
「ビックバン・インパクトーーーー!!」
・・・え!!
戦闘が始まって僅かな時間しか経っていないのに背後でとてつもなく聞きたくない単語が叫ばれた。
おぃおぃ、こんなホテルの中でそんな大技を打つんじゃねーよ!! というか、ミルキ大丈夫なのか!? 強化系がこういう大技を使うときは基本的決め技と相場が決まっている。ミルキが回避できないタイミングで使われているに違いないが…今この状況で後ろのいるミルキの状況を確認することはできない。一時でも目をそらせば、私の首と胴が泣き別れしそうだしね。
だが、私はミルキを信じている。事前にウボォーの情報を知っているミルキがみすみす攻撃を食らうはずがない。それが、必殺技ともなれば尚更だ。
ならば、私の取る行動は一つ!!
ウボォーが外れる事を前提とした心構えと行動だ。ビックバンインパクトの威力がどの程度かは漫画でしか見たことないが…床や壁に当たった場合は、私がいる位置も危険だろうね。
…というかまずいよね?
ドゴゥーーーーーーーーーン
「「えっ!!」」
マチとノブナガが二人揃って驚いている。背後の状況が分からないが、二人の声とすさまじい音からしてウボーの攻撃は外れたのだろう。
だが、好機到来だ!!
地面に大穴を開けるほどの威力があるパンチをホテルの床が耐えきれるはずもなく、私たち全員を下の階に見事にご招待された。
下の階は、瓦礫と砂埃が充満しており一寸先も見えない状況になっている。
だけど、こんな状況など旅団の連中にとっては何の障害にもなりえないだろう…あいつら戦闘面に関しては基地外だからな。
視界が見えないにせよ、ノブナガに近づかせるのは得策ではないのは事実だ。
幸い、蹴り飛ばすにはちょうどいい具合に瓦礫がたくさんある。
そんなわけで、力の限り瓦礫をノブナガの方に蹴り飛ばす!! 蹴り飛ばす瞬間に瓦礫自体を『周』で強化して威力を上乗せする。本来、物体に念をとどめるのは難しいと言われているが…だが、私にとっては比較的そうでもないのである。
念を使えるようになって気が付いたのだが、今まで作ったフィギュアの殆どが念を帯びている。そういった経緯もありミルキの目に留まったのだからね。
「うりゃうりゃうりゃうりゃ!!」
手当たり次第に蹴る!! 蹴る!! ひたすら蹴る!!
ノブナガがいるであろう場所に対して死ぬ気で瓦礫を蹴りまくる!!
普段使っている銃より威力も速度も格段と落ちるが、当たればウボー程のガチムチの強化系でない限り少しは痛いだろう。
これでお父様が車を取ってくるわずかな時間を稼ぎ切れるぜ!!
だが、そんな考えは甘かった……
パシン!!
瓦礫を蹴り上げた右足が何者かによって掴まれた。
「よぉ、坊主…まさか、この程度の攻撃を避けられないとでも思ったのか?暴れられても厄介だからヘシ折るぜ」
メキメキ
ノブナガの握力により、私の足が悲鳴を上げる。念で強化しているが…やはり、地力が違い過ぎて話にならん。この状況を打破するには、アレを使うしかないか。
……いや、フランクリンを足止めするのに相当の血液を失った。この能力でノブナガまで足止めした場合、気を失わずに堪え切れるのか自信がない。理論上、あと数回は使えるはずだが…一度に血液を失い過ぎると厳しい。
ならば、ナイフで応戦だ!!
すかさず、右手にベンちゃん2号を持ち蛇打の要領で私の右足をつかんでいる手を目がけて弧を描くようにナイフを振う。
先ほどまでの瓦礫とは異なり、鉄柱すら切り裂ける切れ味のあるナイフとビスケ師匠に実践でも十分通用すると言われた『周』で強化された攻撃ならばいくら旅団と言えども無手でこのナイフを弾くような事はできないはずだ。
「その腕貰った!!」
「チッ!! 」
ノブナガが舌打ちをして手を放した。
カーーン
その瞬間、私のナイフが金属に当たって弾かれた。これはまずい……ノブナガの抜刀が全く見えなかった。
こいつが本気になればいつでも私なんて首チョンパだ。もはや、迷っている暇はない!!
