15話
両親を守りきり後は、気楽にお買い物を楽しんで家族と一緒に過ごそうと思ったのになんでこうなったと思っているレイアです。
お父様から殺し屋チームの話を受けて次の日、マフィアの方のお迎えが来ました。そして、ホテルの一室へと案内されて中に入ってみると好きな事は人殺しですと言わんばかりのオーラを漂わせている連中が集まる部屋にスシ詰めにされた。
それにしても全員強いな…仮にも幻影旅団を殺そうというのだからそれなりの使い手だろうね。言うまでもないが、私が最弱である事は間違いない。おまけに、こういう中途半端なキャラ達は名前も分からないから私にとっては、幻影旅団より性質が悪い。
本当に、ミルキが一緒に来てくれただけでも本当にありがたいわ。
「座って待っていろ。もうすぐ全員揃う」
なにやら、偉そうなチビ禿に命令口調で言われたがとりあえず我慢だ。親の顔に泥を塗るわけにはいかないからね。
とりあえず、窓際に設置されているソファーにミルキと一緒に腰を掛けた。席に着くと暖かい紅茶が運ばれてきた。VIP対応されるのも悪くないなとちょっと思ってしまった。
それにしても、自分がこのような場に来る事になるとはね…世の中分からないものだわ。
待つこと数分後。
カチリ
どうやら、まだ来ていないご一行が到着したようだ。
予想通り、先に到着したのはゾルディック一行だった。部屋の中に入ってきた際にわずかだがこちらに視線が来た気がする。
「全員そろったようだな」
チビ禿のおっさんが人数を数え始めた。しかし、黒服のお仲間があと一人来ると言って何やらもめているようだ。
チビ禿のおっさんは、クラピカの雇い元と犬猿の仲だったね。
その後、すぐにクラピカが来て今回の仕事内容に説明が始まった。必要なものは何でもそろえる。やり方は自由だ。まぁ、もともと協調性のかけらもないような連中だからその方がありがたいけどね。
「後、先日地下競売が幻影旅団に襲われた際にそこの二人は複数人相手に逃げ切っている。質問があれば聞いておけ」
……え!?
その瞬間、今まで練度的に見向きもされなかった私にも注目が集まった。
「随分と成長したの〜小僧」
「知り合いか親父?」
ゼノは私の事を覚えていたようだけど、シルバは記憶になかったようだ。まぁ、会ったのは本当に数分にも満たないから仕方ないけどね。
「何年か前にウチにホームステイしとったミルキのお気に入りじゃ。居間にある像を作った小僧じゃよ」
「あのアルビノか、よく生き残ったな」
どうやら、思い出してもらえたらしい。「よく生き残ったな」と言われたというのは一応褒め言葉なのだろうね。この人は、ツンデレ親父で有名?だからね。
「お久しぶりです。お二人ともお元気そうで何よりです。ミルキ様には、今も昔も本当にお世話になっております」
「まぁ、死なない程度に頑張りなさい」
部屋を出ていく二人を会釈で見送った。
またいらぬ注目を集めてしまった。クラピカも私になど興味はなかったようだが…旅団を退けた辺りいろいろと話を聞きたそうな様子だ。だが、ミルキも私も面倒事は嫌いであるのである。ミルキの威圧感を前面に押し出して黙らせた。
10数分後。
殺し屋各位がそれぞれ行動を開始した。無論、私とミルキも立場上殺し屋チームなので控室に留まりっぱなしでは立つ瀬がないので移動を開始した。
さて、どこで時間を潰そうか……下手に人目のつかない場所に行って団長とご対面という事も避けたいし…かといって堅気の人が多い場所に留まっていると仕事もしてない風にみられて困るしな。
「とりあえず、ゼノ様とシルバ様の近くに控えてましょう」
あの二人がいる場所が一番安全だろう。ミルキと合わせてゾルディック三人…これだけの過剰戦力があれば何も怖くない。万が一、旅団が複数来た場合は能力を限界まで行使して足止めをしましょう。その隙に始末してもらえば完封できそうだ。
「それが一番だろうな。俺もちょうど親父とじいちゃんに用事があったしな」
「では、さっそくお二人を探しましょう」
近くにいた男を捕まえて暗殺チームの人がどこにいるかを聞いてみたが、把握していないようだ。仕方ないので、幹部の方が大勢集まっているフロアを教えてもらった。原作では、旅団襲撃時にあそこに登場してマフィア連中を黙らしたからね。
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どうやって、このホテルに乗り込もうかと思っていたがレイアのおかげで楽に親父と再会できた。後は、G・I落札の為の資金を少しばかり借りられればここに来た目的の大半が達成される。まぁ、電話を掛けるのもありだったが金銭面については電話で片づけるのも気が引けたからな。