「いい加減おとなしくしねーと本当に殺すぞ クズ」
・・・
・・
・
ブチ
「クズにクズ呼ばわりされる言われはねーよ!! 朽ち果てろぉぉぉーーー」
自称、対男性の最凶能力…【賢者タイム】!!
「あっ?」
発動と同時に血液が失われた。あまり時間をおかずに多用した事で、めまいがするが耐えきれないレベルじゃない。どうやら、ノブナガの精力は人並み程度だったようだ。やはり、ある程度は体格に依存するんだな。
さてさて、ノブナガはどうなったかな?
・・・
・・
・
うむ!! 見事に堕ちている。先ほどまでの殺気が一切なくなり、悟りを開き仏のような顔をしている。
旅団を殺すと仲間から恨まれて面倒なことになりそうだから、そのアピールポイントのチョンマゲを頂くとしましょう。
ノブナガに近づき左手にいつも愛用していたベンズナイフ一号を手に取り、チョンマゲ目がけてナイフを振り下ろした。
ヒュン!!
ポトン
風を切る音と共に、私のベンズナイフ一号の刃がきれいに切断された。
「きゃーーーー、私のベンちゃん一号がああぁぁぁーーー」
まさか、もう持ち直したのか!?
いや、違う……持ち直していたとしたならば、ナイフの刃などを切断せずに私を切っていたはずだ。うーーーん、まさかとは思うけど無我の境地とかそんなアホな域に達しているとかなのか!? 身に迫る危険に対して自動防御とか、マジで笑えねーよ。
「時間だ。撤収するぞ!!」
ミルキが声を掛けてきた。
車の走らす音が聞こえてきた。
お父様の車がもうすぐ近くを通るようだ。そうとなれば1Fに上がり早々に壁をぶち壊して外へ出よう。
「了解した。先に行く!!」
ベンズナイフの代わりにノブナガの刀を奪取したかったが…あきらめよう。命の方が大事だからね。
ミルキがウボーとマチを相手取っている間に私は一足先に1Fに上がり、今まで同様に壁に切り込みを入れた。
その瞬間、ナイスタイミングでミルキがこちらにやってきて壁を蹴り破った。というか…もう追いついたのかよ。
しかもおまけを連れてきてくれちゃって…。
「逃げるのか!! 待ちやがれ!!」
だが…こちらの方が一足早い!!
壁をぶち抜いた先をお父様の車が通過すると同時に二人で車の屋根の上に飛び乗った。いくら旅団と連中と言えども走る車には勝てないだろう。
…と思っている時期もありました。
予想に反して、ウボーがあり得ない速度で車を追ってくるではありませんか!!
いくら強化系だからって信じられるか!? 走っている車に追いつて来るんだぜ。
「ミルキ様、人間って鍛えれば車より早く走れるんですかね?」
「ガハハハハ、俺様から逃げようったってそうはいかねーぞ」
「さぁな…だが、いい加減あいつの顔は見飽きたな。レイア…ヤれ」
え!?
やれって…もしかしなくてもアレを行使しろって事か!?
「今日はすでに二回も使用して流石に…ミルキ様お手製の爆弾とかで何とかなりませんかね?」
「生憎と手持ちが無くてな…薔薇なら持ってきているが。それを使えと?」
薔薇!? 薔薇と言えばアレですよね。
「ちょちょちょ、なんでそんな凶悪な爆弾持っているんですか!!」
「相手が相手だったからな…万が一に備えて用意した。本当なら使う気などなかったが、レイアに言われたんじゃ仕方ない。……どんな爆発になるか楽しみだニヤニヤ」
国際的に禁止されている爆弾を使う責任を私のせいにしようとしているよ。ひどすぎる。
「わかりました。ヤりますよ。ただし、ぶっ倒れたらちゃんと輸血お願いしますよ」
「チッ…分かった」
さようなら、ウボー。
車並みの速度で走った状態で且つ、絶状態で転倒するのは、相当痛いと思うけど恨まないでくれよ。
「浄化されよ…【賢者タイム】!!」
予想通りと言えば予想通りだったが、発動と同時に目の前が真っ暗になった。意識が薄れていく中、何かが転倒しガードレールに直撃するような音が遠くから聞こえた。
その日の夜…大男の二人がコンビニでパンツ強盗を働いたのは小さい出来事であった。
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地下オークション会場から逃げ切る為に能力を多用し、意識を失ったレイアです。
おかげで目が覚めたら両親が止まっているホテルで寝かされて輸血されておりました。まぁ、あれだけの変態に囲まれて生きて帰れただけよしとしよう。ベンズナイフを一本失ったのは痛いけど命には代えられないからね。
「気分はどうだ レイア?」
どうやらミルキが私の面倒と両親の護衛をしてくれていたようだな。これが美少女だったら嬉しいのにとちょっとミルキに失礼な事を思ってしまった。
「貧血気味でまだ眩暈がする。……お父様は?」
「先ほどまで母親と一緒にレイアを診ていたが夜も遅いので俺が交代した。今は横の部屋で眠っている」
「ありがとうございます」
「気にするな これも仕事の内だ」
ミルキがいるからあまり心配はしていなかったが、お父様の無事が確認できて肩の荷が下りた気がした。
さて、地下オークションが終わったという事は、今頃はウボーがクラピカに捕まっている頃だろうか?クラピカによって亡き者にされた後だろうか…どうにも、ここら辺の時系列が微妙に思い出せないが問題ないか。
「あれから、どのくらい経ちました?」
「大体4時間といったところだ。とりあえず、今日くらいは休んでおけ。今日みたいな事はもう無いだろうが……その代り明後日は、俺の用事に少し付き合ってもらうからな」
ミルキがこの時期に用事と言えば…G・Iか!!
だが、私の記憶が正しければ予算不足で買えなかったはず。しかし、既に微妙なところで原作と異なってきているからお金の関係も解決しているのかな?
これはチャンスではないか!!
本来であれば、某大富豪の募集に紛れ込んでクリア報酬をゲットしようなどと考えていた。しかし、私の力ではきっと選考試験落ちする可能性がある。いや、ほぼ間違いなく落とされるだろうな。
むしろ、ミルキに全力で協力した方が遥かにクリアの成功率が上がるのではないだろうか。いろいろな情報提供の見返りに、一枚だけクリア報酬をもらえればそれで満足だからね。
嫁といちゃいちゃするためのマイホームを手に入れる為に一肌脱ぎますか。
「ミルキ様…G・Iのクリア報酬や競売のライバル情報など興味ありませんか?よろしければ、確実にクリアできそうな妙案までご用意いたします」
「なぜ、俺の目的がG・Iだと?」
ミルキの目に警戒の色が伺える。
そんな目で見ないで下さいよ…私はミルキ様に絶対服従に近い形をとる犬みたいなものですよ。ただし、お駄賃はしっかりといただきますがね。
「違うのですか?」
「くっくっく、いいだろう。その取引受けてやろう。ただし、あまり無理な報酬は出さんぞ」
ゲームを落札するお金は全部ミルキ様持ちだし、あまり無茶な要求はしませんよ。クリア報酬の三枚のカードのうち一枚を譲ってくれればそれでいいですよ。
あ…そういえば、G・Iといえばビスケ師匠もいるんだっけな。まぁ、敵対するわけでもないから大丈夫だろう。
翌日
昨晩の地下競売を忘れ去りそうな程のいい天気です。
黒服を着込んだ物騒な人達が何やら急ぎ足で右往左往している事以外は、まさにオークション日和と言ったところだろう。まぁ、オークション品を根こそぎ奪われたままだから仕方ないよね。
残念な事にお父様もその関係で会社のお偉いさんに呼び出されて、一緒に町を散策する予定が水の泡になった。
「レイアちゃんレイアちゃん、これなんてどうかな?」
お母様が露店に並んでいるいかににも古そうなツボを見て、価値があるものか聞いてきた。それにしても『凝』って本当に便利だよね。目利きができない人間でも、いい品物ならある程度見分けられるのだからさ