それにしても、旅団襲撃の件や俺ですら知らないG・Iに関する裏情報を知っているとはレイアは一体何者なのだ。以前に素性が気になって徹底的に洗ったがなんら不審な点が出てこなかった。それどころか、何度調査をさせても結果は同じだった。「何処にでもいる普通の子供」これがゾルディック誇る調査員の報告結果だ。もっとも、趣味のフィギュア造りに関しては巨匠と呼ぶに相応しい実力を持っているがな。
おまけに、ゾルディックの俺を馬車馬のごとく働かせるあたりが実に面白い。怖いもの知らずなのか…ただのアホなのか分からんが、おそらく後者だろうな。
きっと、レイアが聞いたら「私はアホじゃないです。ただ、少し人と考え方が違うだけです」などと言いそうだな。まぁ、俺としてもレイアとの関係は嫌いじゃないからいいけどな。
お互い公私をきっちり分けて、互いに得意な面で協力し合う。俺はレイアから好きな物と金になるアイディアを貰い、俺はそれに対して力を貸す。
「それで、外でドンパチが始まっているが俺らはどうするんだ? 親父たちも行動を開始したぞ」
「恐らく外の旅団の人達は、このホテルまでは来ないと思いますから外の事は無視していいですよ。どうせ、もうじき終わるので…私達は、ゼノ様とシルバ様が向かっている部屋の真下に向かいます」
「何故、真下に?」
親父達に加勢するわけでもなく、真下の階になぜ行くのだろうか? いつもながら行動が読めない。いや、自己中過ぎて誰も予想できないといった感じだ。
それに、もうじき終わるとはどういう事だ。親父達が来ている以上、確かに解決するのは時間の問題だが……レイアの発言はそう言った意味での発言ではなかった気がする。まるで、必ずそうなると予言じみた感じがした。
「旅団のトップの人に部下が壊した物品を弁償させようと思いましてね。……ミルキ様、『円』はお得意ですよね?」
「親父達程ではないがな」
親父達が戦っている真下の部屋にて。
「流石の俺もこのやり方は、どうかと思うぞ…」
「何を仰いますか、あんな熾烈な戦いに混ざって何食わぬ顔でナイフだけ拾って外に出られるはずないでしょう!! それに、旅団の人もシルバ様もベンズナイフの収集家ではありませんか。目の前でそんな大それた事できるはずがないです」
天井にヤモリのように張り付いて穴をあけようとしているレイアを見て呆れながら声を掛けた。
そりゃ、俺だって上の戦いの最中にナイフだけ拾って退場なんて、KY的な事できるはずないが…ナイフが落ちている個所の床だけくり抜いて持ち逃げしようとしているなんていい根性しているな。
それに…気づいていないかもしれないが、幻影旅団のトップから物を盗もうとしているレイアがある意味こえぇーよ。絶対、長生きできないタイプだよ。
「ミルキ様、ナイフはどの辺りですか?」
「そこから北に3m、西に50cmの場所に落ちている。ナイフの鞘は……戦火のど真ん中だ 諦めろ」
レイアがベンズナイフで天井を抉り取る。
ゾワ!!
上の階で親父のオーラが飛躍的に上昇するのを感じた。もう決める気か!!
「レイア、親父が決める気だ。早くしろ!!」
ゴソゴソ
腕を壁の穴に突っ込んで何やら手探りをしているようだ。
「もうちょっと…もうちょっとで………取れたぁあああ!!」
ドゴゥーーーーーン
ホテル全体が揺れるほどの大きな衝撃が走った。
天井にぶら下がっていたシャンデリアはもちろんレイアも天井から振り落とされた。落ちてきたレイアの手には、奇抜なデザインをしたナイフが握られていた…形状からするに毒かな。親父が好きそうなナイフだな。
「ナイフが手に入ったならここには用事はないだろう。さっさと撤収するぞ」
「了解、ミルキ様!!」
まったく、面倒を掛けてくれる奴だぜ。
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勝手に弁償してもらったベンズナイフを研ぎながら悦に浸っているレイアです。
クジラすら0.1mgで動けなくする毒を内蔵できるとか素晴らしいわ。これがあれば、キメラアントの大半を麻痺させる事すら可能だろう。毒で動けなくなった所を銃で撃ち殺す又はナイフで解体すれば勝利確実じゃないか。
それにしても……美しいナイフだ。
奇抜なデザインであるがそれがまたイイ!!