「そのツボより、そっちの置かれているお皿のほうがいいかな」
両親には、今朝方に念能力の事を話しておいた。お父様に普通の人間では不可能に近い身体能力を見せてしまったからね。自分の息子が化け物でないと証明する為にお話をした。
うちの両親に限ってないとは思うけど…大好きな両親から化け物扱いされるのって正直つらいからね。
「むむむ…さっぱり分からない」
お母様が二つの商品を見比べてみているが、何も見えていないようだ。まぁ、念を覚えていないので普通は見えないけどね。
それにしても、ついさっきまでいたミルキが突如姿を消している。多分、カタログでもないにいっているか…私達と同じく骨董品漁りでもしているのかな。
旅団の連中とここでばったりと会う事は無いと思うけど、一応私達の護衛なのだからつかず離れずの距離にしてもらいな。
ミルキが行方不明になったので、親子水いらず露店位置を見学中です。ちなみに…買い物のお金はすべて私の財布から出ていくという謎の現象が発生している。新米ハンターの身でまだ仕事をした事が無いから…当然、お金など碌に持っていない。フィギュア造りで稼いだ貴重な財産が湯水のごとく減っていくぜ。
お金って貯めるのは時間かかるけど、使うのって早いんだよね。
「さぁーーーいらっしゃい条件競売だよーーーー!!………ダイヤが……・・」
お母様と歩いていると何やら聞き覚えのある声が聞こえた。
声のする方を見てみると何やら人だかりができている。周囲の声を聴きとってみると、ゴリラに育てられた少年とか…まさか、ゴレイヌ!?と思ったが違うよね。他にも、500人抜きしたとか嘘か誠か分からないような言葉が飛び交っている。
チョンチョン
「お母様…この一万ジェニーは何でしょうか? もしかして、お小遣い?」
「お・ね・が・い」
女性は、なんでこんな光る石ころが好きなのだろうか。フィギュアの方がよっぽど芸術的で光り輝いていると思うのだけどね。
昨晩は、いろいろと心配も掛けたし日頃できていない親孝行的な意味も込めて是非ともダイヤを取ってあげたいけど…相手が悪い。念については、少しだけ私がリードしている?が身体能力は俄然ゴンの方が遥かに上だ。
まぁ、能力を使えば勝てるとは思うが…いくらなんでも腕相撲で勝つためにアレを使うのもな。
ザワザワ
私がそう考えていると一人の巨漢の男が自ら腕を折りに行った。原作であったあのシーンか……という事は、地下競売品はやはり奪われたとみて間違いないな。
流石に体格差からゴンでは腕を組めそうになかったのか、レオリオが代打で登場してきた、ついでに賞金を上乗せしてくれた。ゴンと比べて弱いうえに賞金まで追加してくれるなんてなんて優しいんだろうな。
「レイアちゃん、どっちが勝つ?」
「グラサン黒服の方」
ハンター試験合格者にして念能力者だ。念能力者でもないイイ体をしただけの男に負けるわけがない。
ゴツン!!
開始と同時に勝負がついた。
レオリオも容赦ないね…相手の腕を折る必要ないだろうにね。
「他に挑戦するやつは?」
巨漢の男が涙目になっている状況で名乗り出るアホなど居るはずがないでしょう。
「はいはーい!! この子が挑戦します!!」
「え!?」
思わず叫んでしまった。
あの状況を見て息子に挑戦させるなんて何たる仕打ち。というか、あなたの息子は一般人に対してはそれなりに強いかもしれませんが念能力者の中では下から数えた方が早い程度の実力者ですよ。
レオリオと目が合った。
「……どっかであった気が……えーーーーっと」
「そのくらい覚えておけよ!! 数人しかいない同期だろ!?」
思わず突っ込みを入れてしまった。
何やら、この化け物共の同期という発言が火をつけたのか辺りが急に盛り上がってきた。今まで何度も挑戦したリベンジ野郎どもから熱い声援が送られてきた。
お母様もノリノリ、観客もノリノリ…この状況ではレオリオも私も後には引けないな。
「やるしかないね…これ参加費用。条件は、先ほどの巨漢と同条件で…イヤとは言わないだろう?」
「も、もちろんだ」
レオリオが苦笑いをしている。
見る限り純粋な腕力勝負では五分五分…いや、私の方が若干不利にも思える。キルアの実家編では、2の門まで開けきっている事からして念を覚えた今では3…もしかしたら4まで開けられてしまうかもしれないからね。
だが、私とてビスケの元で血を滲むような努力をしていたのだ。今なら4の扉位開けてみせる……多分開けられると思う。
ガシ
レオリオと腕を組み準備を終えた。
レオリオも完全に本気だ。全身を『纏』で覆っているからね。だけど、それが命取りになるのだよ レオリオ君。
私はね…念については苦手な事が多いけど一部にオーラを集める事や物を強化する芸当などは大得意なんですよ。
私たちのようなアホ馬力が、ただの木の上で腕相撲をしたらどうなるか考えた事はあるかい?