「実に良いナイフだ…フィギュア造りが捗るというものだな」
「フィギュア造りも大事だが。さっさと、バッテラの元へ行って話をつけてこい」
大富豪バッテラと平和的な交渉を行いG・Iを一本だけ落札させてもらう予定だ。その為に、あえて私一人で乗り込む。もし、ミルキのような実力者が行けばゲームに参加させまいとあらゆる手段を講じてくるかもしれない。
ミルキが用意した資金でもバッテラが総資産を上げて対抗してきたら流石にこちらに勝ち目は薄いからね。
ミルキから、ハンターライセンスと私の銀行口座の預金明細を受け取った。この日の為に、ミルキには集めた全額を私の預金口座に移してもらっておいた。
「それでは、行ってきます。もし、相手が何か仕掛けてきたら絶対助けてよね。一星のハンターならともかく、名前も分からないような念能力者は鬼門だから」
「安心していって来い」
新調した鞘にナイフをしまい、バッテラに会うべくオークションのVIP控室へと足を運んだ。
バッテラ控え室にて。
簡単なボディーチェックをされて、ナイフを取り上げられそうになったが全力で拒否をした。武器を携帯したままでは面会させる事はできない、と係りの者に言われたので仕方なくメモを渡した。その内容なもちろん、ネット上では公開されていないG・Iに関する情報だ。それを見た上で会うか会わないか判断してほしいと伝えたのだ。
すると、数分後に「是非ともバッテラ氏がお会いしたい」と呼ばれましたよ。
待合室の中に入ってみると、一つ星ハンターの髭の人と後二名程見た事がない人がいた。当然 念能力者なのは言うまでもないけどね。
「初めまして、私がバッテラだ。一体、この私に何の用事かね?もっとも、あのメモやこの時期から考えるに当然G・I関係なのだろう。……目的は、金か?」
漫画では、意外と紳士的なイメージがあったが何やら私が気に食わないのだろうか。扱いがひどい気がする。まぁ、この時期に厄介ごとを持ってくる私のような存在は、バッテラにとっては目の上のたんこぶみたいなものだろうけどね。
「初めまして、プロハンターをやっておりますレイアといいます。お会いできて光栄ですバッテラ氏。長居はする気はありませんので、単刀直入に言います。私にG・Iを譲っていただきたい。正確には、出品される一本目の競売に参加しないでいただきたい」
「何を言い出すかと思えば……このような者には早々におかえり願いましょう。時間の無駄です」
髭の人が割り込んできた。まぁ、当然の対応だ。
「お互いの為になる提案をしに来たのにそれは酷いですな。バッテラ氏……私には、今回G・I落札の為に800億ジェニー用意してきています。これが、どういう意味かお分かりですか?」
ミルキが自営業で稼いだ400億とシルバとゼノから借りた400億を合わせた合計額だ。正直、目玉が飛び出そうな額だぜ。なんでも、アニメ関連の売り上げがうなぎ上りらしい。
まぁ、これだけの金額があってもバッテラ氏に負ける可能性があるのが困るのだよね。本当に大富豪とか金持ち過ぎだろう。しかし、仮にオークションで勝ったとしても今後のG・Iの運用・保守費はバカにならないだろう。そういった諸経費が賄えなくなる事は必至だ。
「確かに、君がいうように800億ジェニーが用意出来ているのであれば考える余地はあるが、君のような子供がそのような大金を持っているとも考えにくい」
「そういわれると思って、銀行に発行してもらった私の預金残高の証明書を持ってきました。ライセンスと一緒に確認していただいて結構です。後、万が一私からの提案をお断りなさるようでしたら、一本目から800億ジェニーで張らせていただきます。更に、貴方が封鎖しているG・Iのクリア情報やカードに関する情報も公開しましょう。なーに、大富豪は貴方だけではありませんからね」
バッテラ氏が近くにいた係りも者に私の証明書とライセンスを確認し始めた。銀行にも問い合わせを行っているようだが、なんら問題がない。すべて、事実なのだからね。
若返りの薬やどんな怪我でも治すなんて代物は、大富豪連中にとってのどから手が出るほど欲しい品物だ。その情報が公開されれば、オークションが荒れることは間違いなし。
「仮に君がG・Iのクリア情報やカードの情報を知っていたとしてもそれを誰が信じるのかね?おまけに世界に出回っている半数近いG・Iは私が抑えている。それに、オークションはもうすぐ始まる。今から情報をばら撒いても遅いのだよ」
あ……確かにそうだ。
バッテラ氏の情報封鎖によってG・Iの情報はすべて隠蔽されてきた。仮に、私が公開するぞと脅したところで同じ末路になるという事か。
となると…別の方法で行くか。
「どうしてもG・Iを私に譲る気はないようですね」
「君がどこまで知っているかは知らないが…大人を甘く見ないで貰いたい。さぁ、ライセンスを受け取り次第帰るといい」
「———グリードアイランドの製作者の情報……欲しくはありませんか?」
グリードアイランドの製作者の情報は電脳ネットでも公開されていない。無論、バッテラ氏といえどもこの手の情報は持っていないはずだ。
恋人を一刻も早く回復させたいバッテラ氏にとっては、製作者に直接交渉できる可能性を提示するだけで十分に効果を発揮すると考えている。まぁ、私の情報を信じてもらえるかは別問題だけどね。
「その情報の真偽が分からない以上、交渉する余地などないよ」
・・・
・・
・
私のような者がいう事など一切信じられませんと言った感じだな。仕方ない……幻影旅団を見習う事にしよう。幻影旅団の人も奪いに来るから、かち合わないように調整しないとな。
「帰るぞ レイア。これ以上の交渉は無意味だ」
「ミルキ様!!」
「一体どこから!! 貴様何者だ!?」
ざわざわ
ミルキのいきなりの登場に皆が驚いた。かくいう私も驚いている。声を掛けられるまで全く気付けなかった。某カメレオンの念能力かよと思ってしまったよ。
というか…ミルキの突然の登場で相手方がすでに臨戦態勢に入っている。
「ミルキ……思い出した。先日、幻影旅団に盗まれたオークション品を取り戻す為に雇われた殺し屋リストにレイアとミルキという名前があった。まさか、君たちの事か?」
ぎゃーーー!!
バッテラ氏がまさかそんな事まで知っていたとは予想外だ。オークションに常日頃目を光らせているから情報網は伊達じゃないという事なのか。それにしても、私の付添みたいな立場でいったミルキの名前まで抑えているとは 大富豪の情報網は恐ろしいな。
「その通りです。バッテラ氏」
「……君達二人がゲーム内で我々と対立しないという条件も追加してもらえるならば、先ほどの条件を飲もう」
「正気ですか!? 」
髭のおっさんが焦っている。
「そうだ。すくなくとも、条件を飲んでおいた方が被害を抑えられると判断できる。それに、ミルキという青年は…ゾルディックだ。いくら一つ星ハンターとはいえ、いささか分が悪いだろう」
バッテラ氏も何気に厭らしいな……対立しない条件を追加という事は、『G・Iの情報も公開しない』『グリードアイランドの製作者の情報を提供する』の二つの条件も守らねばいけないというのだからね。
まぁ、こちらとしてはグリードアイランドさえ落せれば問題ない。カード情報なんて元から公開する気など無いし、グリードアイランドの製作者の一人のジン・フリークスはプロハンターですら捕まえるのに数年かかるレベルの変人だからね。
「だが、断る!!」
このセリフが言いたかった。
「な、何故だね?」
バッテラ氏の口元がヒクヒク動いている辺りが最高に楽しい。
「ゲーム内は、既に末期状態だ。レアカードについては、有力のプレイヤーが抱え込んでおり相手から何かしらの手段で奪う以外に方法がない。そんな状況でバッテラ氏が雇っているプレイヤーと対立しないなど不可能!! おまけに、現在ゲーム内にいるプレイヤーの大半がバッテラ氏の子飼いですからね」
「わかった。では、………」
この後、ミルキが早く帰るぞと急かされながらバッテラ氏と何とか交渉を終えた。契約内容は、ツェズゲラと対立しないという事で交渉を終えた。バッテラ氏にしてみれば、ツェズゲラがクリアの最有力だろうから何としても守りたいのだろう。だが、原作を知っている私から言わせてもらえば……守る相手を間違えたと思う。
オークションでは、バッテラ氏が参加しなかったので200億程度で落札ができた。おかげで、ミルキの財布もウハウハ状態だ。後、幻影旅団の人が奪いに来る予定だったのでオークション会場からは自分達で持ち帰りさせてもらった。
翌日。
昨日でオークションも終わり、実にすがすがしい気分だ。
ゴンとキルアがミルキの元に来るかと思ったが、どうやらバッテラ氏の所へ向かったようだ。まぁ、そうなってもらわねば困るけどね。
「それでミルキ様、どこでゲームをやります?」
ミルキの顔が何言ってんだこいつ?みたいな顔をしている。
「俺の部屋に決まっているだろう」
「ははははは、ですよね〜」
ゲーム中に盗まれる心配もなく、現実に戻ってきた際でも安全な場所となればやはりそこしかないですよね。
両親には、しばらくミルキの家でお節介になると言わないとね。久しぶりに実家に帰って母親の飯が食べられると思ったのだがな。
「それとレイア、G・I落札に使う予定だった金が随分と余ってな。浮いた分の金は渡さないが、代わりにコレをくれてやる。もう、必要ない」
ミルキが何かをこちらに投げた。
それは、とても身に覚えのある形の物だった。
「よいのですかミルキ様?」
「構わん。ライセンスなどその気になればいつでも取れるからな」
そりゃそうだ。
しかし……男のツンデレはキモイと言いたいが言ったら殺されるだろうなと思うレイアであった。