それはね…こうなるんだよ。
もっとも、私はテーブルの半分…自分の腕を支える個所だけはしっかりと強化しているけどね。
「レディーーー……ゴォ!!」
ミシミシバキバキ
開始と同時にお互いが全力を出す。木のテーブルに亀裂が入り、肘を置いた辺りがへこんでいく。お互いに数トンの扉をあげられるほどの力があるのだ…当然の結果である。だけどね……私の側は、『周』で強化しているから何一つ壊れていないけどね!!
「「うおぉおおおおおおおお!!」」
ベキベキベキ
それにしても、なんというパワーだ。原作キャラの中で脇役にも等しいレオリオでこの力とかね。血反吐を吐くような訓練をしてようやく五分といったところか。悲しい現実だな。レオリオが本格的に念を習得したならば、勝てないだろうな…きっと、単純バカだし強化系だろうしね。
「レオリオ頑張って!!」
「負けんなよ」
「レイアちゃん、頑張って!!」
「「「いいぞ 白髪頭!! そのままぶっ潰せ!!」」」
お互いの陣営から声援が送られる。
任せろと言いたいが…力が拮抗している。こういう場合は、本来であればスタミナ勝負になるのだけど、悪いねレオリオ。
テーブルの耐久度的にまもなくレオリオ側のテーブルが限界を迎える。その時こそ勝負だ!!
ミシミシ………バキン!!
レオリオ側のテーブルの支柱が折れた。レオリオが大勢を崩した瞬間、全オーラを腕に集め一気に押し倒した。
ガツン!!
「ふぅ〜、私の勝ちだね。悪いけど、賞品と賞金は貰っていくね」
駄々をこねられる前に早々に景品を頂いた。まぁ、周りの空気から考えてそんな事を言い出すことは無理だろうけどね。
「すまねー、ゴン キルア」
後ろで二人に誤っているレオリオがいるが気にせず立ち去るとしよう。応援してくれた観客たちに会釈しながらこの場を去ろうとした時、レオリオに負けた巨漢の連れが名刺をくれたが、幻影旅団を生きたまま捕まえるなど不可能なのでそのまま財布にお蔵入りした。
その夜、宿泊しているホテルにて。
腕相撲が終わってから、ミルキとも無事に合流してあぶく銭で買い物を楽しんでホテルに帰ってきました。ホテルに帰ってきて早々に、お父様から話を切り出された。
「今日、本社の人間とオークション関係の偉い人に会って昨晩の事をいろいろと事情徴収されたよ。私達が、唯一の生き残りらしいからな。盗賊とグルではないかと疑われもしたが、身の潔白は証明された」
「あの状況下ですしね…生き残れば、疑われるのは必至でしょね。それで、本題は何でしょうお父様?」
お父様が深いため息をついた。
「これはまだ、オフレコの情報なのだがオークション品がすべて盗まれたらしい。そして、奪還すべくチームが結成されるそうだ」
……は、激しく嫌な予感しかしない。
「ま、まさか…」
「そのまさかだ…オークションを取り仕切っている十老頭から直接、レイアをオークション品奪回チームへ編入するようにと依頼された。プロハンターでもあり、交戦したにも関わらず生き残ったことを非常に高く評価されたようだ。………すまん、拒否できなかった」
相手は世界中のマフィアを牛耳る連中だ。下手に拒否をすれば、明日は魚の餌になんて事も十分にありえる。家族の為にも拒否できなかったんだろうな。
「大丈夫ですよ お父様。昨日だって生き残ったんです。明日も大丈夫です」
そう…どうせ時間を稼いで寝ていれば試合は終わるのだ。「果報は寝て待て」という諺もある事だし仕事をせず適当に流すさ。
「相変わらず面倒事に巻き込まれるのが好きだな。まぁ、レイアの護衛も仕事の内だ…俺も付き合おう」
ゼノとシルバに会って、G・Iを買う為のお金を借りる事が真の目的だとは誰も思いはしなかった